ファイナルファンタジーXV ―真の王の簒奪者―   作:右に倣え

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サブクエストはだいたい3つを目安に書いてます。
ちなみにキャラが関わるクエストは最初と真ん中と最後ぐらいでほかはごっそり端折る予定です。


サブクエストその三

「やあやあ! またオレに会いに来てくれるなんて、ひょっとして王子って暇なの?」

「暇じゃねーよ、大忙しだよ」

 

 アクセサリーを作るための素材集めを前にさせてきた新聞記者兼、アクセサリ職人のディーノはノクティスたちの来訪を笑って歓迎した。

 

「で、ここに来るってことはオレの話を聞いてくれるってことでいいのかな?」

「ま、アクセサリの力は大きいからな」

 

 しょっちゅう上から魔導エンジンの音とともに降ってくる魔導兵や、路銀稼ぎのためのモブハントなどでアクセサリのありがたみは身にしみていた。

 状態異常を防いだり、身体能力を向上させたり。これらがなければノクティスたちの旅はもっと辛いものになっていただろう。

 

「うんうん! 王子もアクセサリの魅力がわかったみたいで嬉しいよ! んじゃ、これよろしく!」

 

 ディーノはまるでノクティスが来ることをわかっていたように、手際よくノクティスから地図を受け取ると印をつける。

 

「ここにあるのか」

「そう! でも例によって危ない。だから新進気鋭のハンターとして有名な王子一行に頼もうってわけ!」

「お前王子って言葉の意味知ってっか?」

 

 顎で使っていい人間という意味では断じてない。

 しかしディーノは怯んだ様子もなく人懐っこい笑みを絶やさなかった。

 

「まあまあ、持ってきてくれたら試作品をあげるからさ! アクセサリ、結構いい値段でしょ?」

 

 魔法の力がこもっているからか、材料そのものはどこにでも手に入るものであっても値が張ることが多い。

 ましてや良い効果を発揮するものであれば、値段は倍以上に跳ね上がることもザラにある。

 それが多少の苦労をすればタダで手に入るのだ。メリットデメリットで見れば、明らかにメリットの方が大きかった。

 

「……わかったよ。持ってくれば良いんだろ」

「助かるよ! ついでに他のハンターとかにも宣伝してもらえるとなおありがたい!」

「気が向いたらな。ていうか新聞記者が本業じゃねえのかよ」

「んー……その辺りの疑問も鉱石を取ってきてくれたら答えちゃおう! ほら、王子とオレってもう一蓮托生的な関係じゃん?」

「ねーよ」

「じゃ、そういうことで!」

 

 ノクティスのツッコミを物ともせず、ディーノは話を切り上げてしまった。

 一行は顔を見合わせると、仕方がないとばかりに肩をすくめ合う。

 

「ま、戦力の拡充は大事だ。アクセサリの効果はノクトもわかってんだろ」

「それに彼の情報網は有益だ。受けても損はないだろう」

「あの人がなんでここまでアクセサリ作ってるのか、ってのも気になるしね」

 

 グラディオラス、イグニス、プロンプトの三者三様の見解を聞きながら、ノクティスたちはレガリアに乗り込んで目当てのものを探しに行くのであった。

 

 

 

「こいつか」

「今度はすんなり手に入ったな」

「多少襲われはしたが、まあ許容の範囲内だろう」

 

 初めて鉱石を採取しに来た時に見た、あのズーの巨体は彼らの目に焼き付いて離れない。

 いつかあれにもリベンジをする時が来るのだろうか。そんな力が得られるのを楽しみに思うべきか、そんな危ないモンスターと戦う未来を憂うべきか。

 

 ノクティスは手元の原石を弄びながら、不意につぶやく。

 

「これ、ヘリオドールか」

「ん、ノクト知ってるの?」

 

 普通の人間として扱われることを好むノクティスが珍しい雑学を披露したため、耳ざとく聞きつけたプロンプトが反応する。

 

「前に城で見たことがある」

「意外に博識だな。興味ねえかと思ったぜ」

「うっせ。家庭教師に覚えさせられたんだよ。王子たるもの、審美眼も重要だってな」

 

 嫌で嫌で仕方なかったが、いざ外に出てみると意外な場所で役に立つものである。

 

「宝石には魔力が宿る。ルシスの王族として魔法に連なるものは知っておくべき、という考えだろう」

「ま、こうして役に立ってんだし文句はねえよ。さっさと戻って渡そうぜ」

「そうだな。ガーディナに戻ろう」

 

