テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】 作:スルタン
~
「色々あったが、なんとかうまくいったな」
ロクロウはマギルゥと顔を見合わせる
「・・・オマケもついたが」
顎に手を当てながらベルベットを見る
「オマケ?」
ベルベットは自分の手を見る、二人は未だに手を繋いだまま少年と顔を見合わせた。
「あ」
ケンを治している最中でも離さなかった辺り無意識だったようだ。少年、呼び名は"二号"は、何も言葉を発することなくただ、ベルベットの顔を見ている
「・・・」
「ベルベットのオヤツ代りには丁度よさそうじゃの」
マギルゥは本気とも冗談とも発言で少年を見る。ベルベットはその言葉に顔を背ける
「オヤツ・・・」
少年はすこしだけ顔を俯かせる。自分はそのまま喰われるのか、それともまた道具として使役されるのか。考えているのかは定かではないが・・・
「冗談だからな」
ロクロウがフォローを入れるが
「ううん。それが命令なら」
少年は拒否することはなかった。今まで道具の様に使われてきた故か、はたまた諦めなのか、命令であれば従う。今の彼にはそれだけが己の存在意義となっているなの様に
「・・・いいのか?連れていって」
ロクロウは少年の反応に困惑しながらベルベットに聞く。オヤツだの何だの言った張本人のマギルゥは知らん顔をして頭の後ろで手を組みそっぽを向いている。
「この子の術は役に立つ。やばくなったら捨てればいいわ」
「じゃの。聖隷なんて道具みたいなもんじゃし。のう、二号?」
ベルベットはナニかを抑え込むように目を閉じながら冷たく言い放ち、マギルゥはそれみよがしに少年に問いかける。その問いに少年は短く答える
「うん」
「・・・」
マギルゥの挑発にも聞こえる言葉にベルベットは静か睨み、そのまま目を閉じた。
〜
ベルベット視点
船はその後ダイルの操船で海の上を進んでいる。ケンはあの後着替えを終え、今は甲板の隅に座り眠っている。少年はケンの隣でずっと海を見つめている。あたしわ二人を後にして忙しそうに動いているロクロウを見つける。現に船の事に関しては余計に手出しをすることはできない
「忙しそうね」
「全く手が足りん!急いで方角を確認して、倉庫の荷を固定しないと。とりあえず帆は張ったがロープの結び方はこれでいいのか?」
ロクロウは基本的な操船はできると言っていたが分からないところも多々あるようで困惑しながらも仕事をこなしている
「・・・多分、解けなきゃ問題ないわ」
ベルベットはそこらへんはわからないので、当たり障りのない返答をする
「できればケンにも手伝ってほしいんだが、あの様子じゃ、しばらくは無理だろうな」
「ロクロウは手を動かしながらもケンを見る
「・・・そうね。その内起きるでしょうからその時手伝ってもらえばいいでしょ?」
「それもそうだな」
ロクロウがそう返事しながら別の持ち場に向かう。あたしはそんなロクロウの後ろ姿を見ながらも船の前方にいるマギルゥの方を見る。当の本人はのほほんとしている。あたしは近づき話しかける
「・・・何してんのよ。ボーっとして」
「いやあ、港のことを思い出しててのぉ。かなり景気よく燃えとったの〜っと思っておったのじゃ♪まぁ、ケンが火を消しはしたが船もそれなりに被害でとるし、追うのは無理じゃろうな〜それ以前に復興に時間も食いそうじゃし?返って好都合じゃの♪」
「あんた。聖寮にどこまで喋ったの?」
あたしは率直にマギルゥを問いただす
「美貌の魔女が極悪非道な業魔に攫われてイビられる『エピソード2〜怒りのマギルゥ』までじゃよ♪」
即興で思いついたかのようなタイトル発表しはぐらかすマギルゥ。それを聞いたあたしは溜息を吐く
「・・・よくわかるわ。奴らが処刑しようとした気持ち」
〜
「目的地はローグレスよ。よろしくね」
ダイルに行き先を再確認させる
「わかってるが、この人数で船を動かすのはキツいぜ。。どっかで船員を雇わねえとな。それにこのまま進めば・・・」
ダイルは口ごもる
「このまま進めば・・・なに?」
「いや、何でもない」
「?」
あたしはダイルの言動に疑問を感じながらそこから離れた。
ベルベット視点終了〜
少年は相も変わらず、ただ海を見ている
「・・・」
ベルベットはそんな少年を見る。そこにロクロウの声が響く
「ベルベット!方角はどうだー?」
ロクロウから方角の確認を頼まれ、ベルベットは羅針盤を見る。が、ベルベットは羅針盤など使ったことがないので本体を傾けたり横に向けたり悪戦苦闘している
「ええっと・・・見にくいわね・・・」
その時声がかかる
「違うよ。持ち方」
今まで海を見ていた少年がベルベットのそばまで来ていた。羅針盤に指を指す
「船が揺れても大丈夫な工夫」
