「管野さんはそこに正座!」
格納庫内、管野はサーシャに正座をさせられていた。
「う~…」
「あ~あ…」
管野は正座をさせられて膨れる。その様子を、格納庫入口の扉の影からニパとひかりは見ており、シュミットは堂々と格納庫の壁にもたれ掛かりながら見学する。
整備兵は管野のユニットを点検し、そしてサーシャに報告した。
「インテークから入ったネウロイの破片のせいで、魔道タービンが破損したようですね」
「管野さんも中尉になったんですから、もっとユニットを大事にしてください」
そう、今回正座されられたのは、管野が新型ユニットである紫電改を壊したことから始まる。
新ユニットを渡された四人は、慣熟訓練を行っていた。その時に、ネウロイと遭遇してしまい交戦状態に入ったのだ。ネウロイは防御型であり、銃弾が通りずらかったため、管野が固有魔法を使いネウロイに突っ込み、そしてネウロイを貫いて消滅させた。しかしその結果、管野はユニットを壊してしまったのだった。
サーシャが注意をするが、管野はあまり反省した様子は無かった。
「階級なんて関係ねえ!ネウロイをぶっ倒せばそれでいいだろ!」
「はぁ…ひかりさん!」
「は、はい!」
突然サーシャに言われて、ひかりは慌てて返事をする。
「あなたはブレイクウィッチーズなんて言われちゃダメですよ」
「ブレイク…ウィッチーズ?」
聞きなれない単語にひかりはハテナを浮かべる。そんなひかりにシュミットが説明した。
「よくユニットを壊す三人のウィッチのことだ」
「まず、そこのニパさん」
サーシャがニパの方を見る。
「わ、私は壊さないよ!壊れるんだ!」
ニパは必死に訴える。しかし、彼女の不運さはある意味狙っているのではないかと思えるほどである。
「それから、管野さん」
「ふん!戦果は上げてんだろ。ブレイク上等だ!」
管野に至っては戦果が上回ってるのだから、ブレイクしたって別に構わないだろうと、堂々と反省の色無し。
「そして、療養中のクルピンスキーさん」
この場に居ないクルピンスキー。彼女は昨日の輸送船団護衛で足に罅が入り、療養中である。しかし、噂は流れたのか、彼女はこの時「はっくしょい!」と、くしゃみをしていたのだった。
そしてシュミットが締めくくる。
「まぁ、そう言うわけだ。補給が来たばかりだから、雁淵もユニットを壊さないようにな」
「は、はい!」
そう言うシュミットに返事をするひかり。しかし実は彼以外知らない事実として、シュミットは501にいる時にユニットを3回壊しており、502のユニット消耗具合を知ってからは、出来る限り壊さないよう努力をしていたので、実際の所はあまり偉そうに言えないのが現実であった。
そんな中、ひかりはあることに気づく。
「あの、シュミットさん」
「なんだ?」
「なんだか、疲れてません?」
ひかりはふと、シュミットに疲れの色が見え、なにか疲労を感じているのではないかと思う。
「そんなことは無いぞ?」
「えっ、でも…」
しかしシュミットはそんなことを感じておらず、疑問に思いながら言う。しかし、ひかりの目からはいつもよりも覇気のない表情をしているシュミットが映っていた。
そしてそれはニパも感じた。
「あの、本当に疲れた表情してるっていうか、ぶっちゃけ疲れてません?」
「そんな風に見えるか?うーん…」
ニパの言葉にシュミットは別段そんなことは無いんだがなと思う。
「まぁ、倒れないようにしているから大丈夫だ」
そう言って、シュミットは格納庫から出て言ったのだった。
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「イテテ…まだ痺れが収まんねぇ…」
その日の夜、管野はしびれる足を引きずりながら廊下を歩いていた。その痛みに苦痛の表情をしていた管野であるが、ふと目の前に人影が見える。
「?」
よく見てみると、それはひかりだった。
「雁淵…こんな時間にあいつ…?」
ひかりが歩いていった方向は格納庫であった。管野はひかりが何故この夜中に格納庫に向かうのか気になり、付いていく。
そして格納庫を覗くと、ひかりは自分のユニットの前で膝を抱えてしゃがんでいた。
「チドリ…あれから連絡が無いんだけど、お姉ちゃん大丈夫かな…?」
ひかりは愛機のチドリに聞く。その言葉は、格納庫で見ていた管野が出て答えた。
「心配すんな。孝美は簡単にくたばる奴じゃねえ」
「管野さん」
ひかりは管野に気づき立ち上がる。そして管野はひかりに説明した。
「孝美はハンパなくつええからな。呉の海軍学校で初めて会った時、俺の相棒はコイツしか居ねえって思ったぜ」
「管野さんの相棒…それって、私じゃダメですか!?」
ひかりは、自分が管野の相棒になれるか真面目に聞く。その言葉に管野は驚く。
「はぁ!?おめえが!?100年早えんだよ!」
「じゃあ、どうすれば相棒にしてくれます?」
管野に言われるが、ひかりはそれでも食い下がらない。
「そんなの簡単だ」
