テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】   作:スルタン

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大変遅れてしまい申し訳ございませんでした。この投稿が今年最後になると思います


第14話

 

依頼の遂行を明日に控えたマギルゥを除くベルベット達はその日の夜、各自各々の時間を過ごす。ロクロウはテーブル席で夜の酒を始めるのか心水の入った土瓶を置いている。一方アイゼンはカウンターで老婦人と何か会話している

 

「・・・わかったわ。アイフリード船長の行方ね、船長には借りがあるの。この件に関しては、情報がはいったら無条件で教えるわ」

「頼む。あいつが失踪した現場にはペンデュラムが落ちていた。それに、どうやら特等対魔士メルキオルも絡んでいるようだ」

 

その言葉を最後にロクロウの座るテーブル席へと向かう、ロクロウは心水を飲み始めている。アイゼンがそこへ氷の入ったグラス二つとボトルを置く、ロクロウがそれに気づき土瓶を上げるがアイゼンが手を振り椅子に座る。ロクロウはそのまま自分の御猪口に心水を注ぎ、アイゼンはボトルのコルクを開けグラスに心水を注ぎ入れる。そこでロクロウが話しかける

 

「大変そうだな。俺たちにつきあってる場合じゃないんじゃないか?」

 

そのまま御猪口を口につける

 

「・・・お前こそ、なぜベルベットにつきあっているんだ?」

 

アイゼンがボトルに栓をしながら逆に聞き返す。質問を質問で返すととある人が怒る

 

「ん?だから恩返しだよ。刀の在処を教えてもらった恩があってだな——」

「業魔が恩だと?笑わせるな」

 

アイゼンの言葉にロクロウが返す

 

「海賊をやってる聖隷の方が冗談だろ?」

「・・・」

 

アイゼンも分かってるのか否定せずに僅かに笑いながら首を縦に降るお互い皮肉を言い合う

 

「なんにせよ、俺たちは理からはみ出したハグレ者だ。こんな理が仕切る世の中じゃ、ハグレ者は、俺みたいに開き直って化物になるか、さもなきゃ——」

海賊団(おれたち)のようにハグレ者同士でつるむしかないだろうな」

 

ロクロウの言葉に付け加えるアイゼン

 

「だろ?なのにベルベットは、ひとりで世界に牙をむいた。なかなかできることじゃない」

 

そう言いながら心水を注ぐロクロウ。土瓶を置く

 

「あいつの"強さ"の正体がなんなのか・・・俺はそれに興味があるんだ」

「つまるところ自分のためか」

「いかんか?」

 

悪びれること無くまた心水を飲むロクロウ

 

「・・・いや、俺も同じだ」

 

あくまで自分のため。綺麗事を一切言わない

 

「聖寮の理による支配に抵抗するために意志と力を持った仲間が欲しい」

 

ハグレ者に対しての仲間、結構な不釣り合いである

 

「だが、アイフリード海賊団のバカな流儀に付き合えるのは、同等以上のバカだけだ」

 

それを言い終わるとグラスの心水を一気に飲み干しテーブルに置く

 

「俺も、あいつがどこまでのバカか興味がある」

 

ロクロウがそれを聞いてニヤつく、同じ事を考えていたのだろう

 

「ベルベットが聞いたら怒るぞ?」

 

ロクロウが心水を注ぎ直すとアイゼンがもう一つのグラスを差し出す。御猪口とグラスがかち合う

 

「誉めてるんだ。そんなバカはめったにいない」

 

グラスに心水を注ぎ入れる

 

「・・・そうか。お前たちの船長も、そういう人間なんだな?」

 

ロクロウがグラスを取り、アイゼンは御猪口を取る

 

「ああ。アイフリードこそ、立派なバカ野郎さ」

 

ロクロウはグラスに口をつけるが一瞬引っ込めるも直ぐに飲み始める。アイゼンは気に入ったのか土瓶を取り新たに注ぐ。ちゃんぽんは良くないのだけれど

 

 

二人が心水を飲み合う中正面の扉が開く、ロクロウとアイゼンがそちらを見るとケンが少し息を上げながら入ってきた

 

「ふぅ・・・」

「おう、ケン。今まで外にいってたのか、どうりでいないわけだ」

「外で何をしていたんだ。夜は外出禁止令が出ている、見つかると面倒だぞ」

 

ケンが腕で汗を拭いながら話す

 

