テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】   作:スルタン

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アライズの発売日が決まったみたいなので楽しみです


第35話

~

 

ベルベットは以前にもいた白い空間に立っていた。辺り一面真っ白、壁があるのかもすらわからないほどの空間、窓のような物からベルベットは外の景色をみているのだろう。だが、その窓も宙に浮いてるのか壁に取り付けられてるのかもわからないし、窓も外の景色を移しているのかすらわからない。ベルベットは手に持っているリンゴを一口かじる

 

「・・・すっぱい」

 

顔を顰めるベルベットの後ろで声がした

 

「味がわかるのですか?」

 

ベルベットの後ろでテーブルに手を乗せ立っているシアリーズがいた

 

「味がするのよ、夢の中と、アイツに技をかけてもらった時だけは」

「・・・これが夢だと?」

「わかるわよ。だってあんたは・・・」

 

一拍の静寂

 

「あたしが喰らったんだから」

「そうですよ。忘れないでくださいね」

 

その言葉にベルベットが声を荒げシアリーズの方へ顔を振り向く

 

「忘れられるわけないでしょっ!」

 

ベルベットが持っていたリンゴを握りつぶす

 

「――の血の味をっ!!」

 

その瞬間意識が覚醒しベルベットは夢から覚め顔を上げる

 

「・・・・!!」

 

辺りは霧に包まれている。ベルベットはそれを気にすることなく自らの左手を見る

 

「忘れられるわけ・・・」

 

~

 

もうすぐイーストガンド領海に入るが相も変わらず霧が立ち込めている

 

「霧が出てきましたね」

「・・・じゃの」

 

船首から辺りを見渡すエレノアに答えるマギルゥ

 

「そういえば、エレノア。一つハッキリさせておきたいんだけど」

 

その横に立っていたベルベットがエレノアに話しかける

 

「なんですか、改まって」

「ライフィセットは“あんたの”じゃないから」

「え・・・?」

 

エレノアは一瞬戸惑ったようだが直ぐにその真意を理解し反論する

 

「言いたいことって、それですか!?貴女のでもないでしょう!」

「そうよ。あの子は、あの子。誰のものでもないわ」

 

その言葉にエレノアはハッと気づき、申しわけなさそうにする

 

「そうですね。聖隷は対魔士の道具じゃない、以後気を付けます」

「わかればいいけど」

 

ベルベットはまさかエレノアがすんなり意見を聞くとは思っていなかったようで驚いた表情をしていた

 

「くくく・・・危ない、危ないのう。ベルベットや、儂との賭けは覚えておるか?」

 

そんな二人のやり取りを見ていたマギルゥが笑いながら含みのある質問をベルベットに投げかける

 

「ああ・・・あたしが折れたら100ガルドってやつ?それが?」

「忠告しておくぞ。人は苦痛には耐えられるが、“幸福”には逆らえん。賭けに勝ちたかったら、似合わぬ“夢”は見んことじゃ」

 

マギルゥの忠告、もしくは警告に近い言葉

 

「生憎、見るのは悪夢ばかりよ」

 

~

 

バンエルティア号は程なくしてイーストガンド領の港町、タリエシンに入港した。此処タリエシンはイーストガンド領では中心的な港町で貿易などは基本此処で行われる。海に面した崖に沿う形で町が作られているため、高低差が激しい上に平地が少ないため道路や階段は建物の隙間を縫うように敷かれている。ついでだがこの町は猫が多くタリエシンではなくネコエシンと改名されかかっていたらしい

 

「霧も、すっかり晴れましたね。迷わなくてよかった」

「当然だ。俺たちを何だと思ってる」

 

入港する前は濃霧が掛かっていたので一安心するエレノアにアイゼンは不服そうだ

 

「違法で無法で、腕のいい海賊だと」

「・・・わかっていればいい」

「しかし、普段は霧が出る海域じゃないんだけどなぁ・・・」

 

ベンウィックはあの霧について疑問を持っているようだ。海を渡り歩いている海賊、各海域の特徴を知り尽くしているはずだ。故にあの濃霧を不審に思ったのだろう

 

~

 

町の門を抜け港から町に入るライフィセットが皆より先に階段を上りそこから広がる街を一望する

 

「お城みたい!」

「ここは、貿易で悪どく儲けた一族の拠点でね、攻められた時に備えて、こうなってるんだって」

「へぇ・・・敵が多かったんだ」

 

ベルベットが後ろからこの町について簡単に説明する

 

