テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜 【完結】 作:スルタン
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激しい雨が降りしきる中、丘でシェンロンとの戦いが始まる
「はあああっ!!」
「斬り捨て御免!!」
ベルベットとロクロウがそれぞれの獲物で同時に斬りかかる、だがシェンロンの鱗が二人の攻撃を弾き、突風が吹き荒れ吹き飛ばされる
「くっ・・・!」
「うおおっ!?」
「ベルベット!ロクロウ!」
飛ばされた二人を突風に顔を庇いながらライフィセットが叫ぶ。ベルベットは空中で体勢を整え着地し、ロクロウも同じように着地し武器を構えなおす
「風がしつこい!」
「ああ!それに硬い、生半可な攻撃は通じないぞ!」
それぞれが感じた感想を言い合うがその間にシェンロンのブレスが地面を抉りながら二人に迫る。そこに水の壁と水泡が現れる。水の壁がブレスの勢いを殺し弾けた水泡が弱まった攻撃を吹き飛ばす
「二人掛かりでやっととはのお・・・」
「でも、諦めない!」
マギルゥが表情を僅かに歪ませるが決意を決めたライフィセットの言葉を聞き口角を上げる。そこにエレノアが術を発動させ氷の槍を放ち隙を作る
「今です!」
「もう一度!いくわよ、ロクロウ!」
「応!」
二人はそれぞれ別の方向から攻撃を仕掛ける。しかしシェンロンは自身に風を纏わせその強力な風圧によって押し戻され、態勢を崩した二人に尻尾による薙ぎ払いが迫る。ベルベットとロクロウは攻撃を防御するのは悪手と判断し咄嗟に後方に下がり回避する。その直後二人がいる場所までに扇状に広がった抉れた土が露出していた
「毎度の事なんて威力だ」
「喰らったら一たまりもないわね」
二人を威嚇するシェンロンの真下の地面から腹部目掛けて岩が突き出すが瞬間的に察知され躱される
「勘がいいな、だがそれが命取りだ」
アイゼンは地面に手を着けながらシェンロンを睨みつけるが直ぐに別の方向に視線を移す、アイゼンが繰り出した岩の上を駆け上がるケンの姿があった、ケンは周囲にあった半ば埋まっていた巨大な岩を引き抜きそれを持ち上げながら跳びあがる。シェンロンの頭上まで高度に達した瞬間に岩を投げる、受け切れないと判断したのか躱す体勢に入った時ケンは投げた岩に向かってウルトラショットを撃ち込んだ
(倒すわけにはいかない、勝負は一瞬!)
ウルトラショットを撃ち込まれた岩は爆散し大小の破片がシェンロンに降り注ぐ、速度の乗った破片は風圧を貫通し体表を打ちつける。鉄の様に硬い鱗と云えど衝撃までは殺せずシェンロンは体勢を崩ししてケンに背中を向ける、そこにケンが体当たりと共に組み付き地面に叩きつける
「皆さん、今です!」
ケンがベルベット達の方を向き合図をした、次の瞬間シェンロンに脇腹を噛みつかれ振り回されて地面に同じく叩きつけられる。だがその行動はベルベット達が動くには十分すぎる時間を与えた。先に仕掛けたのはエレノアとマギルゥ
「この瞬間は逃しません!」
「手早く済ませるぞよエレノア!後が支えるでの!!」
シェンロンが尾を横に薙ぎ払う、エレノアは槍を地面に突き立て棒高跳びの要領で跳び上がり躱しマギルゥは式神を巨大化させそれに乗り上昇する
「今じゃエレノア!」
「参ります!」
エレノアが槍をシェンロン目掛けて投げる。そこにマギルゥが魔力を籠める
「全て貫いて見せる!」
「念には念の!ビッグフュージョンじゃ!」
「「ペネトレイト・エクセリオン!!」」
マギルゥの魔力を纏った槍がシェンロンの脇腹に命中し岸壁に叩きつける。シェンロンは直ぐに起き上がり二人に向かって飛び上がる。そこに左右から二つの影が迫る
「ロクロウ合わせろ!あいつの技の時間を稼ぐ!」
