バーサーカーしかいねえ! 作:安珍
あの後イバラギンとスマブラで遊んだら(鬼仕様コントローラーを使った)「少しは手加減をしろこの鬼!」と泣かれた。(ほっこり
茨木童子が来て早三日目。
お菓子で餌付けしたり、ゲームで娯楽提供したりして割と仲良くなった。
彼女はやはり自由なものが好きみたいで、専らやるゲームといえばーー
「おい、マスター! 追っ手だ、早く物をトラックに入れろ!」
「ちょっと待ってくれ今運んでる!」
絶賛銀行強盗の途中である。
題名はあえて出さない。分かった人は今日から君もフレンズだ。
「ちぃっ、吾が時間を稼ぐ。汝は荷物を運べ!」
「死ぬなよ! 体力に気をつけろ」
「誰に物を言っておる!」
向こうの画面では茨木童子が警官に向かってショットガンを連発していた。かなり数が多く苦戦しているようだ。
しかしそこはサーヴァント。持ち前の反射神経を使って対応している。
「後一つ……茨木、撤退だ!」
「あぁ、今ーーぐぁっ!?」
「茨木!」
最後の荷物をトラックに乗せたところでトラックに乗り込もうとしたところ、茨木が撃たれてダウンしてしまっていた。
「くぅ、抜かったか! 吾のことはいい! マスターは先に離脱しろ!」
「ダメだ、俺は茨木のマスターだ。見捨てるなんてできるかよ!」
すぐさま茨木の元へと戻り戦闘を開始する。
警官は無尽蔵に沸き、立香を見つけるやいなや撃ち始めた。
「くっ、愚か者め……」
「今更だろ、俺がなんとか隙を見つけて蘇生させる!」
「ふん……礼は言わぬぞ」
その後、なんとか態勢を立て直しダッシュして見事クリアした。
「なんとかクリアできたな」
「うむ、この緊張感、そして蹂躙感、たまらぬな。何かを強奪するというのは素晴らしい」
「はは、ゲームもいいもんだろ。しても文句言われないしな」
「フハハ、体を動かせぬのは物足りないが、良い、気に入った。しばらくはこれに興じるとしよう」
そう言ってもう何回か強盗を繰り返す。もう夕飯の時間になり始めていたので、一旦ここで解散、というときに茨木はあるものを発見した。
「む、これはなんだ? マスター」
「あぁそれは漫画だよ。読んでみたら?」
そう言うと、茨木はペラペラとページをめくり始める。
「ふむふむ……戯画というやつか。随分と絵柄も変わったな」
「まぁ時代が変わったからね。一応全巻あるけど、読む?」
今茨木が読んでいる漫画は、鬼の手を持つ教師が小学校で妖怪を退治しながら生徒と絆を育む物だ。中々に面白い回もあれば、怪談や妖怪ならではの怖い回もあった。今では古き良き名作として語られている代物だ。
「うむ、人に宿る鬼の手とは面白そうだ。持っていくぞ、マスター」
「分かった。夕飯が終わったら運ぼう」
そう言い交わし、夕食の後、茨木の私室に某漫画を全巻持って行った。楽しんでくれると良いのだけど、と立香は思う。
その日の夜のことである。
いつものようにマスター訓練をマシュと終え、慣れない戦闘訓練でヘトヘトになりながら自室に帰宅した立香はシャワーを軽く浴びてすぐに布団にダイブした。
そしてそのまま眠りにつき、ふと目を覚ますと、ゴソゴソと自分の布団の中に何かが蠢いている気配を感じる。
「な、なんだ!?」
ガバッと掛け布団を上げ中を見ると、そこには涙目で震えながら立香にしがみつく茨木童子の姿があった。
「な、汝ぇぇ……なんだあの漫画はぁぁ!」
「え、え?」
「あんな妖怪なぞっ、見たことも聞いたこともないぞ!」
「妖怪って……えっとどの話?」
「ぶ、ブキミちゃん……」
「あぁ……」
ブキミちゃんとは、夢で現れる少女の幽霊だ。ややこしい道筋を覚えて進まないと夢に取り込まれる話だったか。
茨木童子は平安時代の妖怪である。つまり現代妖怪については全く知らないのだ。
「わ、吾はこういう結界などという卑怯な手は嫌いなのだ。怖いとかではないぞ! 嫌いなだけだ! しかし、汝は吾に嫌いなものを見せた!」
「う、うん……ごめん」
「よって! ……よって、今宵は」
「うん?」
「今宵は……吾と共に眠れ。あと……腕枕だ、腕枕をしろ」
「うん!?」
最後の要求についてはさっぱりわからなかった。怖いから一緒に寝ろというのは分かるが腕枕も所望するとは何事か。
「……実は面白くてその後のもちょっとだけ見たのだ」
「あぁ……枕返しの回か」
枕返しとはブキミちゃんを収録した巻数のもう一個後の巻にある話だ。枕を返されるとパラレルワールドに行ってしまい酷い目にあわされるという。
「いいか!? 怖いわけではないが汝には責任を取ってもらうだけだからな!」
「分かったからその言葉を大きな声で叫ばないでくれ……」
もしこれマシュが聞いていたらと思うと心臓に悪い。立香としては貸したのは自分だしと断る理由もなく布団をかけ直す。
「吾より先に寝るなよ、絶対だぞ」
「はいはい、ほら、腕枕だったでしょ」
左腕を伸ばし、その上に茨木が頭を乗せる。そして安心したのかすぐに寝息を立てた。
その様子に立香は微笑みながら、少し頭を撫でて明かりを消し、自身も寝に入る。
「……………」
「……………」
「……………ううん」
「いっつ!?」
角が刺さった。
この小説は100%にわか知識でできています。
Q:どうして鬼であるイバラギンはブキミちゃんを怖がるの?
A:鬼は大抵精神攻撃に弱いと相場が決まっているから(作者調べ)