テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】   作:スルタン

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仕事が忙しくなり大幅に遅れました。申し訳ありません


第52話

~

 

「温っ!いや暑っ!いやいや熱つぅぅっ!!」

 

「一々騒がないでください!」

 

キララウス火山の内部へと足を踏み込んだ一行、マギルゥが溶岩から発せられる熱に叫ぶのをエレノアが諫める

 

「ふん、火山の火口で冷静な方がおかしいわい」

 

「吹き上がってくる地脈の流れを感じる。ここが地脈湧点だ」

 

ライフィセットは周りを見渡す。彼の予想通りこの火山が地脈の出口で間違いない、入口が聖寮に抑えられている以上聖主を起すにはここしかない

 

「おかしいぞ。メルキオルがいない」

 

アイゼンは此処にいるはずのメルキオルの姿がない事に警戒する。地形や環境を把握できていないベルベット達に地の利を活かし奇襲を仕掛けることぐらい容易いはずである。その時声が響き渡る

 

「シグレまで喰らったか、災禍の顕主!」

 

メルキオルの声が火口の中で反響する

 

「だが、対魔士でも贄足り得る魂はシグレ、オスカー、テレサ・・・後は儂くらいであろう」

 

「上からだ、奴は山頂か」

 

アイゼンは声のする方から見て上、山頂の方を見る

 

「三つの贄では三聖主しか目覚めず、カノヌシの力を封じることはできん。のみならず、一角を欠いた地水火風は、火口を巻き込んで暴発するだろう。四聖主を同時に覚醒させたくば、儂の魂を奪いにくるがいい!」

 

メルキオルの挑発にベルベットが後ろにいるマギルゥに問いかける

 

「どう思う、マギルゥ?」

 

「罠じゃな」

 

マギルゥは即答する

 

「メルキオルが得意とする攻撃は″氷″。火口では地の利がないゆえ、誘導したいんじゃろう」

 

マギルゥの情報が正しければ自分らがいる火口はメルキオルのとってもっとも避けたい地形である

 

「だが、あいつは長い間、聖主の復活を企んできた対魔士だ」

 

「そう。故に、全て偽りと決めつけるのも危険じゃ」

 

アイゼンの懸念にマギルゥは答える。メルキオルのような膨大な経験と知略を持つ人物は真実と虚構を巧みに織り交ぜ敵を惑わせ、破滅に追い込むことなど造作もないはずだ

 

「・・・今更だけど、マギルゥ。アンタはメルキオルの身内なのね」

 

「全くもって今更じゃな、昔の儂の名は、マギラニカ・ルゥ・メ―ヴィン。メルキオルの幼女で、破門にされた元弟子じゃよ」

 

「マギラニカ・・・?」

 

エレノアはマギラニカという言葉に心当たりがあるのか何かを思い出している、少しして目を開く

 

「欠番の特等対魔士!」

 

「名を残しておったか。十年も前に破門したくせに・・・」

 

「お前、結構すごい奴だったんだな」

 

ロクロウが感心するもマギルゥは淡々と続ける

 

「別にすごくはない。ベルベットとアルトリウスの関係と似たようなものじゃ。恩も怨も・・・・の、ベルベット、信じてくれとは言わん。じゃが、儂はあやつとの決着を――」

 

「どーでもいいわ、魔女の事情なんて。あたしは頂上に行く。いつも通り勝手にね」

 

口癖をそっくりそのまま返すベルベットにマギルゥは笑みを浮かべる

 

「うむ、儂も勝手について行くぞ!いつも通りにの♪」

 

~

 

メルキオルが待ち受ける山頂に到着したベルベット達、灼熱の溶岩からの熱気から離れ身が縮こまる冷たい風を感じながら断崖絶壁に立つメルキオルを視界に捉える

 

「メルキオル・・・」

 

「気をつけい、あのジジイはシグレと違って正面からは来んぞ」

 

「・・・」

 

「ケン、どうしたの?」

 

マギルゥの警告に応える事はない。今まで相対してきた経験で全く油断ならない相手であることはわかり切っている。ライフィセットは頻りに目だけを横に向けるケンに疑問を浮かべる

 

「・・・ライフィセット、注意して。アレだけ隙だらけな姿を晒すのは怪しすぎるから」

 

「わかった」

 

ベルベット達が警戒しながら近づくとメルキオルは背を向けたまま語りだす

 

「四聖主は、本来地水火風の自然を調和させ世界の秩序を維持する存在だ」

 

背を向けていたメルキオルが此方に顔を向ける

 

「お前達は、そんな四聖主が眠りについた理由を考えたことがあるか?」

 

「さあね、興味ないわ」

 

