どうも、ふぁもにかです。本当はもっと色々とVRMMO内での各種イベントをたっぷり文字数を使って執筆するべきなのでしょうが、あんまりダラダラと魔法少女育成計画っぽくないシーンを量産するのもアレなので、巻きで進ませてもらいます。早くほのぼのな第2章を終わらせて、鬱展開な次章へ進みたいんじゃあ~!
☆ミラクルシャイン
VRMMO版の魔法少女育成計画の攻略は非常に順調に進んでいた。魔法少女に食事や睡眠はいらないため、ミラクルシャイン、コットン、メトロノーム、サンタマリア、メタ☆モン、ユウキの6人パーティーは定期的に休憩を取るものの、それ以外の時間は熱心にα版の世界の探索に費やしていた。
雪原地帯、砂漠地帯、海底地帯とファンタジーならではの環境の下で、ミラクルシャインたちは誰1人リタイアすることなく、様々なモンスターと戦い、ダンジョンを踏破していった。そして、テスター開始から46時間後の今現在。ミラクルシャインたちは、松明などの照明がないのに妙に明るく光源のいらない洞窟の中に足を踏み入れていた。ちなみに。ミラクルシャインたちの収集したマジカルキャンディは1万1936個だ。
「残り時間的に、ここが最後の探索ポイントかなぁ」
「ここに魔王がいればいいんだけどね」
「ま、ままま魔王、本当にいるのかな。あ、ぁあ会いたくにゃいなぁ……」
「大丈夫ッス! これまで数々の冒険をこなしてきた私たちなら魔王だろうと敵じゃないッス!」
「そ、そそそう、かな? ……そそそそう、だよね」
マジカルフォンで残り時間を確認したミラクルシャインの予測に、メタ☆モンがまだ見ぬ魔王の姿を好き勝手に妄想しながらルンルン気分でスキップする。一方、魔王なんて強くて怖そうな存在との邂逅を回避したいメトロノームはガタガタと震えるも、サンタマリアがメトロノームを安心させるために彼女の両手を掴んで言葉をかけると、今までの冒険を想起したメトロノームの震えが少しだけ収まった。此度の探検を通して、メトロノームに自信が生まれ始めているようだ。
「それにしても、一本道なのです」
「モンスターも全然出てこないしね。どうなってるんだろう?」
「α版だから、このエリアを作り込む余裕がなかったとか? それにしても手抜き感が凄いけど」
他方。殿として時折背後を確認しながら皆の後に続くコットンが正直な感想を口にし、同様の印象を抱いていたミラクルシャインが違和感に首を傾げていると、ユウキがあり得そうな理由を提示してみる。そう、この洞窟に入ってかれこれ5分は経過しているのに、ずっと一本道なのだ。分岐もなく、隠し部屋もない。加えて、床には赤いカーペットが敷かれており、まるでミラクルシャインたちを要人として、特別な舞台へと導いているようだ。
(うー、怖いなぁ。即死トラップとかなければいいけど)
ミラクルシャインは警戒心から入念に五感を研ぎ澄ませ、予期せぬ事態に全力で備えつつ、パーティーとともに先へ進む。すると、5分後。一本道な洞窟が終わりを告げた。洞窟から一転、開けた空間がミラクルシャインたちを歓迎し、奥には大きな木製の扉がそびえていた。かんぬきで閉ざされたその扉は5メートルはありそうだ。
「あわ、あわわわわ――」
「随分と威圧感のある扉だなぁ。っと、よしよしメトロノームちゃん。怖くないよ」
どっしりと構える威厳ある扉にメトロノームがガクガク怯え始めたため、ミラクルシャインがメトロノームの背中をさすって落ち着けにかかる。この46時間、メトロノームがパニックになる機会は相当多かったので、ミラクルシャインたちのメトロノームの落ち着け方もすっかり板についている。
「両サイドに燃えてる松明があれば完璧にコナ○くんの扉なのです」
「ハッ!? ということは、奥に控えている魔王は、名探偵コナ○!?」
