テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】   作:スルタン

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第36話

 

アイゼン達と別れたライフィセットとエレノア、マギルゥはベルベットの後を追い離れにある一軒家へとたどり着く。家の扉に手をかけているベルベットにライフィセットが直ぐ様近づく

 

「家・・・全然変わってない」

「気をつけて、ベルベット。アイゼンは、敵の罠かもって・・・」

 

ライフィセットが注意を促した時ベルベットが彼の方を向き声を上げる

 

「ニコ達が操られてるっていうの?」

「わからない・・・けど・・・」

「メルキオルの術か。だとしても」

 

ベルベットは刺突刃を出し自らの右手の掌に刃を当て引き切る

 

「ぐっ・・・!」

「ああっ!!」

 

ライフィセットは直様右手からの出血を止めるため回復の術を掛ける

 

「あたしには通じないわ」

「あなたという人は・・・」

 

ベルベットの無茶にエレノアがそう呟く

 

「人は苦痛には耐えられる。じゃが・・・」

 

3人から少し離れた所にいたマギルゥが意味深な事を言っていた。それから家に入りベルベットは弟の部屋の扉に手を掛ける、僅かに躊躇っていたが意を決して部屋に入ると窓際のベッドに一人の人間が眠っていた

 

「!!!」

 

ベルベットは目の前の光景に小さく悲鳴を上げた、ベッドの上で眠っているのは間違いなく。3年前に失った弟のライフィットだったからだ。ベルベットはそれを警戒してか、自己を保つためか左手を握り締める

 

「騙されない・・・わよ・・・」

「傷が開いちゃうよ」

 

ライフィセットは傷が塞がったばかりの左手を握り締めるベルベットに近づくがその前に彼女は弟に近づき、左手を弟の頬に添える。そこから伝わる温もりにベルベットは自分の中にあるものが崩れた

 

「・・・あったかい・・・」

 

涙を流すベルベットは力が抜けたのか床に両膝を着く

 

「ラフィ・・・本当に生きて――ラフィ?」

 

ベルベットは両手で弟の左手を握るが目を覚ます気配がない事に戸惑う。そこに後ろから声がかかる

 

「あの日以来、ずっと眠ったままなの」

 

ニコがこれまでの経緯を説明する

 

「祠で倒れてるのを見つけてね。怪我は治ったけど、ずっと目を覚まさなくて・・・」

「・・・それでも・・・生きてるならいい」

 

ベルベットは徐に弟からもらった櫛を取りだす

 

「あたしが絶対見つけるから・・・ラフィの目を覚ます方法」

 

ベルベットは自らの額をラフィの額に当てる

 

「櫛のお礼・・・ちゃんと言わせてね・・・」

(ベルベットの櫛は、この子が・・・)

 

ライフィセット達はベルベットとラフィを二人にするため部屋を出た

 

 

(アルトリウス様は、あんな小さな子を生贄にしようとしたっていうの・・・?)

 

外でベルベットを待つ間エレノアはこれまでの状況を整理していた。モアナだけではなく義理の弟でさえも犠牲にしようとしていた事実、導師の所業にエレノアはますます不信感を募らせてゆく

 

「どうした、ライフィセット?元気がションボリのようじゃが?」

 

先ほどから何もしゃべらないライフィセットにマギルゥが声を掛ける

 

「そんなことないよ・・・ベルベット、よかった」

「へぇ、あなたもライフィセットっていうんだ。すごい偶然ね」

 

ニコはラフィと同じ名前であることに驚く

 

「う、うん・・・」

 

伏し目がちに応えるライフィセットの前方で扉が開く音が聞こえる、皆が反応したとき丁度ベルベットが出てきた

 

「・・・悪かったわね、なんか」

「気にしていません。これからどうします?」

 

ベルベットの謝罪に気にしていないというエレノアは、これからの行動をどうするか質問する。そこにニコが一つ提案をする

 