「えぇ、分かっています。そこは見つからないようにコソッと街の外に出て外れで鍛錬していました。見つかってはいません」

「見つかってないって街の門は警備がいるはずだぞ?一体どうやって」

「ちょっと手荒いですけど壁をよじ登って・・・」

「ふん、何をしたかと思えば本当に手荒いマネだな」

 

ケンの言い分を鼻で笑いながら心水を口に含む。ケンはそれを聞き流しながらカウンターの方へ向かう。老婦人が飲み物を差し出す

 

「これはサービスよ。マーボーカレーを美味しいって言ってくれたことへのね」

「あぁ、ありがとうございます」

 

飲み物を頂くケンを見ながらアイゼンが口を開く

 

「ケン、一つ聞きたいことがある」

 

それに気づいたケンがそちらに顔を向ける

 

「はい。何でしょう」

「お前が海門で業魔に放ったあの光弾の様なもの、俺たち聖隷が使う聖隷術や魔法とは違う。あれは何だ」

 

アイゼンが単刀直入で聞いてきた

 

「応!俺もあの時お前が答えた時から気になってたんだよな。減るもんじゃないし答えてくれてもいいだろ?」

「あの時?」

「ヘラヴィーサで難破した時にな、あの時はライフィセットと初めて会った時なんだがその時業魔とやりあってその後目を覚ましたケンにベルベットが襲いかかってきたんだ。生憎俺とマギルゥは丸腰でな、敢えて気絶してるふりをしてやり過ごしてた時ケンの右手から光が出始めてベルベットの左腕を黙らせたのさ、その後聞いたんだがはぐらかされてな、そこから先は聞いてない」

「ほう・・・」

「なぁいいだろ?」

 

ロクロウとアイゼンがケンに顔を向ける。ケンは渋々答える

 

「・・・えぇ、分かりました・・・」

 

 

「導師アルトリウス・・・なかなか見事に民衆をまとめあげおったな」

 

マギルゥが城壁の上に座り、王城を見ながら一人呟く

 

「さてさて、悲劇のヒロイン気取りの小娘の牙が、この世界に如何ほどの傷をつけ得るか・・・」

 

言いながら立ち上がる

 

「裏切り者捜しでもしながら、見物させてもらおうか」

 

その言葉を最後にいつものニヤリとした顔を浮かべた

 

 

そして次の日の朝、いよいよ依頼を遂行する。昨日の出来事を振り返りロクロウが話す

 

「優しそうな顔して、したたかなばあさんだな」

「奇術団のことも、あたしのことも知ってた。情報網は本物のようね」

「情報だけじゃない。偽造とは言っていたが、通行手形も本物だ」

「王国内にも仲間を潜り込ませてるってわけか」

「先代のバスカヴィルは、反権力の塊の男だと噂に聞いたことはあるが・・・処刑されていたとはな」

「カリスマを失っても組織は揺らいでいない。底が知れない連中だな」

 

トップが倒れても体制が崩れない組織はこの上なく厄介であるのはどこも同じである

 

「それぐらいの連中でなきゃ、聖寮とは渡り合えない。情報を手に入れるためにも、依頼を成功させないと」

「旨い心水を、もう一杯呑むためにもな」

「・・・気が合うな。あの店は、いい心水を出す」

 

ブレない飲兵衛二人。そこへライフィセットのお腹がなく

 

「・・・あ」

「あんたもがんばりなさい。またマーボーカレーを食べるために」

「・・・うん!」

 

 

「さてと、依頼はどれから始めるんだ?俺はどれからでも構わんぞ」

「だが時間も惜しい。人数を分けて依頼をこなすという手もある。ベルベット、どうするかはお前が決めろ」

「・・・」

 

アイゼンの提案でベルベットは顎に手を当てる

 

「僕もその意見には賛成です。なるべく早くことを済ませて準備を整えた方がよろしいかと」

「・・・わかったわ、じゃあ二手に分かれましょ。」

「よし、決まりだな。どっちに分かれるんだ?」

 

ロクロウの問いかけにケンが答える

 

「僕はメンディという人物の捜索に行きます。個人の意見ですが、一人で行こうと思います」

「待て。幾ら何でも、単独での行動は危険だ」

 

アイゼンがケンに意見する

 

「わかっています。ですがこれはあくまで捜索ですので極力面倒ごとは避けます。自分ならそれほど目立ちません」

「・・・ケン、その依頼はあんたに任せるわ。あたし達はそれ以外の依頼を済ませるから。そっちもちゃんと終わらせなさいよ」

 