「見た目小学校低学年の子を攻撃なんてしたくないなぁ」
「コナ○くんって魔王というよりは死神ッスよね」
一方。大きな扉に対し、真っ先に有名アニメのアイキャッチを連想したコットンの呟きに、メタ☆モンが「わたし、天才じゃね?」と言いたげに独自の発想を披露する。一方。メタ☆モンの推測に「それはない」と思いつつも、ユウキとサンタマリアは敢えて否定せずに、メタ☆モンの主張にテキトーに乗っかった。
「おぉ、やっと一本道が終わったぁ」
「何が待ち受けとるんか、ワクワクやな!」
と、その時。ミラクルシャインたちとは別の通路から複数の人影が現れる。それは、パーティー編成以降会っていなかった、なのだ先輩、星井ミク、フォーチュンテラー、ムイムイ、ラストエンゲージ、ファソラだった。彼女たちもミラクルシャインたちと同様にやたらと長い一本道を通ってきたらしく、ムイムイは単調な通路の終了にホッと安堵の息を吐き、フォーチュンテラーはこれだけ雑な一本道で焦らしたのだから何かあるはずだと興奮のボルテージを上げていく。
「おや、同じ所を探索していたようなのだ」
「ホント、奇遇だね。誰もリタイアしてないようで何よりだよ」
「ひやひやさせられる場面は少なからずあったのだが、運に恵まれていたのだ。せっかくだ、互いのマジカルキャンディの数でも比べてみるのだ。あたしたちは今ちょうど1万個になった所なのだ」
「やった。私たちの勝ち。こっちは1万1936個だよ」
「ふむ、大差で負けてしまったのだ。宝箱をかなり見つけたから自信があったのだが」
「私たちはレイドボスっぽいのを倒したから、その差じゃないかな?」
「なるほどなのだ」
なのだ先輩はテクテクとミラクルシャインの元に近づき、会話に入る。ミラクルシャインたちの内、落ち着いた言動を心掛けており、さらにパーティーを率いるリーダーとしての役目を背負う同志なために、ミラクルシャインと会話しやすいと考えたのだろう。ミラクルシャインとなのだ先輩はマジカルキャンディの数の比較を通じて交流を深めていく。
「……前に自己紹介をしてからほんの2日後のはずなのに、何だか遠い昔の出来事のように思えるの」
「それだけ濃厚で充実した冒険だったってことなのです」
「おおお! これはかの有名なコナ○の扉!」
「真実はぁ、いつも1つぅ!」
「やっぱり皆、コナ○の扉だって思うよね」
その間、他の魔法少女たちも思い思いに行動する。以前、ミラクルシャインのパーティーと顔合わせをした時のことを思い返した星井ミクの心境の吐露にコットンが同意を示し、5メートル級の大きな木製の扉を目の当たりにしたフォーチュンテラーとムイムイのノリノリの発言にユウキが「考えることは皆一緒か」と2人を眺める。
「皆さん。久しぶりに合流して話に花を咲かせたいのはわかりますが、まずはこの扉の先に行きませんか? わたくし、この先に何があるか気になって仕方ありませんわ」
「あ、そうだね。すっかり忘れてた。でも、どうやって開けようか? この扉、メチャクチャ重そうだから物理じゃ開けられなさそうなんだけど」
「……そういう時の魔法かと……」
「それじゃ、ミクの出番なの。でっかい流れ星をぶつければ、扉なんて簡単に粉砕できるの」
と、ここで。ファソラが扉にピタピタと軽く手を当てながら、皆に探検を再開しようと提案する。それにより扉のことを思い出したミラクルシャインは改めて扉をまじまじと見つめて、いくら魔法少女の強化された力でも扉を押し開けられなさそうだとの予想を口にする。そこでラストエンゲージが扉を開ける手段として魔法を挙げ、星井ミクがすかさず流れ星を召喚して扉に勢いよく衝突させようとする。
『お待ちください!』
