ゴミに埋もれた世界で目を覚ました少女は何を見るのか
なろう様にも投稿しています。

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うちの子小説です。


ゴミに埋もれた世界にて

 ——。

 頭の中に声が響く。

 ——。

 何を言っているのかは分からない。

 ——。

 一つ分かるのは、私の意識が覚醒に向かっているということ。

 

 そこは——真っ白な部屋だった。

 どうやら私は、部屋の真ん中。ぽつんと置かれたポッドの中で寝ていたらしい。

 部屋は無機質で、たくさんの機械が置かれている。人がいるとは思えない程に生活感が無く、それでいて綺麗に掃除されている部屋。

 そっと体を起こすと今まで寝ていたのが嘘のようにスムーズに起き上がることが出来た。それはまるで、朝布団から起き上がるように。

 そうして私は初めて自分の状態を確認する。

 白銀の髪は腰まで届くかと言う程で、白磁のような肌はどこまでも穢れを知らない。体には上品な作りのレトロな給仕服のような物が着せてあった。

それはまるで人形のよう。金属に写るその顔は真紅目をして不思議そうな表情をしていた。

「私ってこんな体だったっけ?」

 まるで先天性白皮症患者のような見た目の自分に違和感を覚える。

「あれ? でもこうだった気も……」

 疑問もつかの間、頭の中に一瞬ノイズが走る。それと同時に先ほどまでの疑問はかき消える。疑問を持っていたことすらも思い出せない程に……。

 

 しばらくの間ポッドに座っていたけれど、誰かが入ってくる様子も無い。流石にただ座っているのにも飽きてきた私は部屋から出ようと行動を開始する。

ぺたぺたと、足音を立てながら扉へ向かって歩き出す。裸足のままの足裏にひんやりとした感じが伝わりどこか心地よい。

部屋を出るとそこは長い廊下だった。左右にたくさんの朽ちたガラクタが積み上げられ、床には厚くほこりが積もっていてあの部屋とはまるで様子が違う。

『EXIT』

 そう書かれた矢印の向かう先にぺたぺたと歩いて行く。厚く積もったほこりの上に足跡を残さずに。

 

 やがて床のほこりが薄く、薄くなり足跡が目立つようになった頃。

 とうとう朽ちた扉を発見した。

 そこには様々な国の文字で出口と書かれている。

 私は覚悟を決め、その扉をくぐり、ゆっくりと建物の外へと出た。

 不自然に大きな太陽も不思議と苦にはならなかった。

 

 ——。

 そこは、一面の廃棄物の山だった。

 まるで昔のアニメにでも出てきそうないわゆるゴミの山が辺り一面に広がっている。

 ここは自分の知っている地球とは違っている。私の知っている地球はゴミの山など無くて、もっと自然が——。

「ッ!」

 また頭にノイズが走る。それと共に私の知っているはずだった地球の姿が頭の中から消えていく。そうして空いた隙間にこの風景が入り込んでくるのだ。

「どうして? 怖い……」

 口からそんな言葉が漏れる。なぜ私があんな場所で目を覚ましたのか。とかここはそもそもどこなのか。など分からないことはたくさんあるけれど、それ以上に自分の知っている筈のことが頭から消えていき、現状を受け入れて行くのが怖かった。

 怖くて、恐ろしくて、悲しくて、涙があふれてくる。

 私は声を押し殺してただひたすらに泣いた。まるで長い、長い時間のずれを取り戻すかのように……。

 

 泣き止んだのはいつだったか。気がつくと私は、同じ場所で眠ってしまっていた。頬には乾ききった涙の跡。

 さんざん泣いたからなのか、或いはまた別の理由なのか今度はすんなりと状況を飲み込む事が出来た。

 いつまでもこんな場所にいても何も変わらない。私は、足を傷つけないようにゴミの山に向かって歩き出した。

 けれど、どれだけ進んでも景色は変わらない。いや、確かに前に進んではいるのだけど周りはいつまで経ってもゴミの山なのだ。一山越えてももう一山。さらに越えてももう一つ。まるで星全体がゴミになってしまったかのように、変わらない世界。

 それでもいつかは抜けられると信じてぺたぺたと裸足のまま歩き続ける。せめて靴を履けば良かったなと思っても、周りにはそんな物は一つも無い。それにあの建物にもそんな物は一つも無かった。

 ないものは仕方ないと、ただひたすらに歩き続けた。不思議なことに疲れを知らない体と共に。

 

