ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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第九十四話です。前回サーニャが何をしたのか今回明らかになります。どうぞ!


第九十四話「ロマーニャ基地のお宝」

「ね~、どこまで行けばいいの~?」

 

ルッキーニがぐったりとした様子で言う。洞窟に入ってからかなり時間がたっており、ルッキーニはもう歩き疲れ始めていた。

 

「頑張ってルッキーニちゃん」

「もう少しですわ。この光の先に必ず」

「ホント?」

 

疲れた様子のルッキーニにリーネが鼓舞する。そしてペリーヌの言葉に芳佳が聞く。そんな四人の目の前には洞窟の終わりの地点が見え、そこから光が漏れる。

 

「うわあ!広~い!」

 

芳佳は光の向こう側に付くと、その周りの光景に驚く。

 

「ここが地図にあった宝の部屋!?」

「間違いありませんわ!ついに辿り着いたんですわ!」

 

リーネの言葉にペリーヌが頷く。先ほどまでの洞窟の景色から一変して、広い空間へと変わった周りの景色。その中央には玉座に座っている王様のように大きな石像がそびえていた。

 

「おっきい石像…鎌倉の大仏ぐらいあるよ?」

「でも、ちょっと怖いね…」

 

芳佳は石像を見て、扶桑にあった鎌倉の石像と比べる。逆にリーネはその石像が鎧兜をして自分の方を向いていたので少し怖く感じていた。

しかし、ペリーヌはまだ地図と睨めっこしていた。

 

「…あそこですわ。あの石像の奥、そこにお宝が眠っているはず!」

 

そう言ってペリーヌは石像の方に歩き出した。続いてルッキーニも歩き出そうとし――立ち止まった。

 

「っ!」

 

ルッキーニはふと横を見る。そして、そこに掛かっていたある物を見て目を輝かせたのだった。

 

「何処?何処ですのお宝は…いいえ、子供達の橋は…」

 

その間にもペリーヌは石像の周りを散策する。しかし、彼女のお目当ての物はなにも見当たらなかった。

その時、ルッキーニが声を出す。

 

「ティッティティーン!どう、かっちょいい?」

「似合う似合う!」

「ルッキーニちゃんかっこいい!」

 

ルッキーニはそう言って、壁に掛かっていたレイピアと盾を手に決めポーズをとる。そんなルッキーニに芳佳とリーネは拍手をしながら言った。

 

「きゃあ!!」

「え?」

 

その時、石像の方向から悲鳴が聞こえる。芳佳達が声に気づき振り向くと、なんと先ほどまで座っていたはずの石像が立ち上がっているではないか。そして同時に、石像はその右手を大きく上に振りかぶっており、その先にはペリーヌが居た。

 

「石像が…!」

「ペリーヌさん逃げて!」

 

リーネが大声で叫ぶ。

 

「駄目ですわ!橋を架けるまで諦めるなんてできませんわ!」

 

ペリーヌはそう言って、石像の振り下ろされた右腕を回避する。石像の重さがあってか、先ほどまでペリーヌが立っていた石床は大きく陥没した。

 

(…ですわ、丸腰では流石に分が悪いですわね…一体どうすれば!)

 

しかし、ペリーヌからしても今の状況はどうしようもできない。素手で石像と戦うことなど無理に等しいのだ。

 

「ペリーヌ!」

 

その時、ペリーヌは後ろから声を掛けられる。ペリーヌが振り返ると、ルッキーニが大きく振りかぶってあるものをペリーヌに投げた。それは先ほどルッキーニがポーズを決めて遊んでいたレイピアだった。

ペリーヌはそれを確認すると、持ち手の部分を空中でキャッチする。そして、レイピアを石像に向けて構えると、しっかりと握りしめた。

 

(お父様、お母様、そしてガリアの皆…私は負けませんわ!)

 

その間にも、石像は空中に浮いているペリーヌの体をめがけて拳を構える。そして、拳の位置にペリーヌが来たと判断した石像は大きくその拳を突いた。

しかしペリーヌは空中で体勢を立て直すと、その拳の上に着地した。そして、拳の上で足を思い切り踏み込むと、そのまま石像に向けてジャンプした。

 

「やあああ!!」

 

そして、ペリーヌは右手に構えたレイピアを石像に突き刺した。

 

「トネール!!」

 

気合一発、ペリーヌは掛け声と共に雷撃をレイピアに伝わせる。レイピアを伝って石像に送られた電撃は、その表面だけでなく内部までエネルギーを伝わせた。

 

「ペリーヌさん!」

 

その光景に芳佳達は只見ていることしかできなかった。しかし、ペリーヌが地面に降り立ったと同時に勝敗は決した。

先ほどの雷撃を受けた石像は頭部を地面に落下させた。そして次に体の表面が剥がれ落ちるようにボロボロと崩壊していき、最後には地面に倒れた。

 

