争奪Guiltyジャッジメント
審判、つまり
我はとりわけそんなものに興味があるわけでもない。むしろ曖昧を好んだりする性質だ。
「あぁ~ごくらく~」
「堕天使」
「……なによ」
「弁明は早い方がいいぞ?」
「…………」
やはり建前でしかないのかもしれない。
さて、ここに救済措置がある。寒いと嘆き続けた我をみかねた母が、二年ほど前に用意してくれた一人分の
そこが強襲してきた者により塞がれ、入れないとしたら。
「なんのことかしら?」
「とぼけるのもほどほどにしておくことだ」
そして、さも当然のように占拠を続けているとしたら。
「眠くなってきたわ……」
「元は我が入る場なのだ。そろそろ温まっただろう、三十と五分も入っている」
「おやすみなさい」
「聞いちゃいないな」
残念ながら空想ではない。こたつに半身を忍び込ませた堕天使が、とてもフリーに突っ伏している。
「よーしどくんだ」
「い、嫌よ!」
したがって、悪という判決を下すのが理。
「我のこたつだぞ! だいたいゲームしにきた分際で貴様よくも独占しようなど……」
「寒いから仕方ないじゃない?」
「ああ、だがだめだ。一番寒いのは誰だと思っている?」
「雪国で生きる人間に決まってるでしょ」
「あ……」
納得して顔を背ければ、堕天使はふふんと鼻を鳴らした。しまった、完全に先手を打たれた。
……いいだろう。目的はこたつを取り返すことなのだから。まともに張り合ったとて平行線にしかならないのなら、別手段だ。
我は立ち上がり、次の作戦に出る。
「堕天使ヨハネ様」
「なんか口調変よ!?」
「このリトルデーモン手尾、折り入って頼みがございます」
正面突破は愚かなり、ならば。
「いきなり怪しすぎ……いや、でも悪い気はしない……かも。いいわ、言ってみなさい」
「近頃、周囲にただならぬ悪寒がするのです。わたくしめはその原因を……異空間の刺客が成す裏工作によるものと推測しています」
「まさかリトルデーモンを狙って!?」
「いいえ。側近のわたくしはおろかあなたをも滅ぼし、世界を手中に収めようとしているのではないかと」
「どうすれば……?」
嵌め手である。この程度のものにはさしもの堕天使もかからないとは思うが。まあヤツ自身かなり食いついているので、適当に続けてみることにする。
「それが本題。心配ご無用、ごく簡単なことです。今わたくしが立つこの絨毯に、結界を張り巡らしていただきたい」
「結界?」
と、呑気していたのだが。堕天使がうずっとした瞬間を我は捉えてしまった。そそられ力を解放したくなったとき、ヤツの中で燃焼が始まったときの――
図らずとももうひと押し――いける。
詳細を教えて欲しげにこたつのなかで軽くもぞつく堕天使に、我は下衆なる目論みを感じさせぬ戯れ言を並べにかかる。
「はい。奴らの妨害を食い止めるべくわたくしの力を日々込めてはいますが、敵わないのです。しかしあなたの魔力をここに加えることができれば」
「地上は無事……」
「そうです」
堕天使がおもむろにこたつを抜けた。気怠げながらも我の方へやってくる。やがて、ヤツとこたつとの距離が若干開いた。
――今だ!
バックステップ、次いでなだれ込むようにスライディング。慣れた動作だ。こたつや本棚の角に足に体をぶつけることなく、滑らかに決まった。
あたたかみへ、いざ。
「残念だったな! これよりこたつは我の……あれ?」
奪還を喜びかけるも、何かがおかしいことに我は気付いた。騒がしく流動した血が徐々に落ち着いていくのを悟りつつも、違和感の正体を突き止めずにはいられない。
(低い……?)
温かいことには温かいのだが、これからぬるくなるっていきそうな、ほのかな温度。
「もしや!!」
「……やっぱりね」
嫌な結論が頭にちらつく頃には、もうヤツはドヤチックな面構えだった。
「あのもぞもぞはこたつの電源を切るために……!?」
「ヨハネを出し抜こうなんて1万年はやーいっ!」
普段引っかかりがちなだけに、衝撃は鎚を喰らったかのようなインパクト。ヤツが……悪魔的機転を利かせるなどとは想像し得なかった。
戦慄する我の背後を、すかさず俊敏な動きで堕天使は取る。
やられた、と口にするのすらも間に合わない。
「さーて。結界を張るその前に、悪事を働いたリトルデーモンにお灸を据えなくちゃね?」
「あっ、あっ、堕天使よ。チョコレート余ってるから取ってきてやろうか?」
ヤツは至って素直に、公平に。
「拒否! 堕天流鳳凰縛!」
「うぎゃあああああああ!!??」
審判を下したのだった。
実はこたつ家にないんで、完全に想像で書いております。温かいことだけはしっております。これから春の足音がするというのにバリッバリの冬を舞台にしたのかは自分でもよくわかりません。
そんなこんなで――終焉の炎!