テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】   作:スルタン

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続けていきます


第10話

 

少年は自分の武器である紙葉を男に向かって放つ、が、それが届く前に男の足元が光る。そこから岩が飛び出し、少年の紙葉を防ぐ

 

「聖隷!?」

 

ベルベットが驚くのも無理はない。聖隷が海賊をしているなんて聞いたことも想像したこともないのだから

 

「いいや・・・"死神"だ」

 

死神と名乗った男はそれだけ答えて構えを取り、走り出す。男は真っ直ぐベルベットに向かい、対してベルベットは迎撃するために刺突刃を出し斬りかかる

 

「ふん!!」

「・・・っ!」

 

横の薙ぎ払いを男は分かっていたかのように屈んで避ける

 

「っ!!この!」

 

ベルベットは今度は刺突刃で切り払った勢いを使って男のこめかみに回し蹴りをする

 

「ほらよ・・・!」

「ぐっ!?」

 

手を地面に着けそれを軸にベルベットに同じく蹴りを放つ。脚と脚がぶつかり合い相殺される

 

「ベルベット!助太刀するぞ!」

 

ロクロウが小太刀を構え男に向かって走り出す。男がベルベットを弾き飛ばしたと同時にロクロウの小太刀が喉を捉える

 

「ふん!」

 

それも紙一重に躱され、距離を取られる。その隙を狙って少年が術を展開し、螺旋を描く光弾を放つも先ほどと同じく地面から岩が現れ防がれる

 

「なんなの、こいつは!」

 

そう言いながら刺突刃と蹴りで応戦する

 

「聖隷が海賊をやっているのか!?」

 

ベルベットと同じく小太刀で攻め立てるロクロウ

 

「剣に双刀に紙葉・・・ペンデュラム使いはいない様だな」

 

男は斬撃を躱し蹴りを防ぎ術を岩で防ぐ。その行動は何処と無く試している様な感じにケンは見えた

 

「ケン、お前は行かなくていいんかえ?」

 

マギルゥは知ってか知らずかケンをたきつける

 

「・・・いえ、ベルベットさん達三人で大丈夫ですよ。少なくとも自分の出る幕はない様です」

「それもそうじゃの〜何せお主は『病み上がり』じゃからの♪」

「気づいてたんですか」

「まぁの、ほんのちょっぴり動き鈍っとるし?。寝とる間に幽霊にイタズラでもされたんじゃないのかの〜」

 

マギルゥの言葉はある程度当たっていた。ワザと外したか本気なのかはわからないが。そうこうしている内にベルベット達と男はお互いに距離を取り、睨み合っていた

 

「・・・合格だ。力を貸せ」

「は?随分勝手な言い草ね」

 

男の言葉にベルベットが反論する

 

「ヘラヴィーサを燃やした奴ら程じゃない」

「知ってて試したのか」

「ついでに助けてもいる。あのまま進めば"ヴォーティガンの海門"に潰されていた」

 

男の隣にいた青年が代わりに話す

 

「あんたらミッドガンド領に向かってるんだろ?それには、この先の海峡を通らなきゃならない」

 

僅かに間を置く

 

「けど、そこは王国の要塞が封鎖してるんだ。文字どうり"巨大な門"でね」

 

ベルベットが顎に手を当てる

 

「そんな要塞が・・・」

「事実なら借りができたな」

「俺たちも海門を抜けたいが、戦力が足りない。協力しろ」

 

それに対してベルベットがまた反論する

 

「海賊の言うことを真に受けるほどバカじゃない」

 

それを聞いた男は組んでいた腕を解く

 

「自分の目で確かめるか?いいだろう、命を捨てるのも自由だ」

 

言い終わると男はベルベット達に向かって歩き始める。ケンとマギルゥ以外は各々身構える。だが男はその真ん中を通り過ぎていく

 

「なんじゃ、断ってもいいのか?」

 

マギルゥが男に聞く

 

「お前達はお前達で、俺たちは俺たちでやる。それだけのことだ」

 

青年が男に走り寄る

 

「けど、副長独りじゃ!やっぱり俺たちも一緒にーー」

 

青年の言葉を男が遮る

 

「足手まといだ。お前らは、計画通りバンエルティア号を動かせ」

 

伝えると男は崖の上にある横穴に向かう

 

 

「無念じゃが、儂には航海も戦いも手伝えん。見守ることしかしたくないんじゃ・・・」

「でしょうね」

 