が、星井ミクが虚空から流れ星を生み出す直前。静止の声が聞こえると同時に空中にヒラヒラの黄緑色のドレスに身を包んだ小人が現れた。以前、ミラクルシャインたちにVRMMOな魔法少女育成計画の世界について説明し、皆にテスターの役目をお願いしてきたあの時の小人だ。
「あ、よっちゃんッス! いきなりどうしたッスか?」
『この扉を壊されると問答無用でボス戦が開始されるので、事前に心の準備をしてもらうべく、こうして通達をしに来ました』
「ボ、ボボボス戦だきゃら、来たの? でででも、私たち、今までもボスっぽいのと戦ったよ?」
「ほほーう? これはもしかして、いやもしかしなくてもラスボスっしょ! 魔王っしょ!」
『魔王かどうかは皆さまの解釈に任せますが、ラスボスはいます。ですが、このラスボスには不備があります。強すぎるのです』
「……強すぎる?」
サンタマリアが気安く小人を愛称で呼ぶと、小人は己が自ら参上した理由を告げる。その理由に違和感を抱いたメトロノームが問いを投げかけると、メタ☆モンがニタァと口角を吊り上げつつ小人に問い詰める。対する小人は扉の先にラスボスが待機していることを認めた。そして、小人の不穏な言葉に、ミラクルシャインは思わず小人の発言をそのまま返した。
『皆さまのこのVR空間の攻略速度は開発スタッフの推測の何倍も早かったため、皆さまは50時間が経過する前にラスボスの元までたどり着くことができました。しかし、VRMMO版の魔法少女育成計画の開発スタッフは、テスターの皆さまがラスボスと戦うことを一切想定せず、遊び心でラスボスの難易度設定を鬼畜にしていますので、皆さまが団結し、12人の連携を存分に発揮して戦ってなお、全滅する可能性が高いです。いくらHPがゼロになってもリタイア扱いで現実には死なないとはいえ、死ぬ際の恐怖や痛みは本物です。経験せずに済むならそれに越したことはありません。ゆえに、ここで一度、皆さまにはラスボスに挑戦しない選択肢を検討していただきたいのです。犠牲者の発生が濃厚かつ避けることのできる戦闘からの撤退は恥ではなく、英断ですから』
「……要は、わたしたちが弱いから戦うなと……」
「僕たちはこの世界でいっぱい戦って、強くなったのです。なのに、僕たちを弱いと決めつけてくるのは少々不愉快なのです」
『それは誤解です。皆さまがラスボスと戦うべきでないとの開発スタッフの判断は、皆さまの戦いぶりを撮影した、無色透明の追尾カメラの映像を分析した結果、示されたものです。皆さまの成長を加味してもなお、ラスボスへの挑戦を非常に危険だとの結論が出されたのです。くれぐれもそのことをお忘れないよう、よろしくお願いいたします』
ラスボスとの戦闘回避を推奨する小人に、ラストエンゲージが自分なりに小人の考えを解釈すると、コットンがムスッと眉を寄せて不満を主張する。が、小人はミラクルシャインたちを侮っているのではなく、あくまで映像データを元に合理的な判断の下で、ラスボスとの戦闘回避が望ましいとされていることを伝える。
「そんなにラスボスはヤバいの? どんな見た目か、見せてくれないの? 一度ラスボスの姿を拝まないことには、ラスボスから逃げようって気にはならないの」
『わかりました。それではこちらの映像をご覧ください』
星井ミクの純粋な問いに小人は応じ、指をパチンと鳴らす。直後、小人のすぐ側に空間ディスプレイが表示された。その中に映っていたのは、ドラゴン。全長50メートルは優に超えていそうな巨大なドラゴンが全身に黄緑色の雷を纏い、時折上空を見上げて咆哮を轟かせる、大迫力極まりない映像が空間ディスプレイに映し出されていた。
「ドラ、ゴン!?」
「え、は、こわッ!?」
『皆さま。くれぐれも早まることなく、賢明な判断をしてください』
