転生ローラのファイブスター物語   作:つきしまさん

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三部一章 ボォス編(2990)
【1話】ノアの明星(あけぼし)飛び立つ!


 星団歴が明けて二九九〇年のカステポーはノーキィ・シティ──エア・バスが停留所に停まって扉が開く。 

 つば広の帽子にワンピースのローラが乾いた風を受け止めて段差を跳び地を踏んだ。

 

「結構早く着いちゃったね!」

 

 ローラの後にミースが続く。ローラとは色違いの若草色で統一している。

 風で飛ばされそうな帽子をローラは片手で押さえる。

 背負ったナップサックはクマさんフェイスだ。これはミースの手作りで二人お揃いであった。

 

「お腹減ってる?」

「ううん」

「わたし喉乾いちゃった。どっかお店入ろうか」

「いいよ-」

「じゃーマップ確認」

 

 人が行き交う市内をローラは眺め渡し新品のスニーカーで小石を軽くけ飛ばす。端末のシティ・マップを広げて現在位置を確認する。

 

「カステポーかぁ……久しぶりってもじぇんじぇん知らないんだよねぇ~」

 

 カステポー行こうとしてその前にデコースと会えて、そのままアドラー飛んだからカステポー入りは初となります。

 本場のカステポーは無法者が行きつくアウトロー地帯。ドラゴンが支配する他国介入を許さぬ地。

 去年から今年にかけて起きた血生くさい事件といえば壊し屋事件だ。その犯人はヒーローがやっつけてその名を轟かせた。

 壊し屋とヒーローが誰なのか散々ネットで噂になっていた。

 それを知る人物は目の前にいたりしますが、原作とは誤差程度のできごとでしょうか。

 

「うーん、暇……デコにーにもメールしたけどホントに来るのかしらん?」

 

 うちの兄はこっちから連絡してもろくに返事を寄こさない無精者だ。カステポー行くのに連絡しないのもなんだから来ることは教えてあるけどね。 

 カステポーに来たのはデコ兄に会いに来たわけではない。もう一人の友人に会うためだ。その友人というのは……

 

「よしあそこにしようかぁ~」

「はーい」

 

 観光客向きの外カフェを見つけて二人席に座る。

 甘いものが欲しくて当店お勧めのふわふわスフレロールに東方美人を注文して一息つく。

 

「待って……何にしようかな。やっぱ同じのください!」

 

 注文しようと迷ったミースが同じものを頼む。

 

「んー……BB(ビー・ビー)からの連絡はないし……ちょっと心配だな」

「心配だよね」

「うん」

 

 この町で会う約束だけしてまだ連絡はない。気もソワソワして落ち着かないが、注文した飲み物とお菓子を前にして心配事は棚に上げることにした。

 なぜ、わたしがカステポーに来ることになったのかというと──それは先週まで遡ります。

 

 

「これが浮遊城(フロート・テンプル)! でかい、すごい、イカレテル!」

 

 只今わたくしの目の前に広がるは雲の上に浮かぶ島。天空の宮殿(フロート・テンプル)でございます。デルタ・ベルンといえばやはり浮遊島でしょう。 

 

「ミースさん、ピース、ピースして!」

「え、う、うん」

「はい、チーズ!」

 

 背景浮遊島にミースさんのショットを撮影。

 

「ローラちゃんも撮ってあげる~」

「じゃあ、一緒に撮ろうか。リョウ、カモーン!」

「PIPO~」

 

 デッキの向こうにいるリョウを呼んで弾むハロをキャッチ。

 

「──つーわけで、はいチーズ」

「チーズだよ~~」

「オレモ、オレモ、チーズ、ダゾ!」

 

 カメラをアームで固定したリョウがパシャリと一枚撮る。ローラとミースにハロの写真が完成。

 まあまあかな? 写真を添付してメールを「みんな」に送信する。

 

「もーすぐ着くよー」

「うん」

 

