ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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第六十四話です。ついにひかりと孝美は真剣勝負へと向かいます。
※タイトルに納得いかない点があったため修正しました(18/2/04)


第六十四話「孝美とひかり 魔眼VS接触魔眼」

「先ほど、グリゴーリを監視していた偵察部隊が全滅しました」

 

後日、ブリーフィングルームに集められたウィッチーズは、ロスマンの言葉を聞き衝撃を受けることとなった。

 

「全滅!?」

「報告では、先日バレンツ海で出現した球体型ネウロイが再生した個体とのことです」

 

サーシャが驚く中、ロスマンが説明をする。そんな中、その説明を聞き反応したのはシュミットとクルピンスキーだった。

 

「バレンツ海のネウロイだと!?」

「そんなバカな!?あいつは僕たちが確かに倒したはずだ!」

「ですが、事実です」

 

納得のいかない様子のシュミットとクルピンスキーだったが、ロスマンが正面に写真を張り付ける。するとそこには、シュミット達がバレンツ海で戦闘した球体型のネウロイが映っていた。

そしてさらに驚くべきものが映り込んでいた。

 

「あのユニット…!僕のだ!」

 

そう、写真の中の一枚に、クルピンスキーの履いていたユニットを取り込んだネウロイの写真があったのだ。それは、そのネウロイがあの時戦闘した球体型ネウロイであると決定づける証拠になっていた。

 

「コアを破壊したのに…何で!?」

「そう熱くなるな」

 

そう言って首を下げ考え出すクルピンスキーを、ラルが静止した。クルピンスキーが顔を上げて見ると、そこにはロスマンにコルセットを縛られているラルの姿があった。

それを見てクルピンスキーは戦慄した。

 

「隊長…?まさか!」

「お前達が倒しきれなかったのなら私が出るしかないだろう」

 

そう、ラルは自分が出撃する気でいるのだ。今までシュミットは502でラルが全線で戦っている姿を見たことがないため、ラルの実力をよく知らない。しかし、ラルはこれでも世界第三位の撃墜数を誇る、スーパーエースの一人なのだ。

そしてラルは孝美を見る。

 

「行くぞ孝美。作戦の肩慣らしにちょうどいい」

「はい」

 

ラルの言葉に、孝美は立ち上がって返事をした。その時だった。

 

「待ってください」

 

ブリーフィングルームの後ろから声がし、全員が振り返る。するとそこには、ひかりが立っていた。

 

「ひかり!」

「何をしに来たの?」

 

管野は驚いてひかりの名前を呼ぶが、孝美はやはり鋭い目つきをしながらひかりに厳しく言う。

しかし、ひかりはそれに臆することなく進言した。

 

「私も戦わせてください」

 

ひかりの言葉に反応したのは、やはり孝美だった。

 

「あなたには無理だと何度言えば!」

「そんなのは、やってみなくちゃわかんない!」

 

孝美はひかりに言うが、ひかりはその言葉を聞かずに孝美を睨み返した。

両者互いに睨んだまま硬直する中、それを解いたのはラルだった。

 

「いいだろう」

「えっ!」

「ラル隊長!?」

 

ラルはニヤリとしながら許可をした。その言葉にひかりは顔を明るくし、孝美はありえないと言った様子でラルを見た。

そしてラルも、只では出撃許可を出さなかった。

 

「もしお前の接触魔眼が孝美に勝るようなら、どんな手を使ってでも502に置いてやろう」

「ホントですか!?」

 

ラルからの衝撃の提案に、ひかりは驚く。しかしそれは、都合のいい話ではない。

 

「ただし、その場合お前に変わってカウハバには孝美に行ってもらう」

「えっ!?」

 

そう、いずれは誰かがカウハバに行かなくてはならないのだ。ひかりが勝って残った場合、代わりに行くのは敗者となる孝美なのだ。

 

「もしお前が勝っても、孝美と一緒に戦うという望みは叶わない。それでもやるか?」

 

ラルはひかりに聞く。そして、ひかりは決意した。

 