知りもしない事を問われてベルベットは即答する

 

「正に貴様の様な傲慢な存在こそが理由なのだ。四聖主の力――加護の力の源は、純粋な人間達の祈り・・・だが、人々は穢れ、祈りを忘れたせいで聖主達は眠りについてしまった」

 

「人々の祈りが聖主の力・・・聖隷と同じだ!」

 

ライフィセットはメルキオルの言葉に聖主も聖隷も規模は違えど同じ存在であることに気付く

 

「カノヌシが心を喰らうのも加護だっていうのか?」

 

「第五の聖主カノヌシは、穢れ毎人の心を喰らい尽くし、無に還す役を担う。再び人に赤子のような清らかさをもたらし、四聖主を復活させるためにな」

 

メルキオルの話が本当ならばカノヌシの力によってロボットの様な物言わぬ人間がただ生きて祈りを捧げるだけの奴隷になる。祈りも邪な精神がない分本当に純粋の祈りを捧げる事ができるだろうが

 

「心を無に還す!?でも、それでは――」

 

「そう、文明は滅び去る」

 

エレノアがカノヌシの力が発動した時の事態を創造する、結末は直ぐに分かった。心を失い、精神を失い、活動するだけの人間には文明や文化を維持するという事などまず不可能である事は明白であった

 

「穢れの拡大とカノヌシによる精神浄化は、太古から幾度も繰り返されてきた。それが人間の文明が何度も栄えては滅んだ理由。だが、これでは何時まで経っても進化はない。故に、我ら聖寮がカノヌシの力を制御し、人の心を未来へと導かねばならないのだ」

 

メルキオル、聖寮はカノヌシがこれまで人類の文明を0の状態まで破壊してきたのを文明を維持しつつ人類を人形にしようとしている。メルキオルはそれを自らの責務と義務と捉えているようだが、それでは一種の独裁であり文明は欲があるからこそ発展する。感情を失くした人類では文明の維持は不可能だ。現在の世界の状況を変えるには一番の近道だが

 

「・・・なるほど。カノヌシの制御の為に創った術が″神依″か」

 

「そして、神依の構築には、ジークフリートに使われている技術が必要じゃったんじゃな」

 

「だからアイフリードを巻き込んだのか」

 

ベルベットとマギルゥは聖寮が何故神依の作製に注力したのか理解する。カノヌシの強大な力を人の身で制御するとなると危険が及ばないように防御策が必要だ。だが手持ちの技術では完成できない、そこにアイフリードが持っていたジークフリートの技術の情報を手に入れ戦力増強ついでに拉致したところだろう

 

「・・・光があれば影があるように、どんなことにも″犠牲″は必要だ。わが身も同じ。人間の理想の為の″贄″だ」

 

その瞬間メルキオルの足元が輝き稲妻のような霊力が迸る

 

「ぐおおおおおお・・・・・・・っっ!!!」

 

「神依!!」

 

ライフィセットは霊力の気配からメルキオルは神依を纏おうとしている事を看破する

 

「させるかっ!」

 

アイゼンは神依を纏わせる前にトドメを刺すべく走り出す

 

「違うぞ、アイゼン!」

 

なんとマギルゥはアイゼンとは逆の方向へ走り出す。ケンもマギルゥが走っていった方向を振り返る、アイゼンがメルキオルの顔面目掛けて拳を振りぬくが手応えもなくまるで雲を殴ったよう感触と共にメルキオルの姿が消えた

 

「!!?」

 

「消えた!」

 

アイゼンとライフィセットが驚愕する後方でマギルゥが式神を出しメルキオルの術を防ぐ、メルキオルは直ぐに飛び退きベルベット達が駆けつける

 

「言ったじゃろう、正面からは来んと」

 

「ち・・・一撃とはいかんか」

 

衣の所々に破けたような青い光のラインが入り何処となく未完成な神依を纏ったメルキオルが舌打ちをした

 

「捻くれ者が!誰に似た、マギラニカ!」

 

「儂は儂!悪の大魔法使い、マギルゥじゃ!」

 

マギルゥがお返しとばかりに式神を飛ばし反撃するメルキオルはそれを障壁で防ぎ直ぐ様術を発動する。メルキオルの周りからマギルゥとケンを覗いたベルベット達が現れる。全員目は虚ろだが明確な殺意を向けてくる

 

「これは・・・」

 

「ジジイの十八番の幻術じゃ、さっきのとは違って実体を持っておる。油断すれば殺されるぞ」

 

「言われなくてもわかってる。大方動揺を誘うつもりでしょうけど幻覚なんて通じないわ」

 

ベルベット達はその言葉を皮切りに各々の幻覚に向かって走り出す。マギルゥとケンはメルキオルに相対する

 

