ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

32 / 110
少佐墜落、さてどうなってしまうのか!
そう言えば皆さん口々に「シュミット君のあれはフラグかな?」と言っていましたが、大丈夫です。死にません。


第三十話「撃墜と悔い」

「じゃあ宮藤は一人で向かったんだな?」

 

ペリーヌの下にシュミット達が合流し、そして坂本が聞く。無論、宮藤の下に向かいながらである。

 

「すみません、もとはと言えば私が…」

「その件はネウロイを倒してからだ」

「はい…」

 

ペリーヌが謝罪をするが、坂本はネウロイ撃破を優先したので保留にする。

坂本は焦りを感じていた。宮藤がネウロイに対して一人で接触していることについてだ。

 

(余計な気を起こすんじゃないぞ、宮藤!)

 

坂本は険しい表情をした。そして、その会話を聞いていたシュミットは考えだす。

 

(もしネウロイと戦闘になったとしても、向こうから連絡が無いのはおかしい…何かあるはずだ)

 

シュミットは先ほどから宮藤の連絡が全くないことに対して、得体の知れない何かと不安を感じていた。

シュミットはミーナに連絡を取る。

 

「中佐、本当に宮藤はネウロイの所に向かったのですね?」

『宮藤さんがネウロイと接触したのは間違いないわ…でもそこから先はサーニャさんにも分からないって』

『すみません…』

「いや、それで十分です。サーニャが言うから間違いないでしょう」

 

中佐の言葉の後にサーニャが謝るが、シュミットとしてはサーニャが嘘など言うわけがないと信じているので疑うことはしなかった。

こんどは坂本がミーナと話す。

 

「どういうことだ、離れるようには言えないのか?こっちから呼びかけているが通じないんだ」

『こちらもダメ。ネウロイが何かジャミングのようなものを仕掛けているのかも…』

『あいつ…まさか捕まったんじゃ!?』

 

ミーナの言葉に続いて今度はエイラが言う。エイラもサーニャと一緒に居たようだ。そして、エイラの『捕まった』という言葉は隊員達を不安にさせる。

 

「まだ追い付かないのか、ミーナ!」

『それが、ネウロイはガリア方面に引き返しているわ。単に戻るつもりなんじゃ…』

「いや、いた!宮藤がいる…ん?もう一人いるぞ…」

 

坂本達が全速力で宮藤の下に向かっているときだった。シュミットが強化した目は、遠方にいる目標の人物をとらえたのは。そして彼は、更に言葉を続けた。

シュミットの言葉を聞いて坂本が右目の眼帯を取り、魔眼で確認をする。坂本の目にも、宮藤ともう一人の人影が見えた。

 

「宮藤の他にウィッチがもう一人いる」

「なんだって!?」

 

坂本の言葉に他の隊員達も驚く。ブリタニア防衛を行い、ガリアのネウロイを主で倒しているのはストライクウィッチーズであり、この周辺に他のウィッチが居ることはおかしかった。

しかし、じっと見ていたシュミットは違和感を感じた。

 

「違う…!?」

「コアが見える…あれはネウロイだ!」

 

シュミットは目の前の存在が人で無いことを悟った。そして坂本がその存在に対して答えを出し、周りのウィッチーズはその答えに体が強張る。

そんな中、宮藤は恐る恐るといった形でネウロイのコアに触ろうとしている。

 

「何をしている!宮藤!」

 

坂本が怒鳴る。怒鳴り声に気づいたのか宮藤は我に返り振り返る。

 

「坂本さん!」

「撃て!撃つんだ宮藤!」

 

坂本が宮藤に命令をする。しかし宮藤は撃たなかった。

 

「違うんです!このネウロイは…!」

「何をしている!いいから撃て!」

「駄目です、待ってください!」

 

あろうことか、宮藤はネウロイを背に坂本の方向を向いて両腕を広げる。まるで自分が盾になるように。

坂本はそんな宮藤の行動を見て、彼女がウィッチに意識を取り込まれていくのではないかと考え、懸命に宮藤をネウロイから引き離そうとする。

 

「惑わされるな!そいつは人じゃない!」

「違うんです…そんなことじゃ…!」

「撃たぬなら退け!」

 

坂本が何度も宮藤に言うが、宮藤は一向に退かない。それどころか、彼女は立ち止まったまま坂本に向けて何かを説得しようとするばかりである。痺れを切らした坂本はついに、宮藤の方向に向けて99式を構えた。

