20xx年x月x日
SCPー020ーJP 同居 3日目 AM9:00
翼人と同居しているおかげで博士に起こされることなくゆっくりと起きれた。
「・・・まだ寝てるな。」
少女の方を見るとまだベットの上で横になって眠っている。
起こしてあげようかな?
立ち上がり、ベットに近づき少女の顔を覗き込む。
「・・・・(ーωー)スヤァ」
(起こしたら可哀想か。)
とても愛らしい寝顔を見たら起こす気など失せてしまった。
(それにしても可愛いな。)
少女の頬を少しつついてみる。
(やわらけぇ・・・。)
「・・・・(ごしごし)(ーωー)スヤァ。」
少女は突かれたところを軽くこすってまた眠った。
「むふ・・ふふふ。」
変な笑いが漏れてくる。
なんだろうこの守りたくなる感じ・・・もしかして、これが母性!
「いいや。単にロリコンなんだろ。」
「ーーーーーーーッ!?!!?」
博士が横から顔を出してきて声にならない悲鳴をあげる。
「ど、なん、え、ちょっ!?」
「私は君たちの監視を命じられているんだ。いつでも来るのは可能に決まっているだろう?」
少女の方をちらっと見る・・・良かったまだ寝てる。
俺の声で起こすことはなかったようだ。
それにしてもどんなタイミングで入ってきてんだよ。
「はあ・・・で、何の用だよ?」
「朝食を運んできた。食った後は自由行動。以上。」
そう言うと職員が飯を運んできた。
俺のは・・・パンとベーコンエッグ。普通ではあるが朝からハンバーガーとかよりはマシだろう。
(問題は・・・良し。)
俺に続いて少女の飯が運ばれてきた。それは以前の卵白のような味気なさそうなものではなく、美味しそうで温かみのあるポトフだった。
実は昨日、少女が眠った後に博士に直談判した。断られたが今度は顔見知りのコック長のところに行き、日本人の最終兵器『DO☆GE☆ZA』で頼み込んだところなんとか了承された。
因みに俺の要求は「SCPー020ーJPの飯に手を抜くな。」という簡単なものだ。
俺が二人分の食事を受け取ると博士と職員は部屋から出て行った。
さてと、これ以上この少女を眠らせていたらせっかくのポトフが冷めてしまうので起こそう。
「おーい。起きろー。」
少女の肩を軽くポンポンと叩く。すると少女は目を擦りながらゆっくり体を起こす。
「・・・・(ズリ)」
少女は俺を認識するとベットの上で少し俺から距離をとる。
まだ少し警戒されているようだ。
・・・少しだけ傷つくな。
「朝飯だよ。食べるだろ?」
「!・・・・(ズリ)」
ポトフを目の前に出すと、今度は距離を詰めてきた。
俺は少女の膝の上に盆に乗ったポトフの皿を置いてあげ、自分のパンを食べる。
何てことはない。少しバターの風味が聞いたただのパンだ。
「・・・・(バタバタ)!」
少女は皿を持とうとして熱かったのか両翼をバタバタと振っている。
「ああ、ごめんごめん!熱かったか・・・ほれ。」
俺はスプーンでポトフを少しすくって、少女の前に出す。
少女は躊躇うことなくスプーンを咥え、幸せそうな顔を浮かべる。
「・・・そういえば。」
俺はふと少女の本来の名前を知らないことに気づく。
少女に聞こうと思ったが、少女は喋れない上にペンも持てないのでどうやって聞こうか考えてみる。
「君の名前は何かな?」
駄目元で聞いてみる。
少女は浮かない顔をしている・・・まさかとは思うけど
「名前・・・ないのか?」
「・・・・・・・・・・(コクン)」
少女は少しだけ頷く。
(・・・・・・。)
誰に対してか分らないが激しい怒りが湧いてくる。
この少女に名前がない・・分らない・・・・まさかな。
俺は最悪の想像を取り敢えず切り捨てる。
「もし良かったらさ。」
少女に取り敢えず提案を持ちかけてみよう。
「・・・・・?」
少女は首を傾ける。
「俺が簡単な名前をつけようと思うんだけど。」
「・・・・・!」
少女は目を見開き、そのまま固まってしまった。
・・・やっぱり流石に俺みたいな奴に急に言われても困るよな。
「ごめん・・・今のは忘れ」
「・・・・(コクン)」
少女が頷いた。
今、確かに、間違いなく。
「えっと・・今の頷きは・・・OKてこと。」
「(コクン)」
今度は間を置くことなく、しっかりと頷いた。
「・・・・ふぐぅっ!」
「・・・・!?」
あ、これヤベェ。嬉しすぎて泣きそう。
昨日の少女の態度がまさかこうなると思わなかった・・・反抗期の娘がデレたらこんな感じなのかな?
「任せろ!お父さん一生懸命考えるから!」
「・・・・!?!?」
俺は飯を掻き込み、名前を考え始めた。
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「クソゥ・・・なぜダァ!?」
「・・・・・(^ω^;)」
俺は今まで様々な名前をあげたが全て却下を受けてしまった。
「なぜダァ・・・!ヨシエもサチコもチエコもニャル美もレオニンもクレしんもドラミもプリンセスキャンディも素晴らしい名前だというのに何故!?」
少女は苦笑いを浮かべるだけである。
これが産みの苦しみか・・・!