ベルベットが了承する

 

「本当に大丈夫?」

 

ライフィセットがケンを見上げる

 

「大丈夫。こう見えても逃げ足も速いから何かあったらここに戻るよ」

「死ぬなよケン」

 

ロクロウの言葉にケンは返す

 

「はい、わかっています」

 

 

「あたし達はゼクソン港にある赤い箱を潰してくるわ」

 

ベルベットが老婦人に依頼を始めることを伝える

 

「わかったわ。"赤箱"はゼクソン港の一番奥の倉庫にあるはずよ。成功したら、ここに戻ってきてね」

「ええ」

 

ベルベットとロクロウ、ライフィセットとアイゼンは先に酒場から出て行く

 

「僕はメンディという人物の捜索に行きます」

「あら、あなた一人で大丈夫?」

「あくまで人探しですので何かあったら逃げますよ」

「うふふ、メンディは"ガリス湖道"に向かった後に行方が分からなくなったわ。お願いね」

「わかりました。では」

 

ケンも続いて酒場から出ようとした時、老婦人が声を掛ける

 

「気をつけてね」

「ええ、またマーボーカレーが食べたいですから」

 

今度こそ酒場から出て言った

 

 

酒場から出るとベルベット達の姿はない。もう行ったのだろう

 

「さてと、僕も行かないと」

 

その時噴水の方から声が聞こえた

 

「この世界に来て初めての仕事だな。ケン」

 

ルシフェルが噴水のベンチに足を組み、携帯電話を見ながら話しかける

 

「仕事とは言っても、人に褒められるものではありません。」

「確かにはたから見れば決して善行とは言えないだろう。だが物事を視点を変えて見れば例え善行に見えたとしても悪行に見える事もある。逆もそうだ」

「・・・」

「そう深く思い詰める事はないさ。丁度私も少し時間があるから同行させてもらおうか」

「よろしいんですか?」

「君の仕事が終わったら戻るけどね。さ、行こう」

 

 

ケンとルシフェルが合流した少し後、ベルベット達はゼクソン港に入っていた

 

「ねぇ、本当にケン一人で大丈夫なの?やっぱり一緒に行った方がいいと思うんだけど・・・」

 

ライフィセットがベルベットに聞いてくる

 

「心配ないわよ。あいつはそんなにヤワじゃない。何かあったら酒場に戻るっていってたから。今は仕事に集中しなさい。」

「ライフィセット。お前もヴォーティガンで見ただろう、ケンは守りに関しては俺たちの中で一番優秀だ」

 

アイゼンがライフィセットを諭す

 

「ん?待てよ」

 

ロクロウが何かを思い出す

 

「どうした?」

「否ほら。俺たちが街の外に行く途中で兵士が話してたのを思い出してな」

 

顎に手を当て思い出しながら話し始める

 

「それがどうしたっていうのよ」

「"甲種業魔"って奴さ。並の業魔より遥かに強く聖寮ですら迂闊には手を出さないってな」

 

ロクロウが続ける

 

「で、その内の一体がガリス湖道に出没してるらしい。俺としては是非とも斬りたかったと思ってな」

「・・・ガリス湖道だと・・・?」

 

ロクロウの言葉にアイゼンが口を挟む

 

「ガリス湖道って、ケンが向かった所だよ⁉︎一人じゃ危ないよ!早く戻ろうよ!」

 

ライフィセットが声を大にするがベルベットは構わず先に進む

 

「良いのか?今ならまだ間に合うぞ?」

 

ロクロウは特に慌てる素振りを見せる事なくベルベットに聞く

 

「言ったでしょ。あたし達は倉庫の赤い箱を潰しに行くって」

「でも!」

「戻れば貴重な時間を失うわ。それだけアルトリウスに近づくチャンスが遠退く事になる」

「その言い方から察するにそれ程心配していない様だな」

 

一見冷たく聞こえる言葉にアイゼンが目を細める

 

「だからよ。あいつはヤワじゃない。」

 

 

ベルベット達は目的のブツがある倉庫の近くに来る。

 

「よし、警備がいない。今のうちに倉庫の中へ!」

「ベンウィックたち、上手くやったようだな」

 

見張りはアイゼンが事前にバンエルティア号に連絡し引き離してある。素早く倉庫の中へ入る、中は立て掛けられた武器や樽、積まれた麻袋や木箱がある。その反対側には目的の赤い箱が保管されていた。

