ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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というわけで第五十二話です。OVAの話です。どうぞ!


第五十二話「ペテルブルクの朝」

サトゥルヌス祭が行われた次の日、シュミットは自分の部屋で目を覚まし起き上がる。

 

「ふぁ~あ…」

 

大きな欠伸をしながら伸びをするシュミット。そして眠たそうに瞬きを数回した後、ふと横から気配を感じて見る。

 

「ん?…わっ!?」

 

シュミットは自分の眠っているベッドに居る人物を見て驚く。なんとそこにはサーニャが眠っているではないか。

 

「サーニャ…また寝ぼけて潜り込んだ…ん?」

 

シュミットはサーニャが恐らく寝ぼけてやってきたと思いふうと息を吐くが、サーニャは夜間哨戒に昨日行っていないこと思い出し、じゃあ何でいるんだと考える。しかし、少し考えてシュミットは思考を切った。

 

「まぁ…いいか」

 

そう言って、シュミットはサーニャが風邪をひいてはいけないと掛布団をしっかりとかけてあげる。

 

「全く…下手したら襲っちゃうぞー…」

 

シュミットは小声で言うが、サーニャはそれでもぐっすりと眠っている。そして自分の発言に今度は邪な雰囲気を感じて慌てて頭を振る。

 

「いかん…そんなことしたら駄目だ…」

 

そう言って懸命に振り払う。しかし、再びサーニャの寝顔を見てしまうシュミット。

その時だった。突然、部屋の扉が「バンッ!!」という大きな音を立てて開いた。

 

「わっ!?」

「サトゥルヌス祭の次は年末大掃除!年越しまであと一週間、基地中ピカピカにしちゃうんだから!」

 

シュミットが驚きで振り返ると、そこにはジョゼがモップを片手に立っていた。そして同時に彼女のテンションがどこかおかしいのに気づくシュミット。

 

「ジョゼ、一体どうした…」

「ほえ…?」

 

シュミットはいつものテンションとは違うジョゼに戸惑いながら聞く。サーニャは騒がしさに目を覚まし、寝ぼけた目でジョゼを見ていた。

 

「さあ、着替えが済んだら出てってください!」

 

そうして、シュミットとサーニャは服を着替えさせられ、部屋を追い出される。そしてジョゼは部屋の扉を閉めたのだった。

 

「ま、まるで嵐のようだ…」

「眠い…」

 

シュミットは一連の光景を見てそう称し、サーニャは眠たそうに扉を見たんだった。

 

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「ったく、502にも変な奴が居るんだな」

 

エイラは後頭部で手を組んで歩きながらニパに話す。エイラも先ほど同じようにジョゼに部屋から追い出され、現在ニパと共に基地の廊下を歩いていた。

 

「ジョゼさんって普段は静かな人なんだけど、年末の大掃除だけはやる気が出過ぎて人が変わっちゃうんだ」

「はぁ…勘弁してくれよ」

 

ニパに説明されてエイラはぐったりとした様子で溜息を吐く。

 

「イッルもサーニャさんも休暇なんでしょ?年明けまでこっちに居るの?」

「うーん…どうしようかな~…」

 

そう、二人は現在休暇中であり、502に滞在しているのだ。エイラはニパに言われてどうしようか頭の中で思う。

その時、エイラは正面に見える人物に気づいた。

 

「あっ」

 

エイラが立ち止まって見た先には、窓の外を見ているサーニャとシュミットが居た。

 

「サーニャ」

 

エイラはサーニャに気づいて歩み寄っていく。

 

「サーニャ」

「あ…」

 

エイラに呼ばれてサーニャは気づく。同時に、シュミットもエイラ達に気づき挨拶をする。

 

「おはようエイラ、ニパ」

「おう。何してるんだ?」

「街を見てたの」

 

エイラの質問にサーニャは返事をした。そんな中、ニパはふと気になる。

 

「あれ?サーニャさんって、ペテルブルクに来たことあったっけ?」

「ううん。ただ、大きいけど寂しい街。そう思って…」

 

サーニャはペテルブルク出身ではないが、巨大な街に見合わず静かなところから、心の中で寂しい街だと思い眺めていたのだ。

 