「・・・はあ。流石に簡単には決められないよなぁ。」
少女は申し訳なさそうな顔をする。
この子が悪いわけじゃないのになぁ・・・。
「変に頭を使うからダメなのかなぁ・・・もう単純にツバサとか?安直すぎるか。」
「・・・・(バシバシ)!」
少女が俺の手を叩いてくる。
もしかして
「ツバサがいいのか?」
「・・・・(ブンブン)!」
少女は顔を縦に激しく振る。
「そうか・・・そうか! ツバサか!うん。そう言われるとピッタリだな!」
「・・・・(バサバサ)!」
少女・・いや、ツバサもかなり気に入ってくれているようで手をブンブンと振っている。
「ツバサ!ツバサ!ツバサ!ツバサ!」
「・・・・(ブンブン)!」
俺たちはまるでアイドルとファンのようにはしゃぎまわった。
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「時間だ。お勤めご苦労。」
ツバサとはしゃいでいると博士が部屋に来た。時間を見ると午後の6時過ぎていた。
(ああ・・・もう終わりなのか。)
楽しかった時間はあっという間に過ぎてしまった。
やっと打ち解けられたことなのに。
ツバサを見るとなんとなく悲しそうな顔をしている気がしている。
「そっかぁ・・・じゃあ、仕方ないな。」
「荷物は特にないだろう?準備が出来たら部屋を出ろ。俺は外で待ってる。」
博士は直ぐに部屋の外に出た。
「・・・俺もう帰らなきゃいけんみたいだな。」
ツバサに話しかける。
「・・・・(コクン)」
「3日だけど俺は楽しかったよ。ツバサは迷惑だったろう?」
「・・・・(コク(ブンブン)」
一瞬頷きそうになってた気がするけど、首を横に振ってくれた。
「ツバサがよければだけど、会えたら今度また合いに来てもいいかな?」
「・・・・(コクン)」
頷いてくれた。
俺はDクラスだからどうなるか分からんけど、会うことを拒まないでくれた。
俺はもうそれだけでも来れてよかったと思う。
「もう行かなきゃな。」
最後に翼の頭を少しだけ撫でる。
「じゃあな。好き嫌いせずに元気で過ごせよ。」
翼に手を振りながら部屋の外に出ようとする。
ツバサは片翼を手を振るように振りながら見送ってくれる。
(・・・ん?)
ツバサの口元を見るとパクパクと動いてる。
その口は、俺の気のせいかもしれないけど。
『ありがとう。またね。』
と動いてるような気がした。
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「ご苦労。明日からは通常の任務に戻ってもらう。」
扉を出ると博士が待ち構えていた。
「あのさぁ・・・一ついいかな?」
「なんだ?手短に済ませろよ。」
博士はダルそうにこちらを見る。
「たまにでいいから・・・ツバサに合わせてくれねぇかな。」
かなり無理な頼みをしたと思ったのだが博士は特に驚いた様子もなく、むしろ腹立たしいとでも言いたげな顔になっている。
「腹立たしいことに・・・今日、貴様と会っている時の「SCPー020ーJP」は脳波が非常に安定していてストレス解消になっていることが分かった。なので貴様には定期的に020ーJPのストレス解消係になってもらうことになった。」
え?
「てことは・・・?」
「チッ・・・財団の命令でアレに定期的に合うようにしろ!分かったな!」
ま、マジスカ。
今初めて財団に感謝している。
気が効くじゃんかよおい!
「ありがとう博士!まじ愛してる!」
博士の両手を握りしめブンブン振る。
博士はただただうざそうな顔をしている。
いやぁ〜よかったよかった。めでたしめでたし!
とはいかんよな。
俺には聞いておかなければないことがある。
「・・・なあ博士。」
「なんだ。」
「これはふと疑問に思ったことなんだけどさぁ・・・まさか、例えばの話だ。」
「勿体ぶらずにさっさと言え。」
博士は握られている手をグイグイと引っ張る。
しかし俺はその手を離さないように握りしめる。
「まさか・・・ツバサみたいなのをお前らが作ったんじゃないだろうな?」
博士が動きを止め、その代わり鋭い目線をこちらに向ける。
「・・・何が言いたい?」
「そのまんまの意味だよ。財団ぐるみの人体実験を失敗してできた『失敗作』をあえてSCPとして保存するような真似は・・・してねぇだろうな?」
これはあくまで俺の妄想だ。
しかしこの妄想は現実であってもなんら不思議ではない。だからこそ、無駄だとしても聞かなくてはいけない。
「・・・貴様がそれについて知る権利はない。立場を弁えろよDクラス。」
そう言うと博士は俺の手を振りほどき、どこかへ歩いて行ってしまった。
「否定・・・しねぇのかよ・・・!」
俺はただ歯を食いしばりながら、自分の力のなさを嘆くことしかできなかった。
【SCPー020ーJP 翼人】 【safe】
SCPは見た目は10〜12歳程度の少女であり、体の大部分は人間に酷似しているが両腕が鳥の翼のようになっている。SCP-020-JPは、サイト-8141の人型生物収容室に収容されています。3日に一度サイト内を散歩させてください。基本的には危険性はないが衝動的な行動をとることがあるので、担当職員は常に腰紐付きリードを手放さず、緊急の場合はスタン警棒を使用してください。
レベル2以上の職員はSCP-020-JPと接触可能ですが、故意にSCP-020-JPを驚かすような行動は控えてください。食事として、ふやかして潰した穀類と野菜を1日3回与えてください。餌やりの際、『担当職員は指定の仮面を着用してください。』
上記の『』は訂正します。
少女に対して大きな不安、ストレスを与えることになってしまいますので多人数で来室することや仮面をつけるのは今後控えてください。
『可愛いものを愛でるのは、万人に許された平等の権利』というのは言い訳になりません。
次回はそろそろあのクラスを出そうかな。