坂本の紫電改が破損したため、単独での戦闘を行うことになった宮藤。
「危険です少佐!今は自重して、紫電改の修理を待つべきです!」
「その修理を待っている間に、どれだけの人間が傷つくと思う?」
土方は懸命に坂本を止める。彼女はユニット無しでネウロイに立ち向かおうとしているのだ。
しかし、坂本も止まらない。今坂本が出ない間に、ヴェネツィア艦隊が被害を受けて行くのだ。そんな光景を黙ってみている坂本で無かった。
そんな坂本の言葉に、土方は思わず怯む。しかし坂本は、土方に僅かにほほ笑み返す。
「フッ、どうやら宮藤の病気がうつってしまったようだ」
坂本はそう言って、二式大艇の上に登るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「駆逐艦ヴェニエル大破!機関出力急速低下!このままでは行き足が止まります!」
「くそう…何もできんのか…!」
部下の言葉を聞き、ロレダンは苦虫を噛みしめたような顔をする。ネウロイ向けに開発した砲弾は有効打を与えず、艦隊は旗艦を含む全艦が損傷状態になる。
「艦長、ウィッチです!ウィッチがいます!」
「なにっ!?」
その時、監視班の言葉にロレダンはすぐさま艦橋の窓から外を見る。すると、遠くの方に一本の飛行機雲が流れて行く。間違いなくウィッチの姿だった。
「あれは白地に太陽の月のマーク…あれは扶桑のウィッチです!」
「扶桑だと!?」
監視班の識別に、ロレダンは扶桑のウィッチが突然現れたことにさらに驚かされることになる。
その扶桑のウィッチである宮藤は、艦隊の前方へ飛行すると、すぐさまシールドを張る。ネウロイは艦隊をウ攻撃するが、宮藤の張った巨大なシールドは艦隊へのビームを防ぎ、その全てを弾いた。
「私がひきつけている間に、遠くに逃げてください!」
「バカな…君一人を残してはいけん!」
宮藤は艦隊に向けて退避するように言うが、ロレダンにもヴェネツィア海軍の誇りがあった。ウィッチ一人で戦わせまいと彼は言う。
「艦長!我々に反撃の手段は残っていません」
「ううむ…」
しかし、副官の言葉にロレダンは考える。砲弾は効かず、艦隊は負傷状態である。今戦っても無駄な消耗を増やすだけだった。
「わかった、我々は足手まといなだけだ。全艦十六点回頭!全速退避!」
そして、艦隊は回避行動を開始した。
艦隊が取り舵を取り避難していくのをみて、宮藤はホッと息を吐く。
「よかった…っ!」
しかし、すぐさまネウロイが次の攻撃を加えて来たので、宮藤は全力で艦隊を守ろうとシールドを張った。
「早く離れて…」
宮藤は艦隊がすぐに逃げてくれるように思う。その時、彼女を一つの影が覆った。
顔を上げて上空を見てみると、太陽に映る二式大艇の姿があった。
「坂本さん!」
宮藤は、二式大艇の上に立つ坂本を見る。
「土方!このまま突っ込め!」
「了解!」
二式大艇の上に登った坂本は、土方に指示をする。それにより、二式大艇はネウロイに向けて飛行していく。
そして、坂本は体に羽織っていたマントを投げ捨てると、使い魔の耳と尻尾を出し、そして立ち上がった。
ネウロイは突っ込んでくる二式大艇に対し威嚇をする。ネウロイが攻撃をする前兆だ。
「危ない!」
宮藤は危険を感じて叫んだ時だった。坂本はなんと二式大艇の上を走り始めると、そのままジャンプをした。そして、すぐさま背中に背負っていた扶桑刀を抜くと、それを構えた。
ネウロイは飛び出した坂本に、ビームを放つ。
「坂本さん!」
「であああああ!」
宮藤が叫ぶ中、坂本も叫ぶ。そして、手に持っていた刀を振りかぶった。
「必殺!」
そして、その刀を振り下ろした。
「烈風斬っ!!」