「まぁ、皆疎開しちゃって誰も住んでないからね」

「でも、いつかきっと皆この街に戻ってこれるよね?」

「サーニャ…」

 

二パの説明に、サーニャは戻ってこれるという希望を求める。

そんなサーニャに、今まで黙っていたシュミットが口を開いた。

 

「ああ、きっと戻ってこれる。私達ウィッチ達が今戦っているんだ。絶対解放してやるさ」

 

そうシュミットはサーニャに優しく言った後、再び沈黙している街を見る。しかし、その視線はどこか遠くを見ている様子だった。

 

(そうだ。ネウロイを倒して、絶対に街を解放する。それがウィッチの役目なんだ…)

 

それがいつになるかわからない。しかし、シュミットは必ず自分が戦う間に街を解放してやると心に誓っていた。

その時、エイラは気を聞かせようとサーニャに話しかけた。

 

「よし。ちょっと街に行ってみようか」

「え?」

 

突然の言葉にサーニャは驚く。

 

「誰も居ないけどさ。久しぶりのオラーシャの街を散歩しようぜ。…ふ、二人っきりで…」

 

エイラは街に散歩に行こうと誘う。そしてちゃっかり二人で行こうと言い、同時にシュミットの顔色もうかがっていた。

 

「そうだな…サーニャ、一緒に行って来たらどうだ」

「え?」

 

そして、なんとシュミットは意外と呆気なく承諾した。サーニャはシュミットに突然言われると思わず驚き、エイラはそんなシュミットに、内心驚いていた。

無論、これには理由があった。

 

「久しぶりのオラーシャの街なんだ。次の機会に取っておく必要などない」

 

そう、シュミットはサーニャが久しぶりにオラーシャに来ているのだ。せっかくだから故郷の街に行く方がいいと思っての計らいだったのだ。

しかし、そうは上手くいかない。

 

「リトヴャク中尉、ユーティライネン少尉、ここに居ましたか」

 

突然後ろから声がして振り返ると、そこにはラルとロスマンが居た。

 

「すまんが、少し時間をもらえるか?」

「はい。何でしょうか?」

「スオムス方面の戦況について聞かせて欲しくてな」

「現場の生の声が知りたいの」

 

ラルとロスマンはスオムス方面の状況については報告でしか知らず、現場を知っているサーニャ達に質問する。

それを聞きエイラは考える。

 

「あー…えっとだな…その…なんか色々大変…?」

「それはわかるけど…」

「それじゃあ大変な事しかわからないぞ…」

 

エイラの答えにロスマンとシュミットはガクッとする。

しかし、サーニャはしっかりと説明を始めた。

 

「正直、あまり余裕はありません。この時期、周辺の湖も凍り付くため陸戦ウィッチの稼働率も損耗率も通常より高いです」

「なるほど。ラドガ湖が凍結したうちとしても他人事ではないか」

 

サーニャの説明を聞きラルは502の状況と照らし合わせる。

 

「その分、空はハンナ大尉が中心になって凌いでくれています。おかげで、私やエイラもここに来られました」

「流石はハンナ・ウィンド大尉ね。噂は聞いてるわ」

「そっか!やっぱりハッセはすごいなー」

 

ハンナ・ウィンドはエイラに続くスオムス№2のエースであり、「射撃のハンナ」と称されるエースウィッチだ。ロスマンとニパはそのハンナの活躍を聞き、凄いと称賛する。

 

「中尉、立ち話もなんだ。続きは隊長室で」

「わかりました」

「えっ!?ちょ…サーニャ!」

 

ラルに言われて付いていくサーニャを見て、エイラは手を伸ばして反応した。

 

「ちょっと行ってくるね。街にはエイラだけで行ってきていいから」

「いってらっしゃい」

 

サーニャが行くのでシュミットは「いってらっしゃい」と言う。それを聞き、サーニャはシュミットを見て少し微笑んだ後、ラルと共に部隊長室に行くのだった。

そんなサーニャの言葉に、エイラは困った顔をする。

 

「いや、一人じゃ意味ないだろ…」

「じゃあ私が付き合ってあげるよ。けど一人で行くのが寂しいなんて、いつまでたってもイッルは子供だな」

「いや、そうじゃないよ…」

 