 

「赤い箱。これを壊せばいいのね」

 

ベルベットは箱を調べる。箱には紙が貼られている

 

「ミッドガンド教会の封紙・・・?」

「中身を確かめるか?」

 

アイゼンが提案する

 

「・・・必要ないわ。燃やして、ライフィセット」

 

ベルベットも思う事があるのか、それを拒否しライフィセットに指示を出す。裏の仕事には知ったらまずい事もあるという事だ

 

「うん」

 

ライフィセットが聖隷術を発動し爆発音と共に箱に火がつく

 

「依頼達成。撤収よ」

 

これだと建物自体が焼け落ちるがその方が事故と思われる。聖寮の目を欺けるという事だ

 

 

ベルベット達が倉庫に火をつけた直後の事、港の船着場から歩いてくる一人の女性がいた。

 

「嵐のせいで手間取った、一刻も早くアルトリウス様に報告しなくては」

 

涙目対魔士ことエレノアが速足で歩く中、その横にある倉庫からベルベット達が走ってくる。案の定鉢合わせになりましたとさ

 

「あなたは!?」

 

ベルベット達がエレノアの前で立ち止まる

 

「っと、涙目の」

 

双方が対峙する。それを聞いたエレノアが聖隷と自身の武器である槍を繰り出す

 

「一等対魔士エレノア・ヒュームです!」

 

反論と同時に聖隷が二体現れ、ベルベット達も戦闘態勢に入る。その時エレノアがベルベット達を見渡し口を開く

 

「・・・一人いないようですね・・・」

 

それを聞いたベルベットの口角が僅かながらに釣り上がる

 

「ああ、あいつ?あいつなら」

 

ほんの少しためる

 

「死んだわ」

 

 

ベルベットがケンが死んだと嘘をついた瞬間当の本人は街道を抜けガリス湖道に入ろうかとした時クシャミをした

 

「どうした?風邪でも引いたか」

 

ルシフェルはさもどうでも良さそうな雰囲気を出し歩く

 

「んんっ、いえ。体調は良好ですからそれはないと思うんですが・・・」

「ふふ。もしかしたら誰かが君の話をしているんじゃないかな?」

「うーん」

 

ルシフェルは含み笑いをした

 

 

「・・・死んだ・・・」

 

エレノアは表情を変えることはなかったが驚いているようだ。ベルベットは続ける

 

「あんた達二人から受けた傷でね。死体は」

「・・・」

 

ベルベットは敢えて揺さぶりをかける

 

「丁度お腹空いてたから、あたしが喰ったわ。案外美味かったわよ」

「!!」

 

その言葉にライフィセットは驚きの表情でベルベットを見る、ロクロウとアイゼンは顔を背ける。笑い顔を見せないように

 

「あなたは・・・!」

 

エレノアが槍を構え走り出し、ベルベットは刺突刃を手甲から繰り出す。聖隷も細剣を手に駆ける。ロクロウとアイゼンは聖隷を一体づつ、ライフィセットは三人のアシストに回る。

 

「ハァ‼︎」

 

エレノアが槍を回しながら下から上へ斬り上げる

 

「フッ!」

 

ベルベットは刺突刃を槍の刃先から滑らせ向きを逸らし躱す。直ぐさま躱した勢いを使いエレノアの顔目掛けて右脚で後ろ回し蹴りを叩き込むがエレノアが顔を引っ込め紙一重に避ける。今度はエレノアが横薙ぎに槍を振るう

 

「仲間を喰らうなんて!貴女は!!」

 

ベルベットは槍を後ろに跳び退き避ける

 

「あたしは一度も仲間だと思った事ないし、第一あいつが勝手に付いて来たのよ」

 

地面に足が着いたと同時にエレノア向かって跳ねる

 

「あいつがどうなろうと知った事じゃ・・・!」

 

刺突刃を仕舞い込んだ手甲をエレノア目掛けて振りかぶる

 

「つっ!!」

「ない!!」

 

勢いをつけた手甲から刺突刃が飛び出しエレノアの腹部に迫る

 

「ダアッ!」

 

エレノアはすかさず槍の柄で刺突刃の横を叩き攻撃を避ける。お互い距離を置く様に離れる

 

「あの女、意外とやるな。一等対魔士も伊達ではない。」

 

ロクロウは細剣の突きを躱し、小太刀をかち合わせながら回避しながら時々ベルベット達の方を見る

 

「おっと」

 

