ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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第八十四話です。どうぞ!


第八十四話「未来予知とシールド」

「雨が降っても気にしない~♪槍が降っても気にしない~♪なーにがあっても気にしない~っと」

 

エイラは歌いながら飛行をしている。その周辺には小型のネウロイが複数接近してくるが、エイラはまるで分かっていたかのようにネウロイの場所に機関銃を向けて撃つ。

その様子を見て、宮藤はエイラのところに行きながら言う。

 

「エイラさん、シールド使わないと危ないですよ?」

「ん?何処見てんダお前?」

 

宮藤はエイラの言葉を心配して言うが、エイラはまるで何言ってるんだと言わん表情で宮藤を見る。そして新たに小型ネウロイが現れると、単身でネウロイを迎撃、攻撃を回避しながら逆にネウロイに攻撃を加えて行く。

 

「あらよっと」

「す、すごい…」

 

そして、エイラは周辺に居たネウロイを一瞬にして倒す。宮藤はそれを見て驚くが、エイラからしたらいつものことだった。固有魔法『未来予知』の力は、エイラを被弾させることなくネウロイを倒させた。

ネウロイ発見の報告を受けたウィッチ達は、すぐさま現地に到着してネウロイとの戦闘を行っていた。しかし、殆どのネウロイを倒したとき、複数の人はその手ごたえの無さに疑問を持った。

 

「こんなもんか?」

「あらかた撃墜したようだが…妙だな、手ごたえがない」

 

全員が集まり、シャーリーとバルクホルンが言う。しかし、坂本は気づいていた。

 

「これは全て子機だ。操っている本体を探しているんだが…」

「まだ健在だと?」

「ああ」

 

坂本の言葉にペリーヌが聞く。

 

「いつの間にかやっつけちゃったんじゃない?」

「本体を倒せば子機も消えるはず…」

 

ルッキーニがもう倒したのではと言うが、それではリーネの言う通り、子機すべてがいっぺんに消滅するはずである。

その時、坂本は後ろから何か気配を感じて振り返る。そして、そこに会った光景に目を開いた。他のウィッチ達も、坂本に続いて後ろを見た。

 

「何だあれは!」

「く、雲を突き抜けてますわ!」

 

バルクホルンとペリーヌが言う。そこにあったのは黒い色をした異形の存在、ネウロイの姿だった。しかし、その形が問題だった。ネウロイの形状は、縦にとてつもない長さをしており、なんと雲を突き抜けていた。

 

「まさか、あれが本体…!?」

「お前達はここで待て!」

「少佐!?」

 

シャーリーもまさかと言った声で言う。しかし、あれこそが本体であるネウロイなのだ。そして、坂本は全員にここで待つように言うと、ネウロイに接近をしていく。

ネウロイは坂本が接近しても特に攻撃をする様子は見せない。表面は全面的に黒色であり、ネウロイがビームを放つ赤い部分が無かった。

 

「なんて高さだ…」

 

坂本はネウロイの高さが何処まであるかを上昇しながら図る。しかし、てっぺんの部分は肉眼でまだ確認できない。

坂本は魔眼を開きながら見る。すると、ネウロイのてっぺんあたりで赤く光る部分が見えた。

 

「あれがコアか」

 

坂本はネウロイのコアを確認した。その時、坂本の体に振動が伝わってくる。

 

「限界か…」

 

坂本は紫電改を見ながらそう呟く。紫電改は息を吹きながらエンジンを回していた。既に1万メートルを超えており、レシプロの上昇限度に来ていたのだ。

そして、失速をして上昇が止まり、坂本の体は今度は降下を始めた。

 

「厄介だな…」

 

坂本はネウロイのコアの位置を魔眼で確認しながらそう言う。そして、坂本は待機させていたウィッチ達の元へ行く。

 

「一時撤退だ、基地に帰投する」

「ですが、まだ敵が」

「帰って作戦を立て直す。今日は遠出をしすぎたから、そろそろ戻らないと基地にたどり着けなくなる」

 

