テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】   作:スルタン

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仕事や用事で4ヶ月も投稿が止まってしまいました。申し訳ありません


第30話

 

ライフィセットの地脈点の感知による喰魔捜し、手短な場所として監獄島から西に一つあるとのことだったので一行は早速バンエルティア号で出航。目的の場所まで来たがそこに島なのはなく一面の海が広がっていた

 

「ここ!ここが地脈点だよ!」

「・・・見渡す限り大海源じゃな。地脈点は海の底かえ?」

「あう・・・」

 

落ち込むライフィセットにアイゼンが助け舟を出す

 

「世界の大半は海だ。海底にある地脈点も多い」

「いくら聖寮でも、海底に喰魔を捕まえておくのは難しいですね」

「ここはハズレみたいね」

「・・・ごめん」

 

ライフィセットが謝るが何やら考えていたロクロウが口を開く

 

「いや、虫喰魔がいたんだ。魚の喰魔ってこともあるんじゃないか?」

「・・・一理あるな。奥の手を使って調べてみるか?」

「奥の手?」

「これだ」

 

ベルベットの疑問にアイゼンが自信満々にあるものを取り出す。その手には一本の竿が握られていた

 

「「ええっ!?」」

 

意外過ぎてライフィセットとエレノアは驚愕する、ここいらで秘密兵器か何かと思っていたのだろうがそれが釣り竿だったのならなおさらである

 

「なんだ、その反応は?これは“フジバヤシの船竿”だぞ」

 

多分それではない

 

「長さ九尺三寸の一本竿。材は五年物の伊賀栗竹。生き物の如く粘る四分六の胴調子に――」

 

急に説明しだすアイゼンに流石のベルベットもぽかんとしている。無理もない

 

「腕と一体化するような握りの巻き具合。そして蝋色漆の品格ある仕上げ・・・」

 

ロクロウとマギルゥも呆気に取られている。まったくの他人が見たら何言ってんだこいつと言われても仕方がないだろう

 

「文句の付けようのない名竿だ」

「そ、そういう事ではなく、喰魔相手に、なぜ釣りなのかと――」

「喰魔だからこそだ・・・忘れるなよ」

「・・・はい?」

 

何言ってんだこいつ

 

「ちょっと、釣りなんかしてる場合じゃ・・・」

 

ベルベットが言いかけるとロクロウとマギルゥが割り込む

 

「まあ、やってみようぜ。丁度腹も減ったし、魚が釣れたら飯にしよう」

「儂は、コイかヒメマスが食べたいの~♪釣れぬようならケンに素潜りさせればよい♪」

 

マギルゥの言葉に竿を調べていたケンが目を少し開き驚く

 

「・・・まぁボウズでしたら最後の手段でやりますけど。名前は変わりますけどヒメマスだったら海にいますよ。釣れるかどうかは別ですが」

「ほほ~中々博識ではないか、では頼むぞ~」

「え、それも釣るんですか?」

 

振り回すマギルゥと振り回されるケンを見ながらベルベットは肩をすくめる

 

「・・・ツッコまないわよ」

 

 

アイゼンの提案通り理由がどうあれ釣りをすることになった。皆は甲板から釣りをすることしたようだ、ケンは一人船尾の方へ回り海面を見る。

 

「これだけ沖ならいいのが釣れそうだ。でものべ竿で船釣りだから・・・何か釣れるのかな・・・」

 

彼は船室に置いていた背嚢から持ってきた複数の物を取り出す、それは彼が元居た世界にあった市販の仕掛けセットだった。鯛からチヌやらメバルやキスやら様々な種類があったがリールがないのべ竿になる。だがのべ竿での船釣りは経験がない

 

「・・・こりゃ素潜りのほうがいいかな。いやまずはやってみよう、ん?」

 

視線を動かすと何か大きい影が泳いでいるのが見えた。魚にしては形が不格好だったのでケンは直ぐに気付いた

 

「あれは、まさかね」

 

