それではどうぞ。
「宮藤さん!私、貴方に決闘を申し込みましてよ!」
「け、決闘!?」
501の脱衣場に大声が響き、その声に驚くように更に声が出る。前者はペリーヌであり、後者は宮藤である。
事の発端は、簡単に言うとペリーヌの嫉妬であった。宮藤が訓練で見せた空戦テクニックの「左捻り込み」が、彼女のあこがれる坂本の動きと瓜二つ(に重なった)のだ。それを見てペリーヌは宮藤がこっそりと坂本からこっそりと教えてもらったのではないかと思い嫉妬したのだ。
尤も、宮藤はそんなことしてなく、彼女は見よう見まねでその軌道をやったのだ。そういう意味では彼女はある種の天才であるのだが、その天才さがまたペリーヌの嫉妬を加速させたのだった。
-----------------------------------------------------------------------------
「悪いが、中身は勝手に見させてもらった…」
執務室にバルクホルンの声が通る。彼女は神妙な顔をしながらミーナの机の前に置かれた手紙を見ていた。その周りにはハルトマンとシュミット、そして机の前の椅子に座るミーナの横には坂本がいた。
「『深入りは禁物、これ以上知りすぎるな』…これはどういうことだ」
「興味あるね」
「同感だ。一体何か調べていたのか?」
バルクホルンの言葉に同調するようにハルトマンが言い、シュミットは目の前の人物に質問した。
「やましいことなど何もしていない。そうだろう、ミーナ?」
答えたのは坂本だった。そして坂本はミーナに目を向け言うが、ミーナは自分に話を振ってくるとは思わなかったので一瞬遅れた反応をして答えた。
「え?えぇ…そうよ。私たちはただネウロイの事を調べていただけで…」
「それでどうしてこんなものが届く?」
「ネウロイを調べるだけで、こんな手紙を寄越すなどおかしい話だ」
ミーナの説明を聞いてバルクホルンとシュミットは反論の声を上げた。二人だけでなく、エーリカを含む三人はこの手紙が届いたことについて先ほどのミーナの説明からは納得がいかない様子だった。
エーリカが質問した。
「差出人に心当たりは?」
「ありすぎて困るくらいだ」
「そうね、私たちのことを疎ましく思う連中は軍の中にいくらでもいるはずだから」
「結局、どこの軍も一枚岩なんてありわしないのか」
坂本とミーナの心当たりを聞いて、シュミットはこの世界でも同じような軍に対して少しがっかりしていた。人類共通の敵を持とうが、その本質は変わらないのだと。
しかし、坂本が次のように繋げた。
「が、こんな品のない真似をする奴の見当は付く。恐らく
「…あの男って」
「トレヴァー・マロニ―、空軍大将さ」
「トレヴァー・マロニ―?」
シュミットは坂本の言った人物について知らずに疑問の声を漏らす。彼は元々別世界の出身であると同時に、この基地の上司について詳しく知らない。疑問を持つのも当たり前である。
「この501の上官、ミーナの上司だ。彼は軍上層部のタカ派で、ウィッチに対してあまり良い印象を持っていないんだ」
「待て、それだからと言ってネウロイの追及を『深入りするな』だと?だったらそいつはネウロイを倒す気じゃないのか?」
「いや、そうではない」
シュミットはバルクホルンの説明を聞いて更に分からなくなり質問する。しかしシュミットの疑問を坂本が否定した。
「……」
シュミットは左手で右肘を支え、右腕を顔の前に持っていき唇の前に指を添え考える。そして、しばらく考えた後その手を下ろした。
「…中佐、その大将の腹がだいたい読めた」
「どういうことかしら?」
「確信は無い。だが恐らくそいつは『ストライクウィッチーズ』の解散を目論んでいる。そして同時に、それを出来る何かを今隠しているんだろう」