ニパがそう茶化す。彼女は何故エイラが誘ったのかを理解しておらず、シュミットはそんなニパに突っ込むのだった。

そしてエイラはまるで子犬のようにサーニャを見て、

 

「サーニャ~…」

 

と、言ったのだった。

 

-----------------------------------------------------------------------------

 

「昨日は邪魔が入ったけど、今日こそは…!」

 

12月27日、エイラは歩きながらそう決意する。エイラはサーニャを街に行くのに誘えなかったことを諦めておらず、今日こそは街に行ってやるという意気込みで歩いていた。

その時、前方の角から人影が現れる。

 

「あっ」

「やあ、エイラくん。丁度良かった」

 

前方から現れたのはクルピンスキーだった。そして何故か手には花束を持っている。

そしてクルピンスキーは言った。

 

「サーニャちゃんの部屋を教えてほしいんだけど」

 

その言葉を聞き、エイラは嫌な予感がした。

 

「サ、サーニャになんか用か?」

「かわいい子をデートに誘うのに理由がいるのかい?」

 

その言葉を聞き、エイラの嫌な予感は確信に変わった。

 

「サーニャに妙な色目使うな!」

 

エイラがそう噛みつく。すると、今度はクルピンスキーはエイラの顎を取り上から眺める。

 

「ふふ…」

「うっ!?」

「なら…エイラ君に使うのならいいのかな?」

 

クルピンスキーはエイラを見ながらそう、甘い声で囁く。それを聞き、エイラは完全に目の前の人物に危険色を表した。

 

「お、おおおおおお前見境ないのかヨ!」

「フッ…」

 

エイラが言うとクルピンスキーはニヤリとする。そして、

 

「無いね!」

 

と、堂々と宣言したのだった。

そしてエイラは急いでサーニャの下に走り出した。

 

「逃げろー!サーニャ!危ない奴がいるぞー!」

「ハッハッハッハ!危ない恋こそ燃えるものだよ!サーニャちゃーん!!」

「シュミットー!サーニャが危険だー!」

 

そうして二人はともにサーニャの下に向かう。エイラはサーニャを守ろうと、クルピンスキーは全力でデートに誘おうと。

そして、二人はサーニャの部屋の扉を開けた。

 

「サーニャちゃん!」

「あっ」

「ん?」

 

そして二人はサーニャを見て同時に止まる。なんとそこには下着姿のサーニャが居たのだ。サーニャは着替えの途中だったのだ。

そしてサーニャは二人に気づき顔を赤くした。

 

「っ!!エイラ…!」

 

そしてサーニャはエイラを睨む。

 

「ち、違うんだ!これには訳が…」

 

そんなサーニャにエイラは慌てる。しかし、そんな空気を壊すかの如く話し始める人物がいた。

 

「これはこれは…まさにオラーシャの新雪の如き…」

「え?」

 

クルピンスキーは片膝をついて両手に花束を持ち、サーニャを見ながら告白をしていく。

 

「汚れの無い…美しい…」

「サーニャをそんな目で見んナー!!」

 

しかし、そんなクルピンスキーの両目を隠してエイラが懸命に静止をする。

 

「独り占めなんてずるいよ」

「ぐぬぬ…」

「ぬぬぬ…」

 

クルピンスキーはそれでもサーニャに歩み寄っていく。エイラはそれを懸命に止める。

両者互いに引かない。しかし、そこに新たに人が現れた。

 

「一体何を騒いで…!サーニャ!?」

「きゃ!?」

「すまない!」

 

なんと騒ぎを聞きつけてシュミットがやって来てしまった。そして、シュミットはその目でサーニャの下着姿を完全に見てしまった。そして、サーニャもシュミットに気づいて顔を赤くしながら悲鳴を上げて胸元を隠す。シュミットもサーニャの下着姿を完全に見てしまい、頬を染めて急いで目を逸らした。

そんな中、エイラとクルピンスキーを止める人物が現れた。

 

「何をしてるんですか!」

「っ!?」

「サ、サーシャちゃん!?」

 