マギルゥは近くの岩に座る、ベルベットは分かっていたと言わんばかり答える

 

「ダイル、ヴォーティガンの海門ってのはそれ程のものなのか?」

 

ロクロウがダイルに尋ねる

 

「警備艦隊付きの大要塞だ。なによりでっけぇもんがついててな、あれを閉じられたら、戦艦だって突破は無理だ」

 

「海峡を避けて王都に行く航路は?」

 

ベルベットが別のルートを聞く

 

「あるにはあるが、外洋を大回りすることになる。無理に進んでも遭難するだけだ」

「・・・」

 

 

「あんたたち、何する気なの?」

「言った通り海門を抜けるのさ。手伝わない奴には、これ以上言えないね」

 

ベルベットに嫌みたらしく返す青年

 

「・・・できるの?」

「副長ならやってくれる」

「随分信頼してるんだな。あいつは聖隷だろう?」

 

ロクロウが青年に聞く

 

「そんなの関係ない。副長へ、ウチの船長が認めた"男"なんだ」

「あんたたちなら、海峡を避けて航海できるでしょ?」

 

それを聞いた青年は少し俯きながら話す

 

「・・・今は無理だ。前の襲撃で仲間と羅針盤をやられちまったからな」

「・・・羅針盤ならあるわよ。もう少しで海に落とす所だったわ。誰かのせいで」

 

ベルベットが羅針盤を見せる

 

「あー・・・いや、それは謝るよ。んじゃ後は海門の方を任せたぜ!」

「調子いいわね・・・」

「俺たちは海賊だからな、行く手を塞がれたって、引き下がるわけにはいかねぇんだ」

「それが海賊・・・か」

 

 

「利害は一致してる。海賊たちと手を組むしかなさそうね」

「まあの。進むも破滅、引くのも無理なら抜け道に賭けるしかあるまいて」

「手伝う気ないくせに」

 

肩をすくめるマギルゥにベルベットが嫌みたらしく返す

 

「当然の〜♪」

 

悪びれないマギルゥ

 

「あの聖隷は只者じゃない。まだ力を隠しているきがするが」

「坊も同じ聖隷じゃろ。何かわからんか?」

 

ロクロウは聖隷に対する感想を、マギルゥは同族である少年に聞く

 

「・・・」

 

少年は何も答えない

 

「思惑があるのはお互い様よ。とにかく、あいつを追う」

 

ベルベットたちが男に追いつくために歩き出す。それを横目にダイルが忠告する

 

「言っても無駄だろうが、アイフリード海賊団には関わらない方がいいぜ。アイフリードといえば、どんな船乗りもびびる最凶最悪の海賊だ」

「業魔のクセに情けないこと言うわね」

 

ベルベットがまくし立てる

 

「業魔だってコワイもんはコワイ!」

「アイフリードって奴は、そんなに強いのか?」

 

ロクロウがダイルに尋ねる

 

「そりゃあもう!傍若無人のケンカ師で人間なのに鬼のように強えぇって噂だ。仲間も、命知らずの暴れん坊揃いでな。事実、王国海軍を何度も返り討ちにしてる。それに奴らのバンエルティア号!異大陸まで航海したっていう伝説の船なんだぜ」

「ほう、中々骨のある奴らみたいだな」

 

ダイルの力説を聞いたロクロウが感心する。未開の海という危険な場所を乗り切ったという実績はかなり大きい

 

「それにやたら詳しいわね」

「ま、まあな。アイフリード海賊団の自由奔放さは海の男の憧れでもあるっつーか、なんつーか・・・」

「ふうん・・・」

 

夢とロマンという男なら誰しも一度はあるであろう性。船乗りであるダイルもアイフリードに憧れているのだろう。ベルベット本人は気にもならないようだが

 

「別にいいだろ!憧れに業魔も人間もトカゲも関係ねぇし!」

 

 

「それじゃ俺たちは船で海門に向かう。オタクらの船も一緒に来てもらうぜ」

「どんな作戦で行くの?」

「そこら辺は副長に聞いてくれ。副長なら詳しく説明してくれるはずさ」

「不本意だけど仕方ないわね。」

 

海賊一味とベルベット達は一度別れる。乗って来た船もバンエルティア号に追従していった

 

「あの男を追うわよ」

「応!」

 

ベルベットとロクロウは聖隷の青年を追うためツタを登り始める。その次に少年が、最後にケンが登り横穴に入っていった。

 