アイゼンが霊力を纏った拳を連続でシェンロンへ叩き込む
「応!!間違ってヤるなよ!!」
ロクロウも衝撃波を纏った斬撃を浴びせていく
「テメェが言うな!」
「おおっと、それもそうだな!」
ロクロウの煽りに怒鳴りながら間合いを取って突進、ロクロウも小太刀を敵に向け走り出す
「「ファイナリティ・ゼスト!」」
打撃と斬撃が交差し、シェンロンも堪えたのか咆哮を上げる。ベルベットがそこへ駆け上がり顎を蹴り上げる
「フィー!!」
「うん!!霊子解放!」
ベルベットの合図でライフィセットがシェンロンの真下に聖隷術の陣を作り出す。準備が完了するまでベルベットが蹴りと業魔手で足止めする
「いくよ、ベルベット!」
「決着をつけさせてもらうわよ!」
合図でダメ押しの業魔手での攻撃の直後飛び退くベルベット
「「舞い散れ!!イニュメラブル・ワウンド!!」」
陣から白色の閃光が煌めき、シェンロンが吠える
「今だ!!やれ!!」
アイゼンがケンに向かって合図する。ケンの右手には金色のエネルギーが既に集まりそれをシェンロンに向けて放ち、コズミューム光線がシェンロンの胴体に直撃する。光線の粒子と共に穢れの瘴気が破壊されていく、シェンロンは本能でこの攻撃が危険と判断し光線を受けながらも前進し始めようとしたが地面から無数の光る鎖が伸び絡みつく。アイゼンが地面に手を当てながら叫ぶ
「行かせるかよ!!」
アイゼンは全力の霊力を籠めて阻止するがシェンロンが動くごとに鎖が軋み歪んでいく
「ぐううっ!!!」
「アイゼン!僕も!」
「マギルゥ!」
「言われんくても手伝いぐらいするわい!」
アイゼンに手を貸すべくライフィセットとエレノア、マギルゥが横に並び霊力で鎖を強化する。鎖は太くなるがそれでもシェンロンの進みは止まらない
「これでも止められないか!!」
「なんて力・・・!アイツの技が撃ち終わる前に潰される!」
ロクロウとベルベットはアイゼンの鎖に攻撃が当たる可能性がある為に手を出せない。最悪な状況を想定して構える事しかできない。シェンロンの咆哮と風圧が雨と草を縦横無尽に巻き上げる。ケンは穢れを破壊する為にさらに光線を強くするがそれでも間に合うかわからない。アイゼンが歯噛みする
「クソ・・・ここまでか・・・」
その時アイゼンの横から人影が現れ同じように地面に手を着ける。アイゼンが横を向くとザビーダがいた
「テメェ・・・!」
「へっ、すまねえな副長。やっぱじっとしてんのは無理だ」
「怪我人は下がってろ・・・!」
アイゼンが語気を強めるがザビーダはにやけながら拒否する
「いやだね、アイツに貸しを返してもらわねえとなぁ!!」
ザビーダが霊力を籠めてとうとうシェンロンの動きが止まる。ケンはコズミューム光線を尚も放ち続けるがエネルギーと体力の消耗が激しいこの技に息が切れ始める
「はぁ・・・はぁ・・・不味いな、穢れが予想以上だった。持ちこたえられるか」
立つのも辛くなり片膝を着いてしまう。その時彼の肩に手が載せられる、ケンが振り向くと暫く見た恩師がいた
「あ・・・貴方は!」
其処にいたのは赤と青で彩られた体表に金のラインが入った太陽と月が重なる金環日食の溢れるフレアの如くエクリプスモードのウルトラマンコスモスがいた。コスモスは静かに頷き横に並ぶとコズミューム光線の構えを取り、放つ。コスモスの光線がケンの光線と合わさった合体光線はシェンロンの体全体を呑み込む、師の前でみっともない姿を見せるわけには行かないケンは着いていた膝を上げる。シェンロンは体全体に照射され光線と共に黒い靄が消え去って行きシルバと同じように徐々に形を失くし人と同じ大きさに小さくなっていく
「テオドラ!!」
鎖を解き、光線が撃ち終わり、シェンロンがいた場所には民族衣装の様な服を纏った緑髪の女性が俯せに倒れていた。ザビーダは直ぐに走り寄りテオドラを抱き起す