シュミットのすぐ横で、サーシャが腰に手を当てながら二人を見る。元々サーシャはシュミットと共に居たため、すぐさま騒ぎを聞きつけてやって来たのだ。

 

「なぁ、こいつどうにかしてくれヨ!」

「ウィッチ同士、友情を深めようとしただけです。大尉殿」

 

エイラはクルピンスキーを止めてくれとサーシャに援軍を求め、クルピンスキーはこれはあくまでスキンシップだと言い張る。

そんな様子にサーシャは溜息を一つ。

 

「はぁ…ホントにもう…」

 

そう言ってサーシャは部屋に入ると、ベッドの上に畳んであるサーニャの着替えの服を手に取り、それをサーニャの肩にかける。

 

「シュミットさん、もう目を開けていいですよ」

「あ、ああ…ありがとうございます、サーシャさん」

 

サーシャに言われてシュミットは逸らしていた目を開ける。

そんなサーシャにサーニャも礼を言う。

 

「ありがとうございます、ポクルイーシキン大尉」

「サーシャで構いませんよ。それとも、愛称が似ていると呼びづらいですか?」

「いえ。じゃあ私のこともサーニャって呼んでください」

「ありがとう」

 

サーシャはサーニャに言われてありがとうと言う。そして、すぐにクスリと笑う。

 

「でも、ふふ。なんだかサーニャさんは他人とは思えませんね」

「私達、似てますか?」

「そうであれば光栄です」

 

そう言って互いに笑顔になる二人。そんな様子を、黙って見ていたエイラとクルピンスキー。

その時、サーシャはサーニャにあることを聞いた。

 

「ところでサーニャさん、少しユーティライネン少尉をお借りしたいのですが…」

「私?」

 

名前を呼ばれてなんだろうと思うエイラ。

 

「はい、いいですよ」

「ええっ!?」

 

そしてサーニャはあっさり承諾。その余りの速さにエイラは驚く。

 

「ありがとうございます。では行きましょうか、少尉」

「ど、どこ行くんだヨ…?」

 

そしてサーシャはエイラに同行を願うが、エイラは何処に行くのかわからず聞く。

 

「いい機会ですので、少尉の飛行技術を教授していただこうかと。恥ずかしながら、502には問題児が多くて…」

 

そう言って困った様子のサーシャ。

 

「さあ」

「えっ?」

 

そしてエイラはサーシャに手を取られる。

その様子を見てクルピンスキーはチャンスと言わんばかりに言う。

 

「頑張ってね、エイラ君。サーニャちゃんのことは僕に任せて…」

「任せて?」

 

と、突然クルピンスキーは恐怖感の混じった言葉を聞き固まる。そして油が切れた機械のように首を動かすと、そこには何故かニヤリとしているシュミットが居た。

 

「シュ、シュミットさん?」

「サーニャに何をするのかな?」

「な、何ってサーニャちゃんに…っ!」

 

クルピンスキーはシュミットのことをさん付けで冷や汗を流しながら言う。そしてシュミットが聞くとクルピンスキーは言い、そして言い終える前にシュミットはクルピンスキーの肩を掴んだ。

 

()()()()()()()…ちょっと()()一緒に来てくれ。急に模擬戦がしたくなってきてしまってな」

「えっ、あっ、ああ…!」

 

シュミットはそう言ってクルピンスキーを引っ張っていく。シュミットがいつものニセ伯爵ではなく名前で呼び、俺と言っていることから、クルピンスキーは完全に怒っていると感じた。

そしてシュミットはサーシャの方を向いた。

 

「サーシャさん、クルピンスキー中尉借ります」

「え、ええ…」

 

サーシャはシュミットの変わりように戸惑いながらも返事をする。これで承諾はもらった。

 

「さあ、逝くぞクルピンスキー…」

「さ、サーシャちゃん!助けて~…!」

 

そしてクルピンスキーを引きずりながら部屋を出ていくシュミット。その様子をサーシャとエイラは黙って見て、そしてサーニャは手を振って見送ったのだった。




ついにこの話が来ました。そして501時代と同じようにシュミットのベッドに潜り込むサーニャ。そして連れていかれたクルピンスキー中尉(ドナドナド~ナ~ド~ナ~)
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!
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