 

横穴というか正確には洞穴。ここラバン洞穴は後に説明するブルナーク台地の地下に位置する洞穴。本来地下である以上植物には過酷な環境であるにも関わらず内部にはコケ類や植物が繁殖している。発行性の食虫植物の群生の存在により明るく。独自の生態系が広がり、幻想的な雰囲気を醸し出している。強いていうならば

 

「でやっ!!」

 

ベルベットが回し蹴りで子供ほどのサイズの虫蹴り飛ばす。ここに敵がいなければちょっとした探検になっただろう、世の中そう甘くないということだ

 

「噴っ!」

 

ロクロウのエモノが虫を両断する。少年とケンの出る幕はほとんど無く。二人が敵を蹴散らしながら奥へと進んだ、その先にさそりのような敵をたった今始末した先程の男がいた。男は4人を見ずに話す

 

「海賊を信じる気になったか?」

 

ベルベットは腕を組む

 

「まさか。けど、要塞を抜けた後、王都まで船と船員を貸してくれるなら協力してもいい」

 

海賊は信用できない。だが、このままでは埒が開かないのも事実、自分達だけではこの状況を乗り切るのはあまりにも困難。少なからずの利害の一致、交換条件ならばとベルベットの判断だ。

 

「・・・いいだろう。がこっちも一つ言っておくことがある」

 

男はおもむらに一枚のコインを取り出し指で弾く。女性の横顔とドクロの描かれたコインを金属特有の音を響かせながら再び男の手の中に収まる。所謂コイントスだ

 

「俺は、周囲に不幸をもたらす"死神の呪い"にかかっている」

 

男が手を開きコインを見る。ドクロが上だった

 

「千回振っても"裏"しか出ないほどの悪運だ。要塞を抜けようとした時も、五人犠牲が出た。同行すれば、何が起こるからからんぞ」

 

「そこまで聞いたベルベットが質問する

 

「なぜ、そんな不利な情報を教えるの」

「業魔も、理不尽に死にたくはないだろう」

 

男はそこまで答えるとコインをベルベットに向かって投げ渡す。ベルベットほ少し驚きながらもそれを掴む

 

「知った上で来るなら自己責任ということだ」

 

一瞬の間を置き、ベルベットはコインを投げ返す

 

「どうでもいいわ。"裏"なら自力で"表"にひっくり返すだけよ」

 

男がベルベットから返されたコインを見る。そのコインは女性の横顔、つまり"表"が出ていた。男の顔が驚きの表情と僅かに歯をくいしばるも直ぐに元に戻る。男は4人を見る

 

「名は?」

 

男が尋ねる

 

「ベルベット。"これ"は二号」

「・・・」

 

"これ"と呼ばれた少年は顔には出さないが俯く。それを見た男が何か思ったのだろうか。だが言葉を出さずに腕を組む

 

「俺はロクロウ。よろしくな」

 

ロクロウは笑顔を見せながら自己紹介する

 

「ケンです」

 

ケンも短く自己紹介する

 

「アイゼンだ」

 

 

一通り自己紹介した一行。短い間ではあるが少なくとも名を聞かなければ支障をきたす、ベルベットはこの後の事についてアイゼンに質問する

 

「要塞を攻略する策があるんでしょ。聞かせて」

「結論から言えば、ヴォーティガンの守備は鉄壁だ。海から攻めても陸から攻めても、落とせない」

「おいおい」

 

初っ端から無理と断言するアイゼンにロクロウがツッコミを入れるがここでケンが口を挟む

 

「ようは片方だけじゃダメだという事ですよね」

「・・・なら、同時に攻めれば」

 

ケンの発言にベルベットが気付く

 

「そうだ。まずバンエルティア号で攻撃をかけ、警備艦隊を海峡から引きずり出す。その隙に、俺たちは要塞に進入し海門を開く。バンエルティア号は艦隊を振り切って海峡に再突入。俺たちを拾って駆け抜ける」

「ひとつ間違えれば全滅だな」

 

ロクロウが言う通り、それだけその要塞が難攻不落である事を物語っていると言う事だ。陸が失敗すれば海門が開かず警備の戦艦に沈められる。海がやられたら陸の方が敵に押しつぶされるだけだ

 

「けど、間違えなければ勝ち目はある」

「死神同伴でか・・・」

 

