違うんです。地球防衛軍とモンハンが悪いんです。
ほんと許してください!なんでもしますからぁ!
20xx年
前回のあらすじ:男たちの熱いレスリング♂
俺たちは正気に戻り、自分たちの行いにひどく後悔しつつ実験を再開することにした。
「……次は俺か。もうこんな任務さっさと終わらせちまおうぜ。」
米人は500円を袋から取り出すとおもむろに投入口に入れる。
そして適当な数字をピピピッと押す。先程から汚物を吐き続けていた博士もなんとか平常心を取り戻したのか、口をぬぐいながら俺の隣に立つ。
「うぷ…………これで何本目だ?」
「これで5本目だ。管理者のくせに把握していないでどうすんだよ。職務怠慢か?」
俺は溜息をつきながらヤレヤレと首を振る。
「誰のせいだと……。「お?なんだこれ。」
博士がなにか言いかけたところで商品が出てきたようで、米人が缶を取り出す。
見てみると黒い缶で、中に何が入っているか判別できない。
「なんだよそれ?」
「分かんね……とりあえず飲んでみるか。」
米人はカコッと缶を開け、口元に運ぶ……が寸前で止まる。
そして顔を思いっきりしかめたと思ったら缶を捨てる。
捨てられた缶からはドロッと少し黄ばんだ色の液体が漏れ出す。
米人は鼻を抑え缶を睨みつける。
「いきなり缶を投げ捨ててどうしたんだ?」
俺は米人の行動がいまいち理解できずに首をかしげる。
「おい、あんた!食品以外が出るなんて聞いてねぇぞ!?」
米人は俺に向かっていきなりキレる。
俺は不思議に思い、米人が投げ捨てた缶を見てみる。
別に不思議なことは無いように思ったが、どこか嗅いだことのある匂いが部屋に漂う。
「もしかして…………。」
俺は黄ばんだ液体に鼻を近づける。
すると鼻の奥を貫くような刺激のある匂いが液体からしてくる。
間違いないこの匂いは
「ガソリンじゃねえか!」
米人がキレた様子で缶を蹴飛ばす。
彼の丸太のような足で蹴られた缶は空中で粉微塵になり、あたりにガソリンをまき散らした。
こえ〜……この自販機ガソリンとかも出てくんのかよ。
俺が以前検査した時には10個の内ほとんどががスナック菓子や、飲み物だったので油断していた……1個だけヤバイのが出たがそれ以外は至って安全だった。相手はあくまでSCP。もっと注意してかからないとな。
俺は米人にもっと注意するように声をかけ、自販機の前に立つ。
俺は袋から500円玉を取り出し緊張しながらもボタンを押す。
押した番号は263。特に意味はない。
ガコンと音を立てて取り出し口に商品が落ちてくる。
恐る恐る手を突っ込み、商品を触れる。
触った感じからして缶のようだ。
手を引き抜こうとしたが、相手がscpだと自覚し直してしまったためか体が固まる。
(またガソリンとかじゃねぇよな……ええい、どうとでもなれ!)
思い切って手を引き抜く。
俺の手に握られていたのは緑色の缶だった。
ラベルには日本語でデカデカと商品名が記されているため、一応日本の商品みたいだが……
『3種の緑色ピーマン100パーセント生搾りスパークリング!』
(の、飲みたくねぇ……)
見るからに不味いことは確定している。さっきのガソリンよりも危険なんじゃねぇのかコレ?
