テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】   作:スルタン

22 / 68
累計UA数2万突破誠にありがとうございます。このような駄作を読んでいただけることをうれしく思います。これからも執筆の方も頑張らせていただきますのでよろしくお願いいたします


第17話

 

ギデオンの暗殺は間接的にであるが成功したベルベットたちはエレノアを置いて離宮の図書室から地下道を通り、最初に入ってきたマンホールから地上に出た

 

「なかなか盛りだくさんな一夜だったなぁ」

「気を抜くな。まだ夜は終わっていないぞ」

 

体を解しながら呟くロクロウに忠告するアイゼン。油断するのは酒場に戻ってから、である。酒場に足早に戻る途中ロクロウはマギルゥに自身が気になっていることについて聞きだす

 

「対魔士から聖隷を奪うとはな。どうやったんだ、マギルゥ」

「元々ビエンフーは、儂の聖隷なのじゃ。それを裏切って家出しよってからに」

 

マギルゥは見下すような横目でビエンフーを睨みつける

 

「うう・・・マギルゥ姐さんの聖隷遣いのバッドさに耐えかねたんでフ・・・」

 

ビエンフーは涙を流しながら白状し始めた、というよりか本音を漏らし始めた

 

「さすらっていた所をエレノア様に拾われたんでフ・・・エレノア様は優しかったんでフよ~・・・」

 

マギルゥとエレノアの扱いの差を遠慮なしに話し始めるビエンフー、それを本人の前で言うのはどうかと思うが

 

「そうかそうか。今の発言含めて、どうお仕置きしてくれようかのう~♪」

 

マギルゥの人差し指がビエンフーの頬に食い込みその顔は邪悪で楽しそうな笑みを浮かべている

 

「ビエ~ン!またバッドな日々が戻ってきてしまったでフ~!」

 

ビエンフーはこれから自身に起こるであろう受難の日々に唯々叫ぶしかなかった

 

「あんた対魔士だったのね」

 

そこまで聞いたベルベットがマギルゥに話す。だが当のマギルゥは己が対魔士であることを否定し訂正する

 

「違~う、魔女じゃよ。こやつは魔法のタネと仕掛け的なアレじゃ」

「だから聖隷と契約できるのは対魔士だけでしょ」

「そんなのは大人が勝手に決めた儚いルールじゃよ~」

 

ベルベットの問い詰めにもマギルゥは答えようともせずただはぐらかす

 

「・・・」

 

そんな対応にベルベットの頭に青筋が浮かぶがそこをロクロウが制する

 

「やめておけ、ベルベット。問い詰めるだけ無駄だ」

「儂に問い詰めるのは確かに無駄じゃ、じゃがアヤツは答えてくれるやもしれんぞ?あの時聖隷にしでかしたことをな♪」

 

マギルゥのいらぬ言葉に全員がケンを見る。視線が集まったことにケンはほんの僅かにたじろぐ。ケン自身いままでこんなに注目されるのは久しぶりだからだ

 

「おお、そうだったそうだった。あの時は取り込み中だったもんな、そろそろ教えてくれてもいいだろ?なぁ」

「俺もだ」

「・・・僕も」

 

食いつき始めるロクロウに応呼してアイゼンとライフィセットも同様にケンに迫る

 

「・・・マギルゥの事は置いといてケン、あの時のことについて話してもらうわよ」

 

そこまで言われてケンは少し考えて提案する

 

「えぇ、わかりました。ですがまずは報告が先です。酒場についてからお話しします。ですが自分でもあの時の現象はよくわからないんです」

「わからない?」

 

ケンの返答にベルベットが聞き返す。そこまで聞いたアイゼンが皆に急かすように声をかける

 

「とにかくまずは報告だ。行くぞ」

 

 

それから酒場に戻りタバサに依頼成功の報告をする

 

「無事依頼を果たしてくれたようね」

「相変わらず早耳ね」

「それだけが取り柄なのよ。自分の耳は遠くなったけど」

 

ベルベットの皮肉に対してジョークを交えて返すタバサ、早速ベルベットが本題に入る

 

「結界を通る“鍵”の情報は?」

「わかったわ。アルトリウスが居る神殿を守る結界内には高位の対魔士しか入れない。そして高位の条件はAランクの聖隷を四体以上連れていること」

 

ロクロウがそれを聞き自己の見解を語る

 

「ふむ。つまり四体の強力な聖隷がいれば俺たちも結界を抜けられるってことか」

「だが、聖寮に従わない聖隷はめったにいない。考えたな」

「・・・」

 

同じ聖隷であるアイゼンがアルトリウスのやり方に一定の評価を送る、ベルベットが対策を思案しようとしたところでビエンフーが飛び出し手に腰を当てふんぞり返りながら声を上げる

 

「こう見えてもボクはAランクなのでフよー!」

 

それを聞いたロクロウはアイゼンとライフィセットの方を見る

 

「アイゼンにライフィセットに、ビエンフー。あと一体聖隷が要るな」

「対魔士から奪うしかないわね」

「儂も行くのか?メンドイんじゃが・・・」

 

マギルゥが嫌そうに体をだらけさせ遠巻きに行きたくないと駄々をこねる。ベルベットはため息をつく

 

「来なくていい。けど、ビエンフーは置いていってもらうわよ」

「礼儀がなってないのー。そこは『御同行ください、マギルゥ様』じゃろ?」

 