要はしくじらなければいいと言うベルベットに死神という要素になんとも言えないロクロウ

 

「作戦はもう始まっている。行くぞ、要塞の入り口は洞窟を抜けた先だ」

 

 

アイゼンを加えた5人は改めて洞窟の奥に進む。ここの生態系は特殊で植物の繁殖力が高く木の根とツタが道を塞いでいる。アイゼンが着火剤を持っておりそれで道を作る事になった

 

「こんな所で火を使って平気?」

「普通は平気じゃない。だが、俺たちは業魔と聖隷だ」

 

人間じゃなければ問題ないと言わんばかりのアイゼン

 

「・・・あぁ、普通じゃなかったわね」

 

ベルベットが肯定し火を放つ

 

「・・・」

 

ケンはもう何も言わなかった

 

 

道中の敵はアイゼンがいることもありかなり楽になったといってもいい。アイゼンは素手だったが少年と同じ精霊術と徒手格闘で敵を蹴散らす。だいぶ奥まで進んできた、もうすぐ要塞近くに出るだろう

 

「少年、随分大人しいな。具合でも悪いんじゃないか?」

 

何かと少年に気をかけるロクロウ、彼なりの気遣いだろう

 

「元々こうよ、二号は」

 

ベルベットは気にしてないようだ。少年は周りをキョロキョロしながら歩いている、今までこういう環境を体験した事がないのだろう。少年にとって全てが初めてなのだ。無理もない

 

「やめろよ。二号なんて可哀想だろ」

 

ロクロウが少年を庇う。確かに番号で呼ぶのは酷である。ロクロウは少年を"個人"としても見ているのだろう

 

「あんたの名前の意味は?」

「兄弟の六番目でロクロウだが」

「それと同じよ」

「同じじゃないだろ」

 

ベルベットとロクロウは側から見れば漫才とも取れる会話をしている。ケンはそれに見ながら後に続こうとしたが足を止めている少年に気付く。どうやら植物が気になるようだ。ケン自身この世界に来て初めてこれだけの緑は初めて見た。彼の気持ちもわかる。他の3人はどんどん先に進んで行ってしまうら、ケンは少年を呼ぼうとそちらに顔を向けた時、少年の背後からスコーピオンが迫って来ていた。少年も気付くが声を上げかけた口を手で抑える。ベルベットの命令を守っているのだ。ケンは少年の元へ走り出す

 

「・・・!!」

「危ない!」

 

ケンはスコーピオンに体当たりを仕掛ける。スコーピオンは思い切り後ろに転がるが直ぐに起き上がり尻尾の針で攻撃しようと突き出すが

 

「・・・!」

 

ケンは体を半身にして躱し自分の横を通り過ぎる尻尾を掴み相手の勢いを利用して一本背負いの要領で投げる。スコーピオンは仰向けに倒れる

 

「フンッ!!」

 

スコーピオンのがら空きの腹に緑色の槍が突き刺さり、スコーピオンは力尽き消える。アイゼンの精霊術だ、ベルベット達が少年の所に駆け寄る

 

「大丈夫か、少年!」

 

ロクロウが声をかける。

 

「なんで声を上げないの!ケンが気づいたから助かったけど、もしかしたら死んでたかもしれないのよ!」

 

ベルベットが声を荒げる。どちらかというとただ単に怒りではなく情の篭ったものだ。少年は顔を下に向け、理由を話す

 

「・・・命令だから。『口を聞くな』って・・・」

 

その言葉にロクロウとベルベットは驚く。特にベルベット自身、まさか本当に命令に従っているとは思わなかったからだ。ベルベットほ少年の肩を掴む

 

「あれは違うっ!あんたは・・・なんでそんな!」

 

ベルベットは本気でなかったのだろうとしても『そういう』環境で生きて来たのだ。少年にとってはそれが全てなのだと、彼女と少年の認識の違いが今回のトラブルを生んだといってもよかった

 

「落ち着け、ベルベット」

 

ロクロウがベルベットの肩に手を置き制す。アイゼンは何か思うことがあったのか、少年にひとつ聞く

 

「お前、対魔士に使役されていたのか?」

 

少年は頷き答える

 

「やはりそうか・・・こいつは"意思"を封じられているんだ」

 

アイゼンの予想は当たっていたようだ

 

「本来、聖隷は人間と同じ心を持つそんざいだ。だが、対魔士どもは強制的に聖隷の意思を封じ込めている。道具として使うためにな」

 