 先ほどよりぐっと近くになった浮遊島に向かう船は天照家から出された直行便だ。近づくと港が開閉され、ドッグに船が収容されまた入り口が閉じていく。

 今日の城内への同伴者はミースさんを指定。エルたちには王宮に待機してもらい、午後はバカンスに繰り出す予定デス。

 貰った船の完成を見届けるのは建前で、みんなでフロート・テンプル観光をしてしまおうという計画なのです。

 浮遊島だけでもかなり楽しめそうですし、お店もあちこち回っちゃおうかなぁ。王室御用達の三ツ星店もいっぱいあるんだよ。

 フロート・テンプル行きはデルタ・ベルン観光や卒業旅行の定番なのですよ。ぐふふ~めくるめくグルメワールドがわたしを待っている~~♪

 最初はホテルはこっちで予約したところにしようと思ってたら、A.K.D側が宿泊を浮遊城にて用意するとのことでスーパーVIP待遇となったのであります。

 というわけで午後の楽しみに心躍らせながら受付でエル、アリア、リョウ、マロリー、モンスーンたちと別れた。

 受付のお姉さんに「へーかに会わせてくださーい」とお願いしたら「こちらでお待ちください」と案内されたのです。

 

「ホントにアマテラス陛下に会っちゃうの~~? どーしようー」

 

 ガッチガチに緊張するミースさん。そんな畏まるほどあの人うるさくないから大丈夫だって…… 

 なまじ原作を知ってて本人とは知り合いだし、もっと気楽でだいじょーぶ……かしらん? 

 

「いかん、わたしもちょっと緊張してきた……かも」

 

 一分ほど待つと男女二人組が現れた。一人は長身の仮面の男。一人はショートカットのお姉さん。

 

「あなたがトローラ・ロージン博士ですね。そしてそちらがミース・シルバー様。バランシェ公のご養女ですね。私はハーマン。このルンが陛下のところまでご案内いたします」

「ミシャル・ハ・ルンです。お見知りおきを」

 

 仮面のハーマンの紹介でルンとお辞儀しあう。

 うん、ルンさんは知ってる。会うのは初めてだけど原作イメージ通り。ミラージュでは新人だけどすっごく有能なんだよ、この人!

 で……ハーマンさん? 仮面といえばハインド・キルさんだよね?

 ローラはじろじろとハーマンを見る。服装からもかなり高位にある人物というのはわかる。

 違うのかな……よくわからん。が、身ごなしのそつのなさでわかる。この人凄い剣客だ。

 

「何か?」

「いえー、わざわざありがとうございます。ミラージュの方がお二人もお出迎えなんて光栄ですから」

 

 一礼し顔を上げて繰り出したローラの探りの手はかわされた。

 すごい、この人、わたしの”手”をこの間合いで簡単にいなす!

 ローラとハーマンの間で行われたのはイメージ戦だ。攻防は手すら使わぬ生命波動の放出で行われる。

 騎士のイメージ・トレーニングで使われる、ダイバー戦での対策にも用いられる高度な訓練法の一つだ。

 剣の師匠であるマロリーから教わったが、元より生体コントロールに通じた技を持つローラには馴染みのあるものであったので習得は難しいものではなかった。

 仮面ゆえに表情の一つも窺い知れないが、こちらが無礼に当たることをしたのに悠然とした態度を崩さないのもさすがと内心舌を巻く。

 相手が一流ならばこそ……わかることもある。

 

「陛下から回状がありましてな。博士たちを丁重に迎えるように、との命でしたから……だよな、ルン」

「ええ、そうですが……家老、どうかなさいまして?」

 

 A.K.Dではなく天照家の家老となればハインド・キルで間違いないだろう。ハーマンが本名なのか。

 

「陛下が自ら勧誘してフラれたというから興味本位であったが……実に興味深い方たちです。ルン、私も同行しよう」

「はぁ? ではこちらに」

 

 ハーマンの様子に訝しみながらルンが先導してミースらが続く。

 

「フフン」

 

