どうも、ふぁもにかです。今回で第2章は終了です。つまり、ほのぼの展開の下で魔法少女たちが和気あいあいと楽しめるのはおそらく、今回が最後です。魔法少女たちの幸せそうな様子もこれで見納めかと思うとなんだか寂しくなりますね。
☆ミラクルシャイン
「くぅぅ! 食べてみたかったんだよね、マンガ肉! 上手に焼けましたぁ!」
「マンガ肉って火が中までちゃんと通ってなさそうであんまり美味しくみえないけどね」
VRMMO版の魔法少女育成計画の世界にて。ラスボスのサンダードラゴンを倒した記念でバーベキューが開催された中。ミラクルシャインがバーベキュー網に近寄ると、さっきまで生でマンガ肉を食べていたメタ☆モンが今度は宙に浮かぶ白色の球体から発せられる炎でマンガ肉を焼いている光景があった。マンガ肉の香ばしい匂いによだれをジュルリと拭いながらマンガ肉に火を通し終えるメタ☆モンに対し、ユウキはマンガ肉の味に疑問を抱いているようだ。
「その気持ちはわからなくはないけど、このマンガ肉はおいしいよ! はい、ユウキの分」
「ありがと」
「どう、どう?」
「……へぇ、これはおいしいね」
メタ☆モンからミディアムに焼かれたマンガ肉を渡されたユウキは恐る恐る、マンガ肉にかじりつく。その後、感想を催促するメタ☆モンをよそにユウキが二口三口とマンガ肉を食べ始めたことから、マンガ肉の味は確かなもののようだ。
「そんなに夢中になるほどおいしいの?」
「うん。……こんなにおいしいお肉は初めて食べたかも」
「肉汁たっぷりで凄くおいしいよ! でも量が多いから、途中途中で調味料を変えないと飽きるかもね。はい、ミラクルシャインの分」
「ありがと。……肉焼く係、代わろうか?」
「気持ちだけもらっておくよ。マンガ肉がジュージュー焼けゆく姿を間近で見るのが今のわたしのマイブームだからね」
「そっか」
(メタ☆モンが無理してないならいっか)
女の子らしさを投げ捨てて大口を開けてマンガ肉を頬張るユウキにミラクルシャインが好奇心から尋ねると、ユウキはマンガ肉を咀嚼してからマンガ肉の高次元な味について端的に伝えてくる。その後、メタ☆モンからミディアムレアなマンガ肉を受け取ったミラクルシャインは、メタ☆モンがマンガ肉をパクつきつつもずっと他の人の分のマンガ肉も焼き続けていることに気づいて役割交代を申し出るが、メタ☆モンは自分がマンガ肉を焼く作業そのものにハマっていることを理由にミラクルシャインの申し出を退けた。
ミラクルシャインはバーベキュー網から少し離れてマンガ肉を食べてみる。肉は柔らかく、噛む度に濃厚な肉汁が飛び出してくる。コクが深く、しかし胃もたれしない塩梅でさっぱりしているマンガ肉は、確かにメタ☆モンやユウキが絶賛するのも道理な味わいだった。
「あ、ヤバい。これおいしい。……何の肉に似てるかな? 料理で再現できないかな?」
「わたくしの見立てだと、ラム肉や羊肉の食感に似てますわよ。尤も、ここまでたっぷりの肉汁の再現は家庭料理では困難だと思われますけど」
「へぇ、これそういう味の肉なんだ。豚と牛と鶏のお肉にしか縁がなかったから新鮮だよ」
「自分に合った、真においしい物を食べたいのなら、未知の食材にも恐れずに手を出すことが肝要ですわ。これを機に色んな食材に挑戦してみてはいかがでしょうか? 特にクジラやイノシシの肉辺りはオススメですわ」
「え、ちょッ……その辺はまだハードル高いかなぁ。あはは」
ミラクルシャインはこの自宅での料理でもこのマンガ肉の味わいを再現できないかと考えていると、ファソラがマンガ肉の食感と似ている肉を伝えてくれた。食べ物の味から的確に食材を予想してのけるファソラにミラクルシャインが感心していると、対するファソラが優雅に微笑みつつ、一般の女の子にはあまり縁のなさそうな肉を勧めてくる。さすがにクジラやイノシシの肉に挑戦をするのは気が引けたミラクルシャインは笑ってごまかすのみだった。
「それにしても、このVR世界の魔法少女育成計画はまだまだ未完成なの」
「NPCはいない、マジカルキャンディ以外のドロップアイテムもない、倒した敵から剥ぎ取りからの素材アイテムもない、クエストもない……確かに未完成なのだ」
「仕方ないよ。α版って例えるならスーパーマリオの1-1面だけ遊べるようなものって話だからね。足りない要素は開発スタッフが今後実装していくんじゃない? わたしたちがバーベキューやってる間も無色透明カメラとやらでわたしたちの話は拾ってるはずだし」
「……VRMMO版がリリースされるまで先が遠そうなの」
「近い将来には期待できないのだ。気長に待つしかないのだ」