ライフィセットが不安そうにベルべットとマギルゥの問答を見る。

 

「頼んだら来てくれるっていうの?導師を襲う場に」

「頼まれ方次第ではの、導師と業魔の決闘なぞ、めったにない見世物じゃし」

「マギルゥ姐さんはこういう人なのでフ・・・」

 

ビエンフーが肩と頭を落とす。マギルゥにとってはスリルがあって面白そうといったところなのだろう。その問答を聞いていたライフィセットは意を決したように椅子から降り、二人の方に近づく

 

「僕、みんなに一緒に来てほしい・・・です。お願い・・・します」

 

ライフィセットがマギルゥに頭を下げる。その行動にロクロウとアイゼンとケンは自然と姿勢を変える

 

「ライフィセット・・・」

「そこまで頼まれては仕方ない。もうしばらく付き合うとするかの~♪」

「もちろん俺もだ」

「神殿にはメルキオルがいる。目的は同じだ」

「自分も行きましょう」

 

マギルゥが了承し、他の三人も快諾する。それを聞いたライフィセットが安心したようにまた席に着く。ベルべットはカウンターにいるタバサの方へ向かい記章を差し出し返却しようとしたがタバサはそれを拒否する

 

「用は済んだ。これは返すわ」

「もっておいきなさい。それがあれば、私たちの身内として援助が受けられるわ」

「救世主を殺そうっていう奴を援助?後悔するわよ」

 

警告するベルベットにタバサは口を当て笑う

 

「ほほほ、ずいぶん御行儀がいいのね。お嬢さん、私たちはそういう“理”の外に生きているんじゃなくて?」

「・・・警告はしたから」

 

ベルベットはそれだけいうと階段の方へ向かうがコイン弾きをしているアイゼンが呼び止める

 

「待て、ベルベット」

 

呼び止められたベルベットが思い出したかのように横を見る。そこにはライフィセットがテーブルに突っ伏して眠っている

 

「おやまー」

「無理もない。長い夜だったからな」

 

ベルベットがライフィセットの傍に歩み寄りタバサに尋ねる

 

「援助頼める?」

「ええ、もちろんよ」

 

 

ライフィセットを2階の部屋で寝かしつけてしばらくした後、1階でライフィセットを除いた全員が集まっている。理由はケンの事だ

 

「じゃあ、話してもらうわよ。あの時涙目対魔士の聖隷にしたことをね。で、あの対魔士が漏らしたけど契約を打ち破るとかどうとか言ってたわね。マギルゥ、あんたあの現象わかるんでしょ」

「まあの、ケンがあの聖隷どもにネコだましを仕掛けたときに対魔士と聖隷の契約、まぁ所謂繋がりみたいなものと思えばよい、それが吹き飛ばされたといえばよいかな」

 

全員思い思いの場所で座ったり寄りかかったりしてケンを見る

 

「あの時聖隷に向かって仕掛けた技はどちらかというと暴走したり正気を失った相手を元に戻すための技なんです。その聖隷と対魔士の契約を破るなんてことは自分でも知りませんでした。」

「知りもしなかったのになんで使ったんだ?いまさら言うのもなんだが賢いやり方じゃないぜ」

 

ケンの言い分にロクロウが指摘する

 

「すいません。ライフィセットを守るのに必死で土壇場で思いついたのがあれだったもので・・・」

「それならもっと他に方法があっただろう。お前の力なら聖隷二体なんともないはずだが?」

「・・・」

 

アイゼンからもその事について指摘されてしまう。ケンは何も言うことができずただ黙るばかりだ

 

「・・・今回は結果論でしかないがな、ケン。お前の戦い方に文句は言わん、だが時には倒さなければならないことは・・・わかっているな」

「・・・ええ、既に・・・」

「そう攻めるなアイゼン、今回は結果オーライってことでいいだろ?ケンもわかってるし甲種にも痛い目にあったから次はうまくやるさ」

「そうだな、俺からはもう言うことはない」

 

ロクロウがケンにフォローを入れ、アイゼンも言うことはいったようでそれ腕を組み壁に寄り掛かる。

 

「じゃがこれからケンも聖寮から目を付けられることになるの~」

「?」

 

マギルゥの呟きにベルベットが反応する

 

「確かにそうね」

「あの対魔士の前であんな芸当をやって見せたのじゃ。対魔士と聖隷の契約を打ち破る者が現れたとなればアルトリウスにいち早く報告が行くじゃろうて。それに全ての聖隷と対魔士にも通じるとも限らん」

「そんなうまい話あるはずないわよ。気を引き締めていかないとこっちの首が飛ぶことになるんだから。ケン、あんたも気をつけなさい」

「ええ」

 

その後自由時間となりロクロウとアイゼンは心水の続きを、マギルゥはビエンフーを弄り、ベルベットは一足早く宛がわれた部屋に戻っていった。ケンはカウンターの席に座り一人考え込んでいた

 

(・・・師匠から学んだ時は正気に戻すとしか聞いてなかったけど・・・あくまで僕は初歩的で師匠はあれぐらい簡単にできるってことなんだろうか。となれば僕はまだまだ未熟だ)

 

心の中でため息をついてる時に彼の前に飲み物が出される

 

「浮かない顔ね」

 

タバサが微笑みながらケンを見ていた

 

「ありがとうございます」

「その顔は自分は未熟だとか考えてるでしょ」

 