手早く仕掛けを用意して試しに垂らしてみる。早速かかったので釣りあげてみると元居た世界と何ら変わらない鰯が釣れた。

 

「鰯か・・・普通は沿岸近くで回遊してるはずだけど、まぁいいか」

 

一度上げて籠を取り付け同じく背嚢になぜか入っていてそしてなぜか凍っていたオキアミを解凍して籠に詰め込みサビキ釣りを始める

 

「とりあえずこれなら夕食は大丈夫だろ」

 

 

甲板ではベルベット達が釣りを始めている、が、一人を除いて魚を釣るのに夢中で本来の趣旨とは離れている

 

「あ!!エレノア、引いてる!」

「焦らないで。釣りは力じゃなくてタイミングです」

「う、うん・・・!」

 

エレノアのアドバイスを元に竿を引き起こす

 

「来るぞ。準備はいいな」

「応!空中で刺身にしてやるぜ」

「喰魔だったら殺しちゃだめよ!」

 

なんかそれぞれ違うような気もするが

 

「今です!」

「ええーいっ!」

 

ライフィセットが思い切り引き上げるとそれは魚ではなく頑丈そうな箱が引っかかっていた、海藻や貝類が付いていないきれいな状態だ。釣りあげたはずみで箱が開き中から角のようなものが出てきた

 

「魚でも喰魔でもなかったわね」

 

ベルベットは少し驚きながらもすぐに表情をもどす

 

「腹の足しにはならんなぁ」

「・・・」

「でも、ライフィセットに似合いそうですよ。着けてみたら?」

「名案じゃ。坊だけの個性が出るかもしれんぞ」

「僕だけの個性・・・」

 

ライフィセットが呟くとその角を取ると躊躇なく頭につける

 

「やっぱり似合う!いい感じですよ、ライフィセット」

 

左右に立派な角が生えたライフィセットを称賛するエレノア

 

「そ、そうかな・・・」

「うむ、グッと個性が強まったぞ」

 

ベルベットはそれを見るが直ぐに釣り竿に目を向ける

 

「喰魔釣りを続けるわよ」

「・・・」

 

ライフィセットはベルベットの反応に一瞬悲しそうにしたが直ぐに釣り竿の所へ向かい釣りを再開する

 

「ライフィセット、そんなに根を詰めないでも」

「喰魔を釣らなきゃ・・・そしたらベルベットは僕を認めて――」

 

ライフィセットの言葉がどこか焦っていた

 

 

それからしばらく時間が流れるが未だに釣果はない

 

「むむぅ・・・釣れんなぁ・・・」

「愚痴るな。思い通りにいかないのが釣りと人生だ」

「つれないなぁ」

 

ロクロウの愚痴にアイゼンが付き合っているとエレノアの竿に辺りが来た

 

「あっ、私の方にきました!ええい!!」

 

エレノアが竿を上げるとその針にはライフィセットと同じ箱がかかっていた、その中から今度は瓶底メガネが出てきた

 

「ぬうう、儂もなんか来とぉぉぉる!のあぁ~~!!」

 

マギルゥにも来たがこの流れだと予想がつく。釣りあげたのはエレノアと同じで今度は付け髭が出てきた。この海域で劇団か何かが嵐にあったのだろうかと勘繰ってしまう

 

「ろくなものが釣れないわね・・・」

 

あれから釣果もなく独り言ちるベルベット。だがその独り言がライフィセットの耳に届いた

 

「・・・ろくなものじゃなくない」

「え・・・?」

 

竿を手すりに立てかけるライフィセットの方へ顔を向けるベルベット。だがライフィセットはわき目もふらずなにやらごそごそし始めた。しばらくして気になった他の皆の前にライフィセットが現れる。そこには先ほどエレノアとマギルゥが釣り上げた仮装道具を全て付けたライフィセットであった

 

「おほ~!まさに個性の塊!若さじゃの~♪」

「お前、結構突っ走るタイプなんだな」

 

ライフィセットの奇天烈な行動に喜ぶマギルゥと少し驚くロクロウ。黙り込むライフィセットにエレノアは気になったようで話しかける

 

