・・・まあいっか(・ω・)
20xx年x月x日
SCPー020ーJP同居 2日目 AM8:30
「お、おはよう・・・。」
「・・・・・・(ガタガタ)」
俺氏。少女に本気でビビられ傷心。
原因は昨日の俺の奇行だろう。
うん・・・まあ、我ながらあの姿にはドン引きだった。
気絶したのは麻酔針を首筋に打ち込まれ眠ったからだそうだ。その後、博士に見せてもらった映像には少女の前で全裸になろうとする男の姿があった。もちろん俺だ。
流石に半日時間を置いた程度では少女の好感度は最低値から変わっているはずもなく、半径10メートル内に近づこうものなら全力で逃げられる。心が折れそうだ。
一度遠くに離れると警戒レベルを下げてくれたのか睨むのをやめてくれた。
どうしたものかと頭を悩ませるが打開策が見つからず、ただただ無駄な時間が過ぎていく。
(下手に話しかけるのは逆効果だよな・・・。)
俺は少女に警戒されないように部屋の隅で空気と同化した。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「おい、起きろ。」
ゴスっと頭を殴られる。
どうやら寝てしまっていたようだ。頭を殴ったやつの顔を見ると博士だった。
「優しく起こしてくれてもええやん・・・。」
「Dクラスにそんな気を使うと思うのか?」
まあ、それもそうか。
この扱いに対して疑問を持たなくなった自分が悲し・・くすらなくなってきた。
とりあえず立ち上がる。
するとフワッといい匂いがし、そちらに目をやると食事が用意されていた。
少女のは良く見えないが、俺のは・・・ほお・・・。
見た感じ牛肉とマッシュルームを赤ワインをベースにしたソースで煮込んだ物だと予想される。色を持たせるために人参、ジャガイモ、レタス、アスパラが添えてある。
言いたいことは分かる。
『なんでDクラスがそんな豪華な飯を食ってんだよ。』だろ?
もちろん俺も最初はそう思ったさ。ただ知ってるか?
アメリカでは死刑囚は執行日の前日に好きなものを食わせるんだよ。
分かったか?
まあ、理由はそれだけじゃなくて5年前に料理好きの職員が派遣されて食事環境が大幅に改善された。
だけど問題もある。
料理自体は凝っているものの、手間を省くためか年の初めにアンケートをとりメニューが決まる。
なので同じメニューが続くこともしばしば。
ただし今日はあまり見かけないメニューだったので正直嬉しい。
「お前の分だ。」
「・・・・・。」
職員の一人が少女の目の前に食事を置く。
俺はスプーンをとって早速いただこうと思ったが少女の飯が気になる。
少女の顔を見てみると浮かない顔をしている。
(なんだ・・・?)
少女がなぜあんな顔をしているのか気になり、勇気を出して距離を詰める。
少女はビクッと俺の方を振り向く。
流石にまだ俺の事は怖いのだろう。
しかし、何故かどうしても気になり更に近づき少女の隣に立つ。
「ご、ごめん。別に何かするわけじゃないから。」
俺は自分より10以上年下の少女にビクビクしながら皿を覗き込む。
(・・・・・なんだこれ?)
皿に盛られていたのはおかゆを更にドロドロにした様な食べ物だ。
ちなみに見た感想はというと『不味そう』。
「・・・これ、美味しい?」
「・・・・・(ブンブン)」
少女はこれでもかと首を振る。
やっぱり不味いんだ。
「味見してもいいかな?」
「・・・・・(コクリ)」
俺は自分のスプーンで少し少女の食べ物を掬い口に運ぶ。
「(モグモグ)。・・・マズっ。」
ビックリするほど無味無臭。
なんだろうこの他に例えるものが見つからない食べ物は。
例えるなら卵の生の白身と味のない米をミキサーでかき混ぜた感じ。
なんでこんな物を・・・と思ったが少女は確か流動食しか食べれないと資料に書かれていたのを思い出す。
にしてもここのコックならもっとマシなのを作れるはずだ。
・・・さてはSCPだからって手を抜いてるな?