バレバレだったようだ

 

「わかりましたか。どうやらあなたには勝てそうにはありませんね」

「人を多く見てきたからね、そういうのわかるのよ」

 

飲み物を一口飲むと気分が幾分か落ち着く

 

「あなたはまだ若いもの色々悩むことだってあるわ、でもその悩みがあるのも人間の在り方の一つよ」

「・・・そうですね」

 

 

次の日の朝小鳥のさえずりの中ライフィセットが目を覚ます。急いで起きるとその側でベルベットが身支度を済ませていた。ベルベットがライフィセットに気づく

 

「起きたわね」

「ごめんなさい・・・」

「別にいいわ。眠くなるのも、お腹がすくのも自然なことよ」

 

ライフィセットは昨日そのまま寝てしまった事を謝っているのだろうがそういうものは自然な事だ。ベルベットがライフィセットに近づくが彼はその行動に一瞬身構えてしまう

 

「食べたりしないって」

「痛いのも・・・自然なこと・・・」

「痛いのは平気よ、慣れてるし」

「強いんだね、ベルベットは」

 

ライフィセットの強いという言葉に反応したベルベットは小さな声で呟く

 

「・・・強くなきゃいけないのよ。仇を討つためには」

「仇・・・」

 

弟の仇を討つために強くならなければいけない。強がりなのか、本望か

 

「出発するわよ」

 

 

ベルベットとライフィセットが酒場の外に出る、空は晴れ清々しい朝である。ここで全員が揃う

 

「う〜ん、晴れやかサワヤカな朝じゃわ〜♪裏切り者にみっちりオシオキしてやったでな」

「ビエ〜ン・・・みっちりすぎでフよ〜・・・」

 

昨晩はお楽しみでしたねってか、違う意味で

 

「鍵を殺さないでよ」

「そっちも、坊を食べないじゃろうな?大事な“鍵”じゃぞ」

 

ベルベットの忠告に煽るように返すマギルゥ、その内やられるぜ

 

「・・・わかってるわ」

「・・・」

 

ライフィセットが胸をなでおろす

 

「じゃが、相手は導師と聖主。導師はともかく、聖主とは世界を創った神様じゃぞ。戦って勝てると思うのかえ?」

「聖主なんて偽物に決まってる。アルトリウスは民衆を操るために神話を利用したのよ。本当に神様なら、業魔病くらいどうにかできるはずでしょ」

 

マギルゥの疑問にベルベットはバッサリと切り捨てる。まぁ仮に本当に神様がいたとしても喧嘩売るのがこのシリーズですしお寿司

 

「・・・」

 

それを聞いたアイゼンは何も言わずに後ろを向き顔を逸らす

 

「カノヌシは存在しないっていうのか?」

「・・・ううん。カノヌシと呼ばれている“なにか”はいる。特殊な術で聖隷を降臨させた聖隷(やつ)が」

 

ロクロウの質問にベルベットが自分の推理を言う。断定はできないがそういうものを感じているのだろう

 

「言い切るのう」

「三年前にこの目で見た」

「ほほう、神様じゃないなら勝ち目はありそうじゃの」

「もちろんよ。第一、狙いはアルトリウス。それ以外はどうでもいいわ」

「アルトリウス様は・・・弟の仇・・・」

 

ベルベットとマギルゥの物騒な会話を聞いてライフィセットの表情が暗くなる。ロクロウがそれに気づき、気分を変えるためライフィセットに目的地を聞き出す

 

「さあて、ライフィセット。目指す“聖主の御座”は、どこにあるんだっけ?」

 

ライフィセットが反応し少しもたつきながらもそれに答える

 

「えっと・・・ローグレスの北。ダーナ街道を進んだ山の中」

「対魔士が検問を守ってるなら、聖隷を奪えるかもしれない。ケン、あんたの力も使えるかもしれないから、準備だけはしておいて」

「はい、わかりました」

「仲間に検問の様子を調べるよう、連絡(シルフモドキ)を飛ばしておいた。その情報を元に襲撃計画を立てる」

「ゼクソン港あたりで合流できそうね」

「その予定だ」

 

今後の予定を立て、ダーナ街道に歩をむける。街道に出るまでに連絡役として使っているシルフモドキの話があった。どうやらシルフモドキは伝書鳩とは違い一箇所を往復するのではなく電話の様に別々の人物のところに行けるという。躾けるのが難しく、ベンウィックが母親代りになることで信頼関係も厚いとの事。そこまでは良かったのだが

ロクロウが食う食わないの話になり一悶着あったのはまた別の話、それと街は司祭の身に何かあったという噂で持ちきりだった。教会側も火消しに大忙しな模様

 

 

ゼクソン港に到着しバンエルティア号の乗組員に確認を取る

 

連絡(シルフモドキ)は届いてる?」

「ああ。検問に偵察を出した」

「まだ戻らないのか」

「はい。もうちょっと待ってください」

 

まだ時間がかかるようだ

 

「小休止するか。小腹も空いたし」

「・・・うん。空いた」

 

ロクロウが休息を提案しライフィセットも賛成する

 

「偵察が戻るまで休憩しましょう」

 