「・・・どうしたんですか、ライフィセット?」

 

ライフィセットの恰好に呆れたベルべットが僅かにため息をつく

 

「おかしいわよ。とりなさい」

 

ベルベットが近づき身に着けている物を取り外そうとしたがライフィセットがその手を振り払う

 

「やめてよ!ベルベットに、なにがわかるの!」

「わ、わかるわよ。そんな変な恰好・・・」

 

声を荒げて手を振り払ったライフィセットに驚きながらも自身の感想を告げる。それを聞いたライフィセットが顔を上げる

 

「わかるのは“ラフィ”のことでしょ!!」

「・・・!!」

 

それを聞いたライフィセットの言葉にベルベットは目を見開き何も言えずにいた。重苦しくなる空気の中ロクロウがベルベットの竿が引いていることに気づく

 

「ベルベット、お前の竿が引いてるぞ!」

「えっ!?ああっ!!」

 

ベルベットはすかさず竿を取るが予想以上に引きが強いのか防波壁に足を掛ける

 

「でかいぞ!」

「気合いをいれいぃ!」

 

アイゼンとマギルゥが水面を走る糸を見ながらベルベットに告げる

 

「わかってる・・・わよっ!!」

 

その声と共に竿を振り上げ掛かった獲物を一気に引き上げる。引きからみてかなりの大物だろう、大きな物体は甲板の上に落下する重い音が響く。だがそれは魚でも業魔でもなく装飾の入った人間サイズの壺だった

 

「これは!!」

「たしかに大物だが・・・」

「壺・・・ですね」

「はぁ・・・はぁ・・・なんでこんなものが・・・?」

 

みなそれぞれの感想を言う中ライフィセットが何かに気づき横倒しになった壺を覗き見る

 

「なんか入ってる」

 

するとその暗がりから蛸の脚のようなものが出てきて這い出てくると思いきや次の瞬間勢いよく飛び出してきた

 

「うああっ!?」

 

壺を住処にしていたのだろうか蛸が巻貝を背負った業魔ダンプオクトパスの群れが最初の一匹を皮切りに次々と出てくる

 

「蛸壺かいな!?」

 

 

そのころ船尾で釣りをしていたケンの所にベンウィックやってくる

 

「お~い、ケン!大変なんだ。ベルベットのやつがでかい壺を釣り上げたと思ったら中から業魔がうようよ出てきたんだ。直ぐに来てくれ!」

「すいませんベンウィックさん。自分も大きい当たりが来てしまって手が離せないんです」

 

そこには竿を立てながら格闘するケンの姿があった

 

「だああ!俺が変わるから早く行ってくれ!!」

「え、ああ大丈夫ですか?では」

 

ベンウィックがケンから竿を受け取った瞬間思いっきり引っ張られて海に落ちそうになる

 

「どああああ!?」

「ベンウィックさん!」

 

すかさずケンがベンウィックの腕をつかみ間一髪で助ける

 

「一体何がかかってんだよ!?こんなの今までなかったぞ!」

「自分もわかりません。ですがこれが釣れれば夕食は豪勢になると思います」

 

 

同時刻、ダンプオクトパスを倒したベルベット達。奇襲された形だったが大した損害もなかった

 

「ふぅ・・・びっくりした」

「怪しいものに、うかつに近づいちゃダメよ」

 

ベルベットに注意されたライフィセットが険しい表情をしながら顔を背ける

 

「・・・ラフィだったら近づかなかった?」

「そんなこと言ってないでしょ!!」

 

一見したら反抗期の弟とそれを説教する姉に見えるその様を他の皆がやれやれといった表情で見守る中先ほどの壺がまたゴソゴソと動く

 

「おい・・・まだなんか入ってるぞ!」

 

ロクロウが注意を促した瞬間壺の口から今度は腐乱死体、いわゆるゾンビがはい出てくる

 

「今度は動く死体が出てきたぞ!?」

「これは骨壺じゃったか!」

 