「儂ら二人がお相手するぞい」

 

二人が構えるとメルキオルはケンの方に視線を向ける

 

「お前達二人の相手をするのは僅かに骨が折れる、貴様にはこいつの相手になってもらうぞ」

 

メルキオルがそれをいうとその後ろから禍々しい鎧に身を固めた異形の人型が重い足音を響かせ現れる。その体躯はケンより二回り以上に大きくメルキオルの前に立ち止まると同時に尾を地面に下ろし地面がめり込む。怪物がケンを睨むと同時に雄叫びを上げながら突進してくる。ケンは構えようとしたが相手が間合いに入ると脚に力を入れて踏み抜いた。地面が吹き飛び一瞬でケンの眼前に迫る

 

「早い・・・っ!?」

 

「んなっ!?」

 

ケンは予想以上の速さに反応が遅れ首を掴まれるとそのまま後方へと引き摺られていく

 

「ジジイ!あれはなんじゃ!」

 

「アイフリードの代わりに新たに作り出したものだ、ドラゴンと業魔を掛け合わせた・・・な。力も速さもアイフリードの比ではないぞ。呼称など必要ないがアムスと呼んでおる」

 

「・・・なんとも悪趣味な事じゃな」

 

何とか逃れようと足掻くも万力の様な力で首を絞められているため身動きが取れずそのまま崖の下へと一緒に落ちていき直下にある岩盤に叩きつけられる

 

「ごっ!」

 

背中から伝わる衝撃に一瞬息が止まり意識が朦朧とする。アムスは貫手を翳しケンに顔面目掛けて突き下ろす、首を掴まれ脱出できないと判断したケンは腕に脚を絡め軸をずらしアムスの巨躯を横に引き倒す。掴んでいた指が解け直様後方へ転がり距離を取る。アムスはゆっくりと立ち上がり体を此方に向ける、ケンは直ぐに構えを取る

 

「ッッ!!」

 

「ぬあっ!?」

 

一瞬で間合いを詰めたアムスは岩盤を抉るようなサマーソルトキックを放つ、ケンの身を削ろうとする蹴りを上半身を後ろに逸らし避けるも着地した瞬間に腰を捻り裏拳を繰り出す、ケンは咄嗟に腕で防御するも勢いを殺す事が出来ずに吹き飛ばされる

 

「ぐあっ・・・」

 

地面を転がるもすぐに態勢を立て直したが眼前には既にアムスの姿があり、右ストレートが飛んでくる。直撃を受ける直前で腕を出して防御するが、想像以上の威力に後ろへと飛ばされる。なんとか体勢を整えようとするも追撃で放たれた左アッパーカットによって更に上へと打ち上げられ、遠心力を利かせた尾の横薙ぎがケンの脇腹を捕らえる

 

「どああ・・・っ!」

 

地面を擦り岩盤ギリギリで止まる。ケンは直ぐに片膝を着いて起き上がる

 

(・・・まずい、力は同等だろうが速さはあっちが一枚上手だ・・・どうする)

 

今の攻防だけで相手の力量を把握し、どう戦うか思案する。あの巨体にあのパワー、しかもスピードも速いとなると生半可な攻撃ではダメージを与える事はできない、相手は構えこそ取っていないが戦い方に武術めいたものが散見される。技術は此方の方に分があるがそれも重量と身長の差で殆どアドバンテージにならない。なればこの世界にない戦法で戦うしかない。ケンは立ち上がり前傾姿勢を取り姿勢を低くする。アムスは走り出し拳を振りかざす

 

「うおおっ!!」

 

ケンはそれに防御するのではなく前方に転がり攻撃を躱すと同時にアムスの片脚を両腕で掴み持ち上げ押し倒す。掴んだ足首をジャイアントスイングで振り回し投げ飛ばす、アムスは岩肌にぶつかる。ずり落ちケンが追撃しようと近づくがアムスは前蹴りで蹴り飛ばす、反撃で数歩後退るケンにアムスは最上段からの回し蹴りでケンの首を捕らえ地面が叩きつける、盛大に割れ胴体が跳ね上がるとそこにオーラを纏った突進でケンを吹き飛ばす。今度はケンが岩肌に叩きつけられる

 

「ぐっ・・・」

 

全身に走る痛みに僅かに眉を歪め地面へずり落ちる、立ち上がろうとすると目の前に巨大な影が差す。アムスは両手を組み振り上げた腕を振り下ろす、その時ケンは真横へ転がり躱す。素早く背後の回り込み腰に腕を回しロックする

 

(これなら対応できないはず・・・!)