偵察が帰って来るまで待ったがやがて夕方になる。しかし帰って来るまでなにも出来ないので皆フリーで別々の場所で暇を潰している。ベルベットがブラブラしているなかでメンバーが何をしているのかが目に入る、ロクロウはダイルと船の後部でコソコソしていた。貴重な心水が手に入ったから二人で内緒に飲もうとしているらしい。ケンは上半身ボディスーツ姿で背中に250L樽二つを背負い手の甲を地面につけ負荷をかけるようにゆっくり腕立て伏せをしている。アイゼンはベンウィックと打ち合わせをしている。自分らが出発した後は、すぐ動けるように準備しておくこと、最悪の場合にも備えておくこと、と。そのあとまた暫く散策するとマギルゥとビエンフーが座り込んでおり売店で買ったであろう林檎に舌鼓をうっていた

 

「坊にも、リンゴをひとつやったわ。儂って優しいじゃろ〜?」

「リンゴ・・・」

 

その呟きに何時ものなにかを企んでいる目付きをしたマギルゥがベルベットにつっかかる

 

「お主も欲しいか?ならば、今度はニワトリのマネを――」

「必要ない」

 

マギルゥの要求を言い終わらぬうちに拒否しその場を後にするベルベット。その姿を面白くなさそうに見るマギルゥにビエンフーがひとつ聞き出す

 

「姐さん、本気でアルトリウス様と戦うつもりでフかー?」

「まーの。坊に頼まれてしもうたからのー」

「で、でも絶対勝ち目ないでフよ・・・」

 

能天気に答えるマギルゥに必死に訴えるビエンフー

 

「逆らうのう?なんぞお師さんから言い含められたかえ?」

「と、とんでもないでフー!」

「ならば付き合ってもらうぞ。なぁに、危なくなったら逃げればよい。万一死んでも――」

 

マギルゥがそこまで言いかけてビエンフーが知っているのだろう言葉を続ける

 

「『それだけのこと』でフね・・・」

「さすがよくわかっておるのう、ビエンフー♪・・・とはいえ、なるべく長くあがいてほしいものじゃ。儂の暇潰しのために・・・の」

 

 

ベルベットがマギルゥ達の話を切り上げ桟橋の方へ向かう。桟橋の先に置いてある荷物であろう木箱の上にライフィセットが座っておりマギルゥからもらったであろう林檎にかぶりついていた

 

「・・・美味しい?」

 

ライフィセットがベルベットに気づき喉を鳴らして飲み込む

 

「すっぱくて、甘くて・・・」

 

自分が持っていたもう一つの林檎をベルベットに差し出す。ベルベットは少し躊躇したがそれを受け取りライフィセットの横に座りながら一口頬張る

 

(・・・もう殆ど分からない)

 

内心溜息をつくが目線の先に羅針盤がありベルベットは話題を変える

 

「海が好きなのね」

 

その言葉にライフィセットはたどたどしく答える

 

「海・・・波は・・・怖い。あとサメや変な魚も・・・でも、すごく大きくて、不思議で・・・あの先になにがあるのかなって考えると――」

 

ライフィセットがベルベットの方を見る、その顔には探究心をのぞかせている

 

「ドキドキする」

 

そこまで聞いたベルベットは顔を僅かに下げ家族、弟の話を始めた

 

「・・・あたしの弟も海が好きだった」

「ベルベットの弟・・・も?」

 

ベルべットが腰かけていた木箱から降りる

 

「岬で、よく海を見てた。潮風は体が冷えるって叱っても全然いうこときかなくて――」

 

数歩進んで海を見る

 

「あんたも、この子と同じように思ってたんだね。羅針盤・・・買ってあげたかったな・・・旅だってさせてあげたかった・・・」

 

自然と己の弱さが出始めるベルベット。それから暫くお互い無言の中ライフィセットはベルベットの背中を見つめていた

 

「おーい!偵察が戻ってきたぞー」

 

その静寂を破るようにロクロウがベルベットライフィセットに声を上げる。ベルベットが集まるために歩を進めるが途中で立ち止まりライフィセットに告げる

 

「ライフィセット・・・あんたは残ってもいいのよ?」

 

不意のその言葉にライフィセットは驚き躊躇する

 

「僕は・・・」

 

だがそのその迷いもほんの数秒で終わる。ライフィセットは意を決した顔でベルべットを見る

 

「ベルベットと一緒に行く」

 

その言葉にベルベットは背中を向けたまま静かに呟く

 

「・・・そう」

 

 

ベルベットがアイゼン達と合流する、がなぜか彼らの目の前には甲冑を着た警備兵が数人倒れていた

 

「そいつはペンデュラムを使ったんだな?」

「うん!しかも検問の対魔士を全員吹っ飛ばした。あいつなら船長とも遣りあえる」

 

アイゼンが偵察から戻ってきたベンウィックから報告を聞いていた。ベンウィックの慌てようからかなり重要なことのようだった

 

「・・・わかった。直接俺が確かめる」

 

アイゼンがそれだけ言うと一人で街道に向かって走っていった。状況の呑み込めないベルベットがロクロウに聞く

 

「ちょっと、どういうこと?」

「検問がペンデュラムを使う聖隷に襲われてるらしい」

 

ベンウィックがそのペンデュラムについて説明する

 

「ペンデュラムは、船長が行方不明になった現場に落ちてた武器なんだ」

「そいつが連れ去ったってこと?」

「わかんないけど、無関係とは思えないよ」

 

ベルベットの推測にベンウィックが語気を強める。確証はない、だが疑念がないというわけではない

 