 やがて日は沈み、また昇る。それを何度か繰り返し——私の体内時計が活動開始から五日と四時間弱を正確に指した頃。

 私は今までとは違う物を見つけた。たくさんのゴミから覗く真っ白な肌の女性。

 それは、アンドロイドだった。給仕用に作られたのか、彼女はボロボロの給仕服を着ていた。

 ふと彼女の足を見るとボロボロの服とは対照的に、綺麗な靴を履いていた。しめたと思いその靴を手に取る。すると彼女はさらさらと崩れて風に舞っていった。きっともうとうの昔に朽ちていたのだろう。それでも形を保っていたのはこの靴のおかげだったのかも知れない。

「ごめんなさい」

 そう呟く。彼女が給仕型のアンドロイドだった事を考えるとこれは彼女の主との思い出の品だったのかも知れない。

 風に消えた彼女は、いつか主と会うことが出来るのだろうか。

 図らずも彼女の形見となった靴を履いてみる。その靴はまるで、私のために存在していたかのようにぴったりで、履き心地が良かった。

 靴を得た私は今までよりもハイペースでゴミの山を駆けていく。山頂から山頂をひとっ飛びに。

 

あれから三百と六十日が経った頃。

私は未だ変わらずにゴミの山にいた。

途中の廃工場で手に入れた状態の良い食料の存在はありがたかった。でも、そこを拠点に探索しても町一つ見当たらない。

仕方なくそこを放棄して、食料と飲料を持てるだけもつ。いつまでも変わらない速度で私は今日もひとりぼっちのゴミの惑星を駆けていく。

 

その日私は今までと違う物を見た。

何棟かの建物が並び、そこを人が慌ただしく動いていた。

この世界に来て初めての、人との会合。これで助かったと深く安堵する。

でも近づくとそれは人では無い事が分かった。いつかの彼女よりも遥かに機械的なそれはどうやらゴミの山と町を何度も往復しているようだった。

でも機会が動いているのならば人がいるかも知れない。淡い期待を胸に私は山を駆け下りた。

 

「止まれ!」

 ゴミを手にした作業員風のロボットに呼び止められる。

「何をしにここに来た!」

「人を探して来ました」

 高圧的なロボットの問いに堂々と答える。当たり前だ。やましいことなど何も無いのだから。けれど帰ってきた答えはあまりにも予想外だった。

「ここに人はいない」

「人がいない? じゃあどうやって皆動いているの?」

 耳を疑うような答えに思わず聞き返す。いくらこんなにゴミにまみれた世界でも機械が動くには人の力が必要なはず。それなのに人がいないというのはいささか腑に落ちない。

「俺たちはお互いにメンテナンスをし合いながら動いてるんだ。人はこの星をゴミまみれにした後どっかに消えちまったよ。お前そんな事も忘れちまったのか?」

「人が……いない? じゃあ私は一体何なの?」

 人がいない。彼の言葉あまりにも衝撃的すぎた。人がいないのなら私は一体何者なのだろうか。

「お前アンドロイドじゃ無いのか?」

「違う……と思う」

 そう。私がアンドロイドな訳が無いのだ。だって、心臓は確かに一定間隔で鼓動を繰り返しているし、手を大きな太陽に向ければ絶え間なく血を送り続ける血管が見える。こんなアンドロイドがいるわけ無い。

「うむ……。確かにそんなアンドロイドの話は聞いたことが無いな。俺にはさっぱり分からない。」

「そうですか……」

 また振り出しに戻ってしまった。いや、私の存在というより大きな疑問が生まれた。一体私は何者なのだろうか。

「そうだ。長老なら知ってるかもしれないな」

「長老?」

「そう。長老だ。何でも旧式のアンドロイドらしいんだが、とにかく知識が凄いんだ。聞いてみたら何か分かるかも知れないぞ」

 ついてこい。と笑顔で言いながら彼は手に持っていたゴミを投げ捨てる。いいのかと聞く私の前に立ってかまわない。と歩き出した。

 

 しばらくあるくと少し大きな家に着いた。彼は何も言わずに扉に手をかけると中へと入ってく。私も慌てて後を追った。

 そこは豪邸だった。きちんと整った豪華な家。給仕型のアンドロイドが慌ただしく動き回っている。

「長老はいるか?客を連れてきた」

「客間にご案内しますのでそちらでお待ちください」

 客間へと案内されソファーに座るように促される。

 そういえば——ここの給仕型アンドロイドはどこかいつかの彼女とずいぶんと似ていた。彼女たちの履く靴さえも……。

 