宮藤は思わずその銃口に硬直する。その時だった。

宮藤の後ろにいた人型のネウロイが、宮藤の下を離れた。

 

「えっ!?」

「おのれ!!」

 

宮藤は突然の行動に驚くが、坂本はそれを好機と見た。手に持つ機関銃の引き金を引きネウロイにその弾丸を浴びせる。

しかしネウロイはその攻撃をいともたやすく回避すると、反撃とばかりに両腕の部分を前に出し、その先から赤い光線を放った。

しかし今までネウロイと戦ってきた坂本だ。奇襲攻撃だろうと即座にホバリングに移り、光線が来る方向に向けてシールドを張った。

――誰もがそのシールドで攻撃を防ぐと思っていた。しかし、現実は違った。

坂本のシールドはネウロイの攻撃を受けたと同時に消えてしまった。まるでその姿は弾丸が紙を突き破ったように呆気なかった。

そしてその攻撃の一つが、坂本の持つ99式機関銃に命中した。機関銃は誘爆を起こし、坂本は爆発に巻き込まれた。

 

「あああああ!!」

「少佐!」

「坂本さん!」

 

悲鳴を上げ墜落していく坂本。その姿に隊員達は坂本を呼ぶ。しかし、坂本の足からユニットが外れてしまい、そのまま立て直すことはできなくなってしまう。

宮藤はその光景を見て真っ先に墜落していく坂本の下に向かい、坂本を空中で支える。遅れる形でペリーヌも坂本の所へ向かい、墜落していくのを阻止する。

シュミットは墜落していく傷だらけの坂本を見て、そして今度はネウロイの方向を向く。そして背中に背負っていたMG42を構え、そして突撃していく。

 

「この野郎!!許さねぇ!!」

 

シュミットはキレ、そして怒りに任せて攻撃をする。ここまで切れたのは、バルクホルンがネウロイの攻撃を受けた時以来だが、彼はまたしても目の前で仲間が墜とされる光景を見てしまい、怒りに感情が支配された。MGには強化を掛け、もはやネウロイの塵も残すまいという気迫だ。

その会話を基地で聞いていたミーナは焦ったように状況を聞く。

 

「どうしたの!?何が起きたの!」

 

ミーナの声を聞き答えたのは宮藤だった。

 

『少佐が…ネウロイに撃たれて』

 

宮藤の言葉を聞きミーナはスーッと血の気が失せていく。そしてそれに補足するようにバルクホルンも言った。

 

『今、シュミットが追撃しています。だけど、シールドを張ったのに何故…』

「バルクホルン大尉…追いなさい」

 

ミーナはバルクホルンが言い終える前に次の命令を下した。

 

『しかし少佐が…』

「追って!!命令よ!!」

『わ、わかった…』

 

バルクホルンは突然の命令に困惑するが、ミーナがまるで怒鳴るように言うので思わず返事をする。カールスラントのスーパーエースも、この時ばかりはミーナの言葉に勝てなかった。

そして命令をしたミーナは涙を流し、そして声を殺すように泣きだした。

 

「ミーナ中佐…」

 

後ろで見ていたサーニャは、そんな姿のミーナを見て何を言ったらいいのか分からなくなり、ただ名前を呼ぶことしかできなかった。エイラも横で同じように言葉を出せなかった。

そして現在、シュミットは一人でネウロイと戦っている。しかし、未だにネウロイに攻撃を当てられていなかった。

そして、対するネウロイも今までのネウロイほどの攻撃数を出さなかった。そのため、シュミットは段々違和感を感じた。

 

(何だこいつは!今までのネウロイに比べて戦意が無い!)

 

それでも攻撃の手を緩めないシュミット。しかし、その勝負は呆気なく決した。

シュミットの持つMG42が突如弾詰まりをしたのだ。

 

「何っ!?」

 

突然の弾詰まりにシュミットは気を取られMGを見る。その瞬間と同時に、ネウロイは高速で離脱していく。すぐさまシュミットはネウロイの行動に気づくが、既にその時には遠方に逃げられてしまった。

 

「待て!」

 

弾詰まりをしたMGを構えるが、ネウロイはそれでも止まることなく雲の中に消えた。サーニャのように周辺を感知できないシュミットでは、雲の中に逃げたネウロイを追跡することは不可能である。

シュミットはネウロイを逃がしてしまった事に苛立ちを覚えた。そしてホバリングしながら手に持つMG42に右こぶしを叩きつけた。

 

「畜生…!」

 

静かな怒りが、シュミットの中を駆け巡った。

 

-----------------------------------------------------------------------------

 