そして管野はそれに対して堂々と言った。誰でもわかる単純なことだ。
「強くなればいいんだよ。孝美のようにな」
その言葉を聞き、ひかりはチドリをなでながら話す。
「お姉ちゃん言ってました。ネウロイを倒して世界に平和を取り戻したら、チドリと一緒に旅をしたいって」
「孝美らしいな」
ひかりの言葉を聞き、管野はそれから孝美っぽさを感じた。
そしてひかりは管野に質問した。
「管野さんの戦う理由って何ですか?」
ひかりは管野が何故戦うのか気になり質問した。それに対して、管野は堂々と宣言した。
「決まってんだろ!どっから来たかわかんねえ変な奴らに好き勝手やられてムカつくじゃねえか!」
「フフッ、管野さんっぽいですね」
管野の言葉に、ひかりは管野らしいと感じた。
しかし、管野はひかりを指差し、そのための決断も宣言した。
「だがな!その為には強くならなくちゃいけねえ!今よりもっともっとな!」
「ええっ!?管野さんは今でもすごく強いじゃないですか!」
管野がさらに高みを目指すことを聞き、ひかりは驚く。今でも十分強い管野であるから、それよりもさらに強くなるとはこの時考えもしなかったのだ。
しかし、管野にはある引け目を感じていた。
「ダメだ!クルピンスキーやシュミットの方がずっと強え。けど、絶対俺は奴らより強くなって、ネウロイを全滅させてやる!一秒でも早くな!」
そう、管野はこの間の戦闘で、単独で戦うシュミットとクルピンスキーを見て、現実を突きつけられてしまった。上には上がいる、それを理解してしまった管野は、今のままではまだだということを実感したのだ。
その言葉を聞き、ひかりは背筋を伸ばして手を上げ、宣誓をした。
「はい!私も一緒に頑張ります!」
「ばーか。お前の力なんて当てにしてねえよ」
そう言って、管野は歩いて行ってしまった。ひかりはそんな管野の方を見て、
「いーっだ!」
と、言ってやるのだった。
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「グリゴーリ攻略に向けまず、ペトロザヴォーツクに向かっているネウロイを排除しろ、との軍司令部からの命令だ」
翌日、ブリーフィングルームに集められたウィッチ達は、ラルから命令を
「ペトロザヴォーツクって、この前…」
「せっかく取り戻したのに…」
ひかりと二パはこの間開通させた補給線が、再び脅かされていることを知り衝撃を受ける。
「ということは、このネウロイを倒さない限り…」
「また補給が止まっちゃう…」
「そんな!クルピンスキーさんが怪我までして守ったのに!」
下原とジョゼの言葉に、ひかりはこらえきれずに声を出す。
「要は倒せばいいんだ。そうだろ?ラル隊長」
「ああ。その通りだ」
しかし、管野は堂々とラルに聞く。それに対して、ラルも無論だと言わんばかりに簡潔に言う。
そしてシュミット達は出撃する。そんな中、ニパは管野の雰囲気の違いに気づく。
「今日の管野、少しピリピリしてない?」
「一秒でも早く、ネウロイを倒したいんですよ!」
「何で?」
ひかりは昨晩のことを聞いていたため、すぐさまその答えを言うが、二パは何故そうなのか知らないためひかりに聞く。
(実戦で場数を踏むんだ。倒して倒して、強くなってやるぜ!)
管野は今、自分のパワーアップの為に闘志を燃やしていた。そんな管野に気づき、サーシャは忠告をする。
「管野さん。新型のユニットにも慣れたからって、あまり無茶しちゃだめよ」
「ああ。わーってるって」
サーシャの忠告を受ける管野ではあるが、管野の内面にはまだメラメラと燃える闘志があった。
そんな中、シュミットは黙ったまま飛行をしている。
「…」
「シュミットさん」
黙ったまま飛行しているシュミットに、ロスマンが声を掛ける。
「どうしました?先生」
「どうしましたって…貴方気付いてないの?」
「えっ?」
ロスマンに声を掛けられて振り向くが、ロスマンはそんな反応をしているシュミットに困惑する。
そう、今現在、シュミットは汗を掻いている。季節はまだ冬で、そして上空を飛行しているのにだ。しかし、シュミットはそのことに気づいておらず、ロスマンが言おうとした時だった。
「ネウロイ確認!まだ動きはありません」
下原の遠距離視が、飛行をしているネウロイの姿を捉えた。そしてその言葉に、誰よりも反応したのは管野だった。
「管野一番!出る!」
そう言って、管野は先陣に立ちネウロイに向けて飛行する。それに続くように、他のウィッチ達も出撃していく。
その行動に気づいたのか、ネウロイは回頭をし、ウィッチ達の方向を向く。
「みなさん!距離を取って!」
「先手必勝!このまま突っ込む!」
サーシャはその行動に警戒を出し、全員に散開を命令する。しかし、管野はその命令よりも先にネウロイに突撃を刊行する。
しかし、ここでネウロイは今までの沈黙から一変、こんどは管野たちに攻撃をし始める。その攻撃は今まで戦ってきたネウロイとは桁違いであり、全員がシールドを張らざるを得なくなる。
