ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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クリスマスです。ですが作者は通常運行です。
それでは四十一話どうぞ!


第四十一話「厳しい現実」

基地を案内された後、ひかりは格納庫に居た。同じように格納庫にはロスマンとサーシャ、そして時間の空いたシュミットも見学という形で居た。

そしてひかりはユニットを履き魔道エンジンを始動させる。

 

「魔法力混合比9:1に、回転数1500でキープ」

「はい!」

 

サーシャがひかりに指示をする。ひかりは回転数を上げるが、なかなかその回転数は上がらない。

 

「ベースとピークの回転数が1000も離れているわ!もっと制御に気を配って」

「酷いわね…」

 

ロスマンはそんなひかりを見てそう感想する。

 

「2000に上げて!」

「はい!」

 

サーシャは更に指示を出す。そしてようやく2000まで到着する。

 

「扶桑の新型…2000馬力で最高速度600キロ、航続距離は2000キロクラス。どんな飛行をするか楽しみです…」

「発進!」

 

サーシャは純粋にユニットの真価を楽しみにしている。そしてロスマンの指示で離陸をするひかり。しかし、その離陸はどうもおぼつかない。なんとも加速が鈍いのだ。

 

「2000まで上げたはずだけど?」

「加速が悪いですね」

「というより、まるで回っていない感じじゃないか?」

 

三人は口々に感想をこぼす。そしてロスマンは次の指示を出す。

 

「300に上昇。その後基地外周に沿って旋回してから滑走路上空を全速で通過」

『はい!』

 

ロスマンの指示にひかりは返事をし、そして旋回をする。が、バランスを崩してしまう。そしてユニットの片足からは僅かだが煙が出ている。

 

「扶桑の新型って欠陥品なの?」

「機体は悪くありませんね。魔法力がまったく足りていません」

「魔道エンジンにすら魔力がちゃんと回っていないとなると、魔力制御もあまり良くないんじゃ…」

 

ロスマンは中々酷い感想を言うが、サーシャは原因がひかりにあると言う。そしてシュミットは魔力がエンジンに行ってないのを見て、魔力の制御も良くないと判断する。

そしてひかりはロスマンの指示で強制的に陸に戻され、今度は計器でユニットを計測する。何人かの計測員が機械の周りに立ち、装置を操作する。

 

「じゃあ、全力で回してみて」

「はい!」

 

サーシャの指示でひかりは魔道エンジンを回す。しかし、回転数は高くない。エンジンの音もどこかとろい。

 

「どうだ?…って、見たままか」

「はい。やっぱり、このユニットの必要魔法力に足りてませんね…」

「おかしいな…ちゃんと飛べたのに…」

 

シュミットがサーシャに聞くが、サーシャの評価にひかりは何故と弱々しく言う。しかし、そんなひかりに現実を突きつける。

 

「飛べたんじゃない。飛ばせてもらっていたのよ」

 

ロスマンの言葉に更にひかりは落ち込む。

 

「そいつは孝美の新型ユニットだろ?」

 

と、計測中の四人の後ろから声がする。シュミットが振り返ると、管野がひかり達のほうに歩いてくる。

 

「素人じゃ無理だ、俺が使う!」

「駄目です!チドリはお姉ちゃんと私のです!」

 

管野は自分がそのユニットを使うと主張する。しかしひかりはそれに反論する。

 

「何がチドリだ!ふざけんな!」

「新型に関しては誰が使用するのが最適かいずれ指示します!」

「どうせ、こいつには無理だ!」

「そんなの分かりません!」

 

と、言い争いをしている中、シュミットは事の流れを静観することにした。そして管野はひかりに重要なことを告げる。

 

「エンジンも満足に回せねえくせに何言ってやがる?」

「それは…」

 

実際、目の前で見て叩きつけられた現実はひかりの口を止めるのに有効だった。ひかりは次の言葉を言うことができず固まってしまう。

 

「俺はもっと強くならなきゃいけないんだ!孝美は居ねえ、新しい巣だって出来てる。そんな状態でこんなど素人を入れても足手まといになるだけだ!」

 

管野はひかりにそう言って指を指す。しかし、その言葉をロスマンが止める。

 

「その判断はラル隊長が下します」

 

その一言により、管野は「チッ!」っと舌打ちをして格納庫から出ていく。ひかりは、足にはいているユニットを見ながら悔しそうに口をギュッと締める。

シュミットは一連の流れを見て、シュミットは評価をした。

 

(こればかりはやはり管野の言う通り…というか、実際問題私も同じ判断をしていたんだ。当然の結果か…)

 

と、ひかりには悪いが言っていることが余りにも正論であるため否定はしなかった。

そしてひかりはロスマンとサーシャに連れられて部隊長室に向かい、格納庫内はシュミット一人になる。

 

「しかし本来なら来るはずのウィッチが帰るとなる…そうしたらグリゴーリはどうなるのかね?」

 

そんな事を思っているときだった。突如、基地全体に警報音が鳴り響く。ネウロイが現れたという証拠だ。

すぐさまシュミットは自分のユニットを履き、出撃のスタンバイをする。丁度その時、格納庫に管野が入って来る。

 

