堕天少女と中二病少年   作:AQUA BLUE

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どうも、AQUA BLUEです。「堕天少女と中二病少年」誠に勝手ながらリメイクとして還って参りました。今度はエターナル化しないように尽力する所存……。


それでは、改め降臨ッッ!(訳:はじまりはじまり~)



本編
堕天使と黒騎士は邂逅する


「天界より舞い降りし堕天使! ヨハネ……降臨っ!!」

 

 突如教壇の中央に立った、容姿の良い少女がそう叫んだ。おかげで空気はたちまち凍り付く。大半の男女クラスメート達が驚き、あるいは目を点にして彼女の方へ向いた。

 

 ――なんだこの子は、と。

 

 呆然とする彼らをお構い無しに、少女は独特のポーズを決め、そしてクリクリとしたつり目を細めて続けた。

 

「……私と一緒に、堕天しない?」

 

 ふわりと舞った、シニヨンを束ねたセミロングの毛が落ち着いていく余韻を感じながら、少女は自信満々に全体を見据える。しかし彼女のパープル()がキラキラするのと裏腹に、室内は暗くざわめいていた。隣の席同士でひそひそと話す女子や、笑い声をあげそうになるのを堪える男子が主な原因である。ちょうどHRをしに扉を開けて教室に入ってきた若手の女性教師も、この状況には顔を引きつらせた。

 

「つ、津島さん?」

「違う――私はヨハネ」

「……」

 

 教師は気を取り直して声をかけるも、なお堂々とした様子の少女に面食らい押し黙るしかなかった。

 

 

 内浦付近に位置する、とある中学校。そこの、本日新2年生となったばかりの生徒らが集う教室に――

 

 

 1人の、異端児がいた……。

 

 

「……ククッ」

 

 

 否、まだ終わりではなかった。静寂を打ち破る声があがったのである。少女のではない。教室内にいる他の誰かのものだった。

 

 初めは聞き間違いだと一同は錯覚した。だが彼らが聴こえた方向に視線を向けると、悲しくもそれは現実であった。

 

 最後列の窓際の席に座る少年が――高らかに笑っていた。中肉中背、平凡な外見。特徴的なのはせいぜい右目を覆うほど長く伸びた前髪と、着崩した制服程度。しかし彼は強気に机の脇に立て掛けてあったレプリカの刀を持って少女に向け、

 

「ククッ、ハハハハッ! 面白き刺客が現れたものだなァ……!」

 

 

 異端児は、彼女だけではなかったのである――――。

 

 

 

~~‡~~‡~~‡~~

 

 

 

 窓から差し込んでくる暖かなる日光(エナジー)。外には可憐に舞ってやまない桜吹雪(ミラージュ)。少々離れた場所に位置する海を抜け出して、ほんのり漂ってくる僅かな潮風(ブルーウィンド)とその香り。そしてクラスメート共(民々)が和やかに談笑しているこの教室……嗚呼。心地良くて素晴らしい、我を映えさせるに最適な空間ぞ。

 

 しかし、しかしだな。

 

「我が満足に至ることのできぬ理由がある……それがわかるか?」

「……」

「ハァ、やはりわからないか」

「……えっ? ちょっと待って、あなたさっきから誰に話しかけてるの?」

「お前にだよ津島善子ッッッッ!」

 

 引いたような目で見てくるこの女に、我は思わず突っ込んだ。

 

「む……善子言うなーっ!!」

 

 彼女はうるさく騒ぎ立てる。そしてポカポカとこちらを叩いてきているが全く痛くない。堕天使とかほざいていたがえらくか弱い。ところでその理由とは……彼女にある!

