「雁淵軍曹!?」
ひかりの突然の発言に、状況を知っているロスマンが驚いたように声を出す。
「接触…魔眼?」
「何それ?」
しかし、接触魔眼のことを知らない下原たちは何のことか分からずに疑問を浮かべるのだった。
そんな中、ロスマンは懸命にひかりを説得をする。
「やめなさい!雁淵軍曹!」
「お願いです!今使わないでいつ使うんですか!?ラル隊長!!」
『……』
ロスマンが静止を呼びかけるが、ひかりは懸命にラルに説得をする。しかしインカムの向こうのラルは沈黙したままである。
「おめえ、何言ってんだ…」
「どういうこと?ひかり…」
そんな中、管野とニパは困惑した様子でひかりに聞く。ひかりは説明をする。
「私、ネウロイに触ったらコアの場所が分かるんです」
「触ったら!?触ったらって、バカかてめえ!そんな危なっかしいもの役に立たねえだろ!」
「立ちます!立たせます!」
「無理だ!死にてえのか!」
ひかりの主張を、管野は否定する。管野の言い分は尤もである。状況を打開するために接触魔眼を使いコアの位置を特定する。しかしそれに対して要求されるのは、ひかり自身が回避を行いながらネウロイに接近をしていくと言うことなのだ。無論、そんな危ないことに管野が頷くはずがなかった。
しかし、インカムに声が流れてくる。
『…いいだろう。管野、雁淵を援護してネウロイまで連れて行け』
「はあ!?やらせるのか!?」
「隊長!?」
なんと先ほどまで黙っていたラルが口を開くと、とんでもないことを言ってくるではないか。管野は思わず聞き返す。管野だけでなく、ロスマンも驚きラルに聞く。
『命令だ。管野中尉。雁淵がコアを特定し、管野がトドメを刺せ』
「くっ…」
しかし、ラルから帰ってくる言葉は作戦指示であり、肯定だった。管野は思わず黙ってひかりを見る。
そんな管野に、ラルは声をきつくして言う。
『聞いているのか?管野中尉』
「わかったよ!連れてきゃいいんだろ、連れてきゃ!」
「管野!」
管野はその威圧に押され、返事を返した。その行動に二パが驚くが、管野はひかりの方を向く。
「てめえ!足引っ張ったりすんじゃねえぞ!」
「わかってます!」
管野に言われて返事を返すひかり。
「行くぞ!」
「了解!」
「ああ、もう!」
管野が先に動き出す。それに続きひかりが付いていき、ニパはそんな様子に困りながらついていく。そして三人は逃走を開始するネウロイを追撃する。
(あいつ…本当にネウロイに触る気か…?)
管野は後ろを飛ぶひかりを見ながら考える。そして、その行動は仇となった。
逃亡するネウロイは再びビームを収束させ、後ろ向きに飛んでいる管野に向けて放ったのだ。
「管野おおおお!!」
それに気づきニパが全速力で管野の前に行く。そして管野は自分に迫るビームに気づくが、シールドを張る余裕は無かった。
しかし、そのビームは管野に当たらなかった。
「ニパ!」
直撃の寸前に、ニパが管野とビームの間に割り込みシールドを張った。それによって、ネウロイは防がれる。そして攻撃が収まると、ニパは管野の方を振り向く。
「おい!よそ見すんなよ!」
ニパはそう言って、ひかりと共に前進を再開する。しかし、管野が動けなかった。
「はあ…はあ…はあ…」
彼女は呼吸を荒くして立ち止まっていた。そしてその様子に、ひかりとニパが気付いた。
「管野?」
「管野さん?」
二人が振り返って管野を呼ぶが、管野は懸命に声を絞って言った。
「駄目だ…こんな作戦馬鹿げてる…どうせ失敗する」
「え?」
「作戦は中止だ…」