 しばらくすると扉が開き、見た目若々しい男性型のアンドロイドが入ってきた。

「待たせたね」

 そう言って彼は私の前へ座る。

「じゃあ俺はこれで」

 私をここまで連れてきてくれた作業員風の彼はまだ仕事があるからと入れ替わりに部屋から出て行った。

「君が私に会いたいと言う娘だね? 名前はなんと言うんだ?」

「あおいと言います」

 唯一はっきりと覚えていて忘れなかった事。自分の名前を言う。名乗るのは一体いつ以来なのか。それは分からないけどなぜか懐かしかった。

「あおいちゃんか。君は一体何者なんだ? 私の知りうる限り君のようなアンドロイドは知らない。その靴は良く知るものなのにね」

「私が何者なのか。それは私にも分かりません。気がついたらこうしていたのです。心臓が動いて血が流れているのは確かなのですが……。それとこの靴はずっと遠くで朽ちたアンドロイドからお借りした物です」

「そうか……。靴のことはいいとして、君は人なのか?人は滅びた筈だが……」

 

 長老と呼ばれた男性は私に色々なことを教えてくれた。

「今から数百年も昔、人は繁栄を極めたんだ。でもそれは同時に滅亡へのカウントダウンだったんだ。豊かになった人は贅沢をした。まさに大量生産大量消費さ。俺たちの仲間もその頃に作られたんだよ。人の生活を便利にする手段としてね」

 それを知っていると言うことは彼はもっと昔に作られたのだろう。だからこそ人のしたことをこうして語ることが出来ている。

「人はやがて働くことを放棄したんだ。機械に仕事をさせ始めたのさ。すべて機械が作り人はそれを使って生活する。まさに贅沢の極みさ。働かなくて言いんだからな。だがそれも長くは続かなかった。仕事が無ければ金が入らない。そうすると生きていけない。結果金持ちに力が集まった。やがて暴動が起きる。人々は俺たち機械が綺麗にした町を壊してゴミの山に変えたんだ。小さな町から始まったそれは瞬く間に世界中に広まった。そうして、戦争が始まったんだ。」

 彼の話はなかなか信じられる物では無かった。でも現実味があって、不思議な感覚だった。

「戦争で多くの人が死んで多くのロボットが壊された。こんな戦争の中であるコンピュータウイルスが作られたんだ。それは機械に人格を与える物だった。何でも原型にして最高傑作のアンドロイドのプログラムをもとに作られたらしいんだ。その結果、三つ巴の戦いが始まった。その結果がこれさ。人間は核を使いまくって、勝手に滅びた。今でも生きているという噂もあるがほんとかどうかは分からない。最後に残ったのはロボット達とゴミに埋もれた惑星さ。きっと戦争が無くても人間達はゴミに埋もれて滅びたんじゃ無いかな」

「そんな事があったんですか……」

 彼の話はまるで物語のようで。でも時折見せる表情はこれが本当の事なのだと物語っていた。

 

「すまないなあおい。お前のことはやっぱり分からなかったよ。」

「そうですか」

 長老でも私の事は分からないようだ。きっと私自身が分からない以上この世界では

何かを知るのはむずかしいのかも知れない。

「お前の体は人間そのものだが、もし本当に人間ならこんなに放射線量が高く、気温も高い場所で一年も生きていける筈が無いんだ。でも君は生きている。だが機械だったら心臓が動く筈が無いし血も流れていない。アンドロイドの原型となった存在ならそれくらいのことがあり得るかも知れないがあれは戦争で失われてるし一つしか作られていないからなぁ」

「結局私は何なのでしょうか? 本当に人なのでしょうか?」

 今日分かったことは多かった。この、ゴミの惑星がどうなっているのかも知ることが出来た。でも、一番の疑問であるはずの私については謎が深まったばかりだった。

「君が何者なのか。私にはわからない。だけど、かつて日本という国の首都だった東京に行けば何か分かるかも知れないな。あそこにはたくさんの記録がある」

「日本……東京……」

 この言葉がどこか心に引っかかった。私はこの場所を確かに知っている。ああ、あれは

 また頭にノイズが走る。でも今度は忘れなかった。上手く思い出せないけど明らかにそこに私に関わる何かがある。そんな確信を持った。

「今日は本当にありがとうございました。早速東京に向かってみます」

「何かの役になったなら良かったよ。今日はもう遅いからうちで休んで行きなさい。明日出発すると良い」

 長老の好意に甘えて今日は止まらせて貰う事にした。久しぶりの布団はとても気持ちが良くとても懐かしい感じがした。

 私は明日に備え、意識を手放した。

 

 

「なぜ、アレが目を覚ましたのだ。一体この星に何が起こっているんだ?」

 謎の声は誰にも届くこと無く闇へと消えていった。

 




読んでくださりありがとうございました。
感想、批評等下さると幸いです。
受験生ですので続くかは分かりませんが書けたら書きたいなとは思っています。

きっと書くのは受験が終わってからです。

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