「アイフリードは対魔士が捕えているはず。なぜ連れ去った奴が聖寮の検問を襲う・・・?」

 

ベルベットが顎に手をやり思考するが判断材料が少ない。その間にマギルゥがベルベットを焚きつける

 

「どうする?“鍵”が一本独走したぞ」

 

ベルベットは一先ず考えるのをやめ目的に意識を向ける

 

「追いかけるわよ。混乱してるなら、もっとかき回して突破する」

 

ベルベットがアイゼンを追うように街道に向かう

 

「ひょえ~!カゲキ~!」

 

マギルゥがあまりにもわざとらしいリアクションをとりながらロクロウ達もベルベットを追うため同じく街道に続く門に向かい始めた

 

「しかし、アイゼンの奴も勝手じゃのー」

「仕方ないわ、船長捜しが、あいつの目的だし」

 

 

ダーナ街道にある検問の近く来る頃には夜を更け、辺りは月明かりが地面を照らしている。だがその道沿いに幸か不幸かホワイトかめにんが露店を開いていた。いや、開いてしまっていたというべきか。

 

「ホワイトかめ屋へようこそっス・・・って、あなた方は!?」

 

かめにんが営業スマイルで対応しようとしたがその対象がベルベット達だったので顔が絶望へと変わる

 

「丁度よかったわ。また品を見させてもらうわよ。もちろん値段はいつもどうりでね」

「いつもどうりって・・・ひーん、これじゃ赤字っすよ・・・」

 

その後いくつかの物品を補給しベルベット達は店を後にする。が、案の定据え置き価格だったので明らかな赤字にってしまい。かめにんは滝のように涙を流している

 

「うう・・・また赤字っす・・・」

「かめにんさん」

 

肩を落とすかめにんの後ろでケンが声をかける

 

「あ!あなたは!」

「すいません、またベルベットさん達が無理を言って」

 

ケンは懐から手数料分の代金を差し出す

 

「ああ・・・なんて優しいお方、やっぱりあなたいい人っす~」

「・・・どうでしょうか・・・これから世界を敵に回すかもしれないのに。実はお願いしたいことがあるのです」

「へ?なんですか?」

 

彼はかめにんに大きな革袋を持たせる、かめにんがそれの中身を見るとガルドがぎっしりと入っている

 

「こ、これは!?」

「この資金で一つあなたの手腕を買いたいのです」

「それってどういう意味っスか?」

「実は・・・」

 

それから暫く話し込んでケンはかめにんと別れベルベット達と合流する

 

「あんた、あの商人となに話したの」

「今言うことではありませんよ、それよりアイゼンさんを追いましょう」

「・・・腑に落ちないけど。まぁいいわ」

 

 

検問に近づくにつれ金属音がかち合う音が聞こえてくる。ベルベット達がそこにたどり着くと衛兵と対魔士が倒れている中アイゼンとその検問の警備を一蹴したという聖隷がお互い構えをとりながら相対していた。聖隷が袖からワイヤー状の武器を繰り出しアイゼンに向かって飛ばす、ワイヤーの先についている刃がアイゼンの顔を捉えるがアイゼンはそれに身を横に振って躱し攻撃した隙を狙って拳を振りかぶり殴りかかるが、聖隷はそれを楽しむかのように余裕で後ろに下がり避ける

 

「ちっ・・・」

「やるじゃないの。なに(もん)だい?」

 

聖隷は顔をにやつかせ名を聞いてくる

 

「死神アイゼン。アイフリード海賊団の副長だ」

 

アイゼンの名乗りに聖隷は笑う

 

「アイフリードの身内か!こりゃ、また楽しめそうだ!」

「・・・やはり、お前がアイフリードをやったのか」

 

アイゼンの目つきが鋭くなる

 

「いいねぇ・・・いい気合いだ!」

「落ち着きなさい、アイゼン!」

 

一方的ではあるが即発状況にベルべットが近づき制止しようよ声を上げる

 

「こいつは聖隷で、聖寮を襲った。協力すれば結界を通れるわ」

 

その言葉に聖隷が面倒そうな態度はぐらかす

 

「つまらねぇ理屈言うなって」

 

聖隷がペンデュラムを構え戦闘態勢をとる

 

「俺は、俺のやり方でケジメをつける」

 

アイゼンも同じく構え、二人同時に声を上げる

 

「「邪魔をするな」」

 

二人の態度と言葉にベルベットも何かキちゃったらしい

 

「・・・そう。じゃあ、あたしもあたしのやり方でやらせてもらうわ」

 

ベルべットも同じく戦う構えをとる。今更だけどみんな勝手だよねほんと

 

「あんたたちをうごけなくして、結界を開ける!」

 

マギルゥとライフィセットとケンはその言葉に驚きの表情を浮かべている。なし崩し的ではあるがここに三つ巴の戦闘が始まった。ベルベットが刺突刃でマジに斬りかかろうと二人に向かって走り出す

 

「なんでこうなるんだ!?」

「とにかくベルベットを助けるんじゃ!そうせんと後が怖い」

「確かに。すまん、アイゼン!」

「う、うん・・・」

 

ロクロウもアイゼンに謝罪の言葉をかけながらもこの事態を打開すべく小太刀でアイゼン達に向かう。マギルゥとケンは聖隷の方を何とかすべく相対する。マギルゥもそうだがケンはかなり気が進まない様子だった

