テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】 作:スルタン
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資材搬入口から侵入した一行の目の前に映ったのは業魔にやられたのだろう王国兵士の死体とそれに目もくれず徘徊している業魔の姿だった
「うお、要塞中に業魔がいるようだな。まさかアイゼン、お前が業魔病の原因じゃないだろうな?」
アイゼンを訝しむ様な顔で見るロクロウ。不運であるのも程があるが
「・・・いや。偶然蔓延したところに俺たちが来たんだ。死神の道連れとは、こういうことだ。悪く思うな」
偶然って怖い
「むしろ好都合ね。敵は、組織的な対応ができなくなってる」
「こっちは少数だ。確かに乱戦の方が有利に立ち回れるな」
ベルベットとロクロウの考えは正解だ。兵の数が多ければ多い程指揮系統がマヒした場合立て直しには時間がかかる。その間に攻撃をかけられて総崩れなどよくある話だ。
「・・・」
ベルベット達の反応に何か思ったのか黙り込むアイゼン
「アイゼン、海門を開くにはどうすればいいの?」
「開閉装置は、海門の上部にあるはずだ。それを起動して、合図の狼煙をあげる」
「了解。海門の上ね」
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ここヴォーティガンらウエストランド領とノースガンド領の海峡に聖寮が建造した巨大要塞、物理的に封鎖することで人の往来や物流が厳しく管理されている。ここを避けるならばダイルの言ったように外洋を大周りする必要がある。ここには戦艦も配備されており、正面突破はまず不可能だ。だが現在業魔の発生で要塞の機能は著しく低下している今が好機なのだ。ベルベット達は業魔を退きつつ、搬入口を抜ける
「おい、船が残ってるぞ」
「戦艦だ。マズイな」
ロクロウが停泊している船を見る
「海門要塞か・・・海峡ごと鉄の門で塞いじまうなんて聖寮もとんでもないもの作りやがるな」
「少し前には、こんなの考えられなかったのに」
ロクロウとベルベットの疑問にアイゼンが答える
「聖隷を道具として使えば、造作もないことだ」
これだけの施設を人の手だけで建設するにはそれだけ時間がかかるというもの。見た限り何処もまだ新しい。これは短い期間で造り上げたのも聖隷の力があったのは間違いない
「聖隷は、業魔を斬る刃にもなれば、鉄を鍛える金槌にもなるってわけだな」
「そうやって聖寮や王国は、自分たちの力の大きさを民衆に知らしめてるのよ。逆らうな、従えってね」
ベルベットの言う通り聖隷という力、もとい武力は抑止にもなる。何処かの勢力が攻め込んでくるのを防ぐことができる。またはそれをチラつかせてお互いに牽制しあうという方法もある。だがそれを民衆に向ければ弾圧になる
「胸糞悪い話だ」
アイゼンが同族の扱いにそう吐き捨てる
「むなくそわるい・・・」
「まったくだわ」
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海門を開く装置を目指し一同は上へと続く梯子を登る。先頭はベルベットだ。ベルベットが梯子を登り切る直前、王国兵であろうかひどく怯えており何かから逃げるようにベルベット達の方へ走り出すが、当の本人は気づかなかったようで一瞬驚いた顔をした瞬間既に登り終えたアイゼンに殴り飛ばされる
「ぐおっはぁ!!」
殴り飛ばされた王国兵は何回か転がり倒れ伏す。アイゼンは横にある扉に足を運ぶ
「この扉から海門に出られるはずだが、鍵がかかっているようだな」
アイゼンの言葉を聞きながらベルベットが近づいてくる。同時に腕を業魔手に変える。一瞬アイゼンがベルベットを見て察したのか横に退く。ベルベットが業魔手で扉に殴りかかるが余りに頑丈で弾かれる
「壊すのは無理か」
ベルベットが毒づく、その時後ろから声が聞こえる
「侵入者ども!ワシの要塞をよくもーー」
先程アイゼンが殴り飛ばした王国兵が起き上がり声を荒げる
「扉の鍵はどこ」
「ワシは誇りあるミッドガンド騎士だ!業魔なぞに屈するものか!」
ベルベットの問いに言い返す王国兵、ベルベットはそんなの御構い無しに数歩進むと王国兵はビビったのか後ろに後ずさるが意地があるのか身構える。その時アイゼンがベルベットの前に歩み出る