星井ミクとなのだ先輩がVRMMO版の魔法少女育成計画がまだまだ完成に満たないことを共有している所でユウキからα版の一般的な基準を知り、正式版がすぐに配信されなさそうなことに残念そうにため息を吐く中。
ファソラからさらなるマイナーかつ挑戦しがたい肉を勧められる前にコップの中身を飲み、新たなジュースを注ぐ名目でファソラから離れたミラクルシャインは、赤、青、緑、白、黒と色とりどりなジュースの入ったワイン瓶を改めて目の当たりにした。
(ラストちゃんがくれた白のジュースはさっぱり風味なカルピス牛乳ぽかったけど……次はどれに挑戦したものか)
「ミラクルさん。これ、おいしいですよ?」
どれもこれもキラキラと輝くジューズ陣を前に、ミラクルシャインがどれから飲んだものかと思案していると、横合いからすっと青色のジュースの入ったワイン瓶が差し出される。見やると、コットンが「注ぎましょうか?」と首をコテンと傾けて尋ねた。
「あ、お願い」
ミラクルシャインにとってコットンは友達であると同時に魔法少女の後輩だ。コットンの自発的な配慮を『友達だから対等な関係で』的な理論で蔑ろにするつもりはない。ミラクルシャインはコットンの手により注がれた青色のジュースを一口含んでみる。すると、ミラクルシャインはあたかもザバンと海中に身を投じ、呼吸のことを気にせず海の心地よさに揺られているような錯覚を抱いた。
「……おいしい。凄く爽快な気分になれるね」
「僕もその感覚がお気に入りなのです」
「他のも全部飲んでみたの?」
「はい。どれもかき氷のシロップの味をモデルにして呑みやすい甘さとのど越しにこだわり抜いたような味わいなのです。あまりにジュースがおいしいのでマンガ肉はそこそこに、ジュースを飲んでばかりなのです」
「ま、これだけおいしいしね。私も全種類飲んでみよっかな」
「お供するのです」
マンガ肉ばかり楽しんでいたが、ジュースの味も中々に一級品だと気づいたミラクルシャインはコットンとともに他のジュースも片っ端から味わう方針に決めた。
「み、みみみ皆いっぱい食べたり飲んだりしてるけど、太るの怖くないのかなぁ?」
「あれ、知らないのぉ? 魔法少女はいくら食べても太らないんだよぉ?」
「え、ええええ!? そそそそうなの!?」
誰もがマンガ肉をいくつもパクつき、色々なジュースを飲んでいく。暴飲暴食とはいかないが、普段女の子が食べる量を軽く超過していることにメトロノームは戦慄する。が、魔法少女は太らないという特性をムイムイが教えると、メトロノームは衝撃の事実だと驚愕した。どうやらメトロノームは魔法少女の特徴を把握していなかったようだ。
「うん、だってふくよかな魔法少女って魔法少女らしくないじゃん。だからぁ、魔法少女の時にいくら食べても体重が増えないような仕組みになってるんだってぇ」
「……ここっこここれからは魔法少女に変身してからケーキバイキングに行こうかなぁ」
「コスチュームは着替えないと目立つから気をつけてねぇ。ムイムイも猫の着ぐるみパジャマのままお店に行ったら騒ぎになっちゃったからぁ」
ムイムイから魔法少女が太らない理由を知ったメトロノームは今までは自分の体と相談して大量摂取を控えていたケーキへの情熱を静かに深めていく。そんなメトロノームにムイムイは過去の自分の体験談を軽く話して、メトロノームが同じ轍を踏まないようアドバイスした。
「むむむ。マンガ肉もええけど、そろそろ別の食材で口の中をリセットしたいなぁ」
一方。最初こそ一心不乱にマンガ肉をいくつも食べていたフォーチュンテラーはまだまだマンガ肉をおいしく堪能したいが、このままマンガ肉を食べ続けてはマンガ肉に飽きてしまう可能性を察知し、一旦マンガ肉以外の食材を挟みたいと考える。
「……そんなこともあろうかと、ムイムイに野菜を召喚してもらった……」
「え、マジで!? 何があるん?」
「……しいたけ、キャベツ、玉ねぎ……」
「わかっとる、ラストはホンマにわかっとる! ありがとな!」
「……お礼なら、ムイムイに……」
その時、フォーチュンテラーのような考えに至る魔法少女がいるのではないかと事前に予測したラストエンゲージがムイムイに召喚してもらったいくつかの野菜を乗せた皿をフォーチュンテラーに差し出す。すると、フォーチュンテラーは心の底からの感謝をラストエンゲージに捧げ、対するラストエンゲージは本来褒められるべきなムイムイのことをフォーチュンテラーに伝えた。
「皆、注目するッス!」
「いきなりどうしたの、サンタマリア?」
「せっかくだし、皆で連絡先を交換するッスよ!」
