テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜   作:スルタン

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今回はケンについてのお話です


遥か彼方遠く、そことは全く違う場所で

 

ふむ、調べれば調べるほど面白い男だ。左眼球の損失と内臓の損傷、切創、刺創・・・すべて言えば夜が明けるところだ。しかし左眼球以外はほぼ全て治癒しかけている、あれほどの状況下にも関わらず生き残れるのも頷けるな

 

白衣を着た数人の男がいる先に裸のケンが仰向けで寝かされている、その周りには所狭しに機械と培養漕が並べられ、培養漕からはゴボリと泡を立てる

 

さて・・・そろそろ目覚めてもいい頃合いか。さぁ、起きたまえ

 

「ん・・・つぅ・・・ここは?僕は確かあの時」

 

ケンは意識を取り戻し、起き上がり手術台に腰掛け右目だけを開け周りを見渡す

 

「聖主の御座じゃない・・・僕は一体どうなったんです?まだ生きているのですか?」

 

以前にもその様なことを聞かれたね。では、左目を開けてみなさい。そうすればわかる

 

「左目、ですか・・・ですが目は、もう」

 

安心したまえ、君には新しい目を与えた。恐れなくていい、さっ開けてみたまえ

 

ケンはその言葉に従い恐る恐る左目を開ける。本来ないはずの左目があった、それに気づいたと同時に左目から猛烈な速度で文字と電子表示が流れる

 

「これは一体!?」

 

君の左目は新しく生まれ変わったのだよ。その眼には各種超高感度センサーと高性能コンピューター端末になっている。その端末を使えばありとあらゆる機械や電子機器、コンピューターやシステムを君の思いのままに操ることができる。そして君が見たもの聞いたものを世界中のコンピューターが分析し、情報を与えてくれる。国のシステムに入り込み人工衛星や兵器を自由に動かすことができるのだ。やろうと思えば世界を支配することも破滅させることもできる・・・といっても君が居るところでは使うことはないだろうがセンサー類が助けになるだろう。それに君はそんな野蛮なことをする人間ではないからな

 

ケンは説明を聞きながら左目の感触を確かめている。何度も瞬きをしたり、上下左右に眼球を動かし未だに流れ続ける電子表示に戸惑いながらも一つ質問する

 

「・・・聞けば聞くほど話が大きいですね、その前になぜ僕にこんなことを?あなた達になんの得が?」

 

得といえば君を使って実験できたということかね?君の知り合いから交渉を持ち掛けられた時は正直驚いたものだよ、こことは違う次元から君を連れ出す代わりに好きにしていいと言われたのだからな

 

その言葉にケンは固まる。知り合いといえばどこからどう見てもルシフェルの事に違いない、正直実験と言われるとあまりいいイメージがわかない

 

「実験・・・?」

 

ああ、とは言っても何も君を全身サイボーグにした訳ではない。では左を向いてみなさい

 

ケンは言われた通りに顔をそちらに向けると並んだ培養漕の中の一つに人間の骨格丸々一人分が収められている

 

「あの骨格は?」

 

驚かないでくれたまえ、あれは君のだ。君の体の中にあった骨格だよ

 

「あれが僕の!?なぜ?」

 

ケンは少し驚きながらも立ち上がろうとするが違和感に気づく、体が少し重いのだ

 

君はこれから更に激しい戦いに身を置くことになる、その為に保険として君の骨格を実験ついでに特殊超合金の骨格に代えさせてもらった。詰まるところ左目と骨格は交渉の報酬ということだ。だが君は行く先々、いや、君の行く末は何かと危険が待ち構えていることだろう。

 

「・・・」

 

ケンは何も言わないが改めて立ち上がり体を動かす。僅かにぎこちないが直ぐに慣れる程度のものだ

 

君の骨格を構成する合金は高度、強度、弾性に遥かに優れ、理論上破壊は不可能、耐熱、耐氷耐電は勿論金属特有の弱点である磁力の影響を全く受けることなく活動ができる。重量はあるが君には問題ないはずだ、ついでに伸縮率も考慮してあるから仮に身長が伸びても縮んでも大丈夫だ

 

「はぁ・・・それはどうも・・・」

 

最後の説明はどうかと思ったが丁度左目が落ち着いたようで表示にSetup Completeと出て視界が開ける、以前と変わらないようで胸を撫で下ろす

 

「ふぅ、終わったみたいかな」

 

ふむ、システムに異常はない。骨格と眼による拒否反応もなし、これで全てが完了した。さ、裸のままでは不便だろう、そこに君が着ていたものと同じものと修繕した装備を用意してある。支度を始めたまえ

 

照明が照らした先にケンが普段着ている服と装備が置いてある。ケンが着替えながらも男は話を続ける

 

そろそろ君を元いた次元に返す。行き着く場所は君の同行者の近くにしてあげよう、言い訳は自分で考えてくれ

 

「あー・・・分かりました」

 

どちらにせよ、いずれ話すべき事ではあるがね。隠し事はいつまでも押し通せる事ではない、忘れない事だ。さ、時間だ。そこの台座に乗りなさい。ああすまない、一つ言い忘れていたことがあった

 

「なんでしょうか」

 

君の肉体の精密検査をした時わかったことだが君の体は自身の免疫機能と自己回復能力が普通の人間より余りにも異常に高い、これが何を意味するかわかるかね

 

「と、言いますと」

 

つまり君の肉体はこれから先外的要因による恩恵も、損害も受けることはない。仮に重傷を負えば外科的な施術を行わなければならないということだ。留意したまえ

 

「・・・わかりました」

 

ケンの目の前にある台座から光が灯る、ケンが台座に乗ると辺りに電流が流れ始める

 

では始める、あとは君次第だ

 

「またあなた方達に会うことはありますか?」

 

それはどうかな?君の行い次第だ。ではな

 

部屋一面が電流と光で真っ白に染まる。それが収まった時には台座にいたケンは居なくなっていた、それを見ながら白衣を着た男達は部屋を後にする

 

私達と君は本来合間見えない者、だが縁があればまた会えるだろう。縁があればな

 




次辺りで復帰する予定です

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