ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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第七話「新ユニットと差し入れ」

数日後、シュミットとペリーヌは新型のユニットが届き、格納庫に来ていた。格納庫内ではミーナと坂本もいる。ユニットが届くまでの間に二人はブリタニアから勲章を授与されたり、一階級の昇進で中尉になったりといろいろなことがあったが、割愛させてもらう。

 

「これがシュミットさんの新しいユニットで、こっちがペリーヌさんの新しいユニットです」

 

ミーナからの説明にシュミットとペリーヌは格納庫内に新しく配備されたユニットを見る。

二人はそれが見覚えのある外見をしており少し驚いていた。シュミットからしたら、前回使用していたFw190Aによく似ていたことから。ペリーヌからしたら、ガリアの生産していたユニットによく似ていたことから。

 

「これって、前のユニットの発展型ですか?」

「そうよ」

 

シュミットの質問にミーナが答える。

 

「シュミットさんのユニットは『Fw190D-9』。これは元々バルクホルン大尉が使っていたFw190D-6のテストデータを下に機体安定性を強化した最初の量産型です」

「最初のってことは、これを付けるのは――」

「現状ではシュミット一人だけということだな」

 

坂本の言葉にシュミットは目の前の台に固定されたユニットを見る。外見は前回使っていたFw190Aよりも少しスリムな外観をしており、いかにも空力がよさそうな形状をしていた。

その横ではペリーヌが新しいユニットをまじまじと見ていた。

 

「これは、VG.33ですか?」

「いいえ、ペリーヌさん。こののユニットは『VG.39』。これまでのVG.33のクワドラ12Y-31魔道エンジンを、ヒスパニアの工廠でより強力な12Y-89魔道エンジンに換装した発展型で、出力が前回の1.4倍に向上したそうです」

「へー、これがガリアの新型ユニットか……ん?ペリーヌってガリアのユニットを使ってたんじゃないのか?」

 

ミーナの説明を聞いていたシュミットがペリーヌに尋ねる。

 

「あの時使用していたユニットは『ウルトラマリン スピットファイア』で、ブリタニアから支給されていたユニットですわ」

「そうだったのか」

 

ペリーヌの説明を聞いてシュミットは納得した。ガリアはネウロイに制圧されてしまい、まともなユニットを生産する時間が与えられなかったため、ブリタニアからのユニット支給を余儀なくされていたようだ。

 

「それとペリーヌのユニットは機体のテストも兼ねている。しっかりデータを取るように」

「はい、少佐!」

 

坂本からの説明にペリーヌははっきりとした返事をする。

 

「とりあえず、今日の午後に新型のユニットのテスト飛行をしましょう」

「了解しました」

 

ミーナの提案にシュミットは返事をした。

午後になってシュミットとペリーヌは新型ユニットに足を入れていた。周りでは整備兵が最終調整を行っている。

 

「OKです」

 

整備兵の言葉に二人は頷き、そして魔道エンジンを始動する。

 

「おぉ……」

 

シュミットは思わず声を漏らす。魔道エンジンを始動した瞬間の反応からすでに違いがわかったようだ。

ペリーヌもその変化に驚いている。

 

「よしっ、発進!」

 

シュミットは勢いよく宣言し発進する。それに続くようにペリーヌも発進する。そしてそのまま滑走路を走り上空に離陸する。

シュミットは前回との違いに驚いた。

 

「速い!立ち上がり加速が段違いに違う!」

「こちらのユニットもです!」

 

シュミットとペリーヌは機体性能の違いに驚く。そしてそのまま並んで飛行する。

地上ではその光景を全員が見ていた。

 

「ほう、一気に上がったな」

「1000mへの上昇速度も前回より速いわね」

 

坂本とミーナがその光景を見ながら感心する。

 

「すごいな、前よりもうんと速いぞ!」

「いけいけー!」

 

シャーリーとルッキーニは興奮したようにはしゃぐ。

上空ではシュミットが地上に向けて合図をする。

 

「こちらシュミット。限界高度まで上昇します」

 

そう言って、上空に体を向けて飛び始める。

 

「いくぞペリーヌ!」

「はい!」

「魔道エンジン出力最大!」

 

シュミットとペリーヌはユニットの魔道エンジンの回転数を最大まで回す。急激に回転数を上げたユニットは勢いよく上昇し始める。その途中、サーニャとエイラが上空で二人の上昇を記録していた。

 

「……ペリーヌさん、上昇が止まりました。シュミットさん、高度12000mに到達、まだ上昇しています」

 

ペリーヌの上昇は止まった後、シュミットはさらに高高度に上昇していく。その速度は前回、前々回使っていたFw190Aを遥かに上回る速度だった。

 

(速い!ここまでぐいぐいと昇るなんて!)