「けど、栄えたのは昔の話。今はただの田舎街よ、それでも、あたし達には憧れの都会だったけど」

「詳しいのですね」

 

エレノアがベルベットの知識に感心する

 

「一応地元だから。この先のアバルって村が、あたしの故郷」

「じゃあ、喰魔がいるのは――」

「多分、あたしの村よ」

 

エレノアはベルベットがどう思っているのか察して慎重に切り出す

 

「・・・いいのですか?」

「どうせ知り合いはいないわ。みんな、あたしが喰い殺したから」

 

~

 

アバルへと向かうために門へと進んでいた一行。階段を上っている途中の踊り場で中年の男女の横を通り過ぎようとしたとこで思いもよらぬ会話を聞いてしまう

 

「しまった、今日はニコが来る日だった!特製キッシュを買い損ねちまった・・・」

「えっ!?」

「残念だったわねぇ。でも、ニコもここに店を出せばいいのに。なぜ、態々アバルから通ってくるのかしら」

「村を離れたくないんだとさ。行方不明になった友達の帰りを待ってるとかで――」

 

男性のその言葉に動揺したベルベットが詰め寄る

 

「冗談言わないで!アバルは滅んだはずよ!」

「はあ?縁起でもないことを。確かにアバルは、三年前、業魔に襲われたが、滅んでなんかいない」

「怪我人も多かったけど、アルトリウス様の御力でね。ほとんどの人は命拾いしたのよ」

「う、うそ!」

 

記憶と現状が一致しないベルベット、声が震える

 

「嘘ってなぁ・・・現に毎週、ニコって子がアバルから行商に来てる」

「うちの亭主も、昨日アバルの雑貨屋に薬を納めたのよ。代わりにウリボアの肉を仕入れてきて――」

「うそだ・・・みんな・・・あたしがこの手で・・・」

「ベルベット・・・」

 

頭を抑え、狼狽えるベルベットをライフィセットは今は見ているだけしかできなかった

 

~

 

「ベルベットは、アバル村は全滅したみたいに言っていましたが、行商に来ている人がいるようですね。新たな人々が住み着いたということでしょうか」

 

エレノアは先ほどの男女とベルベットとのやり取りに疑問を抱く

 

「ベルベットは、行商に来てるニコって人を知ってるみたいだった・・・」

「アルトリウスが村を救ったと言っていたな。地脈点だからか?」

「・・・わからん。どうも情報が錯綜しているな。どういうことだ?」

「・・・聞きたいのはこっちよ・・・」

 

皆はベルベットの言っていた話とさっきの会話の辻褄が合わないことに疑問を浮かべる

 

「なんだかすご~く嫌な予感がするんでフが・・・」

 

ビエンフーが不安そうにしていると

 

「ここで悩んでおっても真相は闇の中じゃ。進むしかあるまいの」

「だな。今更引き返す選択肢はない」

「姐さん・・・進んだ先が闇だったらどうするんでフか?」

「闇の中で仲良くお昼寝じゃろうな。多分永遠に・・・のう」

「ぞぉぉ~・・・」

「行って確かめるしかないだろうな。お前の故郷は?」

「ずっと東よ。モルガナの森を抜けた先」

 

ロクロウの質問に答えるがその声には動揺と不安が見て取れた

 

~

 

モルガナの森に入った一行、此処は一帯全ての木々が落葉と紅葉で景観が美しいことで有名だが、近年の寒冷化で植生が崩れつつある

 

「ベルベットの故郷・・・どんなところなんだろう」

「アバル村か。随分昔だが、船乗り仲間から噂を聞いたことがある。特別なものは何もないが、素朴で愛想のいい人たちが多いとか」

「それは・・・どこにでもある田舎の村でフね」

 

アイゼンの話を聞いていたビエンフーがツッコミを入れる

 

「昔のベルベットも素朴で愛想がよかったのかなぁ」

「ほっほう~?つまり『今は凶悪で愛想が悪い』と!」

 

ライフィセットの何気ない一言でマギルゥが燃料を投下する

 

「そうじゃないよ!?」

「ははは!いいじゃないか、大体事実だ」

「きっと・・・素朴で真面目な少女だったんじゃないでしょうか」

「おや、そんな風に思うのかえ?」

 

マギルゥはエレノアが精いっぱいにベルベットをフォローしていると気づいて真意を問いただす

 