そう管野が言うので、二人は驚く。いつもの威勢のいい管野ではない。今ここに居るのは、弱気になったただの少女だった。
「管野さん!」
「なんだよ?」
そんな管野にひかりが近づいていくが、管野は力のない声で返事をする。
そしてひかりは管野に聞く。
「管野さん、変ですよ。どうしちゃったんです?」
「俺には…無理だ…。クルピンスキーやサーシャ、それにシュミットみたいに、お前らを守れねえ…」
ひかりの言葉に、管野は力なく言う。管野は自分の力では駄目だと、シュミット達のように戦えないと言っている。その様子はいつもの管野とは完全にかけ離れていた。
そしてひかりはそんな管野に大声で聞く。
「何言ってるんですか!いつもの管野さんらしくないです!ここで帰ったら補給路は、502はどうなるんです!?」
「んなのわかってる!わかってんだよ!!」
「私の接触魔眼と管野さんの突破力があれば絶対に勝てます!」
「うるせえ!ひよっこが生意気なこと言ってんじゃねえ!」
管野が大声で言うが、その声にはいつもより覇気を感じられない。そんな管野にひかりもそれに引くことは無かった。
「じゃあ、クルピンスキーさんやサーシャさん、シュミットさんが怪我したのは何でですか!?補給路を守る為じゃないんですか!基地の皆を守る為じゃないんですか!その戦いをパアにするんですか!?私は絶対に嫌です!」
「お、おい二人共さあ…」
ひかりと管野の間にニパが懸命に止めようとは言ってくる。しかし、ひかりの思いはそこで止まることは無かった。
「私達は今ここで絶対にあのネウロイを倒すんです!倒さないといけないんです!ここに立ち止まってちゃいけないんです!」
「…」
「だから!ネウロイの所まで私を連れて行ってください!お願いだから、やる前からできないなんて言わないでください!お願いだから…」
ひかりは目に涙を浮かべながら管野に懸命に頼む。そんなひかりに、管野は何も言い返せなくなり黙っているしかできなくなってきた。
「管野さん言ってたじゃないですか。今度こそあのネウロイを必ず倒すって!なのに、今更…なにビビってんですか!そんなんでお姉ちゃんの相棒になるなんて1000年早いんです!」
「…」
「それでも…」
そして、ひかりは懸命に涙をこらえながら、管野に言い放った。
「ブレイクウィッチーズか!!!」
「!!」
その言葉に、管野はハッとした表情をした。そしてしばらくの沈黙の後…
「!!」
「っ!!?」
管野はひかりを頭突きした。突然のその行動にひかりはおでこを抑えながら管野を見る。
「ああ、やるよ!やってやるよ!」
「管野さん…」
そこにあったのは先ほどの弱気な少女では無く、いつもひかりが見てきた管野直枝だった。
「泣くんじゃねえ。そんなんでネウロイに触れんのか?」
「泣いてないです!」
管野の言葉にひかりは懸命に反論する。それを聞き、管野は顔をニヤリとさせる。
「行くぞ、雁淵。俺の真後ろにぴったりついてこい!」
「はい!!」
そして、管野達三人は再びネウロイに向けて追撃を開始した。その管野の表情には、もう迷いなど微塵も無かった。
「作戦は?」
「俺が真っ直ぐあいつに突っ込む。お前も俺に続いて突っ込め」
「わかりました!」
管野の指示を受け、ひかりは後ろに着く。
「ニパはこいつの後ろを守ってやってくれ!」
「うへえ…了解」
そしてニパは命令を受けて苦笑いをしながら返事をする。
そして三人は突撃した。
(そうだ…何ビビってんだよ、管野直枝。お前はこんなところで立ち止まってちゃいけねえだろ!)