「…やります!だって今の私は502の一員だから!」

「ひかり…」

「お前…」

 

ひかりの決意に、孝美と管野は驚く。孝美は自分の妹が即座に決断をしたことに。管野はひよっこのはずだったひかりが、ここまで成長していることに。

そしてラルは、その様子に満足したようだ。

 

「上等だ。さあ、孝美はどうする?」

「…」

 

ラルに言われ、孝美もわずかに考える。そして、答えは決まった。

 

「いいわ。どちらがこの502にふさわしいか、はっきりさせましょう」

「うん、わかった」

 

孝美は、そんなひかりを迎え撃つことを選んだ。そして、両者の存続を掛けた勝負が始まるのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「ネウロイは現在ムルマン方向へ進行中です」

「狙いはやはりフレイアー作戦の為に集結した艦隊に間違いなさそうね」

 

そして、502は出撃した。いつもは出撃をしないラルを含むフルメンバーのブレイブウィッチーズ。そしてその先頭には、ひかりと孝美が並んで飛行、その後ろを、他のメンバーが編隊を組んで飛行していた。

そして、二人の勝負の内容はこうなった。

 

「孝美、ひかり、コアの位置を捉え、私に報告しろ。より早く、より正確に見抜いた方を勝者とする」

「了解!」

 

どちらも魔眼持ち。ならば、どちらの魔眼が相手のコアをしっかりと捉えることができるかが勝負となった。

ニパはピリピリとした二人の様子を見て、困ったように話し始めた。

 

「ひかりはずっと孝美さんと一緒に戦いたがっていたのに、なんだってこんな勝負をするのさ?」

「それは、ひかりが自分の成長をしっかりと孝美に伝えたいからじゃないか?今ひかりは、孝美とでは無く、この502と共に戦うことを望んでいるんだ。だから、対立する孝美と戦うんだ」

 

その言葉に、シュミットが答えた。シュミットはひかり自身が、502として戦う事への誇りを持っていると考え、それを孝美から認めてもらうために戦うのだと解釈した。

 

「だが、ひかりにとってこれは茨の道だ」

「遠視可能な孝美さんの魔眼と、ひかりさんの接触魔眼じゃ、どう考えても…」

「そうね。ひかりさんが勝てる確率は万に一つよ」

 

シュミットの言葉に、ジョゼは勝負にならないと言い、ロスマンはひかりの勝率はほぼ無いと言った様子だった。

 

「それでも、あの子はわずかな可能性に賭けた。私たちと共に戦うために。そして、自分の成長を姉に見せるために」

「ひかり…」

 

しかし、この勝負を決めたのはひかりと孝美である。外から口出しできることは何もなかった。

そして、ついにその時は始まった。

 

「11時の方向、ネウロイです」

「…マジか」

 

下原の遠視がネウロイを発見する。一歩遅れてシュミットも見つけるが、その姿を見てありえないと言った様子だった。

そこには、バレンツ海でシュミット達が戦闘したあのネウロイの姿があったからだ。

クルピンスキーもその姿を確認した。

 

「ホントだ…再生しちゃってるよ」

「行くぞ!」

 

そして、ラルの掛け声と共に、戦闘が始まった。ブレイブウィッチーズは散会、それぞれがネウロイに向けて接近していく。

そして、ひかりと孝美の真剣勝負が始まった。ネウロイは最も接近してきていた二人に対して攻撃をする。

その攻撃に孝美はシールドを張り防御するが、ひかりは攻撃を回避しながらネウロイに接近していく。接触魔眼を発動させるためには、シールドを張る余裕などないひかりは、その攻撃を順番に躱していく。

 

「一気に決着させる!」

 

しかし、孝美はこの勝負を一気につけようとする。魔眼を発動させると、即座にネウロイのコアを補足した。

 

「目標捕捉!H4699T9326!」

「早いな」

 

孝美の言葉を聞き、ラルは即座に座標に向けて狙撃をした。ラルの放った弾丸は真っ直ぐとその座標に伸びて行き、ネウロイに命中。そして、そこにあったネウロイのコアを貫いた。