 

そして高度13000mに到達する前に、シュミットは上昇が止まり始めた。

ここでシュミットはあることを思いついた。

 

「中佐、これから強化を使ってさらに上昇してみます!」

 

そう言って固有魔法を自身のユニットに発動する。すると、さっきまで咳き込んでいたユニットは息を吹き返し、再び上昇を始めた。

 

「シュミットさん、上昇を開始。さらに高度を上げていきます。すごい……」

「ほえ~…」

 

それを見ていたサーニャとエイラは驚いたように声を出す。

 

「すごいわね、強化の力が合わさってさらに高度を上げていくなんて」

 

ミーナは感心したようにその光景を見ていた。

そしてシュミットはこの日、高度14000mまで上昇した。

 

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「すごいよシュミット!高度14000mだって!」

 

地上に降りたシュミットを出迎えたのは、ルッキーニの無邪気な喜びの声だった。ルッキーニはシュミットに飛んで抱き着く。そこに他の皆も集まってやってくる。

シュミットはルッキーニの言葉に驚いたように目を開いた。

 

「14000?そこまで行ってたのか!?知らなかった……」

「へ?」

 

シュミットの衝撃発言に皆は間の抜けた声を出す。

その反応を見てシュミットは少し頬を赤くし、指で掻きながら答えた。

 

「いや、なんていうか……あまりにも上昇するもんだったから、ずっと伸びていくんじゃないかなと考えながら飛んでたもんだから、高度とか全く考えてなくて」

 

シュミットは頬を赤くして笑顔でそのことを説明した。それを聞いた全員がそんなシュミットの姿を見てポカンとしていた。

 

「……ん、皆どうしたの?」

 

シュミットは皆のその反応を見て不思議に思いながら見ていた。

 

「……シュミットさんがそんな笑顔で何か話しているのを見るのは初めてですわ」

 

比較的シュミットと共にいることの多いペリーヌが言う。それに賛同するように他の皆も頷く。

その後、気を取り直してシュミットとペリーヌは武装を持ち、再び上昇した。今度は高度5000mでの最高速度の計測をするためだ。

 

「よしっ!行くぞ!」

 

そうして、シュミットはMG151を背負ったまま最大までユニットのエンジンを回した。

 

「シュミットのやつすごい加速だな」

「今何キロだ、ルッキーニ?」

「時速650キロ!……670…690…」

「すごい……」

 

すでにペリーヌの加速が停止した後でも、シュミットはまだ加速する。

 

「700キロ!700キロに入ったよ!」

 

ルッキーニがはしゃぐ。501の中で現在700キロを超える速度を出したのは、シャーリーの他にシュミットが初である。

 

「すごいな、カールスラントの新型は」

「そうだねー」

 

バルクホルンとエーリカも感心したように見ていた。

そしてシュミットはここでもミーナに進言した。

 

「こちらシュミット、これより強化を開始します」

 

そう言って、上昇テストの時と同じように固有魔法をユニットにかける。

 

「また加速したな」

「時速720…740…770…!」

「どんどん加速しているぞ!」

 

そのあまりの変化に全員が驚く。

 

「速度790キロ!すごい、すごいよ!」

 

ついにルッキーニが驚いたようにはしゃいだ。その速度はシャーリーの出した最高記録に近づく速度だった。

そして、シュミットは加速が止まったのを確認し、滑走路へ戻ってくる。

 

「ルッキーニ、何キロ出た!?」

 

シュミットはルッキーニに聞いた。

 

「すごいよシュミット!790キロ!シャーリーの記録に迫ったよ!!」

「本当か!?」

 

