どうも、ふぁもにかです。最近、女神異聞録デビルサバイバーの初代のストーリーを実況動画を通して視聴したのですが……凄まじいぐらいに面白かったですね。この作品もデビルサバイバーみたく、重い雰囲気や容赦ない絶望展開を抱えながらも人の心を惹きつけて離さないような、そんな素敵な作品に仕上げたいものです。
☆ミラクルシャイン
ラスボスと戦った戦闘エリアにて。ミラクルシャインたちはサンダードラゴンという強敵に打ち勝ったという事実に大なり小なり酔いしれていた。歓喜の念に存分に浸っていた。
「やったね、コットンちゃん。私たち、勝てたよ」
「はい。大金星が決まると、本当に気持ちいいのです」
「きゃっほーい! 大勝利!」
「やれば意外といけるものなんだね」
ミラクルシャインがコットンとハイタッチをするべく、両掌を見せると、コットンがにこやかな笑顔とともに応じてくれる。傍らではメタ☆モンが縦横無尽に飛び跳ねており、ユウキが嬉しさを隠しきれないまま「やれやれ」とメタ☆モンを眺めている。
「……まるで物語の主人公になったみたい……」
「ミク、勝つために本気で頑張ったのは初めてだけど、今凄く心が晴れやかなの」
「あらあら。この沸き上がる気持ちにどう名称をつければいいのでしょうね」
「あんなデカい敵にも勝てちゃう私たちは最強チームッス!」
「いえーい! 最強チームぅ!」
「ここからがウチらの伝説の始まりや! 伝説の1ページが刻まれるんや!」
「こ、こここれで私も、皆と同じカッコいい魔法少女? やや、やややった!」
「……どうせなら全員無傷の完全勝利がよかったのだが、まぁ及第点なのだ」
ラストエンゲージ、星井ミク、ファソラは沸々と自らの中で存在感を拡張させ続ける喜びの感情に静かに心を委ねる。サンタマリア、ムイムイ、フォーチュンテラーは興奮のままに自分たち12人ならどんな事態だって乗り越えられるとの意識を共有する。メトロノームは逃げずにサンダードラゴンに立ち向かったことでカッコいい魔法少女になれたと拳を握り、なのだ先輩は皆の喜ぶ姿を見て、顔を綻ばせる。
『皆さま、おめでとうございます!』
直後。どこからともなく現れた、ヒラヒラの黄緑色のドレスに身を包んだ小人の興奮気味の言葉を聞いたと同時に、ミラクルシャインたちはレンガ街へと瞬間移動していた。テスターについての依頼を小人から受諾し、魔法少女同士で自己紹介を行った、あのレンガ街だ。
(もうこの瞬間移動にも慣れてきたなぁ)
『まさか誰もリタイアせずにラスボスを倒すなんて、と開発スタッフの方々も驚いていますよ! 凄いです! 本当に凄いです!』
「エッヘンですわ」
「開発スタッフの分析能力もまだまだやね。今後はもっと精進せぇよ」
宅配便を受け取ろうとした時やチュートリアルの骸骨を倒した時には一々瞬間移動にビックリしていたのに、今は平然と受け入れていることにミラクルシャインが内心で苦笑する中。小人の素直な褒め言葉にファソラが皆の分も兼ねつつ盛大に胸を張り、フォーチュンテラーもまた自慢げに開発スタッフ向けのコメントを飛ばす。
『さて、ただいまテスター終了まで残り90分ですが、皆さまは何かやりたいことはありますか? なければ、皆さまを現実世界にお返しいたしますが』
「えぇぇ!? ヤダよぉ。現実世界の時間は進んでないんだし、ムイムイは最後の1秒までここにいたいなぁ」
「論外なのです。僕はパーティーを組まなかった人ともっと親睦を深めたいのです」
「ねね、せっかく時間が余ってるならさ、ラスボス退治の記念パーティーをやるのはどうかな?」
「それ名案っしょ、ミラクルシャイン! ここはパーッとバーベキューやるしかないじゃん!」
小人がミラクルシャインたちの早めの現実世界への送還を提示すると、皆そろって嫌だと拒否の態度を表した。ムイムイやコットンが皆の心情を代表しつつ己の気持ちを表出させる中、ミラクルシャインはピンと人差し指を立ててパーティーを提案した。すると、メタ☆モンがミラクルシャインの案に乗っかり、具体的なパーティー内容を示した。
「あらあら、楽しそうですわね。わたくしは賛成ですわ」
「ミクも。VRMMOを堪能した思い出の良い締めくくりにできそうなの」
メタ☆モンの案にファソラは手を頬にあててニコリと微笑み、星井ミクもワクワクといった心情を声色にしっかり乗せている。他の魔法少女たちも顔つきからして賛成のようだった。