誰もがその瞬間、孝美の勝利と思った。

 

「やった!…えっ!?」

 

孝美は思わず喜ぶ。しかし、様子がおかしいことに気づき顔を驚かせた。

孝美の目には、砕けたはずのコアが徐々に再生する姿が映っていた。

 

「コアが…コアが再生した!?」

「なんだって!?」

「コアが再生だと!?」

「じゃあ、どうやって倒せばいいの!?」

 

孝美の衝撃発言に、クルピンスキーとシュミットは驚き、ジョゼはどうしたらいいのか困った様子で聞く。

 

「いえ、待ってください!」

 

しかしここで、孝美はあることに気づいた。そこには、コアの中を動き回る謎の物が見えた。

 

「コアの中で何か動いてます!まるで、コアの中にコアがあるみたい!」

「そう言うカラクリか!おそらくそいつが真のコアだ!」

 

孝美の言葉を聞き、ラルは納得したように言った。そう、シュミット達が前回倒したはずのネウロイは、表面をコアで守り、その中に真のコアを忍ばせていた。その結果、最初こそは消滅したように見せかけるカラクリをしていたのだ。

 

「真のコア!?」

「そいつを撃ち抜くしかない!」

 

ひかりは驚く中、ラルはネウロイ撃墜は真のコアを撃墜するほかないと言う。

その時だった、ネウロイの体が分離し始める。

 

「気をつけろ!子機を大量に出してくるぞ!」

 

シュミットが全員に注意を呼び掛ける。それと同時に、ネウロイから大量の子機が飛翔しだす。

ウィッチたちは全員子機の迎撃をすることになる。それは、勝負をしている孝美も同じだった。

 

「くっ…!魔眼に集中できない…!」

 

孝美の魔眼は、その子機による数に押され発動を拒まれた。その時だった。

 

「!?」

 

孝美の横を、一人のウィッチが通り過ぎて行く。それはひかりだった。

 

「ひかり!?」

 

孝美が驚く中、ひかりは迫ってくる子機を回避しながら前進していく。この状況下でありながら、ひかりはネウロイを回避し迎撃、そしてその先に居る親機に向けて進んでいった。

 

「まだまだ!」

「頑張れ、ひかり!」

 

ひかりは全力で進んでいく。ニパはそんなひかりにエールを送る。しかし、あまりにも多すぎるネウロイの数は、ひかりのバランスを大きく崩した。

 

「きゃあっ!」

「雁淵さん!」

 

弾き飛ばされたひかりを見て、ジョゼと下原は驚いたようにひかりの名前を呼ぶ。しかし自分たちも子機を相手にするため、その助けに回ることなどできなかった。

そして、ひかりの周りを子機が包囲をし、そして攻撃をしようとする。

 

「!!」

 

万事休す、と思った時だった。突然そのネウロイは後方から飛来したロケット弾と弾丸により、破片に変わり消滅した。

 

「なっ!?」

 

ひかりが驚く中、攻撃をした者たちはひかりに話しかけた。

 

「どうやら補習が必要みたいね」

「ひかり、勝負はまだ終わってないぞ」

「えっ!?」

 

声のした方向を見ると、そこにはロスマンとシュミットがいた。先ほどのネウロイは、二人が撃墜したのだ。

そして、ロスマンは言った。

 

「思い出しなさい。あなたがここで得たものを。あなたの飛び方を!」

「ロスマン先生…はい!」

「いいか。自分のすべてを孝美にぶつけて行くんだ!」

「わかりました、シュミットさん!」

 

ロスマンとシュミットの言葉を聞き、ひかりは大きく返事をした。そして、再びひかりは子機を避けながら親機に向けて接近をしていく。

 

「右!…左!…右!…邪魔するなああああ!!」

「ひかり…」

 