「俺がこの世で一番むかつくのは、生き方を他人に曲げられることだ」
アイゼンは歩きながら続ける
「自分の舵は自分で取る。そうでなければ本当の意味で生きているとはいえないからだ」
アイゼンが近づくごとに王国兵の顔が引き攣る
「自分の舵・・・」
「如何にも!この要塞を死守するのがワシの生き様だ!」
アイゼンが鼻で笑う
「だが、それにはどんな結果も受け入れる覚悟が要る」
目の前まで迫ったアイゼンが王国兵士の顔を殴り腕を後ろ手でねじり上げ壁に押し付ける
「お前の覚悟が本物かどうか、試させてもらうぞ」
「ひぃ・・・!!」
ギリギリと音を立て最後に嫌な音が響いた
「いぎゃあああっ!!」
男が激痛に叫ぶ
「慌てるな、まだ1本目だ」
それを聞いた王国兵が慌てて待ったをかける
「ま、待て!鍵は扉の奥にある管理室だっ!」
アイゼンが溜息を吐く
「もう一つ。戦艦のある船着場はどこだ?」
アイゼンの質問にすぐさま答える
「正面の階段を進んだ先です!」
なぜか敬語
「わかった」
王国兵を振り向かせアイゼンは顔面に拳を叩き込む。その光景に少年はほんの僅かに声を上げる
「手間をかけたわね」
「単なる適材適所だ」
アイゼンは腕を組み今後の方針を告げる
「鍵も必要だが、戦艦もつぶすぞ。バンエルティア号が迎撃される前にな」
「だな。管理室か船着場か、どっちに舵を取る?」
アイゼンの案に賛成したロクロウはベルベットに判断を委ねる。ベルベットは手を口に当て当て考える
「何方にせよ二つともこなさなければなりませんが・・・」
ケンが言う
「管理室を探し出してまずは鍵を見つける、行くわよ」
「・・・うん」
少年には少しキツイ出来事だった、後にもっとキツイ事が起こるが
〜
「・・・開かない。中から鍵がかかってる」
ベルベット達は管理室であろう建築物を見つけるが、そこも金属の扉で塞がれている
「かなり分厚い扉だ。ここが管理室じゃないか?」
ロクロウが推測する
「恐らくそうね。他に入り口は・・・」
「窓はあるが、鉄格子かかってるな」
「独立した建物のようだ。周囲をくまなく回ってみよう」
アイゼンの提案で周りを探る事になった。その結果一部壁が損壊し蔦が生い茂った場所を見つけ、その後に格子がひしゃげている箇所を見つけた。恐らく業魔が暴れて壊れたのだろう。ケンはには狭すぎて通れなかったのでベルベット達に中から鍵を開けてもらい中に入った
「ここが管理室のようね。手分けして鍵がを探すわよ」
「俺たちは奥の部屋を探す」
アイゼンとロクロウは奥の部屋へと向かう。ベルベット、少年、ケンは今いる部屋を探る
〜
ベルベットは机を、少年は探すつもりが本に夢中になっている。仕方ない事だか。ケンは棚を探っている。少年はふと本棚の上にある羅針盤に気付く
「あ!!」
それを背伸びをして手に取ろうとするが僅かに届かずぐらつく羅針盤
「あった!鍵--」
その時ベルベット達の横から何かが落ちる音が響く。二人はそちらに顔を向けると少年が頭を抑えながら呻いている
「あうう・・・」
ベルベットは状況を察し、呆れながら少年に歩み寄る。ケンも近づき羅針盤を取る。ベルベットは少年の頭を小突く
「痛っ!」
「これくらい我慢しなさい。生きてる証拠よ」
「タンコブ・・・が?」
少年は痛みに耐えながら言う
「痛いって事がよ」
「でも、痛いのは・・・怖い・・・」
「そりゃあ、誰だってそうだけど」
少年の言い分にベルベットは肯定する
「ベルベットも?」
少年の問いかけにベルベットは僅かに笑みを見せる
「それにしても変な物が好きよね。男の子って」
ベルベットはケンが持つ羅針盤を見る
「好き・・・?」
「好きなんでしょ?」
ベルベットは懐からもう一つの羅針盤を取り出し少年に手渡す。もう一つはケンが元の場所に戻した
「流石に2つは要りませんよね。持ち物はなるべく少なくしませんと」
「まぁ、そうね」
その時少年が呟く
「よく・・・わかんない」
ベルベットとケンが少年を見る
「でも・・・本を見てから、ずっと不思議な感じがして・・・なんか・・・」
少年はなんとか言い表そうとするがどうすればいいのか分からないようだ。そこでベルベットが助け舟を出す
「ドキドキする?」
「・・・うん、なんで針は北を向くんだろう・・・?誰が仕掛けを考えたんだろう・・・?これがあったら、色々なところを冒険できるのかなって思うと・・・」