命令されることしか知らない。この少年だけではない、聖寮に所属している他の聖隷も同じだろう

 

「ずっとこのままなの?」

 

ベルベットがアイゼンに尋ねる。

 

「わからん。対魔士な配下から脱した聖隷は初めて見た」

「・・・」

 

ベルベットほアイゼンの言葉に何も言えなかった

 

 

「少年、困ったことがあったら言っていいんだぞ」

「困ったこと」

 

ロクロウは少年に声をかけながら一緒に歩く

 

「ケン、さっきの事は礼を言うわ」

「いえ、自分がいなくてもアイゼンさんが気付いてくれたでしょう」

 

ベルベットはケンに礼をいう。本人はアイゼンにこそ言うべきと促す

 

「だがあいつを救ったことには間違いない。素直に受けとっておけ」

「まぁ、はい」

 

アイゼンがベルベットをフォローした

 

 

「対魔士が聖隷の意志を封じるって言ってたよな」

 

ロクロウがふと思い立ち、アイゼンに聖隷の事について聞く

 

「ああ。本来は人間同様、それぞれが自我を持つ存在として、ずっとこの地で生きて来た。

俺たちの存在を知覚できるのは対魔士のように霊応力が強い、一部の人間だけだったが・・・」

 

そこでロクロウが気付く

 

「あの『降臨の日』で変わったんだな」

「聖隷は並の人間達にも見えるようになり、意志を奪われ、命令通りに動く道具にされた。業魔に対抗する術を得たと人間どもは喜び、アルトリウスの奇跡だと讃えたが聖隷はモノじゃない」

 

アイゼンは言い切る。対魔士達からいいようにされ、奴隷のようにこき使われる環境を憤りながら

 

「聖隷はモノじゃない・・・」

「モノよ・・・」

 

少年の言葉に反応したのか分からないがベルベットが吐き捨てる

 

「?」

 

それを聞いたアイゼン

 

「アルトリウスにとっては、聖隷も業魔も人間もみんな御大層な"理"を実現する為のの道具でしかない」

 

ベルベットは顔を歪ませる

 

「モノにしか見えないのよ・・・弟すら・・・」

 

 

洞窟をもう直ぐ抜けようかとした時、隅に亀の甲羅を背負った如何にも胡散臭い少年が立っていた

 

「トータス、トータス」

「・・・カメの業魔?」

 

ベルベットが訝しむ

 

「いいえ、業魔じゃないっすよ。りオイラは"ホワイトかめにん"っす驚かせてしまって恐縮っす」

 

ホワイトかめにんと名乗った少年は自己紹介をする

 

「業魔じゃないなら聖隷か?」

「いえ、"かめにん"は"かめにん"っす。諸々のご不安はごもっともっすが、これ以上の追究は、どうかご勘弁いただきたいっす」

「お、応・・・これはご丁寧に」

 

ロクロウは思わぬ反応に戸惑う

 

「恐縮っす」

 

アイゼンが補足する

 

「かめにん一族は、遣り手の旅商人。俺たちのような裏稼業には、なにかと重宝する存在だ」

「行商人か。役に立ちそうね」

「はいっす!『お客様の笑顔が第一』それが"ホワイトかめ屋"のモットーっす!ただ・・・場所が場所だけに、お値段は少々お高めになってしまうっすがーー」

 

ホワイトかめにんが最後の最後で割高宣言してくる。こう言う場所で売買するならばそれ相応の費用がかかると言うもの、多く取りたいといのも分かる。が、笑顔が第一という営業理念に合うかどうかは分からないが

 

「嫌よ、まけて」

 

ベルベット本人は御構い無しだ

 

「・・・誠に申し訳ないっすが、辺境の商売は、なにかと手間賃が掛かりまして・・・」

 

彼が言うのはもっともである。商品を仕入れから運送を込みで考えると手間も時間もかかる。あくまで売り手の場合だが

 

「それはそっちの都合でしょ?」

「う・・・確かにそうっすが・・・」

 

買い手には関係ない事である

 

「素直に認めたわね。じゃあ、通常価格で手を打ってあげるわ」

「・・・エゲツないですね・・・」

「感謝の印に『お客さまの笑顔』って奴をやっとくか。にっ♪」

 

ロクロウが笑顔を見せる

 

「きょ、恐縮っす・・・」

 

 