「あ・・・いえ、なんとなくですけど」

「・・・僕も、明るくて弟想いのお姉さんだったと思う」

「ああ、そうかもな」

「・・・」

「それが今では、災禍の顕主とはの。昔の仲間と会えれば、今のベルベットが失ったモノが浮かび上がるやもしれんしのう」

 

黙って聞いているアイゼンの横でマギルゥが横目で先に歩くベルベットを見る

 

「ベルベットが失ったモノ・・・」

 

~

 

「そういえば、ベルベットはなんで監獄島に入れられてたんだろうな?」

 

ロクロウは今までの情報からベルベットが監獄にいた理由に疑問を浮かべる

 

「それは・・・監獄島の囚人の穢れをカノヌシに送るため・・・だよね」

「だが、アバル村も地脈点なんだろう?そこに放置すれば、手っ取り早いだろうに」

「エサがなかったからじゃろう。ベルベットは村人を全員喰い殺したと言っとったからの」

「あの話は事実・・・ということですか?」

「儂は知らんよ。アイゼンのコインで占ってみい」

 

エレノアはまだ確信を持てておらずマギルゥに問い詰めるが、あくまで予想である

 

「だから、それでは――」

「別の理由も考えられる。ベルベットがアルトリウスが初めて捕らえた喰魔だったとすれば・・・」

「まさか・・・古文書の情報を確認するために!?」

「そうだ。アルトリウスは、地脈点と穢れが揃った監獄島に特別房をつくり。ベルベットを使って喰魔の実態を確かめたのかもしれん」

 

アイゼンの推理が合ってたとすれば身内が目的達成に使える人材であるなら態々探す必要もないし実験もでき、穢れも集めれる、一石二鳥以上である。人としてどうかと思うかは別として

 

「なるほど。導師の立場としては、ありうるな」

「でも、家族を実験台にするなんて・・・」

「推測にすぎん。だが、義弟を生贄にする男は、義妹にも手加減はしないだろう」

 

アイゼンの言葉にライフィセットは暗い顔をしながら呟く

 

「なんで、そんなことができるのかな・・・?」

「そうまでして救いたい世界があるからか・・・そうまでしないと救えない世界があるからか・・・」

「え・・・?」

 

~

「きゃあああ!」

 

森も終盤、目的の村まで目と鼻の先になった時、奥の方から悲鳴が響いてきた

 

「この声は・・・!?」

 

ベルベットはその声に覚えがあるのか走り出す。皆もそれに続く、声のした方へ近づくとそこに一人の少女が倒れていた。それでも驚きだがその横には一体の業魔が今にも少女に飛び掛かろうとしていた

 

「はぁ!!」

 

ベルベットが走りこんだ勢いを使い後ろ回しの飛び蹴りで業魔の腹部を蹴り飛ばす。巨体のため対して距離は開けられなかったが少なくとも少女に危険が及ぶことはない、がベルベットは動揺を隠せない

 

「なんで・・・!?」

 

近くで見たからわかってしまった。分かりたくなかった。他人であってほしかったと彼女は思っただろう、だが違った

 

「なんでニコがいるのよ!」

 

ベルベットが狼狽えている中禍々しい蟷螂の業魔、ゼノマンティスが吠えながら標的をベルベット達へ変える

 

「よそ見をするなベルベット!」

 

アイゼンはゼノマンティスの頭部目掛けてウィンドランスを撃ちこむ、だが攻撃力が足らないようでゼノマンティスはアイゼンに狙いを定めその巨体に似合わぬスピードで急接近する

 

「ちっ!」

 

振り上げる鎌を避けるために横に飛び退く、アイゼンがいた所は地面が割れ刃が大地に深々と突き刺さっている

 

「とんでもねえ馬鹿力が」

「刃物対決なら俺に任せてもらおう!!いざ尋常に勝負!」

 

ロクロウが僅かに止まった隙に生物の急所である目に向かって小太刀を突き立てようと飛び掛かる。ゼノマンティスも本能で察知したのかもう片方の腕で防御する

 

「やるなぁ!!そうでなければ修行にならん!」

 

ロクロウは救出より戦いの方に意識がいっているが目的は果たせている

 

「ロクロウ!無茶しないでください!」

 

エレノアも槍を構えロクロウとは反対の方向から攻撃を加える、ロクロウの斬撃とエレノアの槍術の同時攻撃を前足の鎌を振るい防戦気味だが二人は気を抜かない。先ほどの攻撃を受ければ致命傷は免れないからだ

 

「二人とも下がって!鏡面輝き熱閃手繰れ!」

 

ライフィセットが聖隷術を発動させようとした時、ロクロウとエレノアが術の範囲に逃れる

 