己の眼前に迫る剣先を寸前で上半身だけで避ける

 

「それなりだな、だがそれだけだ」

 

精霊の攻撃が徐々に防戦一方になる。ロクロウの剣撃が勢いを増す

 

「!!」

「今度は俺が行かせてもらうぞ!」

 

ロクロウが攻め立てる横でアイゼンがもう一体の精霊と戦っている

 

「・・・」

「!」

 

アイゼンは同じ細剣で攻め立ててくる攻撃をコートをたなびかせながら避け、当たるものだけ拳で横から弾く。やがてロクロウと同じく攻勢に出るアイゼンの拳と蹴りが確実に相手を追い詰める

 

「フンッ!」

「!?」

 

アイゼンのパンチを剣で防ぐも大きく後ずさる

 

「せいっ!!」

 

その後ろでロクロウの斬撃でもう一体の聖隷が後退し丁度背中合わせになる

 

「今だ!ライフィセット!」

 

アイゼンがライフィセットに合図を送る

 

「重圧砕け!ジルクラッカー!」

 

ライフィセットが術を発動させたと同時に地面が割れそこから発生した重力波に聖隷が囚われる。そこにロクロウとアイゼンが距離を詰める

 

「風迅剣!」

「オラッ!」

 

斬撃と打撃が二人のすれ違いざまに叩き込まれ聖隷がよろめいた時ライフィセットが決める

 

「シェイドブライト!!」

 

光弾が直撃しエレノアの方へ吹き飛ぶ

 

「飛燕連脚!!」

「くうっ⁉︎」

 

ベルベットの二段蹴りをエレノアが防ぐも勢いを殺しきれず数歩下がる、その横で吹き飛ばされた聖隷が地面に落下する

 

「くっ・・・」

 

エレノアが息を切らしながら横目で聖隷を見る

 

「聖隷なしでまだやる気?」

 

ベルベット達は構えを解く事なく挑発する。そこへ何処からか何かが燃える音が聞こえて来た。エレノアが音の主を探ると先程火をつけた倉庫から煙が上がっている

 

「まさか・・・倉庫に火を!?」

 

エレノアがベルベット達を鋭い目で睨む

 

「災厄の中で、人々が築きあげたものをどうして・・・どうして壊せるのですか!」

 

エレノアの問いにベルベットは冷たい目と言葉で言い放つ

 

「人間じゃないからよ」

 

たったそれだけを答える。それだけしかない。答えを聞いたエレノアが石突きを地面に打ち付ける

 

「許しません!業魔!」

 

そのまま手を前にかざしエレノアの体からもう一つの光、聖隷を繰り出す

 

「こいつ、まだ聖隷を⁉︎」

 

ベルベットが驚くのも無理はない、今まで二体しか使役している対魔士しか会った事がないからだ。光が地面に着き聖隷が姿を現わす、が、現れたのは人型でも動物型でもないかなり小さな聖隷だった。赤いリボンのシルクハットを被りクラウンの根元に開けてある穴から目が見える

 

「エレノア様は、ボクが守るでフよ〜!かかってこいでフ〜!」

 

余りの拍子抜けにベルベット達が構えを解く。ただ一人その聖隷に興味津々なライフィセットが率直な感想を述べた

 

「・・・かわいい」

 

それを聞いた聖隷が照れる

 

「そ、そうでフか〜?」

 

そんな中何処からか声が聞こえてきた

 

「見ぃつけたぞぉぉぉ・・・」

 

その声を知っているのか聖隷が驚愕し震え上がる

 

「このバッドなお声は〜⁉︎」

「裏切り者ビエンフー!珍妙にお縄につけ〜いっ!」

 

船のバウスプリットからいつからいたのかマギルゥが立っておりそこから飛び降りる。珍妙ではなく神妙だと思うのだが

 

「で、でたぁぁぁ〜〜‼︎」

 

まるで幽霊が出たが如く叫び声を上げ光となってエレノアに引っ込んでしまう

 

「こ、こら!戦いなさい!」

 

そんな事をしている間に港の作業員が倉庫の煙を目撃する

 

「おい、煙が上がってないか?」

「本当だ!火事だぞ‼︎」

 

騒ぎ始めたのを確かめベルベットがアイゼン達に合図する

 

「火が回る時間は稼いだ。逃げるわよ」

 

ベルベット達は港の出口に向かって走り始める

 

「お前も来い」

「は〜な〜せ〜!魔女さらい〜〜‼︎」

 