「今晩は、久しぶりにライフィセットの好きな物を作ってあげてよ。スープとかなら飲めるし、匂いにつられて目を覚ますかもしれないよ」

「そう・・・しよっかな。買い出しの間、見ててくれる?」

「うむ!苦しゅうない!」

 

ベルベットはその提案に乗りニコに留守をお願いする。親友の頼みにニコは快く引き受ける

 

「僕も・・・手伝っていい?」

「お願い。味見してもらわないといけないから」

 

ベルベットはライフィセットの申し出を了承し買い出しに向かう

 

「アイゼン達、喰魔を見つけたでしょうか?」

「それは・・・アイゼンとロクロウとケンに任せておこうよ」

 

エレノアは別れた3人の事を考えながら歩く。ライフィセットは今はベルベットの事に集中するべくエレノアを促す

 

「気にならないのですか?」

「もちろんなるけど、今はベルベットの側にいたいんだ、なんか、すごく嫌な感じがして・・・」

「喰魔探しよりも大事なほど?」

「・・・うん。胸がモヤモヤして、体の芯が冷たくなるみたいで・・・すごく怖いんだ」

 

エレノアはライフィセットの言いたいことを理解したのか表情を引き締まる

 

「・・・わかりました。貴方の感覚を信じます。喰魔のことはロクロウ達に任せて、私たちは

ベルベットと一緒にいましょう」

「ありがとう、エレノア」

「マギルゥ、貴女はどうします?」

 

後ろを歩いていたマギルゥについてくるのかどうするのかを聞く

 

「もちろん儂は、どっちでもいいわい!」

「ですよね」

「でも、マギルゥもありがとう

 

呆れるエレノアだったがライフィセットはついてきてくれるマギルゥに感謝する。先に進む2人を見ているマギルゥの横へビエンフーが近づく

 

「・・・いいんでフか、姐さん?」

「どーせ、なるようにしかならぬ。なるようにならんのじゃよ・・・」

 

マギルゥは胸に手を当て自分に言い聞かせるようにそう呟いた

 

 

弟をニコに任せ夕食の買い出しに出かけたベルベット達、ベルベットは真っすぐに一人の男性の元へ向かう

 

「おじさん、卵と牛乳、ホウレン草にトマト。あと、チーズのいいところを頂戴」

 

先ほど広場で会った馴染みの商店主に必要な材料を注文する

 

「あいよ!ベルベットが戻ったお祝いだ。食材はサービスするよ。お前が、ごちそうを作ってやればライフィセットだってすぐ目を覚ますさ」

「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて」

 

ベルベットは感謝しつつ店主が包んだ食材を受け取るがその横でエレノアの表情はよろしくない

 

「ホウレン草は・・・苦手なのですが・・・」

「好き嫌いすると大きくなれないわよ」

「個人的には十分ですけど!?」

 

エレノアが全力で遠慮するのでベルベットが折れた

 

「仕方ない。今回は入れないであげる。一個貸しよ」

「ベルベット。対魔士様と友達とは大したもんじゃないか」

「友達じゃないってば!」

「ははは!仲のいいことだ」

 

エレノアをベルベットの友人と勘違いしたのか煽てる店主に真っ先に否定するベルベット。だが彼女は一つ材料がない事に気づき、店主に在庫がないか尋ねる

 

「そうそう、ウリボアの肉はある?」

「おっと、それは売るきれちまったな」

「じゃあ、いつも通り鎮めの森で狩るわ」

 

店主が在庫切れであること伝えるとベルベットは自分で調達してくると言い森へ向かおうと踵を返そうとした時店主が警告する

 

「それが近頃、鎮めの森にはウリボアがいないんだ。モルガナの森を探したほうがいい」

「わかったわ。行ってみる」

 

店主に手を振りながらベルベットが狩場へ向かうため歩き出す。ライフィセット達もそれについていくがライフィセットは先ほどの会話でエレノアの意外な秘密があったことに少し驚く

 

「エレノアは、ホウレン草が苦手だったんだね」

「ええと、あれは・・・」

 