商品名は日本語で書かれているので米人は「なんだこれ?」と訪ねてくる。
なので俺は旨い酒だと言って米人に渡すと彼は嬉しそうに受け取り、缶を開け一口煽る。
「ボブドベランチュ!!?」
結果、彼は青汁の時の数倍部屋を転げ回った。
ここからは順調に検査が進んだ。
7本目……米人は謎の缶詰を取り出す。
パッケージが英語なので読めなかったのだが、開けて見ると肉のような謎の個体が出てくる。非常に美味だったが何の肉かは結局分からなかった。
8本目……今度は俺のよく知るお菓子が出てきた。
ただパッケージには『やんや○ぼー。ピーチ味』と書かれていた。意外にイケた。
「よし。じゃあ次は俺か。」
「ちょっと待て。」
9本目を買おうとした米人に博士が声をかける。
「なんだよ?さっさと終わらせて次の検査に行きたいんだけど?」
「はぁ〜……お前ら忘れているかもしれないが、私は『金を全て使い切るように。』と言ったはずだぞ?」
博士はため息をつきながらそう伝える。
そんなこと言われたっけか?全く覚えていない。
第一気づいていたのなら、もっと早くに行って欲しいものだと思う
「おいどうすんだよ?まだ俺とあんたを合わせて…………何枚だ?」
「今まで8本買ったのなら、残り192枚。96000円残っている。」
博士が簡単な計算をしてくれる。
この程度の計算でドヤ顔をしている博士にイラっとしながらも、袋から小銭を鷲掴みする。そして自販機の前に移動し硬貨を連続投入していく。
「残ってるんだったらまとめて使うだけだよ。俺が後からもう一本買えるように500円だけ残して使い切っちまおうぜ。」
「まじかよっ。めんどくせー……。」
米人もイヤイヤながら手持ちの袋から500円硬貨を纏めて取り出し、次々と自販機につぎ込んで行く。
数自体は結構あったがさほど時間を取らずに100数十枚の500円玉を入れ終わる。
「数字はどうする?」
「うーん……特に考えてないけど、まあ俺の誕生日に合わせて1、1、4にするけど構わないだろ?」
米人の質問に俺は一言「別にいいぞ」とだけ返す。
すると米人の男はポポポンとパネルをタッチする。
今更だが投入した金額によって出る内容は変わるのか?
90000円越えの商品……500円でガソリンが出たりするのに、100倍以上の価値のものってなんだ?
ベチャッ
投入口に何かが落ちた音がする。
それは今までの固形物が落ちたような音ではなく、何か液状のような物が落ちたような……そんな音だった。
ベチャ べチャ
音は一度だけでなく、何度も不定期な感覚で続く。
聞くだけでその音は耳の奥をかき回されたような不快感が襲う。
嫌な予感がする。
カラダ中に鳥肌が立ち、寒気がする。
全身の細胞が逃げ出せと叫んでいる。
歯が震えガチガチと音を立てる。
何が落ちているのかなんて分からない。どんな色なのかも検討がつかない。
ただ何かが来る。
俺は泣き出したくなるようなこの感覚に覚えがある。
今まで何ども体験した。
そしてその後は必ず死にかけてきた。
俺がこのくそったれな施設で働き始めてから8年間。
この感覚を感じた後には
決まって【keter】の前にいた。
ガタン
取り出し口の蓋がひとりでに開く。
その瞬間、異臭が辺りに漂い始める。
米人と博士も異変に気付いたようで自販機から距離を取り注視する。
ソイツが取り出し口からずるりと出てくる。
思わず絶句した。
今まで俺は様々な化け物を見てきた。
しかし……しかしだ
ここまで醜い生き物は見たことがない。
全身が黒いジェルのような物でできており、無数の触手のようなものが体から伸びている。
全身に骨のような白い物体が見え隠れしており、全身のいたるところに口のような機関がある。その中でも中央あたりにある口はひときわ大きく、見ると口の中に口がある。
全身がグジュルグジュルと嫌な音を立てながらうごめいており、見ているだけで吐き気を催す。
全長は1m程だが、その小さな体にこの世の醜さを全て詰め込んだような見た目をしている。
「う…………」
博士がそいつを見てうめき声をあげる。
博士の方を見ると、俺とは比較にならないほど震え上がっており目には光がない。
そして
「うわああああああああああ!!」
喉が張り裂けんばかりの悲鳴をあげる。
俺はアレに目を向けなおす。
アイツは未だに体をうねらせており、何を考えているか全くわからない。
「なんなんだよ………お前は。」
SCPー???? 【無形の落とし子】
次回は2月以内に出します。
できれば上旬以内に…………