「テオドラ!おい!目を開けてくれ!!」
ザビーダが必死で呼びかける中アイゼン達が周りに集まる。ベルベットとロクロウは業魔である為念の為距離を取っておりケンの方へ向かっている
「大丈夫か?」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ええ、なんとか・・・どうですか?成功しましたか・・・?」
「まだわからないわ。今呼びかけてるみたいだけど」
ロクロウは消耗で膝を着いていたケンに手を貸し立ち上がらせる。ベルベットは腕を組みながらアイゼン達の方を見ている、ケンはさりげなく周りを見渡したがコスモスの姿はなかった。手を貸した後混乱を避ける為直に此処を去ったのだろう、ザビーダ達の方を見やるとテオドラと呼ばれた女性は意識が戻っていないようだ
「ちょっと行ってきます」
「・・・わかった、無理するなよ」
ロクロウの了解を取り重い足取りでアイゼン達の方へと向かう。アイゼンがこちらに気付く
「意識が戻らないのですか?」
「ああ、術を掛けたがそれでも気がつかん」
ケンに気付いたザビーダが何も言わなかったが心中を察したケンは側まで歩み寄りテオドラに手を翳し掌からコスモフォースを発する。優しい光がテオドラを包む、光が収まった後彼女の瞼が震えゆっくりと開く
「!!テオドラ!俺がわかるか!?」
「ザビーダ・・・」
久しく聞いていなかった愛する者の声を聞き彼の目から涙が溢れてくる。テオドラは優しくザビーダの頬に手を添える
「すまねぇ・・・こんなに掛かっちまって・・・すまねぇ・・!!」
「何言ってるのよ、本当だったら私は今頃この世にいなかったんですもの・・・ごめんなさい・・・」
「謝らないでくれ!謝るのは俺の方だ!何もしてやれなかった!何もできなかった!」
涙をボロボロ溢しながら言葉を吐き出すザビーダをテオドラはそっと抱きしめる
「でも、最後は助けてくれた。ありがとう」
「!!!・・・ああ・・・ああ!!」
アイゼン達は二人から距離を置き再会の喜びが収まるまで見守っていた
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「・・・すまねぇな副長、みっともないとこ見せちまって。今度はこっちに借りが出来ちまった」
「礼ならあいつに言え。貸しを作った覚えはない」
暫くして落ち着いた後改めてザビーダはアイゼンに感謝を述べる。雨は止み、日が差し込んでいる
「なぁ、やっぱり副長も・・・」
「やめろ、あいつを巻き込むな」
「ならせめて、海賊から離れたらどうだ。ちったぁマシになるだろうが」
「俺は、アイフリード海賊団副長。アイゼンだ、これを変えるつもりはない」
ザビーダが言いかけるのを遮るアイゼン
「それにな、もう始まっている。俺がああなる前にはあいつはもういない。ドラゴンは俺達聖隷にかけられた呪いだ。呪いに自分の舵を奪われるくらいならその方がマシだ」
アイゼンはテオドラと話しているベルベット達の方を見る
「ただ、大切に思うものが。ドラゴンになった自分に囚われるのだけは、恐い」
「あんたにも、守りたい相手がいるんだな」
「妹だ。″早咲きの花″の様に賢いしっかり者でな。良く俺を子供扱いしやがる。本当は泣き虫だが、しっかりした子だ」
「――そうか、仲良くしたいもんだな」
「・・・おい」
ザビーダの言葉に眉を上げるアイゼン
「なに想像してんだ。他意はねぇっての」
「・・・その時が来たら、お前に始末を頼みたい」
「嫌だね、そんなの」
「!」
アイゼンの頼みを即刻断るザビーダに驚く
「テオドラを救ってくれたんだ。今度は俺がアンタを救ってやるさ。フィルクー=ザデヤ、『約束のザビーダ』の名に懸けてな」
「・・・ちっ、勝手にしろ。ウフェミュー=ウエクスブ、俺に喰われても文句は言うなよ」