エレノアは誤魔化そうとしたが観念したのか顔を赤らめ恥ずかしそう白状する

 

「・・・実はそうなんです。内緒ですよ?」

「それにしても、お店でのベルベット、楽しそうだったね」

「本当に、栄養のバランスが摂れた無駄のない食材選びも見事でしたが。なにより明るくて自然だった」

 

普段のとは違うベルベットを見たエレノアの率直な感想にライフィセットも同じ意見だ

 

「きっと、あれが本当のベルベットなんだね」

「・・・ええ。家庭的で弟想いな普通の女の子」

「あのままでいられたらよかったのに。そしたら、友達と『苦しゅうない』って笑っていられたのにな」

「アルトリウス様の義妹のベルベット・クラウとして・・・」

「あ・・・普通の女の子は、あんまり『苦しゅうない』なんて言わないのかな?」

 

ライフィセットはニコのあの言葉を思い出し疑問に思う。普通それは目上の人が使う言葉なのだから当然だろう

 

「ふふ、そういう普通じゃない会話を普通にできるのが“幸せな普通の女の子”なんですよ」

 

まあ簡単に言うとノリである。エレノアの言いたいことを理解したライフィセットが笑みを浮かべていた

 

「これだけあれば十分かな」

「・・・」

 

店主の勧めに従い、モルガナの森で狩りを行ったベルベット達。彼女たちの前には数頭のウリボアが横たわっている、ベルベットが解体しようとする中ライフィセットの表情は思わしくない

 

「どうかした?」

「うん・・・ちょっと可哀想だなって・・・」

「わかります。このウリボアたちも家族だったのかもしれません。残酷ですね、人間も」

 

エレノアもそう思ってたらしい、生きるためとは言え己の都合で殺生をするのは抵抗があったのだろう

 

「・・・そうね。そんな感じ、忘れてた。けど、仕方のないことよ。生きるためには、食べなきゃならないんだから」

「・・・仕方ないことじゃな、確かに」

 

ベルベットの言い分にマギルゥは遠目から呟いた。狩りを終え帰路についている最中、ライフィセットは雰囲気を変えるため話題を振る

 

「買い物をして、狩りをして、友達と笑って・・・ベルベットはこんな風に暮らしてたんだね」

「はい、私も昔を思い出します」

「え?でもエレノアの村は業魔に・・・あ、ごめん」

 

業魔により壊滅したはずと言いかけたがその発言は悪いと思い、エレノアに謝罪するが彼女は気にしていないようだ

 

「いいんです。家族と過ごした幸せは、今も大切な思い出なんです。それに、家族を失った後にも、嬉しいことはちゃんとあったんですよ。お腹いっぱいご飯を食べたり、新しい友達ができたり・・・」

「そして恋をしたり」

 

ビエンフーが横から余計な口をはさむ

 

「そう、恋を・・・」

「恋・・・!?」

 

紛れもなくビエンフーにつられて言った事なのだがライフィセットはそのフレーズに驚く

 

「あっ・・・何を言わせるんですか、ビエンフー!」

「照れなくていいんでフ。普通の女の子の幸せ第一位は『初恋の思ひ出』なんでフから~」

 

ビエンフーはエレノアが照れ隠しで言っていると勘違いしたのかそのまま続ける

 

「多分ベルベットにも、想いを寄せた男子がいたんじゃないでフかね~?」

「初恋の思い出・・・ベルベットにも・・・」

「そういう言い方はやめてください、ビエンフー!はっきり言ってオジサン臭いですよ!」

「ガ~ン!ボクはまだ150歳なのにオジサン扱いされたでフ・・・ビエ~ン!」

 

エレノアはビエンフーのねちっこい言動を注意するがビエンフーは年齢の事だと思ったようで涙を流し泣いている、重要なのはそこではなく会話の仕方なのだが

 

「・・・とはいうものの、ベルベットの初恋の相手には会ってみたい気もしますね」

「僕は・・・別に・・・」

 

ライフィセットは興味がないのだろうそっぽを向く。どことなく不服そうな表情だ

 