 ローラは先を行くハーマンの影を追った。すると、ハーマンがローラの影を踏もうとイメージを投影してくる。

 お互いに影を追いかけながら元の位置に戻っては陣取りの応酬が続く。その見えない静かな合戦はルンが扉の前で立ち止まるまで続いた。

 終わりの合図にハーマンに顔を向けてローラは笑った。ハーマンさん、堅物そうに見えて意外とノリが良い。

 大きな扉が開き浮遊城の外に出るとミースが歓声を上げた。どこまでも広がる青い空と七つの塔がここから望むことができた。

 観光では立ち入ることはできない場所の一つです。

 

「ここでお待ちを」

 

 ルンが止まるよう指示して三人が待つ。

 ゴウンと音が響きそれが地下からだと気が付く。何だろうと思っていると地上部分が開閉し段構造に重なって横に広がっていく。

 せり上がってくるのは一隻の宇宙船だ。太陽の光を反射させて現れた機体が盛り上がってくるシーンは圧巻そのもの。

 いつかホロ画像で見た船と同じ姿だが実物はまた違う。昨年のアドラーとジュノーを行き来したねーさんの船よりはるかに大きいだろう。

 

「やあ、来たね。ようこそ、フロート・テンプルへ」

 

 宇宙船の前にアルビノの煌びやかな衣装に身を包んだ天照帝その人が立つ。その横で彼の腕に絡んだラキシスがいてこちらに手を振っている。

 ハーマンとルンが御前に控え礼で迎える。

 

「え、えええ!? ア、アマテラス陛下~~!?」

 

 はわわと慌てたミースがローラの肩を揺さぶった。

 むむむ、ソープさんには何度も会ってたけど本体のプレッシャーものすごいよぉ~~! 絶世の美青年自粛してぇ~~

 

「陛下」

 

 ローラが進み出て二人の前で一礼する。すぐ後ろでミースもローラの見よう見まねでお辞儀する。

 しろーとの礼儀作法なので粗相はごめんなさい。

 

「少し遅いけど新年のお祝いにこの船を君に贈ろう。バランシェに急かされてたけど、間に合ったでしょう? 気に入ってくれたかな?」

「こんな立派できれーな船。わたしにはすごくもったいないです。もうすごく大好きかも……」

 

 流線の流れるような船体のデザインは一流の芸術家が創り上げた完璧な作品であるかのようだ。

 これが自分のものと言われてもイロイロ困る。自分じゃ操縦もできないし。

 目測で全長は一八〇メートルはある。あの、これって小型の戦艦クラスのサイズなんですが……

 それをしれっとプレゼントするだなんて言える人は星団広しといえどこの人だけ!

 自分専用の騎士団作ったり!

 黄金のMHを約束のためだけに作ったり!

 それも全部が天照帝のポケットマネーだって言うんですから度肝を抜かれます。 

 

「エルカセットは連れてきてないのかい?」 

「王宮で待ってます。この度はわたしたちを招待いただきありがとうございます。みんなに代わってお礼申し上げます」 

「君のもう一人のパートナーも紹介してくれると思ったんだけど、また今度にするよ」

 

 フフフ、と天照が笑う。

 あいやー、この人どこまで掴んでるのー!? まさかウリクルのこと見抜いてたりします? 

 

「あのね、ローラちゃんと、ミースちゃんにお船の中を案内してあげる~ 見たいよね?」

「はい、もちろん見たいです! ね、ミースさんも見たいよね?」

「見たいですー」

「行っておいで、ラキシス」

「はい、お任せ下さい。ソープ様、任務を成功させて参ります!」

 

 任務?

 ……というわけでラキシスさんの申し出を受けて船の内見開始! 最新鋭の船らしくピカピカで眩しいなぁ。

 新品の船に乗れる機会なんて滅多にないことだからベタベタ指紋付けちゃおーっと。

 船内の収納スペースもかなり広かった。キャットウォークからレッドカラーの小型シャトルを見つけた。近くに寄って確かめる。

 

「おお……」

 

 ウナギみたいな形状の船だ。全長は三五メートルほどかしらん?