坂本は基地への帰投を選択した。遠出による魔法力と弾丸消費の状態、そして圧倒的高度にコアがあるネウロイ

に立ち向かうには、現在の体制では不十分すぎる。

そして、全員帰投をする。時は周り、周囲の景色はオレンジに染まる。宮藤は夕日の方を見ながら飛行していた。あまりにもその景色が綺麗だったからだ。

その時、宮藤はエイラが手に何かを持っているのに気づく。よく見るとそれは何かの枝のようであり、エイラはどこか嬉しそうに笑顔になっていた。

 

「なんですか、それ?」

「何だヨ」

「何かの枝ですか?」

「うるさいな、なんでもない…」

 

宮藤が聞くが、エイラは逃げながら枝を隠す。エイラが逃げるので、宮藤は追っかける。しかし、エイラはまるで宮藤が来るのが分かってるかのようにヒョイヒョイと避ける。

全然エイラを捕まえられないので、宮藤は息を切らしながらエイラに聞く。

 

「はぁ…エイラさんって、なんでそんなにすばしっこいんですか?」

「ふふーん、すばしっこいだけじゃこうはいかないサ。私は未来予知の魔法が使えるんだ。敵の動きだろうがお前の動きだろうが、私には全部見切れんのサ~」

「へ~」

 

宮藤はエイラの説明を聞いて初めて知り、驚いたようにエイラを見る。

 

「自慢じゃないが、私は実戦でシールド使ったことが無いんダ。あんなものに頼ってる奴は、私に言わせりゃ二流ダナ」

「そんな~!私はシールドだけが取り柄なのに…!」

 

そして、エイラが宮藤に少し意地悪に言うので、宮藤は困ったようにエイラを見る。宮藤が戦闘で取り柄があると言えば、まず最初にシールドが来るぐらいだ。それをバカにされてはたまったものではない。

 

『そんな言い方してはダメよ、エイラ』

『取り柄は人それぞれだからな』

 

その時、耳のインカムに声が二つ流れてくる。宮藤たちが気付き基地の方を見ると、二つの飛行する影が見えた。その影はサーニャとシュミットだった。

 

「お帰りなさい、皆」

「入れ替えだな」

「サーニャ!」

「シュミットさん!」

 

二人が帰ってきたウィッチ達に言う。そして、エイラと宮藤は二人の姿を見て返事を返すように言う。そして、シュミットとサーニャは帰ってきたウィッチ達の横を一度通り過ぎると、宮藤たちの横に来た。

 

「そっか、これから夜間哨戒なんだ」

「うん」

 

宮藤の言葉にサーニャが返事を返す。そう、二人はこれから一緒に夜間哨戒任務に行くのだ。

ブリタニアの時のように、サーニャの負担を減らそうとシュミットがミーナに言ったのだ。尤も、別の意味もシュミットにはあったが、ミーナは二つ返事で了承してくれた。

しかし、これから夜間哨戒に行く二人を坂本が止めた。

 

「待てシュミット、サーニャ、今夜はいい。一緒に基地に戻れ」

「え?…はい」

「了解」

 

坂本の言葉に、サーニャとシュミットは疑問に思いながらも返事を返した。そして、全員で基地に帰投したのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「サーニャちゃんこんな大きなものいつも持ってて大変だね…」

 

基地に帰投した宮藤は他のメンバーが先に上がる中、サーニャのフリーガーハマーを見ながら言う。宮藤の使う九九式機関銃に比べると圧倒的に大きなフリーガーハマーは、ユニット固定台に収められてもその重量感を持っていた。

だが、サーニャは宮藤の言葉に首を微かに横に振った。

 

「ううん、慣れてるから」

「サーニャは一人で夜間哨戒することが多かったからな、いざとなったらこのフリーガーハマーで一人でだって戦うんダ」

「うん、凄いよね!」

 

エイラの言葉にリーネも凄いと言う。基本的に夜間哨戒に出るウィッチは、単独戦闘を強いられるために武装が強力なものになる傾向があるのだ。

 

「でも、一人よりは誰かと一緒の方が寂しくないよね」

「うん」

 