「やったー!勝った勝った!」

「凄い!」

「ペリーヌさん凄い!」

 

三者三様の称賛をペリーヌに向ける三人。その時、部屋中に石同士が擦り合うような音が鳴り響く。

 

「見て!」

 

芳佳が気付き指を差す。そこには、先ほど石像が座っていた玉座の下部分が少しずつ開いていき、そこから光が漏れ出していた。

 

「あんなところに扉が…!お宝!」

 

ペリーヌは予想外のところに隠し扉があることに驚くが、すぐさまその先にお宝が眠っていると察して開いた扉の奥に入った。

部屋の中に入ったペリーヌは、周辺の光景の変化にまず驚いた。先ほどまで薄暗かった空間から一変、解放された天井から差し込む日の光は部屋全体を眩く照らしていた。

 

「こ、ここが宝の間…」

 

そしてペリーヌは、部屋の周辺を確認する。しかし、そこにはお宝らしき黄金に輝くものは一つも無かった。代わりに、部屋中には様々な種類の植物が植えられていた。

ペリーヌは近づいてその植物を見た。

 

「これはハーブ…クローブにローリエ…オレガノにソフラン、そしてこれはコショウ…」

 

ペリーヌは植物の名前を一つ一つ当てていき、そして気づく。

 

「まさか…これがお宝?」

 

ペリーヌはその植物を見てそう結論付けた。そう、近世における時代において香辛料は貴重な物、中でもコショウの価値は金と同等とまで言われ、その存在が戦争の引き金ともなったと言われる代物であった。時代背景から見ればこれだけの香辛料の数はまさにお宝と言える代物である。

しかし、ペリーヌは肩をがっくりと落とした。そして、目には涙を浮かべる。

 

「ペリーヌ?」

「えっ!?どうして少佐がここに!?」

 

その時、香辛料の山の中から坂本が体を起き上がらせる。突然現れた坂本の姿に驚くペリーヌ、しかし坂本はそんなペリーヌを見て疑問に思った。

 

「…ペリーヌ、泣いてるのか?」

「…これが私の探していた宝だったなんて」

 

坂本がペリーヌに聞くが、ペリーヌは俯いて小さな声で言った。

 

「どれも只の香辛料…昔なら貴重な財産と言えますが、今では簡単に手に入るものばかり…これではガリアの復興資金には到底なりませんわ!」

 

ペリーヌはそう言って涙をボロボロとこぼした。昔でこそ、香辛料は殆ど栽培がおこなわれておらず貴重な代物であったが、時代が経つにつれて栽培がおこなわれ、その量は今では簡単に手に入るほどにまで増えていた。価値など既に落ちたも当然の代物だった。

しかし、そんな風に泣き崩れているペリーヌの肩に坂本は手を置いた。

 

「泣くんじゃないペリーヌ、大切なのは気持ちだ」

「気持ち…」

「そうだ。お前のそのガリアを思う気持ちこそが、大切な宝なのだ」

「…少佐」

 

坂本の言葉に、ペリーヌは顔を上げる。そしてそのまま坂本の顔を見た。

その頃、部屋の外ではシャーリー達が芳佳達の元へ現れた。

 

「おっ、ルッキーニが居たぞ!」

「宮藤たちも居るな…よし、行くぞハルトマン」

「お、重い…」

 

シャーリーは真っ先にルッキーニの姿を確認した。その後ろから来たバルクホルンも芳佳の姿を確認し、後ろに居たハルトマンに言う。そのハルトマンはと言うと、坂本によってダウンしたミーナをおぶってやって来たため少し疲れた様子だった。

 

「おーい、何やってたんだよー!」

「あ、シャーリーさん!」

「心配したんだぞ」

 

こうして、宮藤たち捜索隊も無事合流したのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

一方その頃、基地の浜辺。

 

「…うぅん」

 

疲れの溜まっていたシュミットは外の気温が少しだけ下がったのを感じ、瞼を少し持ち上げた。

 

(…ん…あれ?)

 

その時、シュミットは持ち上げた瞼の先にある物を見つける。銀色の髪をし、シュミットの様子をじっと見ている人影が見えた。まだ僅かに寝ぼけていたシュミットは頭の回転が回っていなかったが、次第に回転するにつれてその人物をはっきりと認識した。

 

「…サーニャ?」

「おはよう、シュミットさん」

「ああ、おはよう…」

 

シュミットはサーニャの顔を見て聞くと、サーニャは挨拶をしてくる。そして同時に、シュミットは自分に違和感を感じた。

まず顔の頬あたりを触れる感触を感じたのだ。それはサーニャの腕であると理解した。そして今度は後頭部にも感触を感じていた。

 

「――え?」

 

シュミットは気付いた。今自分がどのような状態になっているのかを。今現在シュミットは、サーニャの膝に自分の頭をのせていたのだ。そう、今シュミットはサーニャに膝枕をしてもらっている状態だったのだ。

シュミットはみるみるうちに顔を赤くする。

 