 

「ケン!しっかりせんとまたベルベットにドやされるぞ!」

 

マギルゥは聖隷術を展開しながらケンを急かす

 

「なんだあんちゃん、気のすすまねぇ顔だな」

「あー・・・こういう事態は初めてですからね、なにより同行してた人とヤりあわなければならないとなるとどうも」

 

聖隷がペンデュラムをちらつかせつまらなさそうにため息を吐く

 

「そうゆうなって。安心しろ、命までは取りはしねぇよ・・・ただ」

 

その瞬間ペンデュラムをケンに向かって超高速で放つ

 

「痛てぇめにはあってもらうぜ!」

 

向こう側ではベルベットとロクロウ、そしてライフィセットがアイゼンと戦っている

 

「邪魔をするなと言ったはずだ!!」

 

アイゼンの右ストレートがベルべットの顔に迫りそれをぎりぎりで躱し、お返しの回し蹴りをアイゼンに後ろに下がられ回避される

 

「言ったでしょ。あんたらを動けなくして結界を通るって、そのままの意味よ。最悪生きてりゃいいわけだし」

 

怖いことを言ってのけるベルベットの横からロクロウが小太刀を突き立てようと走りこむ

 

「こんなことしたくないんだがベルベットが怖いんで、な!!」

「くっ!」

 

アイゼンが聖隷術で地面から岩を隆起させそれを盾代わりにロクロウの刃を受け止める

 

「今だライフィセット!」

「アイゼン、ごめん!シェイドブライト!」

 

螺旋の光弾がアイゼン目がけて飛んでいく

 

「うおっ!?」

 

光弾を横に回避し体制を立て直そうとした時、後ろからベルベットが刺突刃を繰り出しアイゼンの胸に刃を突き出す。それを身を屈んで避けたと同時に今度はロクロウ地面スレスレから抉り込むように小太刀を切り上げる

 

「静っ!!」

「ちいっ!」

 

上体を逸らしなんとか躱し今度はアイゼンが二人に攻撃を開始する

 

「やりやがったな!ウインドランス!!」

 

回避中に聖隷術を唱え風の槍がロクロウとベルベットに迫る

 

「くっ!」

「うおっと!」

 

二人は攻撃をそれぞれ別の方向に避ける

 

「こうなったらやるしかないか!」

「そういうこと!!」

 

二人はそれぞれの獲物をきらめかせアイゼンに向かい合う。一方ケンとマギルゥは聖隷との戦闘を続けていた。マギルゥの援護の水球を受け聖隷のペンデュラムの縦横無尽な攻撃をケンが体を逸らしたり折り曲げながら回避しつつ相手の出方を伺う

 

「おもしれぇな!おい!大方俺の攻撃の隙を突こうと考えてるだろおまえ」

「・・・」

 

ケンは言葉を発することなく唯々攻撃を避けるばかり、その後ろでマギルゥが聖隷術を唱え高速の水球を射出する

 

「これでどうじゃ!?アクアスプリット!」

「おっとっと」

 

聖隷はペンデュラムを引き寄せ自身の前に巡らせる。水球はワイヤーから発せられる光の壁に阻まれ水しぶきと化し無効化される

 

「きー!蛇のようにウネウネしとるくせに亀のように固い紐じゃなそれはー!」

 

マギルゥがキーキー文句を垂れる中聖隷がケンを捲し立てる

 

「で?おまえさんはなにもしねぇのか。避けてばかりじゃケリはつかねーぞ」

「そうですね、ちょっと強引ですがこちらから行きます」

「やっとかケンよ。いつまで焦らすもんじゃから待ちくたびれたぞ」

「援護の方はお任せします」

 

ケンは今度は聖隷に向かって速足で接近すると聖隷は楽しそうに口角を上げペンデュラムを操り始める

 

「いいねぇ!そうこなくっちゃなぁ!」

 

ペンデュラムをしならせそれをケン目がけて放つ、普通ならそれを避けるものだがケンはそれを下から掬い取るようにつかみ取る

 

「なっ!?」

 

聖隷はペンデュラムを引っ張り離そうとするがピクリとも動かない

 

「よーーーーし!!いいぞケン!とどめはこのマギルゥ様に任せておくがよい!」

「やっべ!!」

 

マギルゥは悪い顔を浮かべ一枚の式神を取り出す

 

「伸びろ、伸びろー!」

 

掛け声と共に式神が縦に伸び天にも届かんかとばかりである。伸びきったところでそれを一気に振り下ろす

 

「光翼、天翔くん!」

「うおおっ!!」

 

聖隷はペンデュラムの持ち手を放し避けるには避けられたが判断が僅かに遅れ風圧で吹き飛ばされる、それをケンが見逃さす腰に下げている短剣を抜き走り出す

 

「ぬぅ~外れたか、まぁいいわい」

「あの野郎やりやがっ・・・!?ちっ」

 

毒づきながら体制を立て直そうと立ち上がろうとした時ケンが後ろから首筋に短剣を翳す。聖隷は降参するように両手を上げ。ケンは短剣を収める

 

「そっちも終わったようね」

 

ベルベットの方も決着が着いたようでロクロウと前後から刃を振りかざしている。その後それぞれの獲物をしまい面向かって聖隷と向かい合い目を合わせる

 

「・・・わ―ったよ、俺の負けだ。で?この結界を開けてどうする気なんだ?え?」

 