宮藤の言葉に、サーニャも笑顔で答える。一人で飛ぶよりは、誰かと一緒に飛んだ方が圧倒的にいい。それに、今はシュミットが一緒に飛んでくれているから尚更であった。

 

「あ、そうだ」

 

エイラは思い出したように、手に持っていたものをサーニャに差しだした。それは、先ほどエイラが手に持っていた木の枝だった。

 

「あ、それ」

「針葉樹の葉…ですか?」

 

宮藤は先ほど見たものだったため反応し、リーネはそれが針葉樹の葉と考える。そして、エイラはそれをサーニャに渡した。

 

「ありがとう、エイラ!」

「今日、飛んでいった先にイトスギの森があってサ、オラーシャの冬景色にちょっと似てたんだ」

「昔住んでいた家にも、沢山生えていたのよ」

「へ~!」

 

エイラは、サーニャが住んでいたオラーシャの景色に今日行った場所がよく似ていたため、そこからイトスギの枝を持ち帰ってきたのだ。故郷を思うサーニャの為に、エイラが気を利かせたのだ。

その時、格納庫入り口から声がする。

 

「ここに居たのか」

「あ、シュミットさん」

「ミーナ中佐達が呼んでいた。ブリーフィングをするそうだ」

 

シュミットの言葉に、格納庫に居た者たちも全員がブリーフィング室に行く。既に中には人が集まっており、前の方には投影機があった。

そして、席に着いた宮藤たちを見て、ミーナが周りを見回す。

 

「全員いるわね」

 

そう言って、ミーナは部屋の明かりを落とす。そして、投影機から画像が映し出される。出された画像は、昼間に宮藤たちが見たネウロイの姿だった。

 

「空軍の偵察機が撮ってきた写真だ」

「…ノイズだけ?」

 

坂本の言葉にシュミットが言う。昼間に出撃していなかったシュミットとサーニャからは、ノイズしか映っていないように見えた。

 

「これが昼間現れたネウロイだ。全体を捉えようとしたらこうなった。全長は、3万メートルを超えると推測される」

「さっ!?」

「3万!?高さ30キロってことか!?」

 

坂本の衝撃発言に皆が驚く。宮藤は、手でそれが富士山の何倍かを数えていた。

そして、坂本は続けて説明をしていく。

 

「これが、毎時およそ10キロという低速でローマ方面に移動している。そして厄介なのが、こいつのコアの位置だ」

「どこに?」

 

坂本の言葉に、シュミットが聞く。すると、坂本はネウロイの頂点の位置を指した。

 

「ここだ」

「てっぺん?」

「ああ。私がこの目で確認した」

「ですが、私たちのストライカーユニットの限界高度は精々1万メートルですわ…」

 

ペリーヌの言う通り、このネウロイのコアの位置は問題があった。ウィッチ達の使うストライカーユニットの限界高度は1万メートルを超えるぐらいであり、3万メートルまで届かない。

そして、写真は次の物に替わる。そこには、何かの図面が映し出された。

 

「だから作戦には、これを使う。ロケットブースターだ」

「これがあればコアのある所まで飛べるんですか?」

「いや、そんな簡単な話ではないはずだ…」

 

宮藤が言うが、バルクホルンはこれが簡単な話では無いと言う。その言葉に同意するように、ミーナが言った。

 

「ええ、ブースターは強力だけど魔法力を大量に消費するから短時間しか飛ぶことができないわ」

「だったら、私達皆で誰かを途中まで運べばいいんだな?」

「そういうことだ」

 

シャーリーの言葉に、坂本が同意する。今回の作戦は、誰かが誰かをネウロイの位置に届ける形になるようだ。

 

「しっかし、3万メートルも上空ってことは空気も無いよな」

「え!?空気無いの!?」

 

シャーリーの言葉にルッキーニが驚いたように反応する。

 

「じゃあ喋っても聞こえないね」

「おお、かもな!」

「え!?聞こえないの!?」

 

そしてエーリカの言葉にシャーリーがそうだなと言い、ルッキーニがまた驚く。しかし、声が聞こえないことよりも更に大事なことがある。

 