ひかりは左右に体を動かしながら、次々とネウロイの攻撃を回避していく。その気迫は、管野をも見たことがないほど鬼気迫るものだった。

そして、孝美もそれに負けてはいなかった。即座に自分の周辺に居た子機を撃墜すると、親機に向けて魔眼を発動した。

 

「目標、重捕捉!」

 

ひかりは懸命に、親機に向けて直進していく。

 

「行けええ!ひかりー!!」

 

そんなひかりに、管野は全力で応援をする。そしてひかりは、徐々にその体をネウロイのコアに近づけて行く。

 

「目標、補正!」

「うううう!!」

 

孝美はコアの特定プロセスを次の段階へ進めて行く。ひかりは左手を伸ばし、全力で親機に触れようとする。

 

「目標!最終捕捉!」

「たああああああ!!」

 

孝美は更にプロセスを進める。そしてひかりは、ついにネウロイの親機に到着し、その体に手を触れた。

そしてひかりは、接触魔眼を発動する。

 

「完全捕捉!グリッドH1588T1127!!」

「ここです!!」

 

孝美は、完全に補足したネウロイのコアの座標を報告する。ひかりは、絶対魔眼で見つけたネウロイのコアの位置に機関銃の銃口を差し込む。

そして、両者の導き出した場所に、ラルが再び狙撃を行う。放たれた弾丸は再びネウロイのコアに飛翔。そして、コアの内部に潜んでいた真のコアを貫通した。

これにより、コアが完全に壊れたネウロイは、親機子機共々、今度こそ本当にその姿を光の破片へと変えたのだった。

全員が戦闘終了によりその場で立ち止まる。

 

「私?お姉ちゃん?どっち?」

 

ひかりは、先ほどの勝負が自分が勝ったのか、それとも孝美が勝ったのか気になり、懸命に周辺を見る。その時だった。

 

「!?」

 

ひかりの真横から、生き残っていた子機が体当たりを行う。ひかりは突然のことに対処しきれず、その体当たりを食らってしまい、そして気絶してしまった。

そしてひかりの体は、重力に逆らうことができずにそのまま墜落していくのだった。

 

「っ!?ひかりーー!!!」

 

管野が叫ぶが、ひかりはそれでも気絶したまま墜落していく。

その時、ひかりに向けて一人のウィッチが急降下していく。そのウィッチは、ひかりの姉の孝美だった。

孝美は落下するひかりの体を空中でキャッチすると、その体を抱きかかえた。

 

「お姉…ちゃん…」

 

ひかりは、姉の孝美の姿を見ると、その薄れていた意識を完全に手放した。

 

「ひかり…」

 

孝美は、自分の腕の中で眠ってしまったひかりを見ると、そっと自分の顔にひかりの顔を近づけた。

 

「強く…なったね…」

 

そう言って、孝美は一筋の涙を流したのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「コアへの指示だが、二人とも正確な位置を示していた。だが、孝美の方が僅かだが早かった。よって、命令通り部隊には孝美を残す。以上だ」

 

そして基地に帰投した後、ブリーフィングルームでラルが全員に向けて伝える。しかし、その席にはひかりの姿は無かった。

ひかりは、基地の滑走路に居た。滑走路の先端で、懸命に涙をこらえていた。

 

「うっ…うっ……」

 

ひかりは、涙を流したくなかった。自分で決めたことであり、そして敗北した。悔しい思いがあったが、決して後悔はしていなかった。

しかし、彼女の中に渦巻いていた思いは、ついに爆発した。

 

「うわぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

ひかりは滑走路の先でへたり込み、思い切り泣いた。大粒の涙は、次々と滑走路を濡らしていく。

自分の中に渦巻いていた思いは涙と共にグシャグシャになってしまい、もはやどうして泣いているのかすらひかりはわからなくなってしまった。しかしひかりは、大声で泣いていた

その様子を、ブリーフィングルームから出てきたウィッチたちは、静かに見守っていることしかできなかったのだった。




といわけで、孝美の勝利で終わった502存続の決闘。そして徐々にクライマックスへ向かっていくブレイブウィッチーズ編。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!
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