聖隷は結界に近づき壁を叩くように結界に触れる。結界は弾力があるようでブヨンブヨンしている

 

「導師を殺す」

「ひゅ~♪そいつはスゲェ!」

 

ベルベットの言葉に聖隷はオーバーなリアクションをとりながら笑うがアイゼンが忠告する

 

「こいつは本気だぜ」

 

それを聞いて聖隷は観念したようだ

 

「へーへー、ケンカに勝ったのはあんただ。どうすりゃいいんだい?」

 

そこにビエンフーがマギルゥの中から出てくる

 

「では、聖隷のお歴々!結界の前に~♪」

 

マギルゥの掛け声を合図に聖隷達が結界の前に立つ、ライフィセットが一足先に結界に手を翳すと結界が雪のように砕ける

 

「あ・・・っ!?」

 

ライフィセット自身驚いておりアイゼンもこの出来事に驚いている。聖隷はライフィセットを一瞥し後ろを振り返る

 

「あとは任せたぜ。その方が、対魔士どもの慌て顔が見られそうだ」

 

聖隷がベルベット達が来た道を戻り始めるがアイゼンがそれを呼び止める

 

「待て。まだ肝心なことを聞いてねぇ」

「それ以上はやめとこうぜ、アイゼン。命のやり取りになっちまう」

 

アイゼンの方を向き直り警告する聖隷

 

「!!・・・何者だ、お前は?」

 

それを聞かれて聖隷は初めて自分の名を名乗る

 

「風のザビーダ。ただのケンカ屋さ」

 

それを最後に元来た道を戻る。それを見届けベルベットはアイゼンに聞く

 

「結界は開いたわ。追うなら止めないけど」

「・・・いや、神殿に向かう。アイフリードの行方に近いのはメルキオルの方だ」

「バカね。割り切れるなら、最初からそうすればいいじゃない」

「そんなに器用じゃない。だからここにいる」

 

アイゼンは目を逸らすことなくまっ直ぐに言い切る。自分、不器用ですから

 

「・・・バカね、ほんとに」

 

 

「アイゼン。さっきは・・・ごめん」

 

ライフィセットが先ほどの戦闘の事でアイゼンに謝る

 

「戦ったことか?気にする必要はない。殴られた回数を一生覚えて恨むだけだ」

「!?」

 

ライフィセットが震え上がる。怖い

 

「冗談だ」

 

それにライフィセットが胸をなでおろす

 

「どうすればいいのか・・・わからなかった」

「悩むのはいい。だが、最後は自分で決めろ。その結果が俺と戦うことなら、殺されても文句は言わん」

「うん・・・」

「逆に、俺がお前を殺すことになるかもしれんがな」

 

ライフィセットがまた震え上がる

 

「・・・うん」

「ふっ、しゃべりすぎちまった。あの野郎のせいで血がたぎっているようだ・・・」

 

 

神殿のすぐ近くにやってきたがそこには人間はおらず代わりに獣型の聖隷が結界を見張っていた。わざわざここに神殿を作ったのは疑問だったがライフィセットとアイゼンがここが地脈というエネルギーの流れの集中点であるとのことだ。だがこの地脈の集中点になぜ神殿を立てたのかはわからないが奇襲にはもってこいの場所であった。一方そのころその神殿内部ではアルトリウスが地面に座り目を閉じ瞑想している。その後ろから足音が聞こえアルトリウスが僅かに顔を上げる

 

「誰も入るなと言ったはずだが」

 

その足音の正体はエレノアだった。かなり緊張しているようだ

 

「も、申し訳ありません。ですがローグレス離宮で異変が発生して――」

 

そこまで言いかけた時アルトリウスが口を挟む

 

「エレノア。自分の聖隷はどうした?」

 

アルトリウスの冷たい指摘にエレノアが顔をうつ向かせ小さく答える

 

「・・・契約を破られ、無理やり引きはがされました。業魔手の左手を持つ者の仲間の男に」

「業魔手・・・ベルベットか。」

「ご存じなのですか!?」

 

エレノアが顔を上げ驚愕する

 

「昔の教え子だ。オスカー、テレサに続いて、お前まで退けたか。その男についても二人から報告を受けている。」

 

そこまで聞いたエレノアが意を決してアルトリウスに進言する

 

「アルトリウス様、私に新たな聖隷をお与えください!必ずあの業魔を倒して見せます!」

 

アルトリウスは別段語気を変えることはなく淡々とエレノアを制する

 

「強い“感情”だな。お前は、憎悪で業魔を討つのか?」

 

その指摘に我に返ったエレノアは弱弱しく謝罪する

 

「も、申し訳・・・ありません」

「模範生のお前も、ベルベットに当てられたようだな」

 

エレノアは今まで疑問に感じていたことをアルトリウスに問いただす

 

「ひとつだけ、教えてください。離宮に捕らわれていた巨大な業魔はなんなのですか?」

「・・・あの区画は特等以外、立ち入りを禁じているはずだ」

「ですが、あれは聖寮の結界で捕らえられていた。あんなものが王都にいていいはずがありません!」

 

客観的に見れば至極当然の言い分のエレノア、アルトリウスは彼女にひとつの問いをかける

 

「・・・エレノア。なぜ鳥は空を飛ぶのだと思う?」

「は・・・?」

 

エレノアはその問いにひどく困惑する

 