 小回りが利きそうだし、地上への連絡とか他の船へ移動するときの「はしけ」としても使えるだろう。

 星探査機能もついてるって言ってたけど、この宇宙船で外宇宙の航行も考えてたみたいだ。

 この区画にあるのはこの船だけでかなりだだっ広い。貨物もそこそこ詰めそうだし、MHもいけるだろう。

 

「じゃあ、次は上に行きまーす」

「はーい」

 

 ラキシス姫の案内で上に上がり、エントランスから操舵のあるデッキルームを覗く。

 最新鋭のピカピカだぁ~ 船長、ワープを開始せよ! って言ってみたくなる。

 次に居住エリアだ。

 

「全部個室! VIPか!」

 

 もっとせせこましいスペースを想像してたけど思ったよりずっと快適そう。居住エリアはここだけじゃなくてクルー専用の区画もあるみたい。

 そしてラボ・ルームとして隔離された区画はナノ掃除ロボが設置され常に清潔に保つためのシステムを展開できるようになっている。 

 

「ベッドが三つもある!? ゴージャス極まれり……」

 

 一流の医師でも扱えるベッド数は限られたものになる。バランシェ公は三人同時にファティマの育成を行っていたが、彼自身が乗ることを考えていたなら当然かもしれない。

 これだけの設備があれば明日からでも専門クリニックを開業できちゃいそう。

 

 あとプラント工房も見学した。今はまっさらに何もない状態だ。

 重力、室温、湿度の空調施設完備で防水も完璧になされている。これがあれば宇宙でビタミン、栄養不足になることはないだろう。

 宇宙での暮らしに必要なものはすべて備わっていた。ここを緑いっぱいの空間にすることも可能デス。

 これは専門家から教わっておきたいかも。

 

「お船の定期メンテナンスとか、修理とかもうちが全部引き受けますから。困ったときは言ってね。後ねぇ、うちが発行する渡航免状もあるからどこもフリーパスでーす。さらになんとクルー一八名もレンタルでつけちゃいます!」

「それはおいくらで……お高いんでしょう?」

「何とおまけにおおまけでタダでーす!」(指折り数えてドーン)

「タダほど高いものはない……」

「実はとーさまがすでに支払い済みなのでA.K.Dはケアを中心に支援させていただく感じですよー」

「なんと……」

 

 ローラちゃんゲット作戦続行中のラキシスがニッコリとほほ笑むのでした(外堀埋め中)。

 まあ、そんなこんなで充実した見学ツアーを終えたのでした(まる)

 

「ふわぁっ! うーん、ふかふかだぁ~~!」

 

 船を降りて王宮に戻り部屋のベッドにローラは飛び込んだ。ゴージャスなベッドはこれまた王室ベッドメイカーの特注品でありましょうか。

 

「マスター、いかがでしたか?」

「うん、すごかったよー。こーんなにでっかくて……」

 

 一通りエルに宇宙船の凄さを伝える。

 

「で、これ貰っちゃった……」

 

 エルにキーを渡す。

 

「これは?」

「宇宙船の起動キー。いつでも乗って帰っていいってさ」

「まあ、ではお預かりしますね」

「操縦は任せたぁ~~ 良きに計らえエルカセット船長。ふわはっははー」

 

 操船はエルに丸投げ! まあ、アリアもリョウも好きに動員して~

 

「お腹減っちゃったなあ~」

「マロリー様がいいお店があるからと予約なさっておいででした」 

「ふうん。きっとすっごく高いお店だよ」

 

 そっちの予算もA.K.Dが持つらしいので、うちの食い意地の張った師匠(マロリー)は容赦ないでしょう。

 

「あ、着信……」

 

 誰だろう。さっき送った写真の返事かなー? おとーさんたちにも送ったんだ。着信はボォスか……

 

「はい」

「……」

 

 雑音にモニタはノイズ。通信状態あまりよくないのかしらん?