ミラクルシャインとユウキがいち早く驚愕の声を漏らし。他の面々が迫力に事欠かないラスボスの映像に閉口する中。小人は空間ディスプレイの表示をやめるとともに、小人自身もスッと空気の中に姿を消す。場に静寂が広がるも、誰も話さない。口を開かない。それだけラスボスのドラゴンの威圧感が映像越しでも圧倒的だったのだ。
「……作戦会議を開くのだ。皆、集まるのだ」
いの一番に平静を取り戻したなのだ先輩が静かにミラクルシャインたちを招集する。その声に釣られるように、12名の魔法少女は円状に集まった。いつものミラクルシャインなら前に自己紹介を皆に提案したように、作戦会議を積極的に主導しただろう。だが、今のラスボスのオーラに呑まれたミラクルシャインは、他の魔法少女の発言に従うので精一杯だった。
「議題は2つ。まずは、ラスボス……ひとまずサンダードラゴンとでも名付けるのだ。あれと戦いたいか、戦いたくないか、意思表示をしてほしいのだ。ということで、ムイムイ。トランプぐらいのサイズの白紙と、黒のボールペンを人数分、あと抽選箱を召喚してくれ」
「あ、あぃ……」
自然と場を仕切り始めたなのだ先輩からいくつか召喚の依頼を受けたムイムイは通常のような元気さの見えない控えめな返事とともに、なのだ先輩の要求通りの物を手早く召喚した。
「ラスボスと戦いたいなら『○』、戦いたくないなら『△』と白紙に記入して、四つ折りにしてこの抽選箱に入れるのだ」
「あれ、『○』と『×』じゃないんだ」
「『○』と『×』だと記号の書き方の違いから近くの人がどっちの記号を書いたか無自覚に察知できる可能性があるのだ。ゆえに、似たような記号を活用するのだ」
ムイムイが1人1人に白紙とボールペンを配り、抽選箱をなのだ先輩に渡す中。なのだ先輩の提案にミラクルシャインが素朴な問いを零すと、なのだ先輩は『○』と『△』だからこそ他者がどっちの記号を記入したかわかりにくいのだと言葉を綴る。
「あらあら。記号を書かずともわたくしたちが口頭で意見を出した方が早くありませんか?」
「それではダメなのだ。同調圧力に流されて、本当の自分の感情に逆らって戦う戦わないの判断をする者が生まれるかもしれないのだ。皆に正直な気持ちを言ってもらうには、匿名の投票形式がいいはずなのだ。そして、1人でも戦いたくないとなれば、サンダードラゴンには挑まないのだ」
「ええッ!? 何それ、わたしは戦いたいよ! 超強いドラゴンと戦ってジャイアントキリングとかロマンの極致じゃん! なんで全員の意見が一致しないと戦っちゃいけないのさ!?」
「マスコットは12人全員でサンダードラゴンに挑んでも勝利は厳しいと言っていたのだ。……あたしは戦地に赴く自殺志願者を見送るのも。自殺志願者とともに無茶な戦いに挑むのもお断りなのだ。ゆえに、1つでも『△』があれば、サンダードラゴンとは戦わないし、何が何でも戦いたい人がいても全力で妨害して、絶対に戦わせないのだ」
「えぇぇぇ」
ファソラがふんわり口調でより効率的な方法を提示するも、なのだ先輩は皆の正確な意見を抽出するための方法だと返答する。と、ここで。全員が戦いたい意思を示さないとサンダードラゴンに挑まないとのなのだ先輩の発言に、サンダードラゴンとの戦いに挑む気満々な様子のメタ☆モンが文句を言うも、なのだ先輩の固い意思と覚悟の前には、精々頬を膨らませるしかできなかった。
「さて。質問は以上なのだ? なら、始めるのだ。まずは目を瞑るのだ。瞑って、戦うか戦わないかしっかり考えるのだ。結論が決まったら、目を開けるのだ」
なのだ先輩の指示に従い、ミラクルシャインはおもむろに目を閉じる。脳裏に先ほどのサンダードラゴンをなるべく鮮明に映し出し、己の戦闘スキルで、魔法で、そして皆との連携の力でサンダードラゴンを倒せるかを真剣にシミュレートする。いくつかシミュレートを重ね、ミラクルシャインが目を開くと、既に全員がまぶたを上げていた。
(え、私が最後!? 待たせちゃったかな?)