「それを出来る何か…?」
シュミットの推測にミーナは最初『ウィッチーズの解散』を聞いて驚くが、その後に続いて言った「それを出来る何か」について疑問を持ちシュミットを見た。他のメンバーもその単語について気になりシュミットを見る。シュミット全員の思いを理解し話し始めた。
「そうだ。俺の前の世界では自分の国から相手の国に直接進行せずに攻撃をする兵器を開発した。それと同じように、その大将はウィッチを必要とせず、ネウロイを倒す新兵器か何かを開発していると考える。彼がウィッチに対していい印象を持たないタカ派であり、高い役職に付いているのならそういう可能性もあるだろう」
その説明を聞いて、執務室には沈黙が流れた。しかしそれは決してシュミットの説明に対して理解が追い付かなかったからではない。むしろ、その推測があり得る可能性があるというのが渦巻いた結果、彼女たちは一斉に黙りじっくりと考えるしかなくなったのだ。
そして執務室で解散後、シュミットは自室に向かって歩いていた。しかし彼は同時に考え事をしながら歩いていた。
(トレヴァー・マロニ―大将は、ウィッチーズの解散を目論んでいる。しかしその決定打は一体…)
執務室で推測を言ったシュミットだったが、結局のところ推測だけであり本当の所はどうなのかは分からない。しかし一つだけ彼が確定して言えるのは、ウィッチーズの解散を目論んでいるという考えだった。
そんなことを考えながら歩いていたシュミットは、自分の部屋の扉を開ける。
「…あぁ」
そういえばそうだったな、と思いながらシュミットは部屋を見た。部屋には自分のベッドで相変わらず眠っているサーニャが居た。そんな姿を見て、シュミットは先ほど考えていた事を止めることにした。
「サーニャの前でそんなこと考えてはいけないな」
そう言ってシュミットはベッドに座ると、そっとサーニャを見た。そこで眠っている姿は相変わらず可愛らしいものである。彼女の体は線が細く、腕は強く握ってしまうと折れてしまうのではないかという細さである。
そんなサーニャを見て、ドキドキとするシュミット。そして少しずつ手を伸ばしていき、サーニャの頭をそっと撫でた。
「…」
そして少し撫でた後、シュミットは思わずボソリと呟いた。
「…サーニャ、私は君が好きだ」
小さな声で呟いた。そう言ったのち照れくさくなり頬を指で掻く。その時だった。
突如、サーニャが撫でていた頭から黒猫の耳とリヒテンシュタイン式魔道針を出し、同時に黒猫の尻尾を出した。突然現れたそれにシュミットは思わず驚く。
「わっ!」
吃驚した声を出すシュミット。その声を聞いてか、サーニャは静かに瞼を開けた。そしてそのままゆっくりと体を起こし、シュミットを見た。
シュミットはまだ眠たそうなサーニャを見て声を掛ける。
「お、おはようサーニャ…」
シュミットは優しく声を掛ける。サーニャはその声を聞いて周りを見渡した。そしてそこが自分の部屋でないことに気づく。
「あれ…ここは?」
「私の部屋だ。サーニャが朝入ってきてそのまま眠ってしまったんだ」
シュミットがサーニャに状況を説明する。その説明を聞いてサーニャは急に意識が覚醒したのか目を開き、そして顔を赤くした。
「その、すみません。迷惑かけてしまって…」
「迷惑なんてそんなことは無いさ。私だって一人は寂しい…そんなことより、魔道針を出してどうしたんだ?」
サーニャが謝ってくるが、シュミットはそんな事を気にするほど小さな人間ではない。それよりも彼はサーニャが魔導針を出していることに質問した。
「ネウロイの反応が…」
「ネウロイだって!?…!」
ヴウウウウウウウウウウウウウウ!!