「ぐっ…」
「う…きゃあっ!」
「ひかり!」
皆それぞれシールドで守る中、ひかりはそのエネルギーを抑えきれずに弾き飛ばされる。
管野はそんなひかりにまたかと言う。
「ったく…何やってんだあいつは!」
「蜂の巣をつついたみたい!」
「これじゃあ攻撃する暇が無いよ!」
下原とジョゼは、この攻撃の嵐に防衛で手いっぱいになる。他の皆も、攻撃に回れずにいた。
そんな中、ロスマンはネウロイの行動パターンを見て、あることに気づいた。
「この攻撃パターン…もしかしたら!」
そう言って、ロスマンはネウロイの攻撃避けながら急上昇をする。そして、手に持つフリーガーハマーで狙いを定め、攻撃をする。フリーガーハマーのロケット弾は、そのまま飛翔していき、ネウロイの後部に直撃した。それと同時に、ネウロイの攻撃は止まった。
「やっぱり!コアだわ!」
「なるほど、あのネウロイはコアを守る形で攻撃をしていたのか!」
「ロスマン先生、さすが!」
誰よりも先に気づいたロスマンに、全員が流石と言う。
「管野さん!」
「おう!任せろ!」
そして、管野とサーシャが前衛に立ち、ネウロイに接近していく。ネウロイはそれでも攻撃の手を緩めず、ウィッチ達に強烈な弾幕を放ってくる。
「なんて弾幕なの…っ!?」
ロスマンはネウロイの攻撃にそう零すが、その時に彼女はある物を見てしまった。
彼女が気付いた先には、シュミットが居た。ネウロイに向けて飛行しているシュミットであるが、その飛行はいつもよりキレが無い。攻撃を回避しているが、どれもかしこもギリギリなのだ。
ロスマンは頭の中で一つの推測を立てた。
「まさか…っ!」
そしてサーシャと管野はネウロイに向けて接近していく。しかし、弾幕の濃さに自由に接近ができない。
「管野さん!一旦距離を取って!」
「問題ねえ!このままいける!」
「管野さん!」
サーシャが命令をするが、管野はそれを振り切ってネウロイに接近していこうとする。サーシャがその行動を止めようとするが、それでも管野は止まらなかった。
(クルピンスキーやシュミットはネウロイを一人で倒したんだ。俺だって…!)
そして接近していく管野であるが、突如ネウロイは攻撃パターンを変更した。先ほどまで弾幕のように撃っていたネウロイであるが、突如その攻撃を収束させる。そして、収束したネウロイの攻撃は、まるで巨大なトンネルのように管野に向かっていった。
「!?」
管野はその攻撃に急いでシールドを張る。しかし、そのエネルギーは今までの比ではなく、管野は後ろにノックバックされる。
その隙を、ネウロイは逃さなかった。ネウロイは先ほどの収束攻撃をもう一発放った。
「管野さん!」
「!!」
サーシャが管野を呼ぶが、管野はその攻撃に対処できない。その時だった。
なんとサーシャが管野に突撃をしていき、サーシャを突き飛ばした。弾き飛ばされた管野はネウロイの攻撃の射線から抜ける。しかし、そこにはサーシャが取り残されてしまった。
「間に…合え…!!」
その時だった。サーシャの目の前に、なんとシュミットが飛んできた。そしてシュミットはサーシャの盾になる形で、ネウロイの攻撃の前に立ちシールドを張る。
しかし、ネウロイの攻撃は生半可なものでは無かった。即席で張ったシールドは強大な攻撃を受けきれず、シュミットは後ろに飛ばされてしまう。そしてそのままサーシャにぶつかってしまうと、脆かったシールドをネウロイの攻撃が僅かに超えてしまう。そして超えた攻撃は、シュミットの持っていたMG42に直撃し、中に入っていた弾丸を爆発させた。
「ああああ!!」
「きゃあああ!!」
そして、二人はバランスを崩して墜落していく。
「サーシャ!」
「シュミットさん!」
墜落していくサーシャとシュミットを、管野とひかりが追いかけていく。そして、管野はサーシャを、ひかりは
シュミットを空中で掴むことに成功した。
「サーシャ!おい!サーシャ!!」
「うっ…」
管野は懸命にサーシャを呼ぶ。サーシャは頭から血を流しているが、痛みを感じて僅かに呻き声を出す。
しかし、サーシャよりもシュミットの方が危険だった。
「シュミットさん!シュミットさん!!」
ひかりに呼ばれるシュミットであるが、彼は完全に意識を失ってしまっていた。そして何より、彼の胸元は機銃の爆発で傷を負ってしまい、血が出ていた。そして顔の左頬には破片が掠ったのか大きな傷ができており、そこからも血が流れていた。
そしてブレイブウィッチーズは、ウィッチ二名の負傷を出し、作戦中断。帰還したのだった。
どうも、作者の深山です。最近は大学入学前の課題やらテストやらが大量に押し寄せており、更新が遅れてしまいました。これからもこのように不定期で更新をしていく日が続くと思いますが、休載は予定しておりません。ですので、気長に待ちながら更新を待っていただけると幸いです。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!