 

「……ローラ」

「もしもし?」

「た……けて」

 

 画面がようやく鮮明になる。モニタに赤いものが散ってそれが血だと分かった。まだ真新しい。

 

「俺……だ。ローラ」

「バレンっ!? どうしたの?」

 

 画面に映ったのは傷だらけの禿げ頭の青年忍者。名前はバレン。通称はビー・ビー。

 バストーニュで友だちになって一緒にユーバーの悪事を暴いた。ここ一年ほど音信不通だった。

 

「大変なことになった。俺どうしようもなくて……助けてくれ……」

 

 涙を流すバレン。傷の深さまではわからないから落ち着かせようと声をかける。

 

「わかった。落ち着いて。まず治療してからゆっくり話して……」

  

 ──それが、わたしがカステポーに発つことになったことの発端だった。

 天照帝に頼んで船を出す許可をもらった。友だちを助けるための緊急事態だ。 

 事情をみんなに説明して、残って観光を続けてほしいと言ったら、みんなついてくるって。

 

「お友だちが困ってるんでしょう? だったら助けてあげましょう」

「弟子が何だか巻き込まれてるっぽいし、面白いかも知んねーからつきあってやるよ」

 

 マロリーさんはともかくミースさんは巻き込む理由はないのだけど……時間が惜しい。

 

「わかった。でも危険かもしれないからお留守番してよね」

「はーい」

『マスター準備が整いました。着けます!』

 

 エルの声と共に発着場に現れた宇宙船が頭上でヒュンヒュンと音を響かせ蛇行して停まった。

 すでにクルーたちも動員されいつでも飛び立てる状態だ。急な申し出にもかかわらずA.K.Dは対応してくれている。

 

「この船、名前なんてーの?」

「名前……かぁ」

 

 マロリーの問いに乱れる耳元の髪を抑え闇夜に輝く銀の船を見上げる。ふと思い浮かんだ言葉が口を突いて出る。

 

「ノア……ノアの明星(あけぼし)」

 

 タラップを駆けあがってその名を呼んだ。

 夜空に輝くは一番の明星。ノアと名付けられた船はボォスに向けて飛び立ったのだった──

 

 

 ──時間はカステポーへと戻る。 

 

「うん、ごちそーさまぁ~」

「すっごく、しあわせ~」 

 

 お代りのお茶を口元に運ぶ。クリームたっぷりのスフレロールは抜群のコストでありました。

 グルメナビに共有タグでお菓子拡散ポチ~~

 

「……おい、あんた」

「ん?」

 

 背後にさした影。ミースが「お友だち?」と声をかけて振り向けば……

 

「あんたがそうなのか?」

「はぁ? いきなりなんなの?」

 

 立つのは目つきの鋭い少年だ。雰囲気的に育ちはあまり良くなさそう。ローラを見下ろしている。

 少年はミースと同じ歳くらいだろうか……

 変わった髪型でカーブを描いて後ろにはねっ返っている。服装の着こなしも独特のセンスがある。 

 印象的ではあるがお友だちになりたいタイプには見えない。

 

「あのー、だ、だれでしか……?」

「ヴィンズ……」

「はい?」

「俺はヴィンズ・ヴィンズだ」

 

 名乗る。ちょっと偉そうだー。

 

「それって名前?」

 

 変な……とまではさすがに言わない。

 

「あ?」

 

 しばしガン付け。いやこんなことしてる暇ないし……

 相手にしてらんない。

 

「行こう」

「いいの?」

 

 ミースの手を引いて立ち去ろうとしたらまた声がかかる。

 

「待てよ」

 

 足を止め深呼吸して転進する。

 

「しつこいなぁ。わたしは忙しいの。いい、君の相手してる時間ないんだから。何の用?」

 

 ずんずん前に出て指先を少年の鼻頭に突き付ける。

 

「あ、あんたが……トローラ・ロージンか?」

「そうだけど……」

 

 名を呼ばれ、腕を組んで目の前の少年を値踏みする。何者かと思ったけれど接し方には裏がない。愚直ささえある。

 変な奴だけどね、と注釈を入れる。

 

「あんたを──」

「ん?」

「頼れって。ローラが助けてくれる……ここに来ればッて」

「それってビー・ビー?」

「そう……ここにくれば会えるって。あんたの助けがいるんだ」

 

 彼──ヴィンズ・ヴィンズが頷いてローラに告げるのだった。

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