坂本が刀を振り下ろしたと同時に、ネウロイはビームを坂本に向けて放つ。しかし、坂本はそのビームを刀で切り裂いていき、そのままネウロイに突っ込んでいった。
そして、ネウロイは突っ込んだ坂本によって体を光の破片に変えたのだった。
「坂本さん!」
宮藤はすぐさま、落下をしていく坂本に向かって飛んでいき、そして空中でキャッチをした。
「すまんな宮藤、紫電改が故障してな、来るのが遅れた」
「だからって、無茶しすぎです」
坂本は宮藤に謝罪するが、宮藤は坂本の破天荒な戦い方に肝を冷やしていた。
「どうだ、言った通りだろう?シールドが無くても私は戦える。この
そう言って、坂本は手に持っていた刀、烈風丸を見る。
ふと、坂本は宮藤に聞く。
「ところで宮藤、烈風丸ってどう思う?一晩中考えたんだがな」
「えっ?か、かっこいいと思いますよ?」
「そうか!かっこいいか!よーし!」
宮藤の言葉を聞いて、坂本は豪快に笑った。
「ありゃりゃ、もうネウロイは倒されてしまったのか」
その時、宮藤と坂本の耳に聞き覚えのある声が聞こえる。二人が振り返ると、MG151を構えたシュミットが拍子抜けた様子で居た。
「シュミットさん!」
「シュミットか!久しぶりだな!」
「ええ、お久しぶりです」
そして、坂本達は着水した二式大艇に降り立つ。
「お見事です、少佐。紫電改を出すまでもありませんでしたね」
土方はそう言って、坂本の制服を渡す。しかし、それを受け取った坂本はどこか納得をしていない表情だった。
「手ごたえが無さすぎる…」
「え?」
「きっと、坂本さんが強くなったからそう感じるんですよ」
坂本の言葉に土方はどういうことかと思うが、宮藤は坂本が強くなったからだと言う。
しかし、シュミットは何かに気づいた。
「まて!ネウロイの破片を見ろ!」
シュミットの言葉に、全員が海に落下していくネウロイの破片を見る。すると、ネウロイの破片はまるで吸い上げられているかのように上昇していく。
「坂本さん!」
「ネウロイが再生している…!」
宮藤と坂本が驚く中、ネウロイはその体を再生させていく。
「コアは破壊したのか?」
シュミットが聞くと、坂本は魔眼を再生しているネウロイに向ける。すると、彼女の魔眼にはネウロイのコアが映っていた。
「バカな、コアが生きている」
「行きます!」
「私も行くぞ!」
「宮藤、シュミット、コアは再生中の先端だ。ぶち抜いてとどめを刺せ!」
すぐさま離陸をしていく宮藤とシュミットは迎撃に向かう。坂本は、二人にコアの位置を言う。
そして、宮藤とシュミットはそれぞれネウロイのコアがある地点に向けて銃撃を加えて行くが、ネウロイのコアはそこからは見つからなかった。
「少佐、本当にここなんですか?」
「まて…なにっ!」
シュミットに言われ坂本は再び魔眼でネウロイのコアを補足する。すると、とんでもない事実が分かった。
「そうか、そう言う理屈か。シュミット!宮藤!そいつのコアは移動している!今は右端だ!」
「えっ?はい!」
「こいつもコアが移動するのか!?」
坂本の指示に宮藤は驚き、シュミットはペテルブルクの時と同じなことに衝撃を受ける。そして二人はすぐさま右端に攻撃を加えるが、ネウロイのコアは発見され無かった。
そして、再生していたネウロイはついにその体を完全に復活させた。
「宮藤、シュミット、同時多重攻撃を仕掛けるんだ!」
「どうじたじゅう?」
「一緒に攻撃をすることだ」
宮藤は何か分からず聞くが、シュミットが簡単に説明する。
そして坂本は、二式大艇の中を覗く。
「紫電改はどうだ!?」
「あと五分で何とか…」
「飛べさえすればいい!3分で仕上げろ!」
坂本は技術者に時間短縮を呼びかける。その時だった。