かめにんから値引き交渉を成功させ、持ち物の補給を済ませる。かめにんは暗いオーラを出している。通常の価格では儲けなど出る訳もない。ケンは流石に気が引け、かめにんに歩み寄る

 

「うぅ・・・こんなんじゃ完全に赤字っす〜」

「すいません」

「・・・はい。何っすか・・・」

 

かめにんは半端諦めと泣きべそかいている。

 

「はいこれ、手間賃と差額分の代金です」

「・・・え!?ホントにいいっすか!?」

 

かめにんは驚く、暗闇から一筋の光が差し込んだようなものだ

 

「流石にこのままだと貴方が営業を続けられなくなって自分達も困りますからね。こっそりとですが払いますよ」

「おお・・・あなた様は聖人様っす〜!このご恩は一生忘れないっす〜!」

 

かめにんは涙を流しながら感謝する

 

「それではこれで、あの人を待たせると何言われるか分かりませんから」

「お気をつけて!これからお得意様にさせてもらうっす!!」

 

 

「ははは!すごい値切りだったなベルベット」

「当たり前の交渉よ。喰い殺して品を奪うよりマシでしょ?」

 

楽しそうなロクロウにやたら物騒なことを言うベルベット。差が凄まじい

 

「お前、死神より恐ろしいな」

「かめにん」

 

たじろぐロクロウ。少年は先ほどのかめにんが気になるようだ

 

「あんな変な奴がいるなんて世界は広いよなぁ少年」

「・・・うん」

「ふっ・・・あっちも俺たちを見て同じことを思ってるだろうさ」

 

アイゼンが皮肉る

 

「ふむ、業魔と聖隷と死神の御一行・・・か」

「でしょうね」

 

ロクロウは特に気にもしない。ベルベットは少し沈んだ声で答える。反論はできないのだから

 

(・・・)

 

一人はどちらでもないのだが

 

 

「かめにんってなんだ?」

 

ロクロウはかめにんについてアイゼンに聞く

 

「名前の通り、かめにんだ」

「だから、なんなんだ?」

「かめにんは、かめにんだ。行商が得意な種族だと考えればいい」

 

アイゼンはそれだけ答える。答えになっているかどうか分からないが

 

「ま、ウミガメみたいな甲羅をしょってたし、名は体を表すってヤツか。俺は六番目でロクロウだしな」

「ぼくは二番目の使役聖隷だから、二号・・・」

「それは名前じゃない、ただの称号だ」

「・・・?」

「いい加減、少年にも名前をつけてやらんとなぁ」

「・・・僕の、名前・・・」

「・・・」

 

ベルベットは少年の言葉に只々黙るばかりだった

 

 

アイゼンがコイントスをする。もちろんウラだ

 

「・・・」

「アイフリード海賊団の副長は変な験を担ぐのね」

「癖みたいなものだ。どうせウラしか出ない」

「その金貨って、どこの国のものなんだ?表は女神、裏は死神なんてのは、初めて見た」

 

ロクロウが聞く。確かにこういうものは余程の理由がない限り製造されることはない

 

「裏側は厳密には死神じゃない。これは『魔王ダオス』だ」

「なんか、どっかで聞いたような名前だな」

 

ここで言うのもアレだが中の人繋がりである

 

「・・・女神マーテルと・・・魔王ダオス・・・『ラグナロック』第765章『ユグドラシル戦記』より」

 

少年が補足する、ナムコにファンタジアにシンフォニアだ

 

「ほう、よく知ってるな。これは、異国の古代遺跡から発掘されたカーラーン金貨と呼ばれる貨幣だ。柔らかいキンで出来ているが、特殊な加工で高度が高められていて、傷がつきにくい」

(純金だと流石に無理だから、合金かな?」

 

アイゼンの言う通り金、特に純金ともなると硬貨どころか装飾品としても使えない。一般的には銀や銅を合わせて合金にするのが多い

 

「へぇ、随分珍しいものなんだな」

「あんた、本が好きなの?」

 

ロクロウが感心し、ベルベットが少年に聞く

 

「好き・・・?テレサ様の部屋にたくさん本かまあって僕はいつも本を読んでいた・・・。『ラグナロック』は神話時代の戦記で何回も読んだ・・・」

 

「・・・」

 

ベルベットは感じているのだろう、弟との共通点を、ケンは少年の肩に手を置く

 

「それを好きって言うんだよ。何回も読んでいるなおさらね」

「・・・うん」

 