「カレイドイグニス!」

「ついでに喰らえじゃ!エクスプロード!」

 

ゼノマンティスの周りに散らばる鏡の破片で熱戦が乱反射を繰り返し光が圧縮されそこから爆発を起こしその身を焼く。火に弱いのかダメージが怒りを助長させゼノマンティスが二人に向かってくる

 

「この儂が堂々とお前の目の前にこの可憐な姿を見せたのに疑問に思わんかえ?まぁ本能でしか動いとらんしわかるはずもないかの♪」

 

それと同時にゼノマンティスの目の前に無数の赤い球が浮かび上がる

 

「いずれぼすぼす燃えるじゃろ!ブレイジングマイン!」

 

マギルゥの仕掛けた罠にかかったゼノマンティスに爆風が襲う。黒煙が舞う中、その切れ目からロクロウとエレノアが飛び出す

 

「まだ倒れるなぁ!翠波活殺!!」

「これで!炎月輪」

 

小太刀を一瞬で右に振りぬき、その真空刃と炎を纏った斬撃が鎌を持った前足を切り落とす。激痛に悶え後ずさりして逃げようとするゼノマンティスの首をケンの太い腕が巻き付き裸絞めにする

 

「ベルベット!!」

 

アイゼンは未だにニコの前で立っているベルベットを呼ぶ

 

「・・・え!?」

「その娘は後だ!今はこいつを片付けることに集中しろ!!」

 

アイゼンの声で我に返ったベルベットに指示をしてゼノマンティスに向かって走り出す

 

「蜃気楼(ミラージュ)!!」

 

高熱を纏ったフックを首に何発も叩き込む。ゼノマンティスの口から泡が出始める

 

「決めろ!!」

「っ・・・!!岩斬滅砕陣!!」

 

意を決したベルベットが刺突刃を出し跳躍する。ケンはそれに合わせて裸締めを解き飛び退く。刃をゼノマンティスの喉奥に突き立てる。刃から伝わる衝撃波で内臓を破壊したのか紫色の血液を端から垂れ流しながら倒れた

 

~

 

「うそ・・・ニコが本当に・・・」

 

あれからしばらく経つもベルベットは未だに信じられないようだ

 

「うう・・・」

 

そこでニコと呼ばれた少女が意識を取り戻し上半身を起き上がらせる。辺りを見回しベルベットに気づく

 

「ベル・・・ベット・・・!?」

「どういうこと!?なんで、あんたが生きて――」

 

咄嗟にベルベットが刺突刃をニコに向ける。ライフィセットが止めようとするがニコがベルベットの言葉に割り込む

 

「こっちのセリフだよっ!!今までどこにいたわけ!?突然いなくなって!みんなは業魔に食べられたんだって言ったけど。あたしは、そんなはずないって・・・だってベルベットは強いんだから・・・!!」

 

ニコの積もりに積もった思いを聞いたベルベットは驚いた表情をする

 

「・・・やっぱり生きてた・・・うう・・・うわ~~ん!!」

 

ニコは涙を流しながら死んだはずの友人に抱き着く

 

「・・・・・・」

 

ベルベットはそこに実体があることがわかりニコの手に自らの手を重ねた

 

~

 

「・・・ごめん。お連れの前でみっともないとこ見せちゃって。早くみんなに知らせないと!ベルベットが帰って来たって!」

 

ニコはベルベットの返事を待たずにアバル村へと走り出す

 

「ニコが・・・生きてる・・・」

 

ベルベットが友人の背中を見ながら呟く

 

「気を許すな。嫌な予感がする」

「そうじゃぞ、死神が一緒じゃしなー」

 

アイゼンの警告にマギルゥがお墨付きを与える

 

「とにかくアバルへ。なにがあったのか聞いてみようよ」

「・・・う、うん」

 

ライフィセットに促されて一行は村へ向けて歩き出す

 

「ベルベット、そもそも、村人が死んだのを確かめたのか?」

「あの時、そんな余裕なんて・・・」

 

アイゼンが横に来て確認を取るがベルベットはそこまでできなかったらしい

 

「こんなはずないのに・・・この村はあたしが・・・あいつがラフィを殺した日に・・・」

「ベルベット、大丈夫?」

「・・・もちろんよ。こんなことあるはずないって、あたしはちゃんとわかってるんだから」

「とにかく、落ち着いて確かめましょう」

「落ち着いてるわよ・・・あたしはちゃんと・・・」

 