少年は嬉しそうに顔を上げる
「ドキドキする」
「そういう時は言えばいい。好きか嫌いか、楽しいか怖いか--あんたは生きてるんだから」
「ぼくは・・・生きてる・・・」
それを聞いたベルベットは続ける
「これはあたしの意見、命令じゃないから。いい?」
「素直じゃないですね」
「あんたに言われたくはないわよ」
ケンは先程言われた事をそのまま返す。少年はその光景を見てはっきりと答えた
「わかった」
その言葉に答える様に背の目にはっきりと光が、その心に意思が宿った
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その後アイゼンとロクロウが奥の部屋から戻ってきた
「鍵があったか。これで海門を開けられるな」
「羅針盤も必要だ。よく見つけた・・・二つもあったのか」
「こっちはあたし達が使っていた物よ。あの時砲撃してきて海に落とすとこだったけど」
「・・・ああ、すまなかったな」
「まぁまぁ、どっちにせよ必要になったかもしれませんし。彼が見つけたんですから。その事は褒めるべきでしょう」
「・・・そうだな、よくやった」
アイゼンが少年を褒める。少し恥ずかしながらも
「うん」
それに答えた
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鍵を入手した一行は次に戦艦の機能を停止させるために船着場に向かう
「・・・ふぅ・・・」
少年は少し調子が思わしくない。当然だが
「何処か具合でも悪いのか?」
アイゼンが少年に聞く
「羅針盤が落ちてきて、タンコブができた・・・」
「どれどれ・・・おお、結構腫れてるな。こいつは痛いだろう」
ロクロウは少年の頭を診る
「うん・・・でも、ぼくは生きてる・・・」
「痛みも生きている証と言いたいのか?」
「ベルベットが、教えてくれた・・・」
「・・・」
少年はベルベットの方を見る。当の本人はそっぽを向く
「よし、じゃあ、俺がそのタンコブを押してやる」
ロクロウが悪い笑みを浮かべる
「えっ・・・えっ・・・」
やめなされ
「ははは、冗談だって」
「馬鹿やってないで、急ぐわよ」
ロクロウとアイゼンは一足早く行く。少年も続くがさきほどの事でしょんぼりしている。そこにベルベットが話しかける
「ここを陥落して、船に戻ったら砂糖をもらってコブに塗りなさい。腫れが引くわ」
それだけ言うとベルベットも先に行く
「・・・うん」
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「戦艦を潰すってどうやるんだ?」
「戦艦は強力な大砲を積んでいる。その火薬を利用するんだ」
ロクロウとアイゼンがそんなことを言いつつ船着場へと続く通路を走る一行、だが目的地に続く扉の前に一人の対魔士が立っていた。傍には業魔が転がっている。対魔士がベルベット達に気づいてこちらを向く。二等とは装飾が違う
「一等対魔士!?」
「船着場はその先だな。通してもらうぞ」
一等対魔士は剣を抜く
「貴様達は侵入者が?・・・いや、どうでもいいか。業魔に関わる者は、すべて斬り伏せる。我が"ランゲツ流"の剣でな」
対魔士のランゲツ流という言葉にロクロウが反応する
「・・・どけ、アイゼン」
「お前こそ下がれ。こいつは俺がやる」
アイゼンの制止を聞かず、前に出るロクロウ
「いいや、"これ"は俺の獲物だ」
小太刀を構えるロクロウ。対魔士は自分の体から使役聖隷を繰り出す。人型ではなく動物だ、猪と鼠に見える。対魔士は己の剣を肩にかける変わった構えを取り、ロクロウ達に向かって走り出す
「邪魔をするなら斬る!」
「てめぇ、死神を舐めるなよ」
ロクロウはアイゼンに警告したのだろうが、アイゼンは御構い無しだ。二人は対魔士に攻撃を仕掛ける、残りのベルベットと少年、そしてケンに向かって来る。ベルベットは飛びかかって来る鼠の聖隷の横っ腹に蹴りを見舞う
「ふんっ!!」
蹴られた鼠は勢いよく横に飛んでいき壁に激突するが直ぐに立ち上がる。並でないことは確かだ。少年は援護するべく聖隷術を展開しようとするが
「危ない!!」
ベルベットか声を上げる。助けようにも鼠が邪魔をしてそちらに行けない。少年の横から猪が突進してきた
「ああっ!?」