ゾンビが掴みかかろうとした瞬間すれ違いざまにロクロウが首を刎ねる

 

「だいぶ骨に身がついてるがな!」

 

 

その頃ベンウィックとケンは

 

「くっそ~!なんて体力だ、全然へばらねぇぞ!?」

「ここの主かなんですかね、これだと竿が持たなくなりそうです」

 

息を切らせたベンウィックと交代し、相手の体力が切れるのを待つ作戦に出たが一向に落ち着く気配がない。竿もかなりしなる。こっちはこっちで戦いが繰り広げられていた

 

 

蛸の次にゾンビの群れを撃退したベルベット達、息を切らせながら毒づく

 

「はぁ・・・はぁ・・・タコ軍団に死人の群れ・・・なんなのよこの壺?」

 

だがアイゼンはそんなことをしり目に壺の傍で屈みこむその目ははどことなく輝いて見える

 

「・・・素晴らしい。まさか、この目で見ることができるとは」

 

アイゼンの変なスイッチが入ったようだ

 

「は?こんな悪趣味な壺に興味あるの?」

「ふっ・・・悪趣味か。素人はこれだから困る」

 

アイゼンは立ち上がり皆の方を向き直り説明を始める

 

「いいか!これはクローディン王時代の陶芸家グリュウネの『ミヅガメ』に間違いない“千年の至宝”といわれたが、二百年前の第二戦国期に失われてしまった伝説の壺だ凛とした形から、ほのかに匂い立つ色気。誘うように自己を主張しつつ、それでいてしつこくない」

 

勝手にこの壺の歴史を話し始めるアイゼンの後ろでエレノアが小声でつぶやく

 

「アイゼン・・・またですか!?」

「うむ。まったく理解できんが・・・男にはよくあることじゃよ」

 

そんなことを言われているとはつゆ知らず説明を続ける

 

「なにより、現在は失伝した“モフモフ釉”が醸し出す景色が、今にも動き出しそうな躍動感を――」

 

そこまで言いかけた時壺の方から何やらうめき声がし始めると壺が黒く変色しはじめ形を変える

 

「なにぃっ!?」

 

変調に気づいたアイゼンがすぐその場から飛び退くとその壺が禍々しい物に変わった

 

「おお!本当に動いたな」

「この壺は業魔だよ!」

 

壺の業魔パンドラポットは半分に分かれたドラゴンを象った彫像のようなものを腕がわりにしながらベルベット達目掛けて振り下ろす。皆は一斉に避けると腕が甲板に当たり船全体が振動する

 

「くっ!このまま暴れられたら船が持たない!」

「そうなる前に叩っ斬る!!」

「駄目だ!業魔といえど歴史ある作品だ!斬るのも割るのも許さん!!」

 

エレノアが腕を避ける。ロクロウが小太刀を抜き放ち斬りかかろうするがアイゼンが釘を差す

 

「そんなこと言ったって無理だよ!壊さないようにするったって!」

「儂は正直どーでもええがの~」

「兎に角こいつを黙らせる!!」

 

ベルベットが走り出す、力は凄まじいが大振りなので隙が大きい。叩きつけた際の隙を狙いパンドラポットの顔に蹴りを入れる、が、脚絆とパンドラポットから硬い音が響く

 

「くっ・・・!こいつ、硬い!!」

「監獄島にいたやつと同じような業魔か!鎧通し!!」

 

ロクロウが後ろから小太刀を突き立てもう一つの小太刀で叩くように押し出す。パンドラポッドが前にのけ反るも反撃とばかりにロクロウに腕を振り払うもそれを後ろに避ける

 

「おっと!やはり外は固いが中はそうでもないらしい!ライフィセット!マギルゥ!」

「うん!これなら、漆黒渦巻き軟泥捉えよ!ヴォイドラグーン!」

 

パンドラポッドの足元からどす黒い沼が出現し足が沈み始める。重量があるせいでまともに身動きできなくなる

 

「水浸しになるが構わんな?フラッドウォール!エレノアよ巻き込まれるでないぞ~!」

「え?」

 

エレノアの後ろから水の壁が押し迫る!