「緊急出撃だ…ッ!」

 

管野はそう言いながら走って来るが、突然ひかりの紫電改を見て立ち止まる。その光景を見てシュミットは管野が紫電改を履くのかと考えたが、管野が履かずに自分のユニットに向かったのを見て、管野は意外と誠実な人間なんだなと判断するのだった。

そして格納庫内に他のウィッチ達が到着する。そしてユニットをそれぞれが履きながら、サーシャが指示を出す。

 

「敵は中型一機、グリゴーリから当基地に向かって高度3000、時速300で接近中。接敵まで15分。クルピンスキー中尉は私の僚機。管野、ニパ組が前衛。シュミットさんは遊撃。下原、ジョゼは待機」

「ひかりさん、貴方も出撃して!」

 

サーシャの指示で全員が配置される。シュミットは501の時と同様、遊撃の立場になる。そんな時、ロスマンがひかりを呼ぶ。ひかりはそれに返事をしユニットを履くが、管野は反発する。

 

「なんでこんなやつを…!」

「訓練の一環だ。私が許可する」

「…了解」

 

ラルの指示のため、管野も渋々と返事をする。しかしその様子は納得などとてもしていなかった。上官からの命令のため仕方なく返事をしただけだ。

そしてシュミット達は基地から発信をし、ネウロイの方角に向けて編隊飛行をする。

 

「ひかりさん。私の指示に従って、絶対に二番機位置から離れないように」

「はい!」

 

サーシャの指示に返事をするひかり。そして編隊を組んでいる時、シュミットはいつも通り強化した目でネウロイを第一に発見する。501の時からネウロイ発見は手慣れたものである。

 

「もう見つけたのですか?」

「はい。雲の中にいますが間違いありません」

「高度を上げるわ」

 

シュミットが先にネウロイを発見したため、サーシャは全員に高度を上げるよう指示を出す。これによりネウロイに対して優位に立てる位置取りができた。

 

「前衛は突入!」

『了解!』

 

サーシャの指示に管野と二パが急降下をする。そしてロスマンはひかりに聞く。

 

「ひかりさん、コアが見える?」

「…」

 

ロスマンが聞くが、ひかりはじっとネウロイを見たまま答えない。

 

「どう?見えるの?見えないの?」

「…見えません」

「…そう。もういいわ、下がってなさい」

 

そう言って、ロスマンもネウロイの攻撃に参加する。

シュミットはその会話が聞こえたことに戦闘中ながら考え事をする。

 

(コアが見える?雁淵は魔眼持ちってことか?)

 

そう考えながらも、引き金を引く手は緩めない。そんな時、ネウロイの攻撃がひかりに飛んでいく。

 

「危ない!」

「えっ?きゃああ!」

 

突然の声にひかりはハッとする。そしてネウロイの攻撃をシールドで防ぐが、その威力に後ろに弾き飛ばされる。幸い怪我はしていない。

 

「雁淵さん!」

「逃げろバカ!」

 

ロスマンと管野が呼ぶが、ひかりに新たなネウロイの攻撃が飛来する。ひかりはその速さについていけずシールドを張ることができない。そんな時だった。

 

「退け!」

 

突如、シュミットがひかりを弾き飛ばし、そしてそのまま自身も流れるように攻撃を回避する。そしてそのままシュミットはMG151をネウロイに向けて放ち、ひかりから注意を逸らす。

 

「シュミットさん!」

「てめえ死にてえのか!?ったく…ニパ!」

「了解!」

 

管野が怒鳴り声をひかりに言う。そして管野とニパはそのままネウロイに再び攻撃を再開する。

シュミットもネウロイに攻撃をする。

 

「くっ…!なに!?」

 

しかし、再び起こった。あの光景が。またしても世界がスローモーションに流れ、今度はネウロイが方向転換をする姿が確認できた。

 

(またこの光景…三回も起きたらもう偶然なんてものじゃない!)

 

シュミットはこの光景が偶然でないことを完全に悟った。そして、その光景に従う形で、銃口を向ける。

そして世界は再び戻る。速度の戻った世界で、シュミットの弾丸はネウロイの行動位置を先取りし、ネウロイはその地点に到着と同時に体が大きく削れる。

その光景を、後ろから見ていたロスマンは気づく。

 

「偏差射撃!?」

「えっ?」

 

ロスマンの言葉にサーシャも気づく。

そしてネウロイの体を削った攻撃により、ついにコアが露出する。そこにクルピンスキーが銃撃を行い、ネウロイは完全に消滅、後には破片だけが残ったのだった。

ひかりは、戦闘に参加することができずにただ見ているだけしかできなかった。しかし、彼女は先ほど助けてもらったシュミットの下に行く。

 

「シュミットさん。さっきはありがとうございました」

「気を抜くなよ。戦場ではちょっとの油断が死だぞ」

 

ひかりはシュミットの雰囲気の違いに戸惑う。朝見せたあのシュミットとは違い、今のシュミットは鋭い目でひかりを見ていた。

 

「では、管野さんとニパさんは周辺に残敵が居ないか確認。残りは帰投します」

『了解』

 

そうして、全員が散開をする。そんな中、ロスマンはひかりの前に止まっていた。

 

「貴方が見たのは、コアじゃなかったようね」

 

そう言って、ロスマンは基地に帰投した。残されたひかりはショックを受けた後、遅れて基地に帰投したのだった。

 

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基地に帰投中、シュミットは先ほどの光景について疑問を持っていた。

 

(やはりあの光景、もしかして強化を使った時に起きている?いや、今回は発動していなかった…それじゃあなんだ?)