 イグニスの運転でガーディナに向かい、ディーノが待っている桟橋に行くと彼は待っていたとばかりに笑顔を見せる。

 

「待ってました! オレの宝石ちゃん!」

「宝石が先かよ」

「王子たちならなんとかなるって信じてたからね! それよりほら、早く頂戴!」

 

 調子の良さもここまで来ると一種の特技である。

 ノクティスはツッコむ気力も沸かないと疲れた様子で原石を放る。

 

「ヘリオドールかあ! よっし、これでまた良いアクセサリ作っちゃうよ!」

「オレらの分も忘れんなよ」

「ああ、もちろん! それじゃ、はいこれ」

 

 約束通りアクセサリを受け取る。

 アクセサリとしては最低限魔力のこもった宝石があしらってあれば良いので、装飾にこだわる必要はないのだがディーノは別らしい。

 

「随分凝ってんな」

「オレ、こう見えて凝り性なの」

「みたいだな。で、なんで新聞記者がアクセサリ職人なんてしてんのか、聞かせてくれよ」

「お、気になっちゃう? 王子ってば、オレに興味津々?」

「ちげーよ。話したくて仕方ないって顔してんだよ」

「あはは、バレた? まあ良いや。んでオレの理由だけど――最初はそんな大層なもんじゃなかったよ。たまたまオレにそんな才能があって、小金稼ぎに丁度いいじゃん! ぐらいの気持ち」

 

 だろうな、というのが一行の感想だった。この男が崇高な使命とかを持ってアクセサリ制作に臨んでいるとか話したら偽物を疑っていた。

 

「だけどこれで命拾いした人も多いって話聞いてるとさ。やっぱちょっと嬉しいわけよ。新聞はあって当たり前で、あんま感謝とかされないからさ」

「で、アクセサリ職人に力を入れているわけか」

「そういうこと! まだまだ新米だからこれ一本ってわけには行かないけどね」

「良いんじゃね? ってか思いの外真面目な理由で驚いたわ」

 

 見た目も性格も軽いが、そんな彼に届けられる感謝の言葉が嬉しかったのだろう。

 それに作られたアクセサリの効果もノクティスたちは知っている。彼なりに真剣になる部分は表に出ないだけで、確かに存在するのだ。

 

「おっと、王子にそこまで言われちゃうとはオレって見どころある?」

「さあな」

「この調子で王子とルナフレーナ様の結婚指輪も作っちゃうからさ、バシッと帝国ぶっ倒してよ!」

「――任せとけ」

 

 

 

 

 

「じゃあはいこのカエル! 集めてきて!」

「は? え、あ、あぁ、おう」

 

 とあるレストストップで休憩していた時のこと。

 消耗品の補充をイグニスに任せ、ノクティスが外をうろついているとある女性と目が合った。

 動きやすい服装に大きな眼鏡の奥には好奇心の塊とも言える光が宿る。

 旅行客かなにかだろ、と思ってノクティスは軽く頭を下げる。目が合っているのに何もしないのはなんとなく悪い気がしてしまう。

 

 しかしそれが悪い方向に働いた。女性はずんずんとノクティスの方に近寄ってくると、一枚の紙を手渡してきたのだ。

 

「ん、んん? 君、助手希望?」

「は?」

「いや、そうだね、助手希望以外にあり得ないよね! じゃあはいこのカエル、数匹集めてきて!!」

「は? え、あ、あぁ、おう」

「頼んだ! 持ってきたらバッチリお礼するから!」

 

 あまりの剣幕に思わず受け取ってしまうノクティス。

 それを満足そうに見て、女性は頑張れとばかりに敬礼をして離れていく。

 

「……なんだありゃ」

「押しの強い人だねえ。どうする?」

 

 いつの間にかやってきていたプロンプトがノクティスの手元の紙を見ながら聞いてくる。

 見ず知らずの人間にいきなり押し付けられたのだから、やる義理はこれっぽっちもない。

 だがあの女性に悪意があるようにも見えなかった。はた迷惑ではあるが、純粋な善意のようにも見える。

 どうしたものかと困っていると、消耗品の調達を終えたイグニスがやってきた。

 

「ノクト、店の中からやり取りは見えていた。――行った方が良い」

「んだよ、イグニス」

「オレもまだ確証があるわけじゃないが、あの人は著名な人かもしれない」

「なにそれ、有名人ってこと?」

「ああ。知り合いになって損はないはずだ」

「お前の考えが当たってたら、か。――んじゃあ行ってみるか」

 