ルッキーニが興奮しながらシュミットに報告した。それを聞いたシュミットは嬉しくなり子供のような反応をした。

それを見ていた他の皆は、シュミットのそんな姿に苦笑いをしていた。

 

「なんというか、子供っぽいところもあるんだな……」

「そうねぇ」

「というか、私はあいつのあんな笑顔見たことなかったぞ……」

「私もだ……」

 

それぞれが別々の反応をしていたが、別段シュミットは気にしていなかった。

 

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その日の夜、サーニャは夜間哨戒に出るために目を覚ました。そして基地の中を歩いているときふと、とある部屋から光が漏れて明るくなっているのを見つけた。

 

「……?」

 

気になったサーニャは、その光の漏れている部屋に近づく。そこは食堂であり、中からトントンと小刻みな音が聞こえていた。

気になったサーニャは部屋の中をそっと覗く。そして目の前の光景に驚いた。

 

「~♪」

 

なんとそこには鼻歌を歌いながら何かを作っているシュミットがいたからだ。

 

「シュミット…さん?」

 

サーニャの言葉に気づいて、シュミットは振り向いた。そして、サーニャに優しく微笑んだ。

 

「やぁサーニャ。ちょっと待っててくれないか」

「……?」

 

そう言ってシュミットは手際よく厨房で作業する。その光景にサーニャは首を傾げた。

そしてシュミットは水筒と小さな包みをサーニャに渡した。

 

「はい、これ」

「あの、これは?」

「サンドイッチ。一応夜間哨戒中に食べてね。それとこっちの水筒にはミルクティが入っているから、寒くなった時にどうぞ」

 

サーニャは驚いた。今まで夜間哨戒の時にこのように差し入れをした人はおらず、シュミットが初めてだったからだ。

 

「あ、ありがとうございます」

「いやいや」

 

サーニャのお礼の言葉にシュミットは嬉しそうに応え、厨房に向き直った。そして、厨房内の道具を片付け始める。

 

「昼間のテスト、すごかったですね」

「ああ、あれは私もすごいと思った。カールスラント様様だ」

 

そう言うシュミットは、後ろを向いてて表情こそは見えなかったが、その声は子供のように楽しそうだった。それを聞いてサーニャは、こんな声もするんだと思った。

その時ふと、サーニャは気になることを思い出しシュミットに質問した。

 

「そういえば、シュミットさんはどうして厨房にいるのですか?」

「ん?あー、その、あはは……」

 

その質問にシュミットは振り向き、少し恥ずかしそうにしながら腰に手を当て頬を掻き始めた。そしてサーニャに言った。

 

「その、サーニャのためなんだ」

「えっ、私のため……ですか?」

「うん」

 

そう言ってシュミットは説明した。

 

「サーニャが一人で夜間哨戒をしているって、ここの整備兵に聞いたからさ。だから一人で大変だなと思って、何かできることは無いかなと考えたんだ」

 

そう言うシュミットに、サーニャの心は温かくなった。そして、思えば最初にお礼を言われた時もこんな感じに心が温かく感じたとサーニャは思い出した。

 

「その……ありがとうございます」

「どういたしまして」

 

サーニャは頬を赤く染めながらもう一度お礼を言う。それを見てシュミットも笑顔になる。

 

「夜間哨戒、頑張ってねサーニャ」

「はい」

 

そして、シュミットの元気付けの言葉にサーニャは返事をし、夜間哨戒に向かったのだった。

食堂から出ていくサーニャを見送ったシュミットは、その扉をずっと見ていた。

 

(夜間哨戒で一人、それが毎日だもんな……)

 

その光景を頭に浮かべたシュミットは表情を変え、少し下を向いた。それは先ほど見せた優しい笑顔ではなく、すこし寂しさの混じった真剣な顔だった。

そしてシュミットは何かを決めたように顔を持ち上げた。

 

「明日、ミーナ中佐に聞いてみようかな……」

 

そう呟いて、シュミットは残りの後片づけを消化し始めるのだった。




というわけで、新ユニットはFw190D-9となりました。
ちなみにペリーヌのスピットファイアの設定は、史実におけるイギリス製航空機を使用していた自由フランス空軍を参考にしました。
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