少年は術の展開をやめ躱そうとするが間に合わない。その間にも猪は少年目掛けて突進して来る。少年は思わす目をつぶり位痛みに備える、が衝撃も痛みもやって来なかった。少年は恐る恐る目を開ける。目の前にはケンが猪の牙を掴み突進の阻止していたのだ。
「大丈夫?」
ケンは少年の無事を確かめる
「う、うん!」
「良かった、僕はこのまま此奴を抑えるから先にベルベットさんの方を手伝ってくれないかい?」
「うん、わかった!」
少年は鼠と対峙しているベルベットの方へ駆けて行く。ケンは今だに押して来る猪に力を込め逆に押し込んで行く、少年は鼠と格闘しているベルベットを援護する為改めて術を展開する。ベルベットがそれに気付く
「あたしが隙を作るからそこに撃ち込みなさい!」
「うん!」
少年が返事すると同時にベルベットは体勢を立て直し飛び掛かる鼠を畳み掛ける
「飛燕連脚!」
一撃目の蹴りが相手の腹に食い込み大きく浮かせ即座に二撃目で地面に蹴り落とす。鼠が大きくバウンドする
「今よ!」
「行け!シェイドブライト!」
二色の光弾が鼠の聖隷に直撃する。力尽きたのか倒れ消える
「後は・・・」
ベルベットはロクロウとアイゼン、ケンの方を見る、ロクロウとアイゼンは二人で何か言い合いながらも代わり番こに小太刀と拳と脚で攻撃している。ケンは猪を組み伏せている、猪は荒い息を吐いている。ベルベット達はケンを助けに入る
「肩、借りるわよ!」
「またですか?」
ケンの肩に足を掛け跳躍する
「崩牙襲!!」
猪の背中に踵落としを決める。ケンは素早く後ろに下がる。ベルベットほバク転し直ぐ様着地した瞬間に猪の足を払い、浮かす
「もう一度よ!!」
「わかった!シェイドブライト!」
少年がもう一回先程の光弾を放ち猪に当たる。猪は足を震えさせながらもなんとか立ち上がろうとしたがやがて力尽き消えていった。丁度ロクロウ達も決着が付いたのだろう一等対魔士が大きく吹き飛んだ。だが対魔士はまだやるつもりなのだろう剣を支えに片膝をつく
「時間がない。お前達は戦艦を潰せ」
「ロクロウ、そいつはまだ--」
「ああ。力を残してる」
アイゼンが察しベルベット達を促す
「・・・行くぞ」
船着場へ走るのを見送るロクロウ、そして立ち上がった対魔士に顔を向け質問する
「誰からランゲツ流を習った?」
その問いに対魔士が答える
「・・・聖寮特等対魔士シグレ様だ」
それを聞いたロクロウは口角を吊り上げる
「嘘をつけ。あいつが弟子なんな取るか。暇つぶしに二、三個技を教えただけだろう?で、同じ技で叩き潰された」
ロクロウの言葉が当たったのか対魔士が剣を構え向かってくる
「う・・・うおおおっ!!」
辺りに金属音が響き渡った
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「はあぁっ!」
ベルベットが目的の船の上で業魔と化した王国兵を斬り捨てる、後ろからアイゼンが船室から戻ってきた
(戦艦っていうからどんなものかと思ったけど、これじゃ巡洋艦。まぁサイズを小さくして火砲増やしたやつもあったっけ、それと同じものだろう)
「アイゼン、火薬は?」
ケンがそんな事を思い、ベルベットはアイゼンに確認を取る
「仕掛けた。こいつをバンエルティア号への狼煙代わりにする」
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ロクロウは終わったのか小太刀を納める
「ふう。・・・このまま程度じゃ修行にならんな。だが、奴の居場所はわかった」
ロクロウの目付きが鋭くなるが扉の開く音で元に戻る。ベルベット達が戻ってきた
「応!俺の目的も聖寮になったぞ。恩返しもできるし、丁度いいな」
ベルベットとアイゼンとケンはロクロウの話を聞いている。少年は周りを見回し片隅の対魔士に目が止まる。正確には対魔士だっただが、その対魔士の足元にその腕と頭が転がっている
「あ・・・!?」
無理もない
「あんたがやったの?」
「ん?まずかったか?」
「別に」
ベルベットはそれ以上聞くのをやめた
「死神の連れには丁度いい」
アイゼンの言葉と同時に後方から爆音が響いた。船を無力化したのだ
「これで準備は整った。海門を開門するぞ!」
「・・・」
ロクロウのギャグに誰も突っ込まないし誰も反応することはなかった。・・・クレスは帰ってね
如何でしたでしょうか。この頃ヒロイン必要ないんじゃないかなと考える毎日。意見も聞いてみたいので、ご意見ご感想お待ちしております。