 イグニスの言葉であれば信じる価値はある。

 ノクティスたちはレガリア――を使わず徒歩でダスカ地方の湿地帯に足を踏み入れ、カエルの生息地を目指していくのであった。

 

「カエル」

「カエルだねえ」

「カエルだな」

 

 ただし大きい。牛ぐらいなら丸呑みできそうなぐらいに大きなカエルがノクティスたちの先に存在していた。

 

「ギガントードだ。湿地帯の中でも雨の時にしか姿を表さない性質があって、性格は温厚。あまり刺激しなければ襲ってくることはない」

「へぇ、襲ってきたら?」

「長い舌を使って獲物を飲み込むそうだ。ちなみにギガントードの肉は高タンパク低脂質であっさりしている」

「いや、食わねえだろ」

「? 前に出したぞ」

「マジか!?」

「冗談だ」

 

 一行の胃袋事情を握っているイグニスが言うとシャレにならない、とノクティスとプロンプトはゾッと昨日の食事を思い出す。

 ……ディーノが原石を届けてくれたお礼と言ってガーディナでの食事をおごってくれたのだった。

 

 エビや貝の出汁がこれでもかと利かされたリゾットに白身魚のトマトソース煮込み。

 さすがに海に面しているだけあって、海鮮食材の味が段違いだった。普段から食べていた魚の本来の味はあんなに濃厚だったのかと目を見開いたほど。

 あの濃厚な味わいを活かすには相方にも相応の力強さが求められる。

 完熟トマトの優しく深い味わいこそ、あの魚の素質を最大限に引き出すのだ。

 

「……魚食いてえわ」

「いきなりどうした」

「昨日の夕飯思い出してた」

「ガーディナでの食事か。魚さえあればリゾットぐらいなら作れるぞ」

「マジか。釣るわ」

 

 湿地帯に集まるカエルだけあって、この辺りはニグリス湖の一部でもある。

 釣り場も多いのだから、帰りに釣ってパーティの食糧事情に貢献するのも悪くないだろう。

 

「じゃあさっさとカエル集めて釣ろうぜ。夜になる前に戻れば文句もねえだろ」

「だな。特徴は赤い色らしい。分かれて探すか」

「了解。ちゃちゃっと終わらそ!」

 

 それぞれがカエルを探しに散らばり、程なくして赤いカエルを抱えて戻ってきた。

 

「結構大きいのな」

「これだけあれば十分だろ。うへ、ぶよぶよしてる」

「自然界でこういった目立つ色をしている生物は珍しい。やはり彼女は――」

「イグニス、カエル持ったまま考えても格好つかねえぞ」

 

 何やら意味深なことを言い始めたイグニスにグラディオラスが仕方ないと苦笑する。

 そしてカエルを嫌そうな顔で持っていたノクティスとプロンプトからカエルを受け取って、全てをグラディオラスが持つ。

 

「カエルはオレが持っておいてやるよ。ついでに釣りもしてくんだろ?」

「お、良いのか?」

「ちょっとぐらい大丈夫だろ。あんま長くはできねえからな」

「サンキュ! よーっし……」

 

 ノクティスはいそいそと釣りに適した場所を探し始める。

 ニグリス湖は釣り場として有名な場所だ。故に釣り場として最低限の整備がされている。

 そういった場所を探していたところ、先客がすでにいたのか一人の釣り人が佇んでいた。

 

 声をかける前に彼の握る釣り竿の先にある、ルアーが水面にないことを確認する。

 ルアーが浮いていたら釣りをしている証拠。そんな集中している人物にいきなり声をかけるなどマナー違反である。

 ノクティスはイグニスが聞いたらその気遣いを常にやれと小言が飛ぶようなことを考え、ルアーの有無を確認した。

 

「――おっさん、ここって釣りしても大丈夫か?」

「うん? おお、ガーディナの少年じゃないか!」

 

 壮年の男性はノクティスの声に振り返ると、まるで見知った顔に声をかけられたように喜びを露わにした。

 しかし彼と顔を合わせた覚えのないノクティスは首を傾げる。

 

「へ? オレとおっさん、ガーディナで会ってたか?」

「おっと、すまない。こっちの話だ! それより釣りをしに来たのか?」

「ああ。だけど先客がいるみたいだし、声かけておこうと思って」

「うむ、良い心がけだ! ワシが釣りをしていない時も見計らっておったな?」

「まあ、最低限のマナーだろ」

 

 自分だって集中している時に声をかけられたら気分が悪い。少なくとも穏やかな声は出ないだろう。

 そのことを素直に言うと男性は楽しそうに笑う。

 

