テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】 作:スルタン
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ケンがメイルシオの町長と話をつけ、住人は数日の間不在となり今街にいるのはベルベット達とアイフリード、ベンウィック達団員のみである。街の中でみなそれぞれ別の場所で一時を過ごしている、ベルベットとライフィセットは街の見回りを、アイゼンはベンウィックからの届け物を受け取ると早足でその場を後にし、ロクロウとクロガネは聖堂の方へ、エレノアはメディサとダイルと一緒にモアナの子守りへ、ビエンフーもくっ付いていったが。マギルゥは気まぐれにぶらぶらしているようだ。一方ケンは宿屋の一室で白紙の本に文字を書き込みながらその隣に山積みにされている書類や本を見比べ。問題がないか確認した後、書類と本を書き込んだ物を一緒に箱に納めていく。そして直ぐ別の書類を取り出し同じ作業を続けている。彼の後ろから声が響く
「忙しそうだな」
「はい。此処の町長さんと取引をした以上、此方も役目を果たさねばなりませんので」
後ろから現れたのはルシフェルであり、ケンの作業風景を覗くように観察する。そしてルシフェルは無造作に一つの本を抜き取り中身を見る
「メイルシオと交渉した内容によれば採掘と鉱石の利用法についての技術提供だったはずだったと思うが」
ルシフェルが開いた書物にはそれには全く関係ない技術であった。様子を見に来たルシフェルにケンがありとあらゆる技術書類を求めてきた時点で察してはいたが
「一応聞いとくが、これをどうするつもりだ?見た所君がいた世界で近代辺りの技術だが」
「この書類達をパーシバル殿下に託そうと思いまして」
「ほう」
「・・・恐らくこれからこの世界は自分達の行動で確実に環境が変化するはずです。極短期間ではないでしょうが天候や地形の状態が悪化し天災が起きます。文明は後退し、技術は失われるでしょう」
ケンは手を止めず左眼の補助も手伝ってスムーズに作業を進めていく
「これはその為の保険であり。自分からの身勝手な罪滅ぼしです」
「文明が衰退したとしても存続ができるようにという訳か」
ルシフェルは書類を戻し机に腰掛ける
「ですが急な発展は混乱をもたらします。ですからこれを殿下と王家に秘匿してもらい、時代と状況に応じて判断してもらうようお願いするつもりです」
「ふむ・・・わかった、いいだろう。これに関しては君の選択に任せよう」
その後、街が寝静まった深夜でもケンは作業を続けていた。ルシフェルはスマホを弄りながら部屋に置いてある椅子に腰かけ時間を潰している。暖炉の薪が燃える音とペンの文字を書く音だけが響いている。準備も終盤に入る中ケンが口を開く
「ルシフェルさん、実は一つ聞きたいことがあるのですが・・・」
「ん?どうした」
「この異変が収束した後、自分はどうなるのでしょうか」
ルシフェルはスマホに目を向けたまま答える
「急に変な事を聞くんだな。どうしてそんな事を聞くんだ?」
「・・・自分はこの世界に対して罪を犯しました。理由があるとはいえ、多くの人々を苦しめたのは事実です。もしそれが許されないことであるならば自分は甘んじて罰を受ける覚悟があります」
ケンはルシフェルの方を向き直りそう告げる。ベルベット達と出会い。ベルベットが聖寮を相手にする道を選んだ時、ケン自身もそれに同行した以上罪はある事は自覚している。事が終わった後自身の魂が消滅したとしてもそれが運命であると覚悟している。ケンの決意をルシフェルは感じ取った
「すまないが、それは教えることはできない。未来は絶えず変わっている、言えることは君は最良の未来を想い、選択することだ。思う様にやってみるといい」
「はい、わかりました」
ケンはそう応えかめにん商会に運送してもらうように十数個の大きなコンテナに書類を納めていく。建築、各種インフラ、ライフライン、医療、農業、工業に関するありとあらゆる化学技術、最後まで悩んだが兵器に関する技術も入れておく。後はこれを間違った方向に進まない事を注意文に加えておく。作業が終わる頃には東の空が僅かに明るくなってきていた
「夜が明けますね・・・」
「おつかれさんといった所か、今の内に休んでおくといい。幸いまだ日はあるから焦る必要はない。それじゃまた来る」
ルシフェルは一瞬で消え部屋にはケンのみが残った。ケンは眉間を揉みながら立ち上がる
「最良の未来・・・か」
部屋の扉に向かいながら静かに呟いた
今年の投稿はこれで最後になります。皆さんよいお年を