「ふふ、そうですか」

 

エレノアはそれがやきもちやいてると直ぐにわかった。年頃の男子であることをわかっているエレノアにはかわいく見えたのだろう、つんつんしている彼を微笑みながら見ていた

 

 

村に戻って来た頃には日も暮れはじめ、ベルベットは夕食を作るべく自宅の方へ向かう。家が見えてきた時玄関前でロクロウとアイゼンがケンがいた

 

「弟の事は聞いた。よかったな」

「・・・で、お前はどうする気だ?」

「村を・・・調べてたのね」

「ああ。岬の祠を探ろうとしたら止められた。聖寮に立ち入りを禁止にされているそうだ。喰魔がいるなら、そこだろうな」

「俺は、喰魔を引きはがす。罠なら戦いになるはずだ。罠でなくても、この平穏はなくなる」

 

村の現状とベルベットの証言の食い違い、最重要の祠にも近づけさせようとしない村人の行動に不審な点が多い時点でアイゼンとロクロウが目星をつける

 

「あたしがしてきたように・・・ね」

「お前がここで止まっても、俺は聖寮と戦う」

「止めたければ力づく・・・よね」

 

全てを察したベルベットが左腕に手を掛ける。その向かい側に立っていたロクロウの視界にニコがこちらに歩いてくるのが見えた

 

「待て、ベルベット!」

 

ロクロウが慌てて止めるも間に合わずニコの目の前で業魔手をだしてしまった。ベルベットの姿を見たニコが悲鳴を上げる

 

「ひっ・・・!」

「!!?」

 

ベルベットがニコに気づいて動揺する。だがアイゼンは驚くわけでもなくただ冷静にベルベットの横を通り過ぎる

 

「・・・一日だけ待つ。覚悟が決まったら岬に来い」

「俺もそうするよ。明日どうするかは、お前次第だ」

 

ロクロウもアイゼンと同意見で集落の方へ歩いてゆく

 

「自分もアイゼンさんとロクロウさんの意見と同じです。貴女の選択に委ねます」

 

ケンも二人の後に続いてベルベット達と別れた

 

「そ、その手は・・・」

 

ニコの問いかけに誤魔化しても仕方ないと判断したベルベットは正直に答える

 

「見ての通り“業魔”よ。三年前、あんたたちを襲ったのも、あたし――」

「聞かない!!」

 

ベルベットが全てを打ち明けようとするもニコがそれを遮る

 

「業魔でもベルベットはベルベットだよ・・・怖いけど・・・怖くない!」

 

ニコはそう言い切りベルベットに走り寄り左手を握る

 

「あたし、誰にも言わないから・・・また前みたいに暮らそ?みんな・・・一緒に」

「ニコ・・・」

 

その言葉を返すことなくベルベットは無言でニコの手に己の手を重ねた

 

 

「結構なお味でした」

 

夜になりエレノア達はベルベットの自宅で夕食を摂った。エレノアはベルベットの料理はいつも美味しいが今日は特別に良かったようだ

 

「うむ!味見をしたライフィセットに花マルじゃなー」

 

マギルゥも珍しく料理を称賛している後ろでライフィセットとベルベットは弟の部屋で看病をしている。ベルベットが一しきり看病を終える

 

「明日はシチューを作ってあげるね」

 

ライフィセットはその姿を後ろから見ていたが手持ち無沙汰だったので部屋を見回しているとき一冊の本が目に留まる。見覚えのある装丁にそれがなんなのかすぐに気づいた

 

「これって!?」

 

ライフィセットは直様それを取り本を開く

 

「カノヌシの古文書!しかも最後まで書いてある。ベルベット――」

「ねぇ、フィー」

 

ベルベットがライフィットの声を遮った。もちろんそんな心算はないのだが

 

「ちょっとでいいから、あんたの羅針盤を貸してくれない?お願い」

「う・・・うん」

 

ライフィセットは本を机の上に置き羅針盤を取り出しベルベットに手渡す

 