「ハッハッハ! よし、気に入った! 少年さえ良ければ、ワシの出す課題に挑戦してみないか?」

「課題?」

「身構えるようなものではないさ。ただワシの指定する魚を釣って、お前さんの実力を見せて欲しいのだ。まずは、そうだな――クラッグ・バラマンディと行こう」

 

 食用の白身魚であり、グリルにして中まで火を通すと味わいが濃縮され、淡白なのに旨味は強いというノクティスの大好物に変貌を遂げる食材だ。

 他にもバターをたっぷり溶かした衣につけて揚げると、油の風味を吸収してこってりとした味わいになる。これにフライドポテトもつけて食べると、身体には悪いが若者にはたまらない。

 

「釣ったら教えてくれ。景品をやろう」

「景品付きか。けどなんでこんなこと?」

「なに、年若い同好の士に会えて喜んでいるジジイの道楽だ! お前さんの力、存分に見せてくれ!」

 

 ニヤリ、とノクティスも面白そうに笑う。

 ここまで言われて挑戦もせずに引き下がるなど釣り人の恥。

 

「いいぜ、おっさん。オレの腕前に腰抜かすなよ?」

 

 意気揚々と釣り竿を召喚して向かうノクティスを見て、後ろで彼らのやり取りを見ていた三人は呆れた目を王子に向ける。

 

「――ノクトってさ、釣りのことになるとキャラ変わるよね」

「それだけ好きってことだろ。ま、人助けも良いがたまには自分の好きなこともやんねえとな」

「食料事情にも貢献している。本筋を見失うことさえなければ良い息抜きだ」

 

 世の中にはいるのだ。シガイが出るという夜であろうと、その時にしか釣れない魚を狙って釣りをするという猛者が。

 そういった人たちが今の時代を切り拓いていると言えば聞こえは良いが、そういった無謀さと紙一重の開拓魂をノクティスが持つ必要はこれっぽっちもない。

 

「釣れるまでキングスナイトやってていい?」

「王子が拗ねんぞ」

「……そういえばアクトゥス様もキングスナイトをやっているという話を以前に聞いたな」

「へ? あの人もそういうゲームやるんだ、なんか意外」

 

 イグニスからもたらされた意外な情報に驚くプロンプト。

 外交官として忙しく働いていると聞いていたので、ゲームなどはやらないと勝手に思っていたのだ。

 

「ルシス国内でかなり流行っていたゲームだからな。ノクトとの話題作りも兼ねていたのかもしれない」

「あ、そういう感じか。弟想いの良いお兄さんだよね」

「だな。あれでだいぶノクトも救われてるはずだ」

 

 普通に扱って欲しい王子と、その意図を汲んで普通の兄貴として接してくれる実兄。

 顔を合わせる回数こそ少なかったかもしれないが、あの照れ屋なノクティスが兄に関しては素直に慕っているのだ。

 

「顔を合わせたら対戦誘ってみよっと。どのくらいやってるんだろ」

「あまりルシスにいなかった以上、それほどやっているとも思えないな。対戦するとしたら手加減してやれよ」

「わかってるって」

 

 この時の彼らは軽い気持ちで話していた。

 だが後日、この誘いをかけたことを心底後悔するハメになるのはまた別の話である。

 

 

 

「よっしゃ、釣れた!」

 

 一方、ノクティスはようやく釣れたクラッグ・バラマンディに快哉をあげる。

 湖での釣りも海や王都の釣り場とは違った趣がある。

 生息する魚の種類も多く、狙った魚を釣るのに少々苦戦したが、ちゃんと魚の好むルアーを覚えていけばこんなものである。

 

 横で見ていた男性も拍手しながら一緒に喜んでくれていた。

 

「お見事! クラッグ・バラマンディ以外にも釣りまくっていたし、これは本格的に将来有望だな!」

「そんな褒めたって何も出ねえぜ、おっさん」

「なんのなんの。ワシは褒めて伸ばすスタイルなんだ。ほら、話した通り景品をやろう」

 

 そう言うと男性は懐から一つのルアーを取り出し、ノクティスに手渡す。

 

「これでまたバンバン釣りまくってくれ! 期待してるぞ、少年!」

「おう!」

「ワシはデイヴィスというしがない釣り人だ。今はルシス国内の釣り場を中心に活動している。また見かけたら声をかけてくれ! 課題と景品を用意して待ってるぞ!」

「ああ、またなおっさん!」

 

 釣具を片付けて歩いて行く男性――デイヴィスと別れたノクティスは後ろで待っていた仲間たちに声をかける。

 