ロクロウに担ぎ上げそれに抗議するマギルゥ。人さらいならぬ魔女さらい。エレノアは追いたい気持ちと火事の収束しなければならない使命感が板挟みになり動けなかった

 

「対魔士様!これは一体⁉︎」

「ああ!ひどいお怪我を・・・」

 

作業員がエレノアの元に集まる。エレノアは槍をしまいながら作業員に指示を出す

 

「私よりも人を集めて倉庫の消化をお願いします!」

「は、はいっ!」

 

作業員と別れエレノアが倉庫に走り寄る

 

「この倉庫には、何があったかわかりますか?」

 

エレノアがもう一人の作業員に確認する

 

「たしか・・・滋養薬『赤聖水』です。教会のギデオン大司祭が手配された薬で、各地の医療機関に送るために大量に--」

 

そこまで聞いたエレノアは額に手を当て思考する

 

「教会の薬を?なぜそんなものを・・・」

 

エレノアがベルベット達が走り去った方を見つめた

 

 

ゼクソン港を出た一行は街道で一息つく

 

「ふう・・・なんとか逃げ切れたな」

 

ロクロウが息を落ち着かせる

 

「よよよ・・・無念じゃよ〜せっかくあいつを追い詰めたのに〜」

 

項垂れるマギルゥにライフィセットが近づき慰める

 

「まあ、居場所がわかったからよしとするかの♪」

「あんた、あの変な聖隷を捜してたわけ?」

 

ベルベットがマギルゥに問いただす

 

「そうじゃ。ヤツの名は聖隷ビエンフー。儂の可憐な乙女心を傷つけおった、憎さあまって可愛さ全開なノルじゃよ」

 

そこまで言うと今度はニヤつきながら

 

「ふっふっふ・・・捕まえたらどうしてくれようか〜」

 

そんなマギルゥを尻目にロクロウが率直な感想を述べる

 

「意味がわからん」

「わからん・・・」

 

ライフィセットも実際わからないのだ。ロクロウの真似する形になる

 

「いいの、わかったら困るわ」

 

ベルベットが二人を引き戻す。彼女の言う通りマギルゥの言葉がわかってしまえば面倒ごとが増えるからだ

 

「さてと。ローグレスに報告に戻るわよ」

「時にベルベットや、お主のボーイフレンドの姿が見えぬが・・・逃げられたのかの?」

「・・・は?」

 

マギルゥの言葉に目くじらを立てる

 

「おや?雪の中若い男女、ましてや女が男を押し倒してあつ〜いひと時を過ごしていたではないか〜」

 

一人抱きしめポーズをしながら細目でベルベットを煽てる

 

「あんたねぇ・・・」

 

頭に筋を浮かべ拳を震わせるベルベット、オイオイオイ、死ぬわアイツ

 

「・・・あやつがおらん時にまたあんな事になったらどうするんかえ?」

「・・・」

 

急に声色を変えベルベットに問うマギルゥ。ベルベットは口を閉じ黙り込む

 

「儂らならともかく坊に手をかけることにもなる・・・その時お主はその衝動に抗えるのかえ?」

「ベルベット・・・」

 

マギルゥの言葉にライフィセットがベルベットを不安そうに見る

 

「・・・此処に来る前あいつに祓ってもらったから暫くは大丈夫よ。次が来る前に全部の依頼を終わらせて合流すれば問題ないわ」

「それが最善だが、問題はケンの方だ。いつ戻るかだがな」

 

アイゼンは腕を組む

 

「暴れたら斬るしかないが、それじゃ恩も返せなくなる。そうなってくれるなよベルベット」

「わかってるわよ」

「途中で暴れたら・・・」

 

マギルゥがベルベットをニヤリと見つめ

 

「その時は逃げるがの〜♪」

 

いつものマギルゥだった

 

 

湖道を進むケンとルシフェル、そんな中またケンがくしゃみをする

 

「おいおい、またか?これは本当に誰かが君の話をしているだろうな」

「・・・自分の話となるとベルベットさん達か聖寮のあの人たちになるでしょうけど・・・」

 

鼻をすするケンを横目に楽しそうに話すルシフェル

 

「いいじゃないか、少なくとも誰かが君のことに関心がある証拠さ。そんな顔するなよ?」

「うう〜ん」

「ま、早く事を終わらせよう」

「まあ、はい」

 

二人は道を急ぐ

 

 

第14話 終わり

 

 




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