「皆、決まったのだ? なら、皆に背中を向けて『○』か『△』かを書き、抽選箱に入れるのだ」
なのだ先輩が己の紙を抽選箱に入れるとともに、抽選箱を中央に置くと、残る11名の魔法少女たちも1人1人、投票する。全員の投票終了後、なのだ先輩は抽選箱から紙を取り出し、皆とともに中身を確認すると、全員が『○』を記入していた。ミラクルシャインたちは皆そろってサンダードラゴンと戦う意思を示したのだ。
「へ、全員『○』!? ホンマ意外やわ」
「うむ。あたしも意見が真っ二つに割れるものと想定していたのだ」
「お、おお! てことはあのサンダードラゴンと戦えるってことじゃん! よっしゃー!」
「……大丈夫なの、メトロノームちゃん?」
「え、ええええとえと、ミラクルシャインさん?」
「無理、してない?」
フォーチュンテラーやなのだ先輩が己の推測と全く違う結果が出たことに素直に驚きを顕わにし、メタ☆モンが両拳を真上に突き上げて喜色に満ち満ちた笑顔を浮かべる中。ミラクルシャインは思わずメトロノームに視線を向け、問いかける。困惑するメトロノームに構わず、ミラクルシャインは質問を重ねる。てっきりメトロノームだけは『△』を記入すると思い込んでいたからだ。
ミラクルシャイン自身はサンダードラゴンと戦うべく『○』を記入した。何度かシミュレートしたが、結局サンダードラゴンに勝てる確証は得られなかった。そのため、ミラクルシャインとしてサンダードラゴンに立ち向かうことへの恐怖は確かにあった。が、ミラクルシャインは正義の魔法少女だ。現実の後藤光希のように情けなくダメダメな人間じゃない。ここで逃げたら、挑戦を放棄したら、結局ミラクルシャインも後藤光希の延長線でしかなかったと認めることになりそうで。逃げようと思えなかった。それが、ミラクルシャインがサンダードラゴンと戦いたいとした理由だ。
だが。今まで弱いモンスターでも散々怯えてきたメトロノームが。『魔王』とのワードだけですらブルブル震えていたメトロノームが。凄まじく強いと小人が強調するサンダードラゴンに立ち向かおうと考えているとは、ミラクルシャインにはとても信じられなかったのだ。
「だ、だだだ大丈夫。ドラゴンも、痛いのも、ここっここ怖いけど、でも! て、ててて敵がいくら強いからって、戦う前から諦めて帰るなんて、私のなりたい魔法少女じゃない。だだだだから、戦いたい。……わわわ私が1人だったら、絶対逃げてた。でででも、今は、皆がいる! つ、つつつ強くて、頼もしくて、カッコよくて、凄くて、そんな正義の魔法少女がいっぱいいるから、わわわわ私も大丈夫! わわわ私も、頑張って、皆と一緒になりたい! 私も、戦いたい!」
メトロノームの思いの丈を敬愛するミラクルシャインに向けて精一杯叫ぶ。メトロノームの心の奥底からの咆哮はミラクルシャインだけに留まらず、他の全員の魔法少女の耳に入り、結果として場がシーンと静まり返った。
「え、ふぇ?」
「そっか。そこまでメトロノームちゃんに期待されてるのなら、応えないわけにはいかないよね」
「よく言った、メトロノーム! なぁんだ、小動物なのは上辺だけで根性はしっかり座ってるじゃん!」
「大丈夫ッスよ。メトロノームは今も十分、カッコいい魔法少女ッス! 惚れ直したッス!」