ライフィセットとエレノアに窘められながらも気丈に振舞うも明らかに落ち着いていない

 

「別人がニコって娘になりすましてるようには見えなかったが・・・」

「本物だからこそ、逆に不自然ということ。ロクロウ」

「応、ここは『用心堅固』だな」

 

~

 

一行はアバル村の門を潜り村の中央広場へと向かうとそこには大勢の村人が待っていた

 

「ベルベット!本当に無事で!」

「ああ、よかった!お帰り!」

「ずっとどこにいたの?連絡もしないで・・・」

 

村人が口々にベルベットの帰還を歓迎するがそれに信じられないとばかりに首を振る

 

「こんな・・・あたしは・・・あの日、村は滅んだって・・・」

「ああ、全滅するところだった」

「危ういところを、アーサー―――アルトリウス様の力で救われたのよ」

 

アルトリウスが村を救ったと聞いたベルベットは声を荒げ否定する

 

「違う!あの男がやったのよっ!!あいつがライフィセットを生贄に!」

 

ベルベットの声に皆が驚くが一人の男性が諭す

 

「・・・ライフィセットのことは、残念だった」

「残念で済ます気!?ラフィは!あの子は死んで――!!」

「本当にすまない。だが、希望を捨てないでくれ」

「そうだよ。あの子は、まだ生きているんだから」

「!!?」

 

男性の必死の謝罪もそうだがニコのその一言でベルベットは声にならない声を上げる

 

「生きて・・・る・・・?」

「あんたの家にいるわ。安心して。みんなで世話をしてきたから」

「そんな・・・」

「ベルベット・・・」

「・・・」

 

ベルベットとライフィセットの後ろでアイゼンがなにか臭うのか考え込んでいた。その後村人と別れ放心状態のベルベットにライフィセットが話しかける

 

「あの子が・・・ラフィが生きてる・・・」

 

ベルベットは真相を確かめるかのように先に自らの家に向かって走り出す。ライフィセット達もついていこうとしたがアイゼンが立ち止まる

 

「どうしたの?」

 

ライフィセットがアイゼンの様子を不思議に思ったその時。アイゼンがロクロウの前に立つ、ロクロウはアイゼンの行動に疑問を持ったがその瞬間彼の鳩尾にアイゼンの拳が刺さる(^U^)

 

「ぐはっ!!」

 

不意の攻撃にロクロウが咳こみながら体を曲げる

 

「・・・解けないか」

「幻術を疑うなら、自分で試せよ・・・」

「僕たちみんな、幻を見てるかもってこと?」

「可能性だ。前に一度かけられたからな」

 

ロウライネの事があったので警戒して試してみたのだろう、ロクロウで

 

「でも、村全部が幻覚だなんてありえません」

「普通は・・・の」

 

エレノアはこんな大規模な幻術を仕掛けられる者がいるとは思えないとばかりに否定するが、後ろにいたマギルゥは何か心当たりがあるようだ

 

「どうする?片っ端から斬り倒してみるか?」

 

物騒な提案をするロクロウにアイゼンが待ったをかける

 

「・・・いや。敵も俺たちも目的は同じだ、喰魔を探す。手伝え」

「わかった」

「・・・僕は、ベルベットと一緒に行く」

「好きにしろ」

「側で見ててやれ。あいつ、ちょっと普通じゃないからな」

「うん」

 

ロクロウの言いつけにライフィセットは頷きロクロウとアイゼンが別行動を取るため別れようとした時ケンも動き出す

 

「自分も一緒に行きます」

「これは俺が勝手に決めたことだ。お前がついてくる必要なんてないぞ」

「喰魔探しであれば、頭数が多い方がいいですから」

 

アイゼンは一度断ろうとしたが、ケンの言い分も一理あるので了承する

 

「わかった。行くぞ」

「それじゃ、ライフィセット、ベルベットさんの事お願いするよ」

「うん、気を付けてね」

 

二人にケンが加わり、ライフィセット、エレノア、マギルゥはベルベットの走っていった方向へと向かった。アイゼン達は喰魔を探すため歩き出す

 

「・・・・」

 

ケンは村人とすれ違う、その表情は固い。右目の視界には人の姿で移っているが左目の視界には

 

(・・・これが幻術だとすれば、相当力の持ち主、間違いなく聖寮だろうし恐らくは・・・)

 

その視界は人の姿ではなく獣人型の業魔を捕らえていた

 

~

 

第35話 終わり




最後まで読んでいただきありがとうございました
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