アドバイスを聞いたベルベットは台座を持つ、羅針盤が安定し、方角が見やすくなった
「・・・ふうん」
ベルベットは感心する、が
「ベルベットー!」
ロクロウが急かす。先ほどの事を思い出しすかさず返す
「問題ないわよ!」
ベルベットは少年の方に向き直り質問する
「あんた、名前は?」
少年は短く答える
「二号」
「じゃなくて、本当の名前。あるでしょ?」
ベルベットは更に聞くが少年は首を横に振るだけ。別の話題に変えようと手に持っていた羅針盤を前に出す
「もってみる?」
少年はその言葉に反応し羅針盤に手を伸ばそうとしたが何かを思い出したのか、それを引っ込める
「・・・命令なら」
「どうしたいか聞いてるんだけど」
「答えるのが・・・命令?」
ベルベットの多少のイラつきと呆れ
「・・・そうよね。命令すれば自殺だってするのが、あんたたち」
「それが聖隷」
当たり前のように少年は答える。今までそうやって生きていたように
「やっぱり道具か」
毒づくベルベットだがある事を思い出す
「そういえばあんた。なんであいつを治したの?」
少年にケンの事を問いただす
「・・・わからない」
「どういうこと?」
「自然とそうしてた・・・」
この少年でさえ自分の行動の理由がわからないようだ
「まぁいいわ、取り敢えずこれから余計な口をきかないで」
舌打ちをし冷たく言い放ち後ろを向くベルベット。少年はまた俯く
〜
ベルベット達が慌ただしく動いているその頃、ケンは夢の中にいた。あの時と同じ空間だった
「ここは、最初に目覚めた場所・・・」
「やぁ」
ケンは聞き覚えのある声に反応し後ろを向く。そこにはルシフェルが立っていた
「ルシフェルさん。どうしました?わざわざ夢の中に」
「さすがに人前に出るわけにもいかないからな。それにしても酷くやられたな。彼らが怒るぞ?」
「えぇ・・・面目ないです・・・」
腕を組みながら呆れたように頭を振るルシフェルに申し訳なさそうにするケン
「これからは気をつけるんだ。君は無敵じゃないんだからな。それはそうと私からの贈り物は気に入ってくれたようだな」
「えぇ・・・といっても使用は控えようと思います」
「それでいいさ君らしくて。そうだ、君の師匠からトレーニングメニューの追加だそうだ」
「追加ですか」
ケンが反応する
「今にわかるさ。時間だ、またその内に」
「あっはい」
その言葉を最後に辺りが霞み始める。ケンの意識は現実へと覚醒する
〜
ベルベット達の乗る船のすぐ側を水柱と轟音が襲う
「なに!?」
突然の出来事にベルベットと少年が大きく体制を崩す、ベルベットが船の
「しまった!?」
羅針盤が海に落ちる直前、突如横から釣り用の網が飛び出し羅針盤をキャッチする。ベルベットが網の柄を辿るとその先にケンがいた。落とさないように網を手繰り寄せる
「間に合った」
「あんた、もう大丈夫なの?」
羅針盤をベルベットに渡すケン。船が揺れてるにも関わらず普通に立っている
「取り敢えずは・・・それにしてもかなり撃ち込まれてますね」
「そうね、一体何処から」
ベルベットの疑問に答えるようにロクロウが声を上げる
「後方から砲撃!海賊船だ!」
「あの旗は・・・まさか『アイフリード海賊団』!?」
船の後ろにもう一隻の船がこちらを砲撃している
「バッチリ狙いをつけられとるぞ〜海の上でやり合うのは、ちとヤバそうじゃの」
一発の砲弾がベルベットとケンの背後の荷物に当たり、吹き飛ばす。幸い命中弾はそれだけだが至近弾が船を揺らす
「陸に着けて!
ベルベットの指示で回避運動を取りながら陸に向かう。その頃ケンはある違和感を感じていた
(なんか体が重いな・・・体というかボディスーツが・・・あぁ、そういうことか・・・)
〜
ベルベット一行はなんとか陸に着いたものの海賊達は素早く、すぐに囲まれてしまう
「うっはー!本当に業魔の集団だ。これは使えるかもな」
海賊帽の上に取りを乗せた一人の男が近づく
「業魔と知ってやるか。いかれた奴らだな。陸の上なら容赦はせんぞ」
ロクロウが警告する
「命令よ、二号。こいつらを蹴散らせ」
ベルベットが少年に命令し、少年はそれにうなづく
「おっと、相手は俺たちじゃないぜ」
その言葉を合図に一人の男が前に出る。片方は折り曲げられもう片方は伸ばしっぱなしの革のブーツ。オレンジ色の肌着の上にカッターシャツと茶色のベストを着ている。黒のコートは袖が曲げられ、左の胸元に短剣が差し入れてある。黄色がかった色合いね金髪。肌は白く、目は蒼眼でベルベット達を見据えている
「俺だ」
ライフィセットを番号で呼ぶのは個人的にいい感じがしないので少年という形にさせていただきます
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