 

「ちょっ・・・ちょっとマギルゥ!?」

「跳べ!エレノア!」

「うわぁ!?」

 

ロクロウがマギルゥを抱え上げ上に放り投げる。ロクロウはそのまま流れにのまれかけるが防波壁の上に飛び乗るパンドラポッドは沼から何とか脱出し逃げようとする

 

「割らないといったが逃がすとは一言も言ってないぞ」

 

横からアイゼンが指を鳴らした次の瞬間大きく踏み込む

 

「拍子(ダンディスト)!」

 

腰を踏み込んだ正拳から打ち出される空気が僅かながら巨体を揺らす

 

「無碍(ブランク)!!」

 

素早く一歩下がり最小限の動きで鋭いフックをパンドラポッドの顔に叩きこむ

 

「蜃気楼(ミラージュ)!!」

 

駄目押しと言わんばかりにスウェイバックをして右拳に炎を纏わせ今度は頬に当たる部分をぶん殴る

 

「ベルベット!」

「わかってる!!崩牙襲!」

 

アイゼンの後ろから飛び上がったベルベットがパンドラポッドを蹴り潰した瞬間水の壁が敵を押し流す。パンドラポッドはそれに押され仰向けに倒れる

 

「エレノア!」

「はい!参ります!貫け緑碧!霊槍・空旋!」

 

空中にいるエレノアが槍を構え聖隷術を発動する。槍の先から竜巻を繰り出しパンドラポッドを巻き込み空中に巻き上げる

 

「行っけー!!」

 

甲板に着地した後も竜巻を繰り出し続け敵は少しづつ浮き上がる

 

「エレノア手伝うよ!鏡面輝き熱閃手繰れ!カレイドイグニス!」

「これはおまけじゃ。遠慮せずにもらっておれ、ブラッドムーン!」

 

ライフィセットとマギルゥの援護も入る。それが決定打となりパンドラポッドは徐々に形を失い、元の壺に戻り甲板にごとりと落ちる

 

「ふぅ・・・」

「よくやったぞエレノア!」

「急に放り上げないでくださいよロクロウ!びっくりしましたよ」

「あぁ、すまんすまん。丁度いい位置にいたからな」

「もう・・・」

 

能天気に声をかけるロクロウに怒るエレノア夫婦漫才みたいな風景を尻目にベルベットが壺の方を見る

 

「やっとおとなしくなったか」

「待て!喰うなよ、ベルベット!」

 

アイゼンが後ろから声を荒げすぐさま壺の状態を確認するため走り寄る

 

「食べないわよ、壺なんて」

「結局、ここに喰魔はいないようですね」

「じゃな。いるなら“死神の呪い”でひっかかるはずじゃからの」

 

そこでエレノアが何かに気付いたのか大きな声を出す

 

「あっ!変なものばかり釣れるのは、そういう事だったんですね!」

「トラブルが当たり前で忘れてたわ。タコも壺もアイゼンのせいか」

 

はいはい呪いのせい

 

「慣れとは怖いのー」

「僕の力・・・役に立たなかった・・・」

 

その時ライフィセットの落ち込んだ声が響くその言葉にベルベット達は言葉を発することなく波と風の音が響く、しばらくした後にベルベットが口を開く

 

「そうね」

「・・・」

「でも、あんたはこれくらいで諦めるヤツじゃない。そうでしょ、フィ―?」

 

フィーという聞きなれない言葉にライフィセットが顔を上げる

 

「フィー・・・って?」

「あんたの愛称よ。特に意味なんてないけど――」

 

少しの間顔を背けるが直ぐに視線を戻すベルベット

 

「あんたは、あんただから」

「・・・ベルベット」

 

ベルベットの不器用な優しさにライフィセットの表情に笑顔が戻る

 