少女は更に近づき器用に羽で皿を持ち
「・・・・(グイッ)!」
口にソレを流し込み始める。
涙目になりながら出来るだけ早く片付けようと一生懸命飲み込む。
しかし皿になみなみ注がれた流動食はなかなか減らない。頭で分かってはいてもなかなか飲み込めないのだろう。残してしまえば良いものを一生懸命飲み込もうとする。
一度口を離しもう一度トライする。
キツそうな顔をしている少女の姿は見ていられるものではない。
またも口を離すがまだ5分の1ほどしか減っていない。
「・・・・・(ぷるぷる)。」
それを見て泣きそうになっている少女を見て俺は
「ワアウマソウダ!俺にも食わせろぉ!!」
「・・・・!!?」
急にキレた。
少女から皿を奪い取った俺は腰に手を当て思いっきり皿を仰ぐ。
少女とは比べものにもならない速度で流動食を口に流し込む。
「・・・げぇぇっぷ」
そして僅か20秒程で完食する。
少女はポカンとした顔で俺を見つめる。
そして俺は自分の牛肉の赤ワイン煮込みを
「ぶるああああああ!!」
鬼の様な形相でぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
レタスとアスパラガスを自分で食い、人参、ジャガイモ、牛肉はこれでもかとぐちゃぐちゃに潰す。
3分ほどで綺麗に盛り付けられていたはずの料理は赤黒いペースト状の何かになった。
俺はペースト状になったソレをチョビッとスプーンですくい少女に差し出す。
「・・・・(オロオロ)。」
少女は状況を飲み込めずオロオロしている。
「俺にもどうしたらいいのか分かんないけどさぁ・・とりあえず、はい。アーン。」
少女は驚いた顔をして俺の顔をまじまじと見つめる。状況がまだ掴めていないようだ。俺自身もSCPにお節介やいてる自分に驚く。
「ほらっ。危ないかもしれないから少しずつにしとくから食え。」
少女は口を開いてスプーンを加えようとしたが、何故か途中で止まる。
その目は「私にこんなことをして意味があるの?」とでも言いたそうな目をしていた。
イラッ☆
「はい。アーン!!」
「・・・・・!?」
少女の口にねじ込む。(深い意味はない)
少女は諦めたように咀嚼を始める。
そして
「・・・・!!」
目を見開く。
「・・・・(バサバサ)!」
笑みを浮かべて翼をバサバサと振っている。
どうやら気に入ってくれたようだ。
そらそうだ。グチャグチャで見た目も悪いけど味自体はアレよりマシだよ。
一人で勝手に納得していると
「・・・・。」
・・・少女が物欲しそうにこちらを見ている。
餌を与えますか?
はい◀︎
いいえ
スプーンに少しだけ掬うと
「・・・・(ンアッ)。」
少女が口をカパっと開いた。
スプーンを口の中に入れると少女は幸せそうな顔をして咀嚼する。
ゴクンと飲み込むと少女は今度は自分から口を開く。
そんな少女の顔を苦笑いしながら見ていると。
「・・・・(バサバサ)!」
少女が怒った顔で翼を振る。
(こ、これは一応怖がられなくなったってことでいいのかな?」
俺はその後もずっと少女に『あーん』をすることになった。
〜博士サイド〜
「・・・・・・。」
映像にはDクラスの男が少女に餌やりをする映像が永遠流れてる。
「・・・『はい。あーん』てやつですかね?」
監視の一人が話しかけてくる。
「そうだな。」
淡白な答えを返す。
「・・・・・SCPとはいえあの少女。結構美人ですよね。」
「そうだな。」
監視と目を合わせる。
「「・・・チッ!」」
自然と二人とも舌打ちをしていた。
次でSCPー020ーJPの話は終わります。