テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】   作:スルタン

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第53話

 

キララウス火山の火口にてメルキオルの打倒と眠りについていた四聖主を復活させたベルベット達。崖を登ってきたケンと合流し、噴火の危険性を考えて反対側の登山口へと急いだ。火山を下りて氷地へ出る、灼熱の熱気から一転身も凍る冷たい風が吹き荒れる

 

「助かったわ、マギルゥ。メルキオルに隙を作ってくれなかったら終わってた」

「儂は儂のケリをつけただけじゃよ。じゃが、感謝するなら物でおくれ♪」

「前言撤回」

 

付けあがるマギルゥにベルベットは速攻に突き放す

 

「花を傷付けない・・・誓約だったの?」

 

ライフィセットはあの時足元に現れた花をメルキオルは踏みつけないようにしていた理由をマギルゥに聞く

 

「・・・いいや。あのクソジジイは草花が好きだったんじゃよ。生きている人間より、ずっと・・・の・・・それだけの事じゃ」

「心は自由にならないのね。特等対魔士でも」

「魔女でものう。生きるということは、まっこと難儀じゃわ」

 

エレノアは周りを見渡す

 

「四聖主は目覚めたのでしょうか?」

「さてなぁ。だが、これで起きない間抜けなら当てにしても無駄だ」

「その悪口、聞かれたかもしれんぞ。カノヌシの領域が変化している」

 

ロクロウが四聖主を煽るとアイゼンが忠告する

 

「うん、四人とも起きたよ。カノヌシは地脈から押し出された」

「これで増幅されていた霊応力は低下し、多くの聖隷の意思も解放されるじゃろう。対魔士共の数は激減するはずじゃが・・・」

 

マギルゥの予想通り、聖隷を操るためのカノヌシの力が宇宙に追い出されたため効果範囲外になったため多くの聖隷が離脱してきている。だがそれは業魔に対抗する手段がなくなったということを意味する

 

「エレノア、お前まで戦えなくなってないだろうな?」

「残念ながら、まだ見えています。悪い業魔も、聖隷も、魔女も」

 

ロクロウはエレノアに確認する。エレノアは残念ながらと言ってはいるが微笑んでいる

 

「・・・わかるのね」

「感じるんだ。あいつの本体は地脈から出たよ″聖主の御座″の上だ。導師アルトリウスもそこにいる。けど、カノヌシは四聖主の力をすごい勢いで押し返そうとしてる」

 

ベルベットがライフィセットに確かめる。ライフィセットは目を閉じ上空を見上げカノヌシの気配を察知する

 

「四聖主が押し負けたら、今度こそ打つ手なしじゃ。余りまったりしとる時間はなさそうじゃぞ」

「行くわよ。決着をつけに」

「うん!」

 

皆が歩き出す中ケンはカノヌシがいる方向を見る。左眼の超望遠機能がカノヌシがいるであろう宇宙に浮かぶ建造物を鮮明に映し出す

 

「・・・」

 

ケンは僅かな間それを見ていたが直ぐにベルベット達の後に続いた、アイゼンの横に着き何やら話を始めた

 

 

その後下山し一行は無事メイルシオに到着した。そこにタバサの命令で協力で来ていた血翅蝶の団員から聖寮は此処ヘラヴィーサ北方を第四種管理区、要は管理と治安維持から完全に除外放置することに決定したようだ。メイルシオの住人は故郷が見捨てられた事に愕然としていたがそこにかめにん商会が入り込んだとの事だ、聖寮に変わってメイルシオの援助をするらしい。住人達は喜んでそれに応じ落ち着くまで自由にしても構わないとの事だった。これから決戦に向けて準備をするベルベット達はこれ以上モアナ達を危険に晒すことを避けるべくダイル達を此処に残していくことに決めた。ベンウィック達は出航の準備をする為ベルベット達が火山に向かった後にヘラヴィーサにへと戻っている。ベルベット達もダイル達に挨拶を済ませ先を急いだ

 

「お帰り!特等共を倒したんだな」

「ええ。でも、まだ導師と聖主が残ってる」

 

出航の準備が終わって待っていたベンウィックがベルベット達に気付いて走ってくる

 

「いよいよ最後の決戦だな!いいものが手に入ったから、やるよ」

 

ベンウィックは懐から一つの物を取り出しベルベットに投げ渡す

 

「・・・リンゴ?」

 

「気休めだけど、お守りだ。″フォーチュンアップル″っていう珍しいリンゴでさ。″幸運を呼ぶ″って言い伝えがあるんだ」

 

「フォーチュンアップル・・・」

 

ライフィセットは珍しい名前のリンゴに注目する

 

「う~ん、悪党の俺達にひつようなのは、悪運の方じゃないのか?」

「悪運なら間に合っとるぞー」

「そういうこと言うなよ・・・」

 

散々な言われ様にアイゼンはそっぽを向く

 