「フィーか。なかなか個性的な愛称じゃな」

「うん!」

「あきらめるなら、やめてもいいけど?」

「やだ!次の地脈点を探す!」

 

ベルベットのからかいにライフィセットは即答で拒否する。その顔はやる気に満ち溢れ一皮むけたとばかりの凛々しい顔つきだ。ベルベットもそれを見て柔らかい笑みを浮かべる

 

「む・・・壺の中にまだなにかあるぞ」

 

ベルベット達の微笑ましい場面はどこ吹く風といわんばかりに壺を探っていたアイゼンが何かを発見する。壺の中に手を突っ込みそのブツを取り出す。中に入っていたのは金色に輝く鉱石だった

 

「この黄金の輝きは・・・金剛鉄(オリハルコン)!そうか・・・ここがクロガネが言っていた輸送船が沈んだ場所だったのか」

「やった!これをクロガネに渡せば金剛鉄の太刀ができるかもしれん。お手柄だぜ、アイゼン!ライフィセット!」

「大変でしたが、無駄足じゃなかったですね。私も、久しぶりに釣りができて楽しかったし」

「僕も、釣り、面白かった!」

「儂もじゃ。特に個性的な扮装がの~♪」

 

マギルゥに煽てられ赤面するライフィセット。それを見ていたベルベットは夕日が沈む水平線をみる。もうすぐ暗くなる

 

「そろそろ日が暮れるわね。タイタニアへ戻りましょう」

 

一同はベルベットと同じく沈む夕日を見つめていた

 

 

「はぁ~、微笑ましいシーンは結構じゃが。なにも釣れんかったことには変わりはないの~」

 

船を動かす準備をしている中マギルゥが樽の上に座りながらため息を吐く

 

「しょうがないよマギルゥ。釣れなくてもいい思い出になったでしょ」

「よよよ、坊にまたも言われるとわ・・・」

 

ライフィセットの慰めに涙をこぼす真似をするマギルゥ。エレノアがアイゼンの方を向く

 

「今日の夕飯、どうしましょうか?」

「魚は干したやつしかないが食糧は他にもある、問題ない」

「なにかメニューを考えないといけないわね・・・」

 

それを聞いたベルベットが指に手を当て献立を考えていた時船尾の方からベンウィックの声が聞こえた

 

「だぁ~~!!惜しかったぁ!あれを釣り上げれば何日かはうまい魚料理食えると思ったのによ~」

「バレちゃったものは仕方ありませんよ。それにほらこれがありますから」

 

皆が声のした方を振り向くとベンウィックと大きな桶をもったケンが下りてきていた

 

「随分遅かったなケン。いままでなにしてたんだ?」

「すいませんロクロウさん。さっきまで大物釣りあげようと頑張ってたんですけど」

 

ロクロウに質問され謝罪するケン

 

「そうじゃそうじゃ!お主が呑気してる間儂らは大変だったんじゃぞ~」

「いや~はは・・・」

 

マギルゥはポカポカと駄々っ子パンチをケンに繰り出す。アイゼンが桶に視線を向ける

 

「なにか釣れたか」

「はい、大きいのは逃がしてしまいましたが。程々の大きさのものがだいぶ」

「そっす副長!あとちょっとってとこで針が外れたんです」

 

甲板に桶を置くとライフィセットとエレノアが中を見る

 

「うわ~いっぱい釣れてる!」

「これだけの量、どうやって釣り上げたの?」

 

桶の中にはアジやアジゴ、鯖などの回遊魚が一杯に入っていた

 

「ええ、特別な仕掛けを使ったんです。後でお教えします」

「これだけあれば船員全員どころか数日持つな、よくやったケン」

「ようし!今夜はこれを使って豪勢に行くとするか!いいよなベルベット!」

「はいはい、その代わり下ごしらえ手伝いなさいよ」

 

ベルベットは二つ返事で了承するがどことなく楽しそうにしていた

 

 

第30話 終わり

 

 

 

 

 

 




これからも投稿が遅れてしまうことがあるかもしれませんがよろしくお願いします
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