「この子、すごく羅針盤を欲しがってたの」

 

羅針盤を弟の枕元へ静かに置く

 

「あんたと同じように、海の向こうのことを考えていつか旅に出たいって言ってた」

「そう・・・なんだ」

 

フィーはベッドで眠っているライフィセットを見ながら答える

 

「目が覚めたら、あんたとはいい友達になれるかもね」

「・・・ずっとこんな風に暮らしてたんだね、ベルベットは」

「なによ突然」

 

ベルベットは床に両膝を着きフィーに目線を合わせると彼の頬についているデザートのプリンを取り除き口に入れる

 

「ん?プディングちょっと甘すぎたわね・・・!!?」

 

味覚が戻っていることに気づきすぐさま立ち上がるベルベット

 

「ベルベット、なんで味が・・・?」

 

フィーもそのことについて疑問を浮かべている。ベルベットは眠っているライフィセットの方を見る。味がわかる、三年前の出来事の不一致、ありとあらゆる辻褄が合わない。心音が外にまでに聞こえるかのように高鳴る

 

「ふぁ~、そろそろお寝むじゃわい」

「しかし、明日はどうするつもり――」

 

そんなことは知ってか知らずかマギルゥは欠伸をかき、エレノアは明日の予定をどうするのかと聞こうとした時ベルベットがこちらに早足で近づきテーブルを両手で叩きつく。その音でエレノアが驚きベルベットの顔を見る

 

「・・・マギルゥ。“夢”を操る術ってある?」

「え・・・夢がなんですか?」

 

エレノアが何のことかわからずベルベットに聞き返すがそこにマギルゥがテーブルに肘をつきながら答える

 

「あるぞ。とある特殊な聖隷を使った術じゃ。霧とともに相手の“後悔”を取り込み、“幸福な夢”に閉じ込めるという」

「後悔を取り込んだ・・・幸せな・・・」

 

全てを理解したベルベットは右手を握り締め玄関の方へ歩き出す

 

「岬に行くわよ」

「今から?突然どうしたんですか」

 

事態を呑み込めていないエレノアが事情を聞こうとした時、小さいが声が響いた

 

「お姉・・・ちゃん・・・」

 

フィーがそれに気づいてベルベットを呼ぶ

 

「ベルベット!」

「行かない・・・で・・・僕のそばに・・・いて・・・」

 

ラフィが目を覚まし、羅針盤に向かって手を伸ばす。ベルベットは弟の側まで行くが無言でフィーの羅針盤を取る

 

「ああ・・・」

「これはフィーの羅針盤なの」

 

ベルベットはそれだけいい部屋からでる際にフィーに羅針盤を渡す。部屋から出る瞬間震える声で静かに呟く

 

「ごめんね、ラフィ・・・」

「やだよ・・・待って・・・お姉ちゃん・・・僕を捨てないでぇっ!!うああ・・ああああ~~!!!」

 

ラフィの悲痛な叫びを背中に受けながらベルベットは家を出るために玄関へ向かっていった

 

 

ラフィを置いて家を出た時当たり一面に霧が出ているのにエレノアが気づく

 

「霧が・・・!?まさかこれって!」

「岬の祠へ!喰魔を引きはがす」

 

ベルベットはこの原因が祠であることをすぐさま見抜き鎮めの森へ行くため走り出す。集落への道を抜け広場にたどり着いたとき、目の前でアイゼン達と村人たちが何やら揉めているようだ。ベルベットは歩きながら人だかりに近づく

 

「ベルベット」

「来たか」

「ベルベット、お連れさんを止めてよ。どうしても祠に行くって聞かないの」

 

ニコがベルベットに二人を止めてほしいとお願いする。商店の店主も口添えする

 

「聖寮が立ち入りを禁止してるんだ。そんなことされたら俺たちが罰を受けちまう」

 

その話を聞いたベルベットが静かに話し出す

 

「・・・ニコ。やっぱりあたしはひどい奴だよ。全部取り戻せるかも・・・忘れられるかもって思った。自分のために、ラフィを言い訳にしようとしたの」

 