「ま、それなりにありがたく貰っとくわ。リンゴは好きなのよ」

「食べるなよ」

「言われなくても食べられない――」

 

ベルベットは言いかけた瞬間何かに気付きリンゴを凝視した

 

「どうかした?」

 

ライフィセットはリンゴを見るベルベットに声を掛ける。ベルベットははぐらかす

 

「味見してみる?幸運のリンゴ」

「ダメだよ!お守りなんだから」

「そうね。生きる勇気をくれるお守りよ」

「・・・?」

 

ライフィセットはその言葉に首を傾げる

 

「で、最後の目的地は?」

「″聖主の御座″よ」

「ゼクソン港へ向かうぞ」

「アイ・マム!アイ・サー!」

 

アイゼンの号令にベンウィックが大きく返事をした。直ぐに出航する為にベルベット達は船に乗り込む、アイゼンが総舵輪に手を掛けると背後から声が掛かる

 

「ケリはついたみてぇだな」

「ああ」

 

杖を突いたアイフリードが横に並ぶ

 

「次はアルトリウスか?」

「いや、その前に・・・あのお節介焼きの手伝いだ」

「そうか、好きにしろ。舵はお前が握ってるんだ」

 

その言葉にアイゼンは答えることなく舵を右に切った

 

 

その日の夜、バンエルティア号の甲板でベルベットが海を見ながら佇んでいる。その後ろからエレノアが近づいてくる

 

「なんですか、私だけ呼び出したりして?」

「・・・・ライフィセットは?」

「一緒に見張りをするって言い出したけど、無理に休ませました。連戦の疲れがあるはずですからね」

「助かったわ。あの子、弱音を言わなすぎるから」

「名付け親に似たんですよ」

「似てないわよ」

 

ベルベットは手すりに腰掛ける

 

「あの子の頑張りは″希望″だもの」

「希望・・・」

「・・・いい風ね」

「はい。厳しくて悲しいけれど、やっぱり世界は奇麗です。果てしない海も、南国の島も。氷の大地も、火を噴く山も」

 

エレノアが海を見ながら語る

 

「そうね。そして、そこには″人間″が生きてる・・・これが、ラフィが旅をしたがってた世界なのね。あの子が海の向こうになにを見てたのか、やっとわかったわ。エレノア、一つだけあんたに頼みたいの。あたしに何かあったら、ライフィセットをお願い」

 

「どうしたんですか、突然?」

 

ベルベットの急な申し出にエレノアは少し困惑する

 

「喰魔とカノヌシの力は本質的に同じものだから理論上は可能なはず・・・ううん・・・理じゃない。あたしの中の憎しみとは別の″心″が『こうしたい』って言ってるのよ。世界に″希望″を残したいって」

「あなた、まさか・・・!?」

 

そこまで聞いたエレノアはベルベットが何をしようとしているのかに気付いてしまう

 

「ちょっとした弱音よ。万が一時は、頼むってこと」

「・・・わかりました。ライフィセットは私が責任をもって守ります。弱音に付け込みたい所ですが、そうもいきません。死ぬまで貴女の命令に従うのが、私の誓約ですから」

 

「そういえばそうだったわね。アンタを負かしといてよかったわ」

 

二人はそれからしばし海を見ていたがそこにアイゼンとケンがやってくる

 

「悪いが行先を変更する」

「どうしたの急に?」

 

ベルベットが突然の事で理由を聞く。アイゼンはケンに視線を向けると代わりに事情を話す

 

「今回は自分がアイゼンさんにお願いしました。聖主の御座に向かうとなるとどうなるかわかりません、その前に個人的な用事で御座に向かう前に寄る所があります」

「その目的地は?」

「カドニクス港へ向かうのは変わらん・・・アルディナ草原だ」

「アルディナ草原・・・まさか!?」

 

エレノアがそのフレーズを聞いてアイゼン達が考えている事に感づく

 

「血翅蝶の情報だ。白角のドラゴンがあの丘の付近で姿が目撃されている」

「ザビーダさんも恐らくその情報を掴んでいるはずです。自分はあの人に借りが一つあります」

 

そこまで聞いたベルベットはケンが何をしようとしているのか容易に想像できた。呆れながら呟く

 

「ホント・・・あんたってお人好しというか律儀すぎるというか」

「ええ、自分はお人好しです」

 

ケンは微笑みながらそう応えた

 

 

次の日の早朝、ゼクソン港へと到着したバンエルティア号から降り立った一行。港は活気を取り戻しているがどことなく雰囲気が違う

 

「鎮静化は解除されたようね」

「業魔の被害と引き換えに、のう」

「・・・それも予定通りよ。世話になったわね」

「へっ、したいことをやっただけさ!礼なんかいるかよ!」

 

ベルベットが改めてここまで付き合ってくれたベンウィック達に礼を述べる

 

「鎮静化の影響は弱まったが、その分街はザワついてる感じがするな」

 