「……わたしも賛成。でも、食材や道具はどうするの? バーベキューには色々必要だけど、その手のアイテムをわたしたちはこのバーチャル世界に持ち込んでないよ……?」
「それはムイムイに頑張ってもらって召喚――いや、よっちゃん! 開発スタッフからその手のアイテムをもらえないッスか?」
『と、言いますと?』
「α版の魔法少女育成計画にはアイテムが実装してないみたいだったけど、アイテム自体のデータは既に開発スタッフがある程度作ってあるんじゃないッスか? もしその中にバーベキューに使えるアイテムがあるのなら、提供してくれればムイムイの負担も少なくなるッス!」
「せや! それなら、ファンタジーっぽいアイテムが欲しい! モンスターの肉とか、魔法の力で燃え続ける火炎石とかやな! せっかくVRMMOでバーベキューやるんなら、それっぽいアイテム使って開催した方が絶対に盛り上がるしな!」
ラストエンゲージは賛成の意思を示しつつも、一度現実世界に戻るとこのバーチャル世界に戻れないことを念頭にした問いを投げかける。サンタマリアはムイムイの魔法を活用する案を提示しようとしたが、ふと閃いたのか、小人にバーベキューに必要なアイテムの提供を要請する。すると、フォーチュンテラーがアイテムをもらえることを当然のように前提にした上で、ファンタジーな食材や道具アイテムを要求する。
『少々お待ちください。開発スタッフと交信します。……はい、はい。わかりました。バーベキューに使えそうなファンタジーな食材や道具アイテムは一通りデータ作成済みなので、今からここに転送するそうです』
「おおお! マジか、言ってみるもんやな!」
『ただし、まだ種類が少ないので我慢してくださいとのことです』
「ええよ、ええよ! それぐらい!」
一通り要求を受け取った小人は一旦目を閉じて開発スタッフを通信した後、サンタマリアやフォーチュンテラーの要請に応じられる旨を伝える。その際、アイテムの種類の少なさを小人が申し訳なさそうに詫びるも、ダメ元でお願いしていただけに、フォーチュンテラーは欠片も気にしなかった。
その後。ミラクルシャインたちの膝上付近の高さでふよふよ浮かぶ、四角い窪みのある白色の球体が。球体の窪みに収まり、ゴウと炎を生み出し続ける四角く真っ赤な石が。球体の上でこれまた浮いている、銀色に輝くバーベキュー網が。脚が木の幹のようにデザインされた、自然を感じる大きなテーブルが。見るからにふかふかな座り心地がしそうな水色の椅子が。各部位ごとに切り分けられ、真ん中に骨がぶっ刺さったマンガ肉な形のサンダードラゴンの肉が。赤、青、緑、白、黒と色とりどりに揃えられたジュース入り(※ノンアルコール)のワイン瓶が。ステンドグラスな色合いのガラス製のコップが。塩コショウ、焼肉のタレ、味噌ダレ、ねぎみじんといった各種調味料が。次々とミラクルシャインの周辺にストトトと召喚されていった。
「す、すすすす凄い、本格的!」
「あらあら。魔法やファンタジーっぽさが忠実に表現されていますわね」
「ミクが思ってたよりたくさんアイテム作られてたの」
バーベキューのための各種アイテムの大量召喚にメトロノームは目を丸くし、ファソラも意外そうに目を細める。星井ミクはアイテムの充実さからして、開発スタッフもこうしてVR空間でバーベキューを楽しみたかったのではと考察しつつ、正直な感想を紡ぐ。
「早く始めるッス! さぁ、早く早く早く! 時間は有限ッスよ!」
「そうだね。じゃあ、なのさん。皆を率いたリーダーとして乾杯の挨拶でも――」
「いや、ここは言い出しっぺのミラクルシャインの出番なのだ」
「え?」
後はサンダードラゴンのマンガ肉を網に乗せて焼くだけでいつでもバーベキューを開催できるため、サンタマリアがキラキラと目を輝かせてバーベキュー開始を皆に急かす。ミラクルシャインはバーベキュー開始の前になのだ先輩に乾杯の挨拶をお願いしようとすると、なのだ先輩にその役目を押し付けられた。
「そうだね。言い出しっぺなら仕方ないね」
「え、ええ!? ちょッ、ホントに私がやるの!?」
「リーダー権限は絶対なのだ。いい経験だと思って挑戦してみるのだ。骨は拾うのだ」
「しかも失敗前提なんだ!」
なのだ先輩の発言にユウキも同調したため、ミラクルシャインは動揺する。結局、なのだ先輩が己の発言を撤回しなかったため、ミラクルシャインが乾杯の挨拶をしないといけなくなった。