 

アムスを抱え上げ後方へそり投げる、所謂投げっぱなしジャーマンで投げ飛ばされ岩に打ち付けられたアムスは経験したことのない攻撃方法でのダメージに僅かに混乱している。次に前面に回り込みフロント・スープレックスで投げ飛ばす。アムスが立ち上がる暇を与えず首根っこをロックしてその巨体を逆さに抱え上げ、ブレーンバスターで地面に叩きつける。直ぐ様ケンは跳躍し胸部目掛けて全体重を乗せたエルボー・ドロップを叩き込む。身体能力が互角か相手が上回っているなら自身の土俵に引きずり込むしかない。ケンはこの世界にはないプロレス技を仕掛けることにしたのだ。立ち上がってはニー・ドロップ、レッグ・ドロップと兎に角一撃に全力を込めた攻撃を加える。鎧にヒビが入るがアムスも攻撃を許さず腕を振りかぶりケンを殴り飛ばす

 

「くっ!!」

 

「―――!!」

 

地面を擦り転倒するケンにアムスは腹部を蹴り上げ浮いた体にオーラを纏った掌底を叩き込む、ケンにめり込んだ掌からオーラが弾け吹き飛ばす。ケンは受け身をとり片膝を着き着地する、だが受けたダメージは軽くなく咳き込む

 

「ゲホッ・・・ゴホッ!」

 

ケンは手で口を覆い、アムスを見る。鎧は確実にダメージを蓄積している

 

(よし、弱点は見えてきた・・・後は根比べだな・・・!)

 

再び駆け出し接近戦を挑む、アムスはオーラの気弾を連射してくる。だがケンは被弾に臆することなく間合いに入り亀裂の入った鎧に跳躍しながら全体重を乗せた水平チョップを叩き込む

 

「ふんぬぅっ!」

 

重い一撃にアムスがのけ反り後退する、ケンは追い打ちをかけるように懐に潜りこみ連打を浴びせる

 

「ふんっ!せいっ!」

 

「――――!」

 

怒涛の連続打撃にアムスは堪らず反撃する、殴られながらも殴打を繰り返すと遂に鎧が割れ本体が露になる。空かさずがら空きになった横膝を蹴りアムスは体勢を崩す、ケンは右拳にエネルギーを集中させ赤く発光する

 

「許せっ!」

 

「――――!!!!」

 

レオパンチがアムスの胸を突き刺さる。アムスは最後の足掻きか貫手をケンの脇腹に突き刺しゆっくりと倒れる、地響きが響く。

 

「・・・・」

 

「――――・・・」

 

アムスは言葉を発する事はなかったがその表情はどこか穏やかだった。腕は力なく地面に落ち、ケンは拳を抜き降りるとアムスの肉体は霧散して消えて行った

 

「・・・」

 

僅かにアムスが消えた場所を見ていると上から音が響く、顔を上げるとメルキオルが岸壁の淵に立ち霊力の塊を作り出していた。恐らくあれを火口に向けて発射し自分諸共吹き飛ばす気なのだろう。次の瞬間メルキオルが足元の何かに気付き体勢を崩した。そこにベルベットが業魔手でメルキオルを掴む、メルキオルは何か言っていたが遠くからでは聞こえず業魔手によって喰われた。ベルベットは地脈に魂を押し込むようで業魔手が光の塊を掴んでいる

 

「少し不味いかな・・・」

 

そう呟いた瞬間ベルベットが魂を地脈に撃ち込んだ。ケンは脚に力を籠め大きく跳躍し岸壁に捕まり登り始めた

 

~

 

ベルベットが地脈点に魂を打ち込んだとほぼ同時刻。地表でカノヌシの領域の結界の外の四方から赤青黄緑の光の柱が立ち上る。火山、平野、谷、海から上った光は結界になりそれがカノヌシの領域を狭めていく、行き場を失ったカノヌシは八つ首の竜となり上空へ逃げるように登っていく。成層圏まで登ったカノヌシはそこに集まり遺跡か要塞めいた形状へと変化した。それと同時刻、ローグレスでは聖寮の対魔士達がこの現象に驚愕していた

 

「なんだ今のは・・・!?」

 

不気味がる対魔士の後ろで金属音が響く。振り返ると使役していた聖隷が仮面を脱ぎ捨てていた

 

「・・・目覚めたのだ、四聖主様が」

 

「我らは、最早汝らの道具ではない」

 

聖隷はそれだけを言い残し光の玉になってそこから離れて行った

 

「何が起こったんだ・・・!?」

 

驚愕する対魔士達の後ろで町の住人達がどよめいていた

 

~

 

第52話 終わり




急いで投稿する為に拙い文章になってしまって申し訳ありません
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