ライフィセットはその言葉に視線を下げる

 

「けど、忘れていいはずがない。あの子が死んだんだから。理由もわからず殺されたんだから!許せない・・・絶対に許せないっ!!」

 

自らの思いを吐き出し顔を上げる。その表情には迷いがない

 

「どけ。さもないと、また喰い殺すっ!!」

 

それを聞いたニコが表情をなくす

 

「なんでよ、ベルベット・・・」

 

ニコと、そして周りの村人たちの足元からどす黒い靄のようなものが上がってくる次の瞬間村人は次々と業魔に変化していく

 

「なんであんたは~~っ!!」

「そう!それが本当よ!」

 

ベルベットの声に呼応したかのように業魔が一斉に襲ってくる

 

「どけええ~!!」

 

ベルベットは飛び掛かってきた鎧を着た狼の業魔、ウールヴヘジンを左腕で掴み地面にたたきつける

 

「こりゃあ驚いた!まさか折れずに耐えるとはの!」

 

マギルゥはベルベットの精神力の強さに感心した素振りを見せながら鳥人型の業魔のガルーダを誘い込み水玉の罠に引っ掛ける

 

「どういう意味です!」

 

エレノアは槍を振るいもう一体のウールヴヘジンの攻撃を防ぎ蹴りで反撃しながらマギルゥにその言葉の意味を問いただす

 

「細かい事気にしとると死ぬぞい!」

 

マギルゥはそれをはぐらかすかのように術を発動させ攻撃を加えていく

 

「ベルベットのやつ、どうしたん・・・だ!」

 

ロクロウは目の前にいる業魔を切り捨てながら暴れまわるベルベットの方を見る

 

「・・・」

 

アイゼンはなにも話さずガルーダの顔面を叩き潰す

 

「ベルベット・・・」

 

ライフィセットもベルベットを不安そうな表情でみていた

 

 

村人に化けていた業魔を倒した一行、ベルベットはそれにも目もくれず走り出す

 

「・・・こっちよ!祠は森を抜けた先!」

「おい、何がどうなっている?」

 

ロクロウはわけもわからずもベルベットの後を追い始める

 

「敵の罠じゃよ。全部ベルベットの夢を利用した幻じゃ」

「ちっ、悪趣味な術だ」

「ベルベットが見破ったんだな」

「はい。でも、夢とはいえ、あんなに容赦なく・・・」

 

エレノアはベルベットのやり方に疑問を抱くがマギルゥが遮る

 

「驚くべきはそこじゃないわい。あやつが夢を振り切ったことの方じゃ。夢と現の区分けなぞ、己の心のさじ加減にすぎんというに・・・」

「え・・・?」

 

意味深な事を呟いたマギルゥにライフィセットが反応するが彼女は直にはぐらかす

 

「大した奴ということじゃよ。急ぐぞ、者ども!」

 

皆がついていく中先に走っているベルベットは呟く。自らに言い聞かせるように

 

「夢だ、全部・・・じゃないとしても。あたしは退かない・・・!」

 

 

鎮めの森の最奥、岬の断崖絶壁にある祠が見えた。だがその前に巨大な物体が動いている、これほどの巨体は業魔以外にはないのはすぐに分かった

 

「いました!喰魔です!」

 

エレノア達の視線の先には首が二つある獣の業魔が一行を睨みつけ咆哮を上げる。その巨体は禍々しい穢れの色に染まり一頭の片目は青、もう一頭の目は赤、その色はお互いの顔半分を覆っているように耳まで流れている。鋭い爪と強靭な脚、当たれば並みの人間なら致命傷は免れない。喰魔オルトロスが走り出し距離を詰める。ベルベットにはその姿を見て何かに気づく

 

「そうか、あんたたちは・・・ニコが飼ってた・・・!」

 

ベルベットはこの喰魔が友人の飼い犬であることを思い出すがすぐに切り替え刺突刃と業魔手を構え走り出した

 

 

第36話 終わり

 




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