 

 何故だかは解せない。先刻彼女が名乗り、ホームルームが終焉してからだったろうか――我の机前まで歩いてきたと思ったら、何か言いたげにずっとこちらを睨むのだ。これではさすがに落ち着けまい……。

 ゆえに、ヤツにはヤツの領域()へ還ってもらいたい。そのため面倒ではあるが話をする。退却への誘導はそれからでいい。この手の刺客は、まず穏便に接するのがポイントだ。

 

「すまない。名を間違えたか?」

「あ、合ってるけど……それは仮の姿の名前よ!」

「そうか。では時に津島善子、どうしてお前は自身の名を嫌う」

「それは――って、なんであなたに教えなきゃいけないのよ! 馴れ馴れしいわ!」

 

 ふむ、解せぬ。馴れ馴れしいのはお前とて同じであろうに。我は半ば呆れながらも会話を続ける。

 

「フン、こっちの台詞だ。HRが終わってからというもの、ずっと我をジロジロと睨み付けて……なんなんだお前は」

「バレていたの!?」

「……お見通しだ」

 

 もう徐々に指摘へと繋げるのが煩わしくなったので問題点を切り出したところ、津島善子は嘘でしょうと言わんばかりの面で驚いた。ああ、言葉も出ぬ。なんとあれで隠密行動をしていたつもりだったらしい。そもそもはじめにこちらへ近付いてきた時点で、少なからず何かをしようとしていたのは明白だったではないか。

 

「まっ、まあいいわ。それよりあなたに訊きたいことがあるの!」

「ほーう」

 

 恥でも感じたのか、たじろぐ津島善子。我はそれらしい反応を返しはしたが、ほぼどうでもよかった。ヤツの底は知れた、そう結論付けていたからだ。

 

 

「あなたは一体――何者なの? 下界の人間とは別のオーラを感じるの……」

 

 が、油断した我が愚かであった。彼女の目付きと声のトーンが変わったのだ。鋭さ、妖しさを孕んだものに。これは堕天使と名乗っていた際と同様の――――なるほど、なかなかに良きかな。一時は見込み違いかとも考えたが……やはりこいつ、できるッッ!!

 

 我はヤツの顔を2度見した。なるほど、どうやら評価を改める必要があるらしい。

 

「く、貴様ァ」

「どうしたのよ」

「……いいや、何でもない。質問に答えてやろう。貴様の言う通り、我は普遍的な存在ではない」

「じゃあ、あなたも堕天使っ!?」

 

 取り乱した心を鎮めるべく、1度深呼吸する。我にはルールがある。たとえなんとなくでも、直感でも、「認めた相手」には、正体を明かすことだ。

 

「津島善子……もとい堕天使よ。お前の推測はおおむね正しいが、一点だけ勘違いしている」

「か、勘違いですって……?」

 

 堕天使のやつは我のことを同類だと思ったようだったが、残念だったな。外れ(アン・トゥルー)だ。

 

 堕天使が息を呑む。いつの間にやら民々も我が続けて答えようとするのを真摯に見守っていた。いいだろう、この際だからついでに周りにも我の存在を知らしめてやる。

 

 ふふ――驚け、戦慄(わなな)け、緊迫しろ。 

 我は響き渡るよう声高に告げる。

 

「我は堕天使ではなく――――黒騎士!!

また……人間での名を、手尾湧丞(ておようすけ)!」

 

 どっ、と周囲に笑いの渦が展開した。一斉にどいつもこいつも吹き出した。

 

 おそらく、彼らはあまりのインパクトを受けて精神に異常をきたしたのであろう。悪いことをしてしまったものだ。気圧されたのか、堕天使はポカンとしていた。ただ、どこか嬉しげに――――。

 

 

 

 

 人間的時系列で表すと、今日は中学2年生になった始業式の日。かくして、我と堕天使は邂逅した。

 

 

 

 

 そういえば、皆が笑い転げているどさくさに紛れて民の誰かが「あいつも中二病患者だよな!」とか呟いていたのを我は聞いた。

 

 我が病に侵されていると? それがどんなものかは知らないが一応、心しておこうか。ククッ……もっとも我は無敵の存在なので病など関係ないがな。

 




善子ちゃ……ヨハネと堕天したいだけの人生だった

ではでは、終焉の炎――!(約:また次回)
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