(ど、どどどどうしよう!? 何て言えばいいのかな? 真面目路線がいい? それとも終始ネタに走った方がいい? あわわわ、どうしようどうしよう!? ここで変なこと言ったら空気が凍っちゃうし、せっかく皆と良い雰囲気になれてもう友達ってノリに半ばなれてると思ってるのに引かれて友達じゃなくなっちゃうかも――)
ミラクルシャインは焦る。表向きはちょっと困ってるといった態度だが、内心ではサンダードラゴンを初めて見た時と同じかそれ以上に焦っている。魔法少女になるまで全く友達に縁のなかったミラクルシャインだ、バーベキューなんて複数人の仲の良いグループで行うイベントに参加したことなどない。そのため、乾杯の挨拶で何を言えばいいか、まるで見当がつかないのだ。
「……ミラクルシャイン……」
「あ、ありがとう。ラストちゃん」
「……わたしがセリフ、考えようか……?」
ミラクルシャインが心の中で困り果てていると、ラストエンゲージが白色のジュース入りのコップをミラクルシャインに渡してくる。お礼を告げてミラクルシャインがコップを受け取ると、ラストエンゲージが小さいホワイトボードと黒板消し、水性ペンをミラクルシャインに見せて、乾杯のセリフを教えることを提案する。これらの道具はおそらくムイムイに召喚してもらったのだろう。
「え、ホントに!? いいの!?」
「……うん……」
「ありがとう! 頼らせてもらうね!」
どうやらラストエンゲージはホワイトボードを通して挨拶のセリフのカンペを作ってくれるようだ。ミラクルシャインはラストエンゲージの好意に、あたかも蜘蛛の糸に飛びつくカンダタのごとく、迷わず飛びついた。
ミラクルシャインはコホンと軽く咳ばらいをし、皆の前に立つ。皆がコップを片手に視線をミラクルシャインに集中させていることに緊張しつつも、ミラクルシャインはラストエンゲージの持つホワイトボードにチラッチラッと視線を向けつつ、挨拶を始めた。
「えっと、なのさんからご指名を受けました、ミラクルシャインです。えー、本日はお日柄も良く、バーベキューを行うにはもってこいの天気となってます。……私たちはつい3日前に出会ったばかりでありながら、同じ魔法少女であるとの共通点を起点として友誼を結び、団結して数々の困難を共に乗り越えた同志です。日頃は正義を胸に抱き、各々が暮らす都市で善行を積んでマジカルキャンディを集めている私たちなので、今後も今回のように大勢で集結することは中々難しいでしょう。となると、この度テスターに選ばれたという形で皆と出会えたのは奇跡と言えま――」
「ひゃあ! もう我慢できないッス! いただきまーす!」
「いっただっきまーす! んぁー! ドラゴンのお肉、生でもおいしい~!」
「ちょッ、なにフライングしてるのさ!? 私だって早く食べたいのに!」
「挨拶が長いのが悪いッス! これ世界の真理ッス!」
が、ミラクルシャインの挨拶の途中で、サンタマリアが素っ頓狂な声を上げるとともに、テーブル上の皿に置かれたマンガ肉を掴んでバクバク食べ始め、ムイムイもまたサンタマリアに乗じてマンガ肉を生で食していく。サンタマリアとムイムイの不意打ちな動きにミラクルシャインがツッコミを入れると、サンタマリアは一切悪びれずにビシッと親指を立てた。
「ああああ、もう! 素敵な皆との出会いと、楽しかった冒険に乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
ラストエンゲージの力を借りてまで必死に挨拶を取り繕うとした自分がバカらしくなり、ミラクルシャインはテキトーに声を荒らげて、ラストエンゲージのカンペの最後の一文だけ読み上げる形で乾杯の合図を行う。皆も元気よくコップを掲げてくれたことから、ミラクルシャインの選択は間違ってなかったと言えよう。
「ごめんね、ラストちゃん。せっかくセリフを考えてくれたのに」
「……別に、気にしなくていい。今、この瞬間を楽しもう……」
「そう、だね」
ミラクルシャインはまずラストエンゲージの元に駆け寄り、ぺこりと頭を下げる。が、当のラストエンゲージは言葉こそそっけないながらも本当に何も気にしてなさそうだったので、ミラクルシャインはラストエンゲージに対する罪悪感を引きずらず、バーベキューを純粋に楽しめるように気持ちを切り替えることにしたのだった。
絶望「天光満つる処に我は在り。黄泉の門開く処に汝在り。出でよ、神の雷。インディグネイション!」
ふぁもにか「そんなやわな術では、この身体に傷一つつける事は出来ぬわ!」
次回【13.最終日 バーベキュー(2)】
※次回更新は9月14日です。