管野は心の中で先ほどのことを後悔した。そして、自分が今なすべきことを胸に、ネウロイに向けて直進していく。
そんな管野達に、黙っているネウロイでは無かった。再びネウロイはビームを収束させ、管野に向けて放ってくる。
「管野!でかいのが来るよ!」
「このまま行く!」
ニパに忠告を受けるが、管野はそう言って手に持っていた機関銃を捨てた。そして空いた右手に、自分のシールドのエネルギーを一点集中させる。固有魔法、圧縮式超硬度防御魔方陣によるシールドであり、管野はそれを自分の前に出す。
「うおおおおりゃあああああ!!!」
そして大声を出しながら管野はネウロイのビームに突っ込んでいく。ビームと管野は接触するが、前方に張られた圧縮シールドは強力な攻撃をもろともせずに突き破っていき、管野はそのまま前進をしていく。
そして、ネウロイはそのビームを出し終えてしまい、残ったビームも管野によって霧散させられた。そして、管野は後ろについてきているひかりを見た。
「今だ!行け、雁淵!」
「うおおおおおおおお!」
管野に言われ、ひかりは管野の後ろから飛び出してネウロイに急接近する。そして、その手でネウロイの体を触った。そしてひかりは振り返りネウロイをしっかりと目に捉える。同時に、彼女の目は赤く光り、接触魔眼が発動した。発動した魔眼によって、ひかりはコアの位置を特定する。
「あそこだ!」
そう言って、ひかりは機関銃を接触魔眼で見た位置に向けて放つ。すると、その部分が剥がれだし、コアが露出するではないか。
「あった!本当にあった!」
ニパがその様子に驚くその時だった。ネウロイは再びその体を分離させ始めた。
「あっ!また分離した!」
「ええええっ!?」
「へっ、場所が分かればこっちのもんだ」
ひかりとニパが驚く中、管野は威勢よく言った。そして、そのまま急降下をしていく。
「うおおおおおおおお!!」
大声をあげながら、管野は攻撃をするネウロイの隙間を縫っていく。そして、一つのネウロイに向けて突っ込んでいく。
「くたばれえええええ!!」
そう言って、右腕を引き絞る。そして、
「剣一閃!!」
そう言って、露出していたネウロイのコアを圧縮シールドと共に拳で殴った。それによりコアは砕け散り、ネウロイはその体を破片に変えて行く。同時に、他の独立していたネウロイの体も次々と破片に変えて行く。
その様子は、別の場所で戦っているロスマンたちにも届いた。
「えっ?何?」
「向こうがコアを破壊したんだわ」
突然の行動に驚く中、ロスマンは冷静に状況を分析する。
「やったー!やりましたよ、管野さん!」
ひかりは喜びの声をあげながら管野に近づいていく。そんなひかりに、管野は振り返っていった。
「ああ、やったぜ
なんと、管野はひかりのことをお前などではなく相棒と言ったではないか。その言葉に驚き、ひかりは聞き返した。
「えっ!?今なんで言いました?」
「えっ?あ、いや…な、何も言ってねえ!」
「確かに言いました。相棒って!」
「冗談じゃねえ!お前が相棒なんてありえねえ!」
「あはは」
管野はひかりの言葉を否定するが、ひかりはしっかりと相棒という言葉を聞いていたため管野に懸命に詰め寄る。
そんな姿を見ていたニパは思わず笑う。
そして、この声はロスマンたちにも届いていた。
「言ったよねー?」
「言ってたね」
ジョゼの言葉に下原が同意する。そしてロスマンはインカムで話す。
「ふふ…こちらエディータ。ネウロイを排除しました」
『そうか、やったか…いい弟子じゃないか』
「胃に悪いです」
どうやらその様子もラルに聞こえていたようであった。
その時、ひかりたちに悲劇が訪れる。なんと三人のユニットが息を吹いたのだ。
「なっ!?」
「えっ!?」
「嘘ッ!?」
三人が嫌な予感がする中、それは見事に的中した。
「うわああああ!」
ユニットのエンジンは停止してしまい、三人の体は重力に逆らえずに落ちて行くのだった。
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「管野さんニパさんひかりさんはそこに正座!」
頭に包帯を巻いているサーシャの声と共に、三人は格納庫内に正座をさせられる。その様子を、基地に帰投した者たちは揃って見ていた。
そして正座している三人を見ながら、松葉杖をしているクルピンスキーはひかりに言った。
「いや~、これでひかりちゃんんもすっかりこの502、そしてブレイクウィッチーズの仲間入りだね」
「ホントですか!?やったー!やったやったー!」
クルピンスキーの言葉にひかりは両手を上げて喜ぶ。
「なに喜んでるんですか!ひかりさん!」
「あっ」
しかし、サーシャの言葉にその手は突然固まり、そしてゆっくりと下ろしていく。
その様子を見て、左頬に傷跡が残ってしまったシュミットは壁にもたれかかりながらクルピンスキーに言った。
「ニセ伯爵、ブレイクウィッチーズの連帯責任でお前も正座」
「えっ!?なんで~?」
「当たり前だろ!?逆に何でいつも悪く思わないんだ!」
と、突然足にギブスを巻いている人に正座をしろと言うシュミットにクルピンスキーは反応するが、その様子に反省する意味を理解している様子がないためシュミットは逆に驚く。そして、その場にいた者たちはその光景に笑いだす。無論、それは正座をしていた新たなブレイクウィッチーズも含めてだった。
前回予告していましたが、僅かに時間が空いたため速攻で書けました。
これでひかりちゃんも新たにブレイクウィッチーズの仲間入り。そしてギブス状態で正座をしろと無茶ぶりを言う傷残りのシュミット。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!