なぜ急に誰も喋らなくなったのか。そして誰もが視線を注いでくるのか。理由がわからずメトロノームが困惑する傍ら、ミラクルシャインはメトロノームの期待を裏切らないように、恐怖に屈せずに果敢にサンダードラゴンと戦う覚悟を深め、メタ☆モンとサンタマリアはメトロノームに駆け寄り、決意を示したメトロノームを心から称賛した。
「え、ええええ!? サ、サササンタマリアさんってそっちの気があるの!? そそっそそそういえばコットンさんの胸も揉み揉みしてたし……あ、あああ、ごめんなさい! ダダダメだよね、偏見で同性愛を否定しちゃ! わわわわ、私には未知の世界だけど、頑張って受け入れる、よ?」
「ちょおおおお!? なに口走ってるッスか!? 私は健全ッスよ! あれはコットンの魔法で操られてただけッス! それに私には将来を約束した幼なじみが――」
「実はあの時、僕は魔法を使ってなかったのです。なのに、サンタマリアさんが勝手に操られたかのような態度を――」
「黙るッス! これ以上聞いたらまたウソをホントと思わされるッスぅうううう!」
が、サンタマリアの『惚れ直した』とのワードからサンタマリアに性的に気に入られたと勘違いしたメトロノームは目をグルグル回して混乱しながらも、辛うじて理性を保ち、サンタマリアに微笑みを向ける。そのメトロノームの一連の言動を受けて、サンタマリアが誤解を解こうと声を荒らげるも、コットンがメトロノームの勘違いを加速させようとしたので、サンタマリアはすかさずコットンの言葉を遮断しにかかった。
「チッ、バレたのです」
「何かコットンって私だけは全力で弄っていいとか思ってないッスか!?」
「だって、語尾が語尾なので。サンタマリアさんならいいかなって思ったのです」
「よくないッス! 全然よくないッスよ!」
「確かに組織の下っ端っぽい語尾だしね」
「ミラクルシャインも同意しないでほしいッス!」
コットンが棒読みで吐き捨てると、サンタマリアは前々から薄々感じていた疑問をコットンにぶつける。結果、コットンのみならず、ミラクルシャインも追随してきたので、サンタマリアは自分がいかに弄られサイドの住民でないかを必死に主張することとなった。
「空気が和んだの」
「メトロノームのおかげだね」
「だが、いつまでも脱線していては残り時間がなくなってしまうのだ。ほら、皆気持ちを切り替えて、作戦会議を再開するのだ。残る議題は、どのような作戦でサンダードラゴンと戦うかなのだ」
つい先ほどまでサンダードラゴンに圧倒されていたがために重々しい空気の中での作戦会議だったが、今やすっかり誰もが元の調子を取り戻している。そのことに気づいた星井ミクやユウキがうんうんとうなずく中。なのだ先輩が作戦会議の再開を促したことで、ミラクルシャインたちの作戦会議は後半戦に移った。ミラクルシャインたちは積極的に意見を出して作戦を固めていった。そして。テスター開始から48時間後。作戦会議を終えたミラクルシャインたちは改めて5メートル級の巨大扉の前に立ち並ぶ。
「作戦開始なのだ!」
己を含めた12人の魔法少女を率いるリーダーとして満場一致で選定された、なのだ先輩の力強い掛け声を機に、巨大な木製の扉は星井ミクの流れ星をぶつけられたことにより吹っ飛ばされる。この瞬間、サンダードラゴンとの戦闘の火蓋が切られるのだった。
絶望「 ぜつぼうは でばんの じゅもんを となえた!(`・ω・´)」
ふぁもにか「 しかし じゅもんは わたしが かきけした! 」
次回【11.最終日 ラスボス戦】
※次回更新は9月4日です。