ミラクルシャインたちが思い思いにバーベキューを楽しんでいると。ここでサンタマリアが大声を上げて皆の耳目を集める。皆の疑問を代表してミラクルシャインがサンタマリアの意図を尋ねると、サンタマリアはマジカルフォンを介して皆で連絡先を教え合うことを提案した。サンタマリア曰く、スマホアプリの魔法少女育成計画で魔法少女名を検索してフレンドになれば個別に連絡先の交換はできるけど、今皆が集まっている内にマジカルフォンを用いて一斉に連絡先を交換し合った方が、また皆の都合の良い時に連絡をつけて集まり、今日みたいに遊ぶことができるから便利だとのことだ。
「そうだね、ちゃっちゃと始めよう!」
サンタマリアの提案を断る理由はない。むしろ、テスターの経験を通して仲を深めた皆と連絡をつけやすくなるのなら大歓迎だ。ミラクルシャインがサンタマリアの提案にノリノリで乗っかったことを機に、ミラクルシャインたちは皆で連絡先を共有し合った。
そして、ミラクルシャインたちは時が経つのを忘れてバーベキューを楽しんだ。食べて、飲んで、話して、はしゃいで。各々の個性を曝け出し、交流を重ね、ミラクルシャインたちの絆はまた1つ深まっていく。結果、気づけばテスターの残り時間が10分となっていた。
(もう1時間以上もバーベキューではしゃいだんだ。時間の流れは早いなぁ)
「楽しかったね、コットンちゃん」
「……」
マジカルフォンで残り時間を確認してようやくテスターの終わりがすぐ近くにまで迫っていることを実感したミラクルシャインは隣にいるコットンへと声をかける。が、コットンは返事をしない。無言で、眉を寄せて、何かを考え込んでいる様子だった。
「……コットンちゃん?」
「え、あ、はい。そうですね。テスターに参加して、良かったのです」
改めてミラクルシャインが名前を呼ぶと、ハッと我に返ったコットンがニコリとミラクルシャインに笑いかけるも、どうもミラクルシャインを心配させまいと気を遣った笑みに感じられた。
「コットンちゃ――」
『皆さま、そろそろ残り時間がなくなりそうなので、一旦私の話に耳を傾けてください』
何かコットンが抱えているのなら、友達として力になりたい。ミラクルシャインが意を決してコットンの心に踏み込もうと声をかけようとするも、タイミング悪く小人が現れ、ミラクルシャインたち全員に向けて声を発信したためにミラクルシャインは機を逸することとなった。
『まずは皆さま、50時間に渡るテスターの業務、誠にお疲れさまでした。皆さまが真摯に攻略に取り組んでくれたおかげで十分なデータが取れました。おかげで今後のVRMMO版の魔法少女育成計画をより進化させられると開発スタッフも喜んでおります。皆さま、本当にありがとうございました』
「あらあら。こちらこそ、素敵な皆さんとの出会いの機会をくれてありがとうございますわ」
「ねね、今回がα版のテストってことは次のβ版のテストもあるんだよね? なら次も真摯なゲーム攻略に定評のあるわたしたちを呼んでくれないかなぁ?」
『申し訳ありません。β版のテスターを誰に頼むかは現状では全くの未定です。ですが、皆さまをもう一度招集するよりは、今回と同様に魔法少女のリストから無作為に抽選で選ぶ可能性が高いと思われます』
「ちぇ、さすがにそう上手くはいかないか」
小人が感謝いっぱいにペコペコ頭を下げる動作に呼応して、ファソラもまた優雅に頭を下げて感謝の意を告げる。その傍らで、メタ☆モンは次のテストでも今回と同じメンバーを呼んでくれないかとお願いをするも、小人は複雑そうな表情でメタ☆モンの願いが望み薄であることを伝えた。が、当のメタ☆モンはダメ元での頼みだったらしく、小人の回答に少々残念そうにため息を吐くのみだった。
『皆さまを現実世界に還す際は、皆さまがこのバーチャル世界に入る前に皆さまがいた場所にそれぞれ転送する段取りとなっております。また、皆さまが収集したマジカルキャンディに関してですが、ちょうど3万個となってますので、皆さまを現実世界に戻した後、速やかに皆さまに報酬を現金でお送りいたします』
「3万個ってことは×100円で300万円。1人当たり25万円もらえる計算なの」
「おおぉ! ムイムイたち、一気に大金持ちになっちゃったよぉ~!」
「皆、お金があるからってむやみやたらな浪費は控えた方がいいのだ。まずは全額貯金して、纏まったお金が必要になった時に随時使うのがオススメなのだ」
(そ、そうだ。すっかり忘れてたけど、これ報酬あるんだった。……25万円もらえるんだ。何に使おう? お母さんに何かプレゼントしようかな?)