ケンは少年の肩を優しくたたく

 

「それにしても、そんな珍しいコイン、どこで手に入れたの?」

「話せば長くなるが・・・」

「ならいい」

 

本当に長くなりそうなのでベルベットが流す

 

「ちなみにさっきは、コインで何を決めたんだ?」

 

ロクロウが気になったようだ

 

「・・・今話すようなことでもない」

「そうか、余計な詮索だったな、すまん」

 

アイゼンの返しにロクロウはすっぱりやめた

 

 

一行は洞窟を抜け外に出る、ここはブルナーク台地、大陸中央から北寄りに広がる大地で世界七不思議であるブルナーク間欠泉なるものがある。熱水により溶けた鉱物から染み出す塩分が光に反射し虹が発生するという。残念ながらここからは見えないが。アイゼンが下見したという入り口に向かう。人気がない

 

「警備がいないな。押してみるか?」

 

ロクロウが一歩踏み出すがアイゼンが止める

 

「待て、調べた状況と違う」

 

ちょうど風に煽られた草の葉が入り口の扉に向かう。が直前で電撃のようなものが走り、葉を木っ端微塵にした

 

「結界が貼られてるのか」

「あれ、触った瞬間にあの世行きですね・・・」

「警備を変えやがったな」

「なるほどね。さっきのサソリや、この結界が死神の不幸ってわけか」

「・・・この程度で済めばいいんだがな」

 

ベルベットの皮肉にアイゼンは口元を僅かに吊り上げる

 

「正面突破は難しいな。どう攻める?」

 

ロクロウが案を尋ねる

 

「崖を降りた先に建設時に使われた搬入口があるはずだ。そっちを探る」

「よく調べたわね」

「この程度は当然だ」

 

 

アイゼンの言う通り崖の下にも入り口があった。見張りもいるが二人しかいない

 

「あれが搬入口か」

「こっちには警備がいるな」

「つまり結界はないってことね。行くわよ」

 

ベルベットとロクロウは見張りの兵を片付けるため走り出す。その時少年が声を上げベルベット達を止めようと声を上げる

 

「だめ・・・その人はーー!」

 

一瞬後にアイゼンも気付く

 

「気をつけろ、そいつは!」

「あれは・・・!」

 

見張りの兵が暗いオーラを放ち苦しみ出す。次の瞬間兵はトカゲの業魔となりベルベット達に襲いかかる。ベルベット達は反応に遅れる

 

「間に合うか・・・!?」

 

ケンはすぐ様業魔2体に両手からウルトラショットを放つ。威力は通常よりかなり弱くなるが時間稼ぎにはちょうど良かった。光弾は業魔に命中し、体制を崩す。ベルベットとロクロウはそれを見逃さず一気に攻める

 

「いきなり業魔になりやがった!」

 

ロクロウが小太刀で業魔の剣を弾き飛ばし、がら空きの腹を横に一太刀ち斬り捨てる

 

「どういう不運・・・よ!!」

 

ベルベットは業魔の頭に足を掛け地面に叩き付ける。ケンの援護で事なきを得た

 

「・・・だから言っただろう」

 

 

「警備が業魔病に罹ってるとはな。これも死神の力か?」

 

小太刀を収めながら言うロクロウ

 

「まぁな」

 

アイゼンが答える。言い方からして何度もあるのだろう

 

「けど、突っ込んでたら危なかった。止めてくれて助かったわ」

「俺じゃない。気付いたのはこいつだ」

 

アイゼンは少年に顔を向ける

 

「・・・」

 

少年は命令を破ったことに責任を感じたのだろう。俯いている

 

「これからも、しっかり警戒頼むわよ。死神が一緒なんだから」

 

ベルベットはそれだけ言うと入り口へ向かうその声には明らかに温もりがあった。少年は何のことかわからず首をかしげる。そこにロクロウが近づく

 

「喋ってもいいってことだよ」

 

少年がそれを聞き彼女をみる。彼女はケンと話している

 

「・・・さっきの援護。礼を言うわ」

「礼を言われるほどじゃありません。あの少年のお陰ですから」

「相変わらず素直じゃないのね」

「そこら辺はほんの少し難しいんですよ。自分は」

 

ベルベットから一歩下がって搬入口に向かうケン

 

「警備はしっかり」

 

その後ろ姿を見ながら言葉を復唱する少年。その目に光が一瞬宿った

 

 




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