熾烈な銃撃戦が続くなか、俺は救援要請を続けるポンコツアクセサリの元へ向かっていた。
貴重な大火力にして、ユリアンを始めとした市民連中とつるんで、違法改造の立派なセンサを搭載した火力兵器。
そして、
「酷ぇザマだ」
「はい。全くです」
ひび割れノイズ混じりの合成音声が、なんの感情も乗せずに答える。
一言で言うなら大破。
ジャンク一直線、正しくポンコツになっていた。
「こりゃ、ユリアンたちでも修理は無理だろうな」
「はい。活動停止まで、残り三分十八秒です」
「ああそう」
無感情に、己のロストの時間を報告するポンコツ。
記憶を失った俺の担当になったコイツは、その後、様々の出来事に加えて、妙なプログラムを突っ込まれて、言動が明らかにおかしくなった。
だか、能力(スキル)はともかく、基本的な根っこの部分は、デフォルトのポンコツのままだった。
「ここまでの戦闘データは」
「既にラボに転送を完了しています。次の機体が用意出来しだい、全データの引き継ぎは即時可能です」
「オッケー。充分だ」
これで、コイツに対しての心残りは無くなった。
「ユウ」
「何だよ」
無表情で呼び掛けるポンコツに俺は応じる。
この状況で説教か。
「ありがとうございます」
「は?」
また何で突然、礼なんて言ってるんだか。
言語がらみも損壊が進んでるのかね?
ヘルメットはかち割られ、外装が焼け爛れて筐体がむき出しになった緑のカメラアイ。
発した言葉とは裏腹に、情は一片も浮かんでいない。
「貴方は、反PT思想の固まりのような咎人ですが、私達(アクセサリ)の存在理由を、決して否定することはしませんでしたね」
何を言いだしてるんだ、コイツは。
「だって、お前らってそういうもんだろ」
「はい。だからこそ私は、自分の存在理由を疑うことなく、私の全ての力をもって職務を遂行することができました。役割をもって生み出される私たち(モノ)にとって、それは、極めて自然な姿であり、幸福な姿といえるのではないのでしょうか」
その言葉に、仲間を含めた様々な咎人たちのアクセサリに接する態度を思い出す。
モノをどうやって使うのかは、本当にヒト次第だ。元々の役割から逸脱した使い方をするのはヒトの得意技ではあるが、俺はそうしなかった。拡張して戦術面の長所を伸ばしただけだった。
そして、それで良かったのだと、このポンコツはのたまった。
「ですから、お礼を申し上げました。貴方への教導を、安心して次の機体に任せることができます」
「何が安心だよ。心ねーくせに」
「適切な言葉が見つからなかったため、意味の近い言葉を使用させてもらいました」
「あーそーですかい」
頭を掻いたとき、警告音が鳴った。
戦況マップを見れば、戦闘不能になった奴が増え、自軍のラインが崩れかけている。
時間をかけすぎたか。
当然、それを察知しているであろうポンコツは、再び口を開く。
「ユウ。自軍の継戦力が七十パーセントを切りました。至急、戦闘に復帰することを強く推奨します」
「ああ、わかってんよ」
ポンコツに近づき、奴の側に放置されているランチャーを回収した。
「ここから十一時の方角、五十メートル付近に弾薬の補給ポイントがあります」
「へいへい。立ち寄っておく」
奴から離れ、改めてその姿を見やった。
「じゃ、お疲れさん」
「はい。お先に失礼します。次の機体で、またお会いしましょう」
ポンコツに背を向けて走り始める。
お先に失礼します。
次の機体で、またお会いしましょう。
ああそうか、奴には個というものがないんだ。
あくまで、PTが組んだプログラムによって動いているだけのモノ。
だから、今までのデータを全て引き継いでしまえば、再び奴と出会えるということか?
データが引き継がれ続ける限り、奴は存在し続けることができるってことか?
そこまで考え、口許が歪む。
なんつーかそれ、軽いよな。
でもそれは、資源扱いの俺らも同じか。
ライトでドライな世界で、屑鉄同然の軽くて乾いた命を懸け、俺たちは今日も飽きることなく戦い続ける。
程なくして、ポンコツのロストを告げるログが上がってきたが、振り向くことはしなかった。
<咎人、今日も戦い続ける:終わり>
最後までご覧頂きまして、ありがとうございます。
いつものことではありますが、誤字、脱字、言い回し等に変更があった場合は、都度手を入れさせていただきます。
こちらは去年の五月に書き上げた短編です。
今までお蔵入りにしていましたが、比較的読めるものではないかと判断して投稿することにしました。
というか、ちゃんと短編も書けるんだなあと、他人事のように思っております。
短い話ですが、お楽しみにいただけましたら幸いです。
この咎人の話は他にもあるのですが、書きかけか、納得のいく仕上がりになっていないため、今後も投稿する予定はありません。
また、新しいネタが出てきて、ちゃんと形になった際に投稿できればと思います。
それではまた。
小栗チカ