ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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第四十七話です。オリジナル展開に走ります。どうぞ!


第四十七話「擬態ネウロイとテントウムシ」

翌日、二手に分かれて基地を出発し、シュミット達マーカーネウロイ撃退班はペテルブルクを飛行していた。

 

「いやぁ…ラル隊長はああいってたけど、街には小さい頃に一度買い物に来たぐらいで、本当は土地勘とかあんまりないんだよね」

 

と、自信なさそうに言うニパにシュミットは内心大丈夫かと思う。

 

「へー、何買ったんで…うわぁ!」

 

と、よそ見をしながら飛行していたひかりは、目の前に建物の尖塔が迫り、慌てて回避をしたひかりはバランスを崩す。

 

「大丈夫ひかり?」

「なんとか…」

「はぁ…」

「余所見をして墜落するなよ…」

 

二パが心配して駆け寄り、サーシャとシュミットはそんな危なっかしい動きのひかりを見て互いに心配になる。

その時、ひかりはサーシャに話しかける。

 

「あの、サーシャさん!」

「はい?」

「サーシャさんはこの街に詳しいんですか?」

 

ひかりは二パの言葉を聞いてからサーシャがこの街に詳しいのか気になり質問した。しかしサーシャの答えはひかりの思いにあまり期待できるものでは無かった。

 

「昨日も言ったけど、私は南部の生まれだから…この街には祖母が疎開する前に住んでいたらしいけど…」

「じゃあ大事な街ですね!」

「え?」

 

サーシャの説明にニパが割り込んで言う。

 

「頑張ってネウロイから守らなきゃ!」

「…どうせ無人なのだから、街を防衛する意味はありません」

 

しかし、ニパの言葉に対してサーシャの言葉は冷たかった。

 

「え?でもおばあちゃんの家が…」

「私自身何の思い出もありません。そもそも、この街に祖母を訪ねたことなど、一度もないのだから…」

「サーシャさん…」

 

サーシャの言葉にニパはショックを受ける。

 

「無人の街を守るよりも、ネウロイを倒すことこそウィッチの責務です」

「そ、そんな…」

「くれぐれもつまらないことに気を取られ、直したばかりのユニットをまた壊さないでくださいね」

「はい…」

 

サーシャのきつい言葉にニパは黙ってしまう。

しかし、今まで黙っていたシュミットが口を開いた。

 

「…街を守るのも大切な事だと思うが」

「えっ?」

 

突然の言葉に思わず驚きシュミットを見るサーシャ。横にいたニパとひかりもシュミットの方を見ると、シュミットは真剣な眼差しをしながら下の街を見ていた。

 

「疎開している人達が無事に戻ってくるようにネウロイから守り、そして街を解放する。ウィッチの大切な役目だと私は思うぞ?」

 

シュミットの真顔の言葉に全員が黙ったままになる。

しかし、その沈黙はあっという間に破られた。突然、ラルの言葉がインカムに流れる。

 

『第二貯蔵庫付近より、謎の電波の発信を観測班がとらえた。至急向かってくれ』

「了解!」

 

ラルが無線で緊急電を伝える。その言葉に全員が表情を引き締め、そして急行した。

シュミット達が到着したときには、第二貯蔵庫は滅茶苦茶に破壊されていた。砲撃ネウロイの攻撃によるものだ。

 

「間に合わなかった…」

「そんな…!」

 

ニパとひかりはネウロイの攻撃阻止が間に合わなかったことにショックを受ける。

 

「第一斑、砲撃ネウロイは発見できたか!?」

『駄目です、見つかりません!』

「散開して!まだ近くにマーカーネウロイが居るかもしれない!」

『了解!』

 

シュミットは砲撃ネウロイ攻撃班に無線を飛ばすが、ネウロイの位置を特定できなかった。サーシャはまだネウロイが離脱していないと考え第二班の散開を命令する。

そしてシュミットたちは散開する。

 

「くそ…何処に居る…って!」

 

と、低速ホバリングをしていたニパがよそ見飛行をして何かにぶつかる。

 

「いてて…もう、ついてないな…」

 

そう言いながらニパは自分のぶつかった銅像を見る。その時だった。

突然、銅像は形をぐにゃりと変形をさせ、そして形を変形、ついには黒と赤色だけになる。

 

「いた!化けてた!」

 

ニパはそのネウロイに発砲しながら報告をする。それを聞きシュミット達もネウロイの姿を確認した。

 

「擬態能力を持つネウロイ!?」

「化けたネウロイだと!?」

「追います!続いて!」

 

サーシャの指示で逃げるネウロイの追走劇が始まった。ネウロイはペテルブルクの街中を飛行する。その行動は高速で離脱したと思ったら突然路地に入ったりと、不規則な動きをしていく。

サーシャは先頭に立ちネウロイを追う。それに続いてシュミット。しかしその後ろをついてきていたニパとひかりは、突然のきつい軌道に付いていけず、店の看板や道に置かれていた木箱に激突してしまう。

 

「もう!何してるの!」

 

サーシャは後ろを見ながら二人に注意をする。対するサーシャは後ろを向いた状態でも激突する事無く華麗に飛行する。流石にその芸当はシュミットでも厳しく、彼は後ろを一瞬見ただけであり、声を掛ける余裕はない。尤も、彼はネウロイの方に必至なだけもある。

その後もネウロイとの追いかけっこは続く。サーシャとシュミットが機関銃で銃撃をするが、ネウロイはそれを狭いペテルブルクの道ですいすいと回避をする。ネウロイの方は自身の攻撃手段が無いのか、機関銃の攻撃に対して反撃してこない。

しかし、その動きは徐々に激しくなってくる。ネウロイは狭い路地をまるで隙間を縫うように移動していく。その動きに先頭で追いかけるサーシャは見失うことなくついていけるが、サーシャの後ろをついてきていたシュミットは、ついにネウロイの位置を把握できなくなってしまい、サーシャが行く道をついていくのでやっととなってくる。

 

「くそっ…サーシャさん、こっちはこれ以上追跡できません!上からネウロイを確認します!」

「わかりました!」

 

シュミットはサーシャのように迷わず移動できないと判断をし、街を上から見る形で追跡することにした。シュミットは自身が上からナビゲートする形で見ようと思い街の上に上昇し、街を見下ろすシュミット。しかし彼はここで判断を失敗したことを知る。

 

「よしっ…なにっ!?」

 

最初こそ大通りのような広い場所を飛行していたシュミットだが、ネウロイを追いかけていく内に狭い路地に入っていったため、上空から確認すると建物の影に隠れて道はほとんど見えなかった。おまけに周辺の建物は高さが同じの物が密集して並んでいるため、場所を把握しようにも困難になってしまった。その結果、上空から探すつもりが逆にネウロイを見失う結果になった。

シュミットは後悔した。

 

(くそっ…建物がこんなに密集していちゃネウロイが見えない…)

 

一方、唯一追跡していたサーシャはマーカーネウロイの動きに追いて行っていた。

そしてサーシャはネウロイが次に移動するであろう一に先回りすることにした。

 

「ここだ!」

 

そして一つの路地に迷いなく入った時、サーシャはある違和感に気づいた。

 

「…あれ?何で私、こんなに迷わず飛べるの?」

 

サーシャはそう思いながらも、正面に出会うネウロイに向けて発砲をする。それを受けてネウロイはすぐ脇にあった路地に入り、サーシャはそれに続いて路地に入る。

そして、サーシャは先ほどの違和感を更に感じることとなった。

 

「…えっ!?」

 

突然、自分の目の前に景色がフラッシュバックする。それは、小さい少女が今自身がネウロイを追いかけている道を走っている姿だった。そしてサーシャは()()()()が誰なのかを知っていた。

そして、そのフラッシュバックした景色に気を取られてしまい、ついにサーシャもネウロイを逃してしまった。サーシャは周辺をもう一度確認しネウロイを探すがその姿は無く、仕方なく高度を上げる。そしてそのサーシャにひかりとニパ、シュミットが駆け寄ってくる。

 

「サーシャさん!遅れてごめん!」

「すまないサーシャさん。上空からネウロイを追いかけるのを失敗した」

「ネウロイは!?」

 

ニパとシュミットはそれぞれの謝罪の言葉を並べ、ひかりはネウロイが何処に行ったかを尋ねる。しかし、サーシャはそれよりも気になることがあった。

 

「私、この街を知っている…?」

 

サーシャのつぶやきを聞き、聞いていた三人は首をかしげたのだった。

 

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「解析班によれば、砲弾はネウロイの体組織より生成されたもので、一日に三発が限界だと思われます」

「とりあえず、今日はもう安心か。とは言え、街に潜伏するマーカー役のネウロイが擬態するとは…また面倒だな」

 

隊長室内にロスマンの分析の言葉が報告され、ラルは厄介ごとだと言う。

あの後、ネウロイを発見することは出来ず、もう二発の砲弾を街に許してしまい、あえなく帰投しサーシャとロスマンは部隊長室に来ていた。

ラルはサーシャの表情が優れないのを見て声を掛ける。

 

「どうした?サーシャ」

「い、いえ。すみません、自分が仕留めてさえいれば…」

 

サーシャは自分がネウロイをしとめることができず街に続けて被害が出たことに、自分があの時に倒していれば、と後悔していた。

 

「まぁ、そういう時もある。明日も頼むぞ」

 

しかしラルはそんなサーシャに責任を押し付けることなく、明日も頼むと励ましの言葉を述べた。

その晩、サーシャはサウナの中、昼間に見た光景を考えていた。

 

「あの時のあれは…」

 

ネウロイを追いかけているときにフラッシュバックした景色。あれは自分の固有魔法で記録したものだと考え、サーシャは魔法を使う。しかし、いくら思い出そうとしてもその景色は思い出すことは出来なかった。

 

(…やっぱり、過去にあんな景色を記録した覚えはないわ。けど、なんで街のことをあんなにはっきり…?)

 

サーシャは何故か疑問に思い考え――そして首を振った。

 

(何を考えてるの?街のことよりネウロイを倒すことの方が先決よ!)

 

そう言って、自分に暗示をかけてサウナを出る。

そしてサーシャは格納庫に入ると、そこに意外な人物が見えた。

 

「ニパさん?どうしたのこんなところで?」

 

そうしてサーシャはニパのところに行くと、ニパは何故か狼狽える。

 

「それ、私のユニットでしょ?」

「なな、なんでもないよ?」

 

そう言う二パだが、サーシャは二パの向こう側に自分のユニットに書かれているあるものに目が行った。

 

「なっ、なにこの落書き!?」

 

そこにはサーシャのユニットの整備開閉扉の内側に、謎の物が描かれていた。それは確かに落書きに見えるものだ。

 

「あの、これは…」

「悪戯にも程があります!確かにニパさんには厳しく当たることもありましたが…だからと言って、こんなこと!」

 

サーシャは悲しそうに二パに訴える。

ニパは懸命に弁解をしようとする。

 

「待ってよ!違うんだ、これは…」

「私だって別に好きで厳しくしているわけじゃないのに!でも、私は戦闘隊長だから皆のことを…」

「それを分かっているから、ニパも恩返しをしたかったんだ」

 

サーシャはそんな二パに目に涙を浮かべながら言う。その時だった。サーシャとニパのいる位置と反対側のユニットの位置から声がし、二人は振り向く。

そこには、自分のユニットを手で整備しているシュミットの姿があった。尤も、ニパは最初から共にいたため分かっていたが、サーシャはシュミットの存在に気づいていなかったため驚いたように見ていた。

 

「シュミットさん…」

「どういうことです…?」

「二パは自分のユニットに、サーシャのお守りの言葉が書かれていたのを見て、自分もお返しにそこにテントウムシの絵を描いたんだ」

「て、テントウムシ?」

 

シュミットにそう言われてサーシャは自分のユニットに描かれているテントウムシを見る。形は不格好ではあるが、背中に七つの黒丸に、足が六つ。言われてみればテントウムシの形をしている。

サーシャはそれを聞いてニパに聞いた。

 

「ほ、本当なの?」

「え?う、うん…」

 

二パが返事をする横で、シュミットが油まみれの手を拭きながら説明し始めた。

 

「ヨーロッパではテントウムシは幸運を運んでくる縁起物、ニパは部隊のことを思ってくれているサーシャに幸運がやってくるようにとテントウムシをお返しで描いたのさ…まぁ、ニパの絵心が無いのが誤解の原因だったがな」

「シュミットさん、それは酷いよ!第一、最初から説明したらこんな誤解が生まれなかったのに!」

「いや、だってサーシャさん私の存在に気づいてない様子だったもん…」

 

シュミットは説明の後に絵のことを言い、言われたニパはへこみながら反論するが、シュミットはシュミットで自分の存在が無かったことに対するショックを受けへこんでいた。

そんな光景を見ながら、サーシャは涙を一つ、静かに零した。それは悲しいからでは無かった。部隊の皆に、自分の思いがしっかりと届き、そして逆に、自分のことを思ってくれている仲間がいるという嬉しさの表れだった。

 

「…バカ」

 

目の前でへこんでいる二人に向けて、サーシャは一言、そう呟いたのだった。




シュミットいるなら誤解はすぐ解けるんじゃないかと思い、このような展開になりました。しかしシュミット、久しぶりに影の薄さを発揮してますね。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!
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