その後、坂本は501基地に連れられる。すぐ傍ではペリーヌが悲鳴のように坂本を呼んでいた。

 

「少佐、坂本少佐!私が…私が付いています!返事をしてください!」

 

懸命に声を出すペリーヌだが、坂本は目を開けない。

ペリーヌは目の前に立つ人物に顔を向ける。

 

「宮藤さん!」

 

ペリーヌは藁にも縋る気持ちで宮藤を呼ぶ。現在宮藤は坂本に向けて懸命に治癒を施していた。しかし、一向に坂本の傷は塞がっていかなかった。坂本が撃墜され負傷したことと、このままでは死んでしまうという焦りが宮藤の治癒のコントロールを阻害していた。

そしてしばらく懸命に治癒をするが、宮藤はフラフラとバランスを崩す。

 

「芳佳ちゃん!」

 

咄嗟にリーネが宮藤の体を支える。宮藤はずっと治癒を施していたため疲労が溜まってしまい、リーネにもたれかかる。しかしすぐに体を起こし、再び坂本に治癒を施し始める。

 

(坂本さん…!)

 

そして懸命に治癒を続ける宮藤だったが、とうとう意識が無くなってきてしまう。過呼吸の状態で再びふらついた宮藤を今度はバルクホルンが支える。

 

「宮藤ッ!」

「芳佳ちゃん!これ以上無理したら…!」

「放してください!放して!」

 

バルクホルンとリーネに抑えられるが、それでもまだ宮藤は治癒を施そうとしていた。その時だった。

 

「落ち着きなさい、宮藤さん!」

 

突然、宮藤を止める声が聞こえた。その声の下方向を全員が見た。

 

「ミーナ」

 

バルクホルンがその人物の名前を呼ぶ。そこに立っていたのは真剣な眼差しで宮藤を見るミーナだった。

そして、ミーナの横を医師が走り抜けていく。医師は坂本の乗る移送車を押していき、そして手術室に入っていった。

 

「少佐、少佐…」

 

ペリーヌはその扉の前で立ち止まることしかできなかった。彼女は手術室に入ることは出来ない。ただ扉の前で坂本の無事を祈るだけしかできなかった。

そして、宮藤は魔法力を使い果たし、気絶してしまった。

 

「宮藤!」

「芳佳ちゃん大丈夫!?芳佳ちゃん!」

 

-----------------------------------------------------------------------------

 

その後、気絶した宮藤は部屋に連れられて行く。手術室の前にはミーナとペリーヌが、手術の結果を待ち続けて扉の前の椅子に座っていた。

その時、その椅子、ペリーヌの横の空いているスペースに新たに一人座った。

 

「中佐、少佐の容体は…」

 

新たに座ったのはなんとシュミットだった。シュミットは座った後、ペリーヌを挟んでミーナに坂本の容体を聞く。

 

「…宮藤さんが手術の前に治癒を施したけど、それでも傷は塞がらなかったわ。後は手術に成功するのを祈るしかないわ」

「そうですか…」

 

ミーナの言葉を聞いてシュミットは少しショックを受けたように小さく息を吐き、そして正面を向いた。

しばらく三人の間には沈黙が流れるが、突然シュミットが声を出した。

 

「すみませんでした…」

「えっ?」

 

突然のシュミットの謝罪。ミーナとペリーヌは何のことか分からずシュミットに聞くように言葉を漏らした。

 

「あの時ネウロイを追撃したのに、結局撃墜することができなかった…本当に申し訳ありませんでした」

 

シュミットは立ち上がり、そしてミーナとペリーヌの前で頭を下げた。二人はそんなシュミットにどうしていいのかわからなかった。

その時、手術室の赤いランプが消える。そして扉が開いた。

全員が扉の空いた方向を見る。最初に声を発したのはミーナだった。

 

「容体はどうですか…」

 

ミーナは医師に聞くが、医師はまだ難しい表情をしていた。

 

「まだ、予断を許さない状態です」

 

医師から告げられた言葉に三人はショックを受けた。まだ峠を越えていないのだ。素直に喜べるなんてことはできない。

そして一番坂本を慕っていたペリーヌは、坂本のいる手術室内に向けて走り出した。

 

(すみません少佐、私が不甲斐ないばかりに…せめて、せめて少佐が回復してくれれば…)

 

残されたミーナとシュミットは、ただ立ったまま坂本の容体が回復するのを願うしかできなかったのだ。




シュミット君の後悔。負傷した坂本。一体どうなる501!
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。