「男に喰われるのは御免こうむるぜ」
二人が密かに誓いを交わしている頃、エレノア達はテオドラを近くにあった岩に座らせ休ませていた
「ご気分は如何ですか?」
「ええ、なんともないわ。寧ろ以前より良くなってるの」
「恐らくドラゴン化するほどの穢れをこやつの技で諸々吹き飛ばしたおかげじゃな」
エレノアの質問にテオドラが応えマギルゥが推測を立てる。念の為回復の術を掛けていたライフィセットはさりげなく聞き直す
「テオドラ。やっぱりその頭の・・・」
「いいのよ。″これ″と″これ″は私に対しての戒めと受け取ったから」
テオドラは自身の頭に生えている小さな白角と腰から伸びている尻尾に触れる。エレノアはマギルゥの見解を聞く
「マギルゥ、これは」
「う~む、何とも言えんが恐らく後遺症の類じゃろうな。今までドラゴンから元に戻した聖隷にはそんなもんはなかったし、ドラゴンになるまでに過程でこうなったのか・・・わからんのぉ~」
「でも、ちょっとかっこいいかも・・・」
マギルゥ達が頭を捻る中ケンはテオドラにある物を差し出す
「テオドラさん、これを」
「これは・・・ペンダント?」
「それってハリアで使ったペンダントよね」
「はい、ですがあれ以来うんともすんとも言わなくなりました。それに今のテオドラさんには器がありませんから、取り敢えずこれを使っていただければと」
ケンはそういうとテオドラにペンダントを渡す
「まぁ、大事な物なんでしょ?」
「いえ、自分が持っていても持ち腐れになりますから。お気になさらず」
「――ありがとう、大事にするわ」
ケンの勧めに応えてテオドラはペンダントを首にかける、其処でアイゼンとザビーダ、ベルベットとロクロウが集まる
「何から何まで世話になったな」
「これで借りはお返しできました」
「それよりか、にいちゃんには返しきれない借りができちまったぜ」
ザビーダはケンに近づき手を差し出す。察したケンは手を握り握手を交わす
「フィルクー=ザデヤ、『約束のザビーダ』。助けが必要なら直にすっ飛んでくるぜ」
「ええ、その時はよろしくお願いします」
握手を解いた時、アイゼンはザビーダとテオドラにこれからどうするかを聞く
「お前達はこれからどうする」
「先ずはテオドラを安全な場所まで連れて行く。その後副長達に付き合うぜ」
「駄目だ。お前はテオドラと一緒にいろ」
「でもよ」
アイゼンはザビーダに釘を刺す
「・・・積もる話もあるだろう。今度はお前が置いていく側になるんじゃない」
「副長・・・」
「ザビーダさん、どうか一緒にいてください。アイゼンさんの言う通りです。どうか」
ケンはザビーダに頭を下げる。こうも頼まれたら引き受けるしかない
「・・・わかったよ。だがよ、生きて帰ってこいよ」
「気をつけてね」
「はい」
それを皮切りに一行はザビーダ達と別れローグレスへと向かうために歩を進める
「待たせたな」
「別にいいわ。業魔であるあたし達じゃ悪影響もあるだろうし」
「これからどうする?」
ロクロウの提案にアイゼンは待ったをかける
「その前にローグレスの血翅蝶の所に行く。念の為情報を得たい」
「次いでに休んでいきましょうか。決戦に向けて英気を養う時間はあるでしょうし」
エレノアがそう提案する。少なからず皆消耗しているのは確かだ
「そうしよう。一人かなり消耗してるからな」
「ケン、大丈夫?」
ロクロウがケンに肩を貸しライフィセットが支える。体力を使いすぎた為顔色が悪く肩で息をしている
「強がってんじゃないわよ」
「はは・・・、流石にこの姿を見せる訳にはいかなかったので・・・」
ベルベット達はそんな会話をしながらローグレスへと歩を進めた
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第54話 終わり