「それは・・・餌を捕らえるため・・・でしょうか?」

 

エレノアは生物学的上の正解を言い当てる。半分正解であるが

 

「下がりなさい。お前が知る必要のないことだ」

「・・・」

 

アルトリウスの冷たい言葉にエレノアはなにも言えず、黙って引き下がるしかなかった。エレノアが部屋から出た後アルトリウスは独り言のように呟く

 

「・・・ベルベットが来るか。この(えにし)に決着をつけねばなるまい」

 

アルトリウスはそこで初めて眼を開けた

 

 

結界を守っていた聖隷を倒しながら仕掛けを解除しつつ先に進むベルベット達、なんで解除方法が外にあるかは疑問だけど。クッソ無駄に長い階段を上がりきり神殿内部へと続く入り口に向かって走るが、ロクロウの質問で足を止める

 

「ベルベット。アルトリウスはどんな技を使うんだ?」

 

ベルベットは振り返りながら答える

 

「左手一本で振るう長刀よ。それにシアリーズっていう火を操る聖隷。けど・・・そいつはもう殺した」

「・・・」

 

ケンはその言葉に僅かに顔を下げる

 

「そいつの代わりに、カノヌシを名乗る聖隷を使役しているのか」

「おそらく。けど、そいつがシアリーズ以上の連携を取れるとは思えない」

「ずいぶん希望的な観測じゃのう」

 

ベルベットは策戦を説明する

 

「シアリーズ以上なら、あんたたちの出番。一対五で使役聖隷を抑え込んで。その隙をついて、あたしが喰い剥がすか、ケンの力で繋がりを吹き飛ばす。そうすればアルトリウスはただの人間よ」

 

ロクロウはそこまで聞いて問題を提起する

 

「だが、どうやってアルトリウスの間合いに入る?」

「ライフィセットの術を使う。あたしは斬られようが焼かれようが、かまわずアルトリウスにつっこむ。あんたは、あたしが動けるように回復し続けなさい」

 

ライフィセットはベルベットのあまりの捨て身の策戦に開いた口が塞がらない

 

「攻撃を受けるのを前提にした特攻か。確かに虚をつけるかもしれないな」

「即死しなければのう」

「でもそれじゃベルベットが――!」

「これは命令よ」

 

ライフィセットが反対しようと声をあげようとしたが命令と冷たい語気にただ小さく答えるしかない

 

「・・・はい」

 

ベルベットは振り返り神殿入り口へ進む

 

「結局モノ扱い。惨いもんじゃな」

「・・・」

 

入り口までまた無駄に長い通路を進む途中ビエンフーが痺れを切らしたのかマギルゥに質問する

 

「マギルゥ姐さん・・・あのベルベットという業魔、本気で導師アルトリウス様を殺す気なんでフか?一体なにを考えてるんでフ〜??」

「さぁての。案外な〜んにも考えておらぬのではないか」

 

マギルゥのはぐらかしにライフィセットが口をはさむ

 

「違うよ・・・『殺した』って言ってた」

「演説の時だな」

「俺も聞いた。アルトリウスは『仇』だと」

「それにしたって、すっごい憎しみでフよ。アルトリウス様とはどんな関係なんでフか?・・・」

 

ここでマギルゥはビエンフーにある指摘をする

 

「“様”はいらんぞ」

「ワット?」

 

ビエンフーはその意味を理解できていないようだ

 

「その時がくれば、わかるだろう。生きてアルトリウスに牙を突き立てられればな」

「その通り。全てを焼き尽くす憎悪の炎が、一体誰を焼くかも・・・のう」

「!!」

 

マギルゥの言葉の意味が分かったのだろうライフィセットは肩を落とす。ロクロウがそれに気づきすかさず声をかける

 

「危ない橋だが、付き合うのも恩返しだ。行こうぜ、ライフィセット 」

「・・・うん」

 

皆が進む中ケンは言葉には出さないが心中で結論をだす

 

(憎悪の炎・・・自分自身を焼く事にならなければいいが・・・いや)

 

 

長い通路を抜け神殿内部に入ったベルベット一行。内部は備品はなくまるで氷で作られたかのように白と青の床と壁で温もりのない冷たい雰囲気を醸し出している奥に続くもう一つの扉を開けるととうとう目的のアルトリウスが床に座っていた。彼の頭上には何かの紋章が僅かに光っている

 

「アルトリウスッッ!!」

 

因縁の相手を見つけベルベットが名を叫ぶ。アルトリウスは眼を開き振り返る事なく話し始める

 

「業魔に聖隷・・・ずいぶん風変わりな仲間を集めたな」

「シアリーズもいるわよ。あたしの胃袋の中に」

「母鳥となることを望んだか・・・」

 

アルトリウスが立ち上がりベルベット達と相対する。ベルベットの目が憎悪で開く

 

「今度は前のようにはいかない!あの子の・・・ライフィセットの仇を討つ!」

「!!」

 

ライフィセットは初めて自分の名がベルベットの弟のものだったと知るが。すぐに切り替えてアルトリウスと向かい合う。

 

「・・・いいだろう」

 

アルトリウスは長刀を鞘ごと床に突き刺し本身を抜く。それと同時に彼の体から青いオーラが出始める

 

「かかってこい!」

 

〜第17話 終わり

 

 

 

 

 

 




モンハンやってて遅れました。許してください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。