ネウロイが、坂本達の二式大艇に攻撃をしたのだ。
「坂本さん!」
危機一髪、宮藤が間に入りシールドを張る。宮藤は懸命にシールドを張るが、これにより同時多重攻撃ができない状況になる。
そして、坂本は宮藤の様子に気づく。
「いかん、宮藤の魔法力が限界だ」
宮藤は既に連戦を強いられているのだ。魔法力が限界に近付いている。
その間にも、シュミットはネウロイに攻撃を加えて行く。しかし、肝心のコアは未だに破壊できなかった。
「くそっ…このままじゃ弾を消耗するだけだ」
シュミットは何か打開策を考える。しかし、宮藤が耐えきれずにネウロイの攻撃によって弾き飛ばされた。
「宮藤!」
体制の悪くなった宮藤は、今はいい的となってしまった。その時だった。
突然、ネウロイの体が爆発したのだ。それは、シュミットや宮藤からは別方向からの攻撃によるものだった。
「なっ!?」
「えっ?」
シュミットと宮藤は何事かと思う。しかし、その攻撃は二人にも見覚えのある物だった。
「いやっほ~う!」
「シャーリー!」
「シャーリーさん」
そう言って、呆けている宮藤達の横を通り過ぎたのは、彼らにも親しい人物だった。リベリオン合衆国陸軍の制服を来たウィッチ、シャーロット・E・イェーガーだった。
そして、やって来たのはシャーリーだけでは無かった。
「チャオ~」
「ルッキーニちゃん!」
「見た見た!?今のぜーんぶ命中したでしょ!」
そう言って宮藤に自慢するのは、ロマーニャ空軍の若き天才、フランチェスカ・ルッキーニだった。
さらに、やってきた二人とは別方向から、今度は一発の弾丸が飛翔してくる。弾丸はそのままネウロイに着弾すると、その丈夫な体を貫いた。
「対装甲ライフルだ!」
「てことは!」
「間違いない」
「リーネちゃん!」
彼らの予想した通りだった。新たにやってきたのは、ブリタニア空軍所属のウィッチ、リネット・ビショップだった。
「芳佳ちゃん!」
「リーネちゃん!」
リーネはそのまま芳佳の手を取ると、くるくると回り始める。芳佳も、久しぶりに再会する親友の姿に顔を笑顔に変える。
「無事だったんだ!」
「うん!ガリアから今着いたの!」
「ガリア?ってことは…」
リーネは宮藤に会うために、ガリアから飛んできたと言った。その言葉に、シュミットはある推測をすると――、
「感激している場合ではありませんわよ」
「ペリーヌさん!」
そう言って現れたのは、自由ガリア空軍の高貴なるウィッチ、ペリーヌ・クロステルマンだった。
さらにさらに、ネウロイに向けて飛翔して攻撃してきたのは、ロケット弾だった。
「ロケット弾!?」
「見て!」
ペリーヌは驚く中、リーネがロケット弾の飛翔してきた方向を見る。すると、遠方から二人のウィッチが現れる。
「エイラ!サーニャ!!」
「エイラさん!サーニャちゃん!」
シュミットと宮藤はその二人の名前を呼ぶ。スオムス空軍のトップエース、エイラ・イルマタル・ユーティライネンと、オラーシャ陸軍所属のシュミットの恋人、サーニャ・V・リトヴャクだった。
そして、皆のもとに新たなエンジン音が聞こえる。
「来たか!」
「三人だ!」
皆が顔を上げて見ると、その方角から3人のウィッチの姿が見えた。
「ミーナ隊長!」
特徴的な赤毛を揺らしながらやって来る501の部隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ。
「バルクホルンさん!」
両手に二丁の機関銃を構えミーナの横に並ぶ、カールスラントのスーパーエース、ゲルトルート・バルクホルン。
「ハルトマンさん!」
そして、バルクホルンとは反対側に並ぶ、カールスラント兼人類一の撃墜王、エーリカ・ハルトマン。