 

シュミットは今まで起きたあの光景について思い出す。最初はあれらがすべて強化を使った時に起きていると考えるが、今回の戦闘では強化を使っていないときに起きている事を思い出し、考えを否定する。

そんな風に神妙な顔で考えているシュミットを見てか、後ろからロスマンが声を掛ける。

 

「何を考えているのです?」

 

シュミットは、ロスマンが教育係をしている上でこれについて何か知っているかもしれないと考え、思い切って聞くことにした。

 

「あの、先生」

「はい」

「基地に着いたら聞きたいことがあるのですがいいですか?」

「え、ええ…」

 

そう言って、シュミットは基地に帰投し、そして格納庫に到着する。

ロスマンは隊長に話があると言って、その後でいいか聞いたのでシュミットも格納庫で待つ。そんな時、ひかりは自分のユニットであるチドリの前に膝を抱えて座り込みながら、チドリに向けて話す。

 

「ねえチドリ…あの時見えたのは絶対コアだった。でもなんで見えたんだろう…」

 

ひかりは座りながらそう呟く。その後ろからシュミットが声を掛ける。

 

「雁淵、コアが見えたってことは魔眼持ちなのか?」

「いえ…でも確かに前はコアが見えたんです」

 

その会話を聞いてシュミットも考える。

そして離れた所ではラルとロスマンが話をしていた。

 

「どうだった?」

「残念ながら…」

「そうか」

 

ラルがロスマンに聞くが、ロスマンは首を横に振る。それを聞いてラルは特にショックをするそぶりをせずに聞いていた。

ラルはひかりを呼ぶ。

 

「雁淵ひかり軍曹」

「はい!」

『ラル隊長、ニパさんがまた墜落しました』

 

と、突然基地にアナウンスが聞こえる。声の主は下原だった。

 

『原因は冷却機に大量のイナゴが混入』

「なんだそりゃ」

「相変わらずついてないわね…回収班は?」

『墜落場所の特定が難しく、地上からの捜索には時間がかかりそうです』

「夕食には間に合いそうも無いな」

「いや、そこですか?」

 

ラルの言葉にシュミットはツッコむ。そんな時、ひかりが声を出す。

 

「私が助けに行きます!」

「貴方が行っても…」

「宜しい、許可する。現在、管野少尉がラドガ湖上空で待機中だ。それに同行しろ」

「はい!」

 

そう言ってひかりは離陸していく。その後ろ姿を見ながら、ロスマンとシュミットがラルに聞く。

 

「よかったのですか?」

「何も雁淵を出さなくても」

「思い出ぐらい持ち帰らせてやってもいいだろう…扶桑に返すための書類を頼む」

 

そう言って、ラルは格納庫を出ていく。

 

「それで、シュミットさん。聞きたい事って?」

「はい」

 

ロスマンに言われてシュミットが質問した。

 

「ネウロイとの戦闘中、突然景色が光に飲み込まれて、そしてスローモーションに流れる光景が最近起きるんです。そして、ネウロイがスローモーションに動いたり、移動する方向が分かったり…3回も起きたから偶然じゃないと思うのですが、何か知りませんか?」

 

シュミットはロスマンに聞く。教育係のロスマンが分からなければ正直お手上げとシュミットは考えていた。しかし、そんなシュミットの不安は当たらず、ロスマンは指を顎に当てて何か考える。

 

「…もしかして、人の声とかも聞こえたことは?」

「えっ?」

 

と、突然ロスマンが聞いてきたのでシュミットも思わず素で返事をしてしまう。しかしシュミットはその質問を聞かれて過去に起きたことを思い出し、その中で一回だけあったことを言う。

 

「二回目の時ですが、管野少尉の声が聞こえました…突然響くような声で。なんていうか、インカムから聞こえたのじゃなく」

「そう…」

 

そう言って、ロスマンは完全に理解したように呟いた。その反応を見てシュミットはロスマンが何かを知っていると理解し質問した。

 

「知っているんですか?」

「ええ。知っているわ…」

 

ロスマンは知っているというが、その表情はあまり言いたくなさげだった。

 

「シュミットさん、これから何があっても貴方はその()()に入らないように」

「な、どういう意味です?」

 

ロスマンに言われてシュミットは訳が分からず聞く。

 

「…シュミットさん。貴方のそれは『ゼロの領域』と呼ばれるものです」

「…『ゼロの領域』?」

 

シュミットは聞きなれない単語にただオウム返しをするしかできなかった。




ついに発覚したシュミット君の現象。一体どのような能力なのか。
ひかりちゃんって意外と生存率低い立ち位置ですよね。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!
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