「サ、サーニャ…その、これは…」

 

シュミットは思考が若干パニックになりながらサーニャに聞く。そんなシュミットの様子を見てサーニャは少しおかしく思ったのか微笑んだ。その横に居たエイラはかなり不機嫌そうな顔をしてシュミットの方をじっと見ているのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

その日の夜、洞窟を探索した芳佳とリーネ、ペリーヌの三人は部屋に集まって話をしていた。

 

「あそこは古代の遺跡で、ウィッチが宝を守る為に掛けてあった魔法がまだ残っているんじゃないかって。ペリーヌさんを襲ったのもそれかも」

「全く迷惑な話でしたわ」

 

リーネの言葉にペリーヌはあの出来事を思い出しうんざりとした様子で返す。

その時、芳佳がペリーヌにある物を差し出した。それは便箋の入った封筒だった。

 

「はいこれ、ペリーヌさんに手紙が届いていたよ」

 

ペリーヌはそれを受け取って中身を見る。

 

「あら?ガリアからですわ?」

 

ペリーヌはその手紙の送り主がガリアからであることを知り、中を急いで確認した。

 

「これは!」

 

そしてペリーヌは、手紙と共に送られた一枚の写真を見て驚く。

「橋だ!」

「わぁ!皆で造ったんだね!」

 

芳佳とリーネもその写真を見る。そこには、崩れた橋の上に新たに木で造られた橋が出来ており、その上にガリアの子供たちがカメラの方を向いてポーズをとっている写真だった。そう、ガリアの子供たちが復興している人達と協力して、崩れた橋を直したのだ。

ペリーヌは中に同封された手紙を読んでいく。そして、その手紙を読み終わるとギュッと胸元で握りしめた。

 

(皆で力を合わせて作った橋…これが本当の復興なのかもしれませんわね)

「良かったねペリーヌさん」

「ええ、私も一刻も早くネウロイを倒して、そしてまたガリアに…!」

 

リーネの言葉にペリーヌは決意を新たに言う。

 

「私も行きたいな!ガリアに!」

「うん、行こうよ!」

「まあ、その時は道案内ぐらいさしてあげましてよ?」

 

芳佳とリーネの言葉にペリーヌが言う。そんなペリーヌの言葉に二人は笑顔になる。

 

「ありがとう、ペリーヌさん!」

 

芳佳がペリーヌにお礼を言った。そのお礼の言葉に、今度はペリーヌも笑顔になるのだった。

丁度その頃、レクリエーションルームでは坂本が窓の外を見ながら口を開いた。

 

「そうか…謎の多い基地だ」

 

そう言って坂本は月を見た。その時、ふとあることを思い出した。

 

「そういえば、中佐はどうしたんだ?」

『え?あ~…』

 

先ほどから見えないミーナの姿に坂本が疑問に思い聞いた。しかし、ハルトマンとシャーリーは互いに顔を見合わせ、バルクホルンは何も覚えていない坂本に困った様子だった。

その頃、基地の浜辺では。

 

「………はぁ~……」

 

浜辺で一人、両膝を抱えながら月夜を眺めているミーナの姿があったのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

基地でそのようなことが起きている頃、アドリア海上空ではシュミットとサーニャが夜間哨戒に出ていた。

 

「…」

「…」

 

互いに無言のまま飛行する二人。しかしシュミットは、海でのことを思い出し頬を赤くしながらサーニャに話し始めた。

 

「サーニャ」

「え?」

 

突然話しかけられたサーニャはシュミットを見る。そんなサーニャにシュミットは頬を掻きながら恥ずかしそうに言った。

 

「その…ありがとう。膝枕してくれて」

「ううん。シュミットさんが喜ぶかなって思って」

 

シュミットの言葉にサーニャは微笑みながら言った。その様子を見て、シュミットは以前のサーニャならこんな大胆なことをしなかっただろうと思い、サーニャが変わったと感じた。

 

「おかげで疲れもしっかり取れて、元気になったよ。サーニャのおかげだな」

 

そう言ってシュミットはサーニャに微笑んだ。そんなシュミットを見てサーニャも嬉しくなり頬を緩めた。その時だった。

 

「っ!」

「なっ!」

 

突然、サーニャの魔導針の色が緑色から赤色へと変化した。突然のことに二人は驚くが、すぐさま自分の持っている武器を構えた。それはネウロイを感知したという合図であり、ネウロイがこの近くに居ることを示していた。

 

「方位80…高度8000…速度200ノット…」

「今までのネウロイに比べたら遅いな…」

 

サーニャが魔導針で感じたネウロイの反応を口に出していく。それを聞きシュミットは冷静にネウロイの分析を行う。

それと同時に、サーニャの言った方角からネウロイが姿を現した。




昔なら価値の高いものが、時が経つにつれて価値が下がっていく。ある意味残酷ですね。そしてサーニャさん大胆…。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!
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