「待たせた――って、なんだよその顔は」

「いやあ、ノクトがあんな風に明るく人と話してる姿が嬉しくて」

「オカンかお前は」

 

 くぅ、とハンカチで目元を拭う仕草をするプロンプトにツッコミを入れる。

 確かに友人らしい友人はこの三人以外にいないが、それでもコミュ力は人並み以上……いや人並み……いや、そこそこぐらいはあると自負しているのだ。

 

「では戻るとしよう。彼女も待ちくたびれているはずだ」

 

 イグニスの号令とともにレストストップに戻り、ノクティスは集めてきたカエルを女性に渡す。

 

「ほら、これでいいのか?」

「おお、レッドフロッグ! これで研究が捗るよ!」

「研究?」

「そ、これ最近発見されたカエルなの」

 

 すでに興味は手元のカエル――レッドフロッグに移行している様子だが、ノクティスの疑問にはきちんと答えてくれていた。

 

「へぇ」

「最近、色々とおかしいじゃない? 夜が長くなったり、地面が揺れたり、ハンターの話じゃモンスターも凶暴化したり」

「夜が長くなる?」

「そ、まだ目に見えてってレベルじゃないけど着実に伸びてる。このままいったら数年後とかには一日夜になってるかもね」

 

 それがヤバいことはノクティスにもわかった。

 なにせ夜はシガイの活動時間。強烈な明かり、ないし標の確保ができなければこの世界の夜は人間の生存できる領域ではなくなるのだ。

 しかし、それとカエルがどう結びつくのかはわからない。

 

「で、カエル?」

「わかんないことだらけだから、身近なものから一個ずつ解明していきましょってこと。案外、このカエルが世界の変化の秘密を握ってるかもよ?」

「あー……まあ、頑張ってください」

 

 敬語だった。彼女の研究が人々のためを思って行われていることはものすごく伝わってくるのだが、いかんせん押しが強くてノクティスは苦手だった。

 

「んむ! 君も立派な私の助手だから、次に見かけたらバッチリ課題用意して待ってるからね!!」

「へ? いや、え、お、あぁ」

 

 断りたいのだが、一応人助けであるのと彼女の押しの強さについ頷いてしまうノクティス。

 それを了承と受け取り、女性は手を振ってモーテルに戻っていく。

 

「んじゃ、そういうことで! 私はサニア・エイゲル! これでもそこそこ有名な生物学者だから、自慢していいぞー?」

「遠慮しとく。まあ、見かけたらな」

 

 サニアの姿が見えなくなるのを待って、ノクティス以外の仲間が彼のもとにやってくる。

 どうやら彼女の相手をするのが面倒で他の面子は逃げていたらしい。

 

「やはりエイゲル博士か」

「イグニス、知ってるの?」

「彼女も言っていただろう。生物学の権威で、彼女の本は王都にも何冊か出ている」

「なるほど、道理で聞き覚えのある名前だったわけだ」

 

 グラディオラスも納得したようにうなずいている。

 キャンプが趣味の彼はサバイバルのためにも生物学の知識には堪能なのだ。それ以外にも文武両道を掲げているため、日々勉強に余念がないというのもあるが。

 

「有名なのか?」

「ノクトよりはずっとな。……あの性格というのもあるだろうが」

「ああ……」

 

 破天荒というか、型破りというか、マイペースというか。

 あれに付き合わされる学会の人間も大変である。

 

「ともあれ、彼女の知識は有用だ。オレたちではわからない事象も彼女なら答えを出せるかもしれない。知り合って損はないはずだ」

「あんま話したくねえんだけど」

 

 さっきみたいにカエルだけなら可愛いが、今度はモンスターを倒してこいとか命令されそうで怖い。

 

「そこは頑張ってくれ」

「オレに任せる気マンマンだなお前ら!」

「良いじゃねえか、生物学者の助手。有名になれるぞ?」

「絶対良い方向じゃねえよそれ!!」

 

 しれっと関わる気ゼロのイグニスとグラディオラスに怒りながら、彼らは自分たちの旅を再開すべくレガリアに乗り込んでいくのであった。




再びサブクエ回。そして次回で三章のサブクエ回は一通り終了の予定です。
これが終わったら4章行って、再びサブクエ――は挟まずそのまま5章に飛んで、そこからまたサブクエを予定してます。

カエル集めはFF9の頃を思い出します。後先考えず全部捕まえてオタマジャクシしかいなくなった光景を見るのは誰もが一度は通る道だと信じたい。

釣りをしていて本編そっちのけになった? よくあるよくある(真顔)

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