サーニャの言葉にシュミットが驚いたと同刻だった。基地全体に警報が鳴り響いたのは。
「警報!くそっ!」
「シュミットさん…!」
シュミットが毒つくように言い立ち上がる。そんなシュミットを見て、サーニャが思わず声を張る。
シュミットはサーニャに突然呼び止められ驚き、立ち止まる。サーニャはシュミットを見ていた。しかしその目は不安そうだった。
シュミットはそんなサーニャを見て少し心を落ち着かせる。
「大丈夫だサーニャ。そう心配しないでくれ」
「はい…」
そう言って、シュミットは優しくサーニャに言う。しかしサーニャはその言葉を聞いてもまだ不安だった。
そんなサーニャを見てシュミットは足を床につけ手をそっと差し出す。その手にサーニャは何だろうかと考えるが、そっと自分の手をとった。そしてシュミットは、その手をそっと顔に寄せ、なんとその手の甲にキスをしたのだ。
「えっ…!?」
サーニャがシュミットの行動に驚く。そしてその後少しずつ頬が赤くなる。
シュミットがサーニャの顔を正面から見る。
「その…おまじないだ」
「えっと…」
シュミットは顔を赤くしながら言い、そして少し恥ずかしくなったのか目を逸らす。そして、彼はなにかを決心するように少し考えた後、再びサーニャの方向を向いた。頬を赤く染めた彼は、静かに告白した。
「…私はサーニャが好きだ」
「えっ…!?」
突然の告白。シュミットにそう言われたサーニャは思わず驚きの声を出す。そんな反応を見たシュミットは自分の心臓の音が段々速くなるのを感じた。
数秒の沈黙が流れるが、ネウロイが迫っていることを思い出したシュミットはその沈黙を破り、サーニャに優しく言った。
「ネウロイが迫っているから、私は出撃する…そして、必ずサーニャのもとに戻る」
シュミットはそう言って部屋の扉を開け駆け出した。部屋に取り残されたサーニャは固まってしまう。彼女は心臓の鼓動が速くなっているのと、体が火照ってくるのを感じた。
そして格納庫に向かうシュミットは走りながらこんな事を考えていた。
(言ってしまった。少し柄に会わなかった。それにあの場面で言うなんて…嫌われてしまったかもしれないな)
と、自分の行動に少し嫌悪感を感じ、センチメンタルな思考にも走り出していた。
-----------------------------------------------------------------------------
基地に警報が鳴る数十分前、格納庫には宮藤とペリーヌが居た。
「決闘なんてそんな…!私嫌です!本物の銃を人に向けるなんて…!」
格納庫の中、宮藤はペリーヌに向けて眉をハの字にして答える。彼女はこの決闘に対して良い思いなどしていなかった。元々争いごとを嫌う彼女の性格から、決闘なんて自分からやりたいなど思わない。
「まさか、本当に撃つはずありませんわよ。気分ですわよ気分」
「でも、私そんなことをするためにウィッチーズに入ったんじゃありません!」
ペリーヌがあくまで形だと言っているが、宮藤はそれでも納得いかなかった。実銃を人に向けたくないのだ。
そんな宮藤を見てペリーヌは呆れたように溜息を吐く。
「まったく…入隊の時もあなたそんなおバカなこと言ってましたわね。言ってるでしょう、形だけですから」
そうして二人は離陸し、そして並行する。高度は1000mほどであり、地面が近かった。
「宮藤さん、聞こえまして?十秒以上後ろを取った方の勝ち。だったらいいでしょう」
ペリーヌがインカムで宮藤に言う。宮藤はそれを聞いて少しだけ頷いた後、自分の持つ九九式の安全装置を見る。
(安全装置は…うん、かかってる)
そうして互いに背を向け数百メートル離れた後、今度は向き合いながら接近、そして位置が入れ替わり、決闘が始まった。
先に宮藤の後ろに接近したのはペリーヌだった。彼女は真っ先に低空を飛んでいる宮藤を見つけると即座に後ろを取る。宮藤は遅れてペリーヌに気付く。
そして後ろを取ったペリーヌだったが、宮藤は突然ループをする。それに追いていくペリーヌだが、宮藤の使用するユニットの零式は機動自慢で有名である。高速で運動をする宮藤にペリーヌは段々と苛立ちを感じてきた。
「まったくもう!ちょこまかちょこまかと…!」
そして始まった決闘は、呆気なく終了した。
ヴウウウウウウウウウウウウウウ!!