「聞こえないことより深刻なのは、生命維持の方だな」

「3万メートルの超高高度は、人間の限界を超えた未知の領域よ」

「だが、我々はウィッチだ。ウィッチに不可能は無い」

 

シュミットの言葉にミーナも続けて言う。しかし坂本は、ウィッチであればこの作戦は乗り切れると言った。

そして、部屋の明かりがつけられると、坂本は周りを見る。

 

「そこで、瞬間的かつ広範囲にわたる攻撃力を備える者として…」

 

そう言いながら、坂本はサーニャを見た。

 

「サーニャ、コアへの攻撃はお前に頼みたい」

「えっ!?」

 

坂本の言葉に、何故かエイラが驚く。シュミットは驚きはしなかったが「やはり…」と小さく言う。

 

「この作戦には、お前のフリーガーハマーによる攻撃力が不可欠だ」

「はいはいはい!だったら私も行く!」

 

坂本の言葉に、エイラが手をあげながら言う。しかし、ここで坂本はエイラに質問した。

 

「ふむ、そうか。時にエイラ、お前シールドを張ったことあるか?」

「シールド?」

 

坂本に言われてエイラは手を下ろすが、今度は腕を組んで自慢げに言った。

 

「自慢じゃないけど私は実戦でシールドを張ったことなんて一度も無いんだ」

「なら無理だ」

「うん、ムリダナ…えっ!?」

 

坂本にバッサリと切られ、エイラは一瞬そのまま返事をし、そして少しして驚く。

 

「そうね、こればっかりは…」

「な、なんで!?」

 

ミーナも同意したようだが、エイラはどうやら理解していないようだった。

 

「今回の作戦はブースターを使用する上に、極限環境での生命維持、そして攻撃と、とても多くの魔法力を消費するわ」

「となれば、サーニャには自分の身を守る余裕は無い。だからもう一人、サーニャの盾となり、守る者が必要となる」

 

ミーナと坂本の言う通り、サーニャは攻撃だけに徹することしかできない。そのため、ネウロイに攻撃されたときに対する防御の役割を担う人物が必要だ。

 

「わ、私は別にシールドを張れないわけじゃないぞ!」

「だが実戦で使ったことは無い」

「その通りだ!」

 

エイラの自慢気な言い方に、坂本は頭痛がするのか頭を抱え、ミーナも「やっぱり無理ね」と言う。その反応にエイラも流石に何も言えなくなる。

そして、坂本は何かを少し考え、今度は宮藤の方を見た。

 

「宮藤、お前がやれ」

「は、はい!…え?」

「魔法力の多いシュミットか宮藤だが、シュミットには()()()()をしてもらうし、もっとも強力なシールドを張れるのはお前だ。お前なら適任だろう」

 

そう言って、坂本は言う。確かに魔法力の多い二人なら、シールドの強度も並大抵のことでは破られない。その中でも、シールドにおいて長けているのは宮藤だった。

 

「少佐、別のことというのは?」

 

そんな中、シュミットは別のことと言うのが気になり坂本に質問した。

 

「お前には、固有魔法を使って他の魔法力消費を抑えてもらいたい」

「強化を?」

「そうだ。強化を使って全員の力とブースターの能力増幅、それとサーニャへの魔法力消費を抑えるんだ」

 

坂本はシュミットに説明をする。つまりシュミットは、固有魔法を使って作戦成功率を上げる役割があるのだ。ロケットブースターに強化を掛けることで、通常よりも出力を上げて高高度まで上がる、これによりネウロイのコアを攻撃するサーニャ達の魔法力の消費をできる限り抑えるようにするのだ。

 

「分かりました」

 

シュミットも内容を理解をし、坂本に返事をした。

宮藤は突然のこと過ぎてぼうっとしてしまうが、横からかかる謎の圧力に気づいた。

 

「ん?」

「がるるるるるる」

「あわわわわわ」

 

振り向いてみると、エイラが宮藤に嫉妬丸出しで詰め寄っていたのだ。その顔に宮藤はただ、オドオドとすることしかできなかった。




冒頭のあの歌って「器の大きな人の唄」って言うんですね(最近知りました)。シュミットの固有魔法は作戦成功のカギになりました。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!
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