ロクロウは住人達からのピリついた気を感じ取る

 

「聖寮の対魔士が激減し、業魔への対処が追いつかなくなっているのかもしれん」

 

聖隷の意識を制御していたカノヌシが範囲外へと追い出されたと同時に離反者が続出したのは用意に想像できる。聖隷の加護を前提に業魔と相対していた対魔士にとっては生命線、それがなくなれば文字通り死活問題だった

 

「・・・」

「泣いてるの?」

 

アイゼンの言葉を後ろで聞いていたエレノアが顔を伏せる。ベルベットが泣いてるのかと聞くと首を横に振る

 

「現実を噛み締めているだけです。借りものの″理″ではない、自分の″情″で動くことの怖さ、辛さ、そして責任を・・・今が、私の本当の新しい出発点なんです。この過酷な現実を噛み締めて、前に進まないと」

「面倒な奴ね・・・けど、嫌いじゃないわ」

「はい・・・泣き虫じゃありませんから」

「そのようね」

「だが、なんでも背負い込むなよ」

 

エレノアの性格を知っているロクロウからは釘を刺される

 

「わかっています。私にできる事をするだけです」

「そんな事言いつつ、限界を超えて頑張っちまうのが、お前だろ。ギリギリまで頑張って、どうにもならない時は、人に頼ってもいいんだからな」

「ロクロウ・・・ありがとうございます!」

「ま・・・俺は人じゃないけどな」

「わかっていますよ」

 

 

一行はその後ダーナ街道からノーグ湿原、そこを抜けるころには雲行きが怪しくなりその後雨が降り出してきた。雨脚が強まっている、レニードにて先回りしていた血翅蝶の構成員からの情報だとザビーダはいち早くドラゴンの所へと向かって行ったようだ。ザビーダではドラゴンに手を掛けることはできないのは皆知っている。最悪殺されるのが関の山だ、全員は急いでレニードを出てドラゴンがいるであろうアルディナ草原の丘へと走り始めた。それから少し後丘にたどり着いた一行の前方で脇腹を抑え息が上がり切ったザビーダがいたその奥に白角のドラゴンもいる

 

「ザビーダと白角のドラゴン・・・!」

 

エレノアが言い終わると同時にドラゴンが頭突きでザビーダを跳ね飛ばす

 

「ぐああっ・・・!」

 

背中から地面に叩きつけられるが直に跳び起きるザビーダ

 

「はは・・・懐かしいなぁ。初めてお前に声かけた時も、こんな風にぶん殴られたっけか」

 

笑って昔話をするザビーダの顔面にドラゴンの尾がめり込み横に吹っ飛ぶ

 

「ぐはぁっ・・・!!!」

 

地面を擦りながら止まったザビーダは文句を言いながらも起き上がる

 

「・・・痛ってぇ・・・加減を知らねぇ子供みてぇだなぁ・・・」

 

痣だらけになりながらも立ち上がるザビーダにドラゴンはもう一度頭突きで突き飛ばす

 

「うおおおっ!!」

「ザビーダ!!」

 

ライフィセットはたまらず駆け寄ろうとするがアイゼンがそれを止める

 

「・・・アイゼン!?」

「黙って見てろ」

「でも・・・」

 

ライフィセットが視線の先でケンがザビーダを助け起こす

 

「はぁ・・・はぁ・・・よう、兄ちゃん・・・よくわかったな・・・」

「血翅蝶の人達からお知り合いの目撃情報を提供してもらいました。天候の変わり具合も相まって大当たりの様です」

 

ケンは土砂降りになった空を見上げる。風も強くなってきた

 

「自分はザビーダさんに後一つの借りを返すために来ました。聖主も御座に行けばどうなるかわかりません。アイフリード船長を助けた時なにか言いかけましたよね?」

「そこまで言ってんならもう分かってんじゃねぇか・・・」

 

ザビーダは全てこそ言わなかったがシルバを救ったあの技に全てを掛けているのだろう。そこにアイゼンが近づきザビーダを見下ろす

 

「よう、副長・・・あいつを始末しに来たか?」

「それは最後だ。その前にこのお節介野郎の借りを返させる、後腐れがないようにな」

「へっ、そういうアンタも随分お節介焼きになったもんだ」

「勝手に言ってろ」

 

踵を返しドラゴンの元へ向かう。ベルベット達はシェンロンの前に立ち構えている

 

「ザビーダさん。最善を尽くしますが、結果がどうなるかはわかりません。心の準備だけはしておいてください」

「・・・すまねぇ」

「いえ、これも自分勝手の我が儘ですから」

 

ケンも立ち上がりアイゼン達の所へ向かう、シェンロンは新たな敵に向かって咆哮を上げた。ザビーダは痛みで悲鳴を上げる体に鞭を打ちその行く末を見守る為立ち上がった

 

 

第53話 終わり

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