決闘中の二人に警報の音が届く。そして二人はその警報と同時に互いに近づく。
「警報!」
「ネウロイが出たの!?」
ペリーヌと宮藤は驚いていた。その時、二人のインカムに声が届く。
『グリッド西地区に単機よ。ロンドンに向かうコースを…』
声の主はミーナだった。ミーナは全体にネウロイの情報を送っていた。ペリーヌはネウロイの位置を聞いてミーナの会話に入る。
「中佐、ペリーヌです。私と宮藤さんは…その、訓練で飛んでいたところです。そのまま先行して…」
『何ですって?そんな予定聞いていないわよ…あっ、貴方達はそこで待機していなさい!いいわね!』
ミーナはペリーヌが訓練していたと聞いて聞いていなかったと言うが、突如何かに焦るように命令を下した。
ペリーヌは会話を終えて宮藤の方を向いた。
「ペリーヌさん!」
「聞いての通りよ、皆が来るまでここに…」
ミーナに言われたことを言うペリーヌだが、宮藤はふと下を見る。そしてそこに民間人がいる姿を見つけ、そして顔色を変えた。
「私、先に言ってます!」
「なっ、えっ!?」
「ここで待っていたら、逃げられちゃいます!」
突然宮藤がそんな事を言うのでペリーヌは驚く。そして宮藤は先行してしまう。置いていかれるペリーヌだが、彼女は命令である待機を守るため追いかけることができず、懸命に宮藤を言葉で止めようとする。
「ちょっと、命令違反よ。戻りなさい!」
「私にだって足止めくらいはできますから!」
「ちょ、調子に乗るのもいい加減にしなさい!こらっ!!」
宮藤はペリーヌの静止を振り切ってそのままネウロイの方向に直進していく。しかし、宮藤はいくら飛んでもまだネウロイを見つけられなかった。
(どこだろう…だいぶ近づいているはずだけど…)
そうして目を凝らしながら見る宮藤。既に周りの景色は雲と青空、そして下には青い海のみになっている。そしてしばらく飛行したのち、ついに遠方で赤く光る何かが映った。
「見つけた!」
宮藤は光った方向を向くと背中に掛けていた九九式を構える。そしてだんだん近づくにつれて、ネウロイの正体を見る。その大きさはせいぜい2mほど、これまでの最小である。
「小さいけど、ネウロイには違いないよね…これなら私一人でもやっつけられるかも」
そう思った時だった。突然、ネウロイは宮藤の周りをぐるぐると飛行し始める。今まで見てきた行動とは違うので宮藤は一瞬呆気にとられるが、すぐに気を引き締め銃口を向けた。
銃口を向けられたネウロイはその場で止まるが、宮藤はネウロイに向けて弾を放とうし――放てなかった。
「あっ、安全装置が!」
なんとあろうことか宮藤は安全装置の解除を忘れてしまっており、引き金を引いてもそれが動かなかった。
しかし、本来ならこの一瞬の隙を見てネウロイは容赦なく攻撃するものであるが、目の前のネウロイは攻撃をしなかった。
宮藤はその間にも安全装置を解除する。
「よし、これで…」
そう言いながら九九式に目を向けていた宮藤は改めてネウロイに銃口を向け――完全に固まってしまった。
「えっ!?」
宮藤はそう声を漏らした。何故なら、そこには先ほどの小さなネウロイがいると考えていた宮藤の予想外の光景があったからだ。
先ほどのネウロイは宮藤が目を離した隙に、その姿を変えていた。2mほどの姿だったネウロイは、二つの足に二本の腕、それを繋ぐ胴体に顔、しまいには足にウィッチの履くユニットを模したもの、つまり『人型』になっていたのだ。
(ネウロイが…人の形に…?)
宮藤は人型になったネウロイを見て、ただ困惑するしかできなかった。
ついにシュミット君告白しちゃったよ!!(あの場面で!!)
シュミット君意外と勘がいいですね。マロニ―ちゃんの考えを推測ですがほぼ当てているんですから。
宮藤はやはり軍人には向かない性格ですが、彼女でなければやはり人型のネウロイとの接触がないんですよね…。
ここで皆さんに
今後出そうと考えているシュミット君の新ユニット、それを皆さんの投票で決めようかなと考えています(無ければ作者が勝手に決めますが)
投票する新ユニットは以下の通りです。
1.Ta152(Fw190Dの発展型)
2.Do335(予想外のこの子、作者の本命)
3.その他(読者の希望)←NEW!
以上の中から選びたいと思います。投票お待ちしております!
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは!