ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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調子が良かったのでもう一話投稿することにしました。どうぞ!


第四十九話「サトゥルヌス祭開催前日」

ネウロイによるペテルブルク砲撃から数週間後、シュミットは朝早く目覚めて外を見ていた。

 

「…寒いな」

 

肌にしみる寒さに震えながら、シュミットはペテルブルクの街を見る。季節は12月に入り、日の出の遅いペテルブルクの街は無人の為暗く沈黙していた。

シュミットはそんな中、手前の川が凍っているのに気づく。昨日見た時はその川は凍っていなかった。

 

「なるほど、寒いわけだ」

 

そう納得しているとき、シュミットの右側から声が聞こえる。

 

「あー!」

 

突然の声にシュミットが見ると、そこには朝早くから走り込みを終えたひかりが立っていた。

 

「川が凍ってる!」

 

ひかりは川が凍っているのを見て目をキラキラさせている。そして、そのまま凍っている川に手を出し、コツコツと叩き、再びわくわくとする。

シュミットはそんなひかりに近づく。

 

「おはよう、雁淵」

「あっ、おはようございます!」

 

シュミットが挨拶をすると、ひかりはそれに気づき挨拶を返す。

その時、新たな声が二人の元に届く。

 

「おはよう、ひかりー!シュミットさーん!こっちこっち!」

 

突然呼ばれて声のした方向を見ると、凍っている川の上にニパが手を振っていた。その横には管野が厚着をしながら何か道具を準備していた。

 

「ニパさんと管野さん?」

「何をしているんだ?」

 

ひかりとシュミットは不思議に思い顔を見合わせた後、ニパ達の方向に歩いていく。

そして二人の元に到着するが、凍った川の上は先ほどより寒さが増し、ひかりは両肘をつかむ。

 

「さ、寒いですね…」

「川が凍ってんだ、寒いに決まってんだろ」

 

そう答えたのは管野だった。管野は厚着して着ぶくれいるにも関わらず寒さで震えていた。それに対してニパは何も着ずに平然としている。

 

(流石スオムス人…いや、だとしても足を出している状態で普通寒くないなんて無いだろう…)

 

と、冷静に分析をしているシュミットであるが、あのような下半身をして寒さを感じないのをシュミットは不思議に思ったのだった。

 

「ネヴァ川は毎年12月には凍るんだ。今年は遅いくらいだよ。暖冬かな?」

「どこが暖冬だ!?これだからスオムス人は…」

「これで暖冬かよ…」

 

ニパの言葉に管野とシュミットは思わずツッコむ。そんな中、ひかりは質問をした。

 

「で、何をするんですか?」

「せっかく川が凍ったんだし、そりで滑って遊ぼうかなって」

「意味わかんねえよ!」

 

ひかりの質問にニパが答え、管野がさらにツッコむ。最近ではよく見るお馴染みの三人の姿だ。

そんな中、ひかりは日の出ていない東の空を見る。

 

「最近、日の出がすっごい遅いですね」

「今のペテルブルクは日の出が10時、日没は午後4時だからな」

 

ひかりの言葉に管野が説明する。それに続くようにシュミットも言う。

 

「今北半球は冬、そんな中でも北に近い地方は太陽があまり当たらないんだ」

「それにスオムスの北の方は極夜って言って、一度も太陽が昇らなかったりもするんだよ」

「えーっ!?いつ起きたらいいかわかんなくなりそう」

 

最後のニパの説明を聞きひかりは驚く。

 

「さて、そりで遊ぼう!」

「んじゃあ私は離れたとこで見ているよ。4人もそりには乗らないだろうし」

 

そう言ってシュミットは川から基地の方向に歩いて行く。

そしてそりで滑っていく三人。後ろから押しているのは、じゃんけんで負けた管野である。管野は使い魔を出すと全力でそりを押し、二人が乗っているそりを全力で押す。

そしてある程度進んでから停止し、またじゃんけんをする。今度はひかりが負け、そりを押すことになった。

そんな光景をシュミットは温かい眼差しで見ていた。

 

「…いいな、こういうのも」

 

そう思っていた時だった。シュミットはそりの進んでいる先に薄くなっている氷があるのに気づく。そして同時に、後ろで押していたひかりがこけてそりから離れてしまい、そりはブレーキを失った状態でその地点に突っ込んでいった。

そして案の定、薄い氷は二人乗りのそりの重さに耐えきれず崩壊し、二人は冷たいネヴァ川の中に落っこちて行ったのだった。

 

「あらら、大変だ」

 

と、割と呑気なことを言うシュミットだった。

 

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「風邪?」

「はい。応急処置はしておきましたので、明日には熱も下がると思います」

 

食堂の席、ジョゼが説明する。

あの後、シュミットに引き上げられた二人とひかりはサウナに向かい暖を取ったものの、ひかりが熱を出してしまいサウナの中で倒れてしまった。そしてその後、ジョゼの治癒魔法による応急処置を受けて、現在に至るのだ。

 

「直ちゃんたち、ひかりちゃんを凍った川に落としたって?」

「落とされたのは俺らだ!」

 

クルピンスキーが茶化し、管野は被害者は自分達だと主張する。

 

「あの…ウィッチってあんまり風邪とか引かないですよね…?」

「ん?そうなのか?」

 

ニパの言葉にシュミットは知らないため疑問に思う。しかし、その説明はロスマンとサーシャがした。

 

「ええ。ウィッチは魔法力で守られているから、怪我や病気に罹ることは珍しいわ」

「ただ、肉体的、精神的な疲労がたまると、ウィッチでも病気になることがあります」

「過労!?」

 

説明を聞き二パが驚く。そしてコップを両手で持ったまま下を向く。

 

「…やっぱり私が朝から連れ回したせいで…」

「それだけが理由じゃないわ。ひかりさんは元々魔法力が強くないの」

「最近、厳しい任務が続いたことが一番大きいと思います。もう少しこちらも考慮すべきでした」

「まぁ、全くの新人がここまで最前線で戦ってきたんだ。どう足掻いても疲れない方がおかしな話さ」

 

二パの言葉をロスマンはそれが一概では無いと言い、サーシャとシュミットはそうなった原因となる点を挙げた。

 

「なに、風邪程度で済んでよかった」

 

そんな中、ラルは表情を変えずにそう言い、カップの中の紅茶を飲む。

しかし、ニパはそれでもひかりが心配であり、カップの中の液体に映る自分の姿を眺めていた。

 

「ひかり…」

 

その時、台所から下原が鍋を持って現れる。

 

「お食事、出来ましたよ」

 

そう言って、鍋の中身をそれぞれの皿に分ける。

 

「下原ちゃん…なんだい、これ?」

 

クルピンスキーは出された料理を見て質問をする。

他の隊員も、食べながらその料理を追求する。

 

「ニョッキに似てるわね…これ、ちゃんと煮えてる?」

 

ロスマンが食べながら言う。

 

「ピエロギ…じゃないよね?」

「具の無いぺリメニ?」

「食べたことのない料理だ」

「うーん…?」

 

クルピンスキーとサーシャ、シュミットも言う。ジョゼはその料理を食べて色々考えている。しかし、誰一人正解では無かった。

しかし、この答えは管野が知っていた。

 

「あ、これ水団か?」

「すみません。今ある食材ではこれが精一杯で…」

 

下原は申し訳なさそうに言う。現在502基地は深刻な食糧問題に立たされているようだ。

その後、ブリーフィングルームに熱を出したひかり以外のウィッチが集められた。

 

「現在、ムルマン港からの補給が立たれた上に、先日の砲撃で弾薬や燃料の集積所と、食料貯蔵庫も破壊されています」

「このままじゃ基地機能が崩壊するな…」

 

ロスマンが前に立ち説明をし、それに対しシュミットが現状が続いた先のこの基地の状況を冷静に分析する。

ラルはロスマンに聞く。

 

「スオムスからの援軍は?」

「頼んではいますが、あちらも残っている補給線は北海経由の陸路のみで余裕がないそうです」

「現在補給線奪還作戦を立案中ですが、とにかく食料の備蓄が足りません」

 

サーシャが付け加えるように説明する。それを聞き横に座っていたクルピンスキーが肩を落とす。

 

「しばらくはずっとあれ食べることになるのかー・・・えっと…チントン?」

「水団だ」

 

クルピンスキーのミスに管野がツッコむ。

 

「現状打開策はなし、補給が改善するまで待つしかないということか」

「明日は基地恒例のサトゥルヌス祭が予定されていますが…?」

 

ラルがそう結論付ける中、ロスマンが聞く。しかし、ラルの答えは決まっていた。

 

「今年の祭りは中止だな」

「えええええっ!?」

 

ラルの中止の言葉を聞き、驚いたのはなんとニパだった。ニパは立ち上がるが、周りがそんなニパを黙ってみているのを感じ、すぐに座る。

 

「あっ…いえ…なんでも、ありません…」

 

そうして小さくなるニパであった。

 

-----------------------------------------------------------------------------

 

「何が、えええええっ、だ。どうせ祭りでひかりを喜ばせたい、とか考えてたんだろ」

 

ブリーフィングが終わった後、廊下で管野が後ろに手を組みながらニパに言う。

 

「わかってるなら賛成してよ」

「物資も補給も無いから無理だって」

 

二パは賛成が欲しかったようだ。しかし、管野は賛成しようにも物資不足の現状から無理と判断し、賛成しなかったようだ。

その後、二人は部屋で寝ているひかりのところへ行き、ベッドの前に椅子を二つ並べて座る。

二人が座って数分後、ひかりはうっすらと目を開けた。

 

「あ、起きた」

「ひかり!」

 

管野はひかりが起きたのに気づき、ニパはひかりが目覚め安心したように声を出す。

ひかりは顔を二人の方向に向けた。

 

「あれ?二人ともどうしたんですか?」

 

ひかりは何故自分が寝かされているのかわからず、そして同時に何故管野とニパが部屋にいるのか気になって質問した。

そして二人はひかりに説明した。

 

「えっ!?私、風邪で倒れちゃったんですか?」

「ごめん、ひかり…私がそりなんかに誘ったせいで…」

 

ひかりは自分が倒れたことに驚く中、ニパは自分のせいでひかりが風邪を引いたという罪悪感から謝罪する。

しかし、ひかりはそんなニパに驚きながら違うと否定する。

 

「い、いえ、私の気が緩んでたせいです」

「ひかりのせいじゃないって!」

 

ひかりが否定するが、ニパはそれでも引かない。しかし、ひかりは自分にかかっている布団を手でぎゅっとつかみ説明する。

 

「ただでさえ役立たずなのに、風邪引いて倒れちゃうなんて…」

「早く元気になって、また一緒に飛ぼう!」

 

二パが言うと、今度は管野が立ち上がる。そして、起き上がっているひかりのおでこに人差し指を出し、そして突く。ひかりは突然突かれて後ろに倒れ、布団に寝る。そこに、管野が掛け布団を体に被せる。

 

「燃料不足で基地内の暖房も止まってんだ。暖かくしてさっさと寝ろ」

「管野さん…」

 

そう優しく言う管野に、ひかりはそんな管野の温かさを感じ、再び眠りについたのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「やっぱりサトゥルヌス祭はやろう」

「言うと思ったぜ」

 

その後ニパは訓練のランニング中、管野に再び提案した。すると、管野はそう言うと分かっていたようで、二パの言葉を聞いて反応した。

 

「私、ちょっとでもいいからひかりを元気づけたい。この基地に来て良かったって、そう思ってほしいんだ」

 

ニパとしては、ひかりをどうしても元気づけたくてやりたい様子である。

 

「ったく。でも隊長が中止しちまったしな…そもそも基地には水団くらいしかねえぞ」

「それでも出来るだけのことはやってみようよ」

「んなこと言ってもなあ…」

 

管野としてもその案に乗りたいところではあるが、色々と制約がかかってしまう状況下の為、どうしたらいいんだとニパに聞く。

 

「そうだ!他の皆にも相談してみよう!」

 

そうして、最初に二人は一番信用できるサーシャに聞くことにした。

格納庫に着くと、そこにはサーシャだけでなくシュミットも居た。尤も、シュミットはまた自分のユニットに手を加えている様子だった。

そしてニパはサーシャに相談をした。

 

「なるほど、ひかりさんの為にサトゥルヌス祭をしたいんですね」

「隊長には秘密にしてもらえますか?」

 

二パがサーシャに頼むと、サーシャは笑顔を返した。

 

「うふふ、了解。ひかりさんに冬じいさんと雪娘がプレゼントを持ってきてくれればいいのにね」

「冬じいさん?」

「雪女がプレゼント?」

 

サーシャの言葉に二パと管野は聞きなれない単語を聞きハテナを浮かべる。そんな二人にサーシャが説明する。

 

「雪娘。オラーシャ地方の言い伝えなのよ」

「ふーん」

「あの!私たちで用意できそうなプレゼントって何かないですか?」

 

ニパは自分たちでひかりに何かプレゼントできるものは無いかと聞く。そしてサーシャは考え、そして意見を出した。

 

「そうね、うーん…昔、朝起きたら枕元に木彫りの人形が置いてあったことがあってね…きっと、おばあちゃんが作ってくれてたんだと思うけど、嬉しかったな…」

「それ、明日の夜までに作れます?」

 

ニパはサーシャに聞く。

 

「ええ。一日あれば大丈夫。準備しておくから、明日朝から一緒に作りましょう」

 

そうして、今度はシュミットに質問した。

 

「そうだな…うちの国じゃ、モミの木に飾り付けをしたりしたな」

「モミの木?」

 

二パは質問する。

 

「あぁ、元々は『ユール』って言う祭りで使われたのが最初で、モミの木は生命の象徴なんだ」

「へー」

「雁淵に元気になってほしいなら、生命の象徴でもあるモミの木を準備するのもいいな」

 

そうして、シュミットからも新たに案が出た。

その後、ニパと管野は基地のウィッチ達のところへ行き、サトゥルヌスの相談をしていったのだった。




というわけで、秘密裏にサトゥルヌスを開催することになった二パ達でした。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!
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