小人がマジカルキャンディの元に算出される報酬について触れると、星井ミクが脳内でパッパと一人当たりの報酬額を導き出し、ムイムイが25万円という大金に目をキラキラと輝かせる。対するなのだ先輩は、ムイムイを始めとした、25万円を大金と感じて浮足立っている面々に冷静に忠告する。ミラクルシャイン自身はすっかり報酬のことを忘れていただけに、何に報酬を活用したものかと頭の中で軽く考え始める。
『以上で私からの説明を終了させていただきます。何か、質問はありますか? …………なさそうですね。それでは、残り時間が1分を切りましたので、皆さまで軽く別れの言葉を告げ合うといいでしょう。では、また会えることを楽しみにしています』
小人は最後まで丁寧な物腰で言葉を綴り、ミラクルシャインたちから質問の飛ぶ気配がないことを把握すると、虚空に溶け込む形でその姿を消した。
「もう皆とお別れかぁ。……50時間、あっという間だったね」
「みみ、みみ皆と別れるの、寂しいなぁ。ももももっと一緒にいたいよ……」
「会おうと思えば、また会えるよ。マジカルフォンで連絡先も交換したんだしね」
「ミ、ミミミラクルシャインさぁん! そう、だよね! ミミミラクルシャインさんに会いたいって思ったら、いつでも連絡すればいいんだよね!」
ユウキが腕を組んでしみじみと呟くと、メトロノームが沈んだ表情で憂いに富んだ言葉を漏らす。今生の別れでもないのにメトロノームの表情が曇るのはいかがなものかと、ミラクルシャインが明るめな口調でメトロノームを励ますと、メトロノームは先ほどまでの悲しそうな顔とは一転して、気合いの入った発言が返ってきた。
(メトロノームちゃんの住んでる場所次第だけど、メトロノームちゃんとはまたすぐに会うことになるかもね)
ミラクルシャインは時折R市で会うコットンと、ミラクルシャインの元に駆けつけたメトロノームの3人で魔法少女活動に勤しむ光景を想像し、微笑みを零す。今までも楽しく魔法少女活動に取り込んできたが、これからはもっと充実した魔法少女活動ができそうだ。
そんなことを考えていると、ミラクルシャインの手に持つマジカルフォンに示された残り時間がゼロに到達する。瞬間、世界が瞬時に切り替わる。VRMMOな魔法少女育成計画の世界から、現実世界へとミラクルシャインたちは一瞬にして転移する。
だが。ミラクルシャインたちの身柄が小人の言う通りに、バーチャル世界に転移する前に各々がいた場所に転移させられることはなかった。
ミラクルシャインたちは12人一緒に、同じ場所に転移していた。
そして。ミラクルシャインたちを出迎えた現実世界は、現実の都市は。
まるで紛争地になったかのように荒れ果てていた。数多くの建物がボロボロに倒壊し、至る所に土煙や血痕が散乱し、人の気配がどこにもない有様だった。
第2章 楽しい楽しいVRMMO END
→ NEXT 第3章 残虐な正義と被害者面な悪
絶望「よし、もういいよね。さすがに出番に備えてスタンバイしててもいいよね?」
ふぁもにか「うん、いいよ。大変長らくお待たせいたしました」
絶望「やったぜ」
次回【14.絶望の萌芽】
※次回更新は9月19日です。