「左右に」
『了解!』
ミーナの指示に、二人は返事をし、三人はネウロイに向けて接近、そして銃撃を浴びせて行く。
そして、坂本はミーナに戦闘指示を求める。
「ミーナ中佐、総攻撃だ!」
「わかってるわ。フォーメーション・カエサル!」
『了解!』
ミーナの言葉に、全員が返事をして集結し編隊を組む。
そして、坂本の準備も整った。
「少佐、紫電改行けます!」
「わかった!」
土方の言葉に坂本は返事をし、そして紫電改に足を入れて魔導エンジンを回した。
「出力、異常なし!」
「坂本美緒、出る!」
そして、坂本は発進し、そのまま編隊に加わった。これで501は全員が揃った。
「攻撃開始!」
そして、ミーナは手を前に振り、攻撃開始の合図を送った。
ネウロイは負けじと攻撃を仕掛けるが、全員その攻撃を回避し、接近をしていく。
まず最初に、ルッキーニが固有魔法、『光熱攻撃』をシールドに張り、ネウロイの体に向けて突撃を加える。彼女のシールドは、言わば弾丸であり、ネウロイの体を大きく削る。そして、突撃時により減速したルッキーニを、シャーリーが『超加速』を使ってキャッチし、そして離脱していく。
その後ろを、今度は前方に回ったミーナとシュミットが銃撃を加えて行く。ミーナは『三次元空間把握』を使い攻撃を回避をしていき攻撃を加える。そしてシュミットは『ゼロの領域』を展開しながら回避をし、『強化』によるバフの加わった火力でネウロイの体を削る。
ネウロイは正面からの攻撃に対して、自身も反撃をする。しかし、その隙をついてペリーヌが上空から急降下をし急接近。そして『雷撃』による電気攻撃をネウロイに浴びせる。
全身の装甲を削られたネウロイはすぐさま再生をしていくが、リーネによる『射撃弾道安定』が加わった銃弾は的確に装甲の厚くなっている部分を貫いた。
ネウロイはその攻撃に雲の中へ逃げて行く。しかし、それを逃がさないウィッチが居た。エイラはサーニャの手を取ると、『未来予知』による雲の中からの攻撃を回避し、サーニャが『全方位広域探査』で雲の中のネウロイを補足、そしてフリーガーハマーの一撃を加える。
あぶり出されたネウロイは周辺に向けてビームを放つが、ハルトマンはその攻撃をスイスイと避けて行くと、『疾風』を使いネウロイの体を削り取る。
その瞬間を間髪入れずにバルクホルンが接近するっと、二丁の機関銃から強力な攻撃を浴びせて行く。
「うおりゃあ!!」
そして、機関銃の銃身を持つと、『筋力強化』によるパワーを使い銃床部分を思い切りネウロイに振り下ろした。
「コアが出た!」
宮藤がコアの露出に気づく。
「任せろ!」
「坂本さん!」
「美緒っ!」
坂本がネウロイに接近する姿に、宮藤とミーナが心配する。
「手出し無用!」
しかし、坂本はそう言ってネウロイからの無数の攻撃を高速で回避していく。あのような動きは誰も見たことが無かった。
「何だあの機動は!」
「攻撃を全部避けているぞ!」
「エイラみたい!」
その機動に全員が驚く中、ネウロイは渾身の一撃を坂本に向けて放つ。
「無理だ!当たるゾ!」
「少佐!」
「切り裂け!烈風丸!」
皆が驚く中、坂本はなんと刀をビームの方向に向け、そして切り裂いた。
「喰らえ!烈風斬っ!」
そして、坂本はネウロイに向けて刀を振りかぶった。刀からは一閃のビームのように刃が伸びて行き、ネウロイの体を一刀両断する。
そして、コアを破壊されたネウロイは、その姿を今度こそ完全に光の破片へと変えたのだった。
集結、501!ついにストライクウィッチーズ2編に突入しました。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!