【完結】オリジナル魔法少女育成計画 罠罠罠   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。この回の戦闘シーンは中々に難産でした。正直、戦闘描写から読者の皆さんが脳内で大体の戦闘イメージを想像できている自信がありません。……あれですね、オリジナル魔法を考える際に執筆しやすさも考慮すべきでしたね。今さらですけどね。



20.一寸先は奈落のみ

 

 

 ☆ラストエンゲージ

 

 終夜(しゅうや)光里(ひかり)には両足がない。膝から下が欠損しているのだ。

 生まれつきの障害ではない。5歳の時に猟奇的嗜好を拗らせた男に衝動的に誘拐され、両足を刃物で切断されたのだ。誘拐犯曰く、まるで天使のように可憐な容姿をしていたから、拷問して堕としたい衝動を抑えきれなくなったとのことだ。

 当時のことはまるで覚えていない。人づてによると、もしも発見がもっと遅れていたら、両腕を切断され、両耳を削ぎ落とされ、両目をくり抜かれていたとか。恐ろしい話だ。

 

 そのような身勝手な凶悪犯罪に巻き込まれたことで、光里の人生は一変した。

 光里は車椅子生活を余儀なくされた。脚の神経自体がズタズタに壊されているから、例え義足の技術が発達しても、両足で立って歩けないだろうと、医者から絶望的な通達を下されたからだ。

 光里は幼少期はメモ帳やノートを、その後はスマートフォンを活用して、筆談で会話をするようになった。当時の記憶がないにもかかわらず、声が一切出せなくなったからだ。

 光里は自分を着飾ることに恐怖を覚え、まるで可愛くない衣装しか身につけなくなった。他人の目を引く自分の整った顔立ちが、第2の猟奇的嗜好保有者をおびき寄せかねなかったからだ。

 光里は人との交流を避けるようになった。人間不信となった光里には、己に好意を向けて接触してくる全ての人が恐怖の権化にしか感じられなくなったからだ。

 

 

 ゆえに、光里は死んだ目で、勉強して。本を読んで。漫画を楽しんで。ゲームに没頭して。

 そうして、時間を単調に消費していくだけの人生を送り続けてきた。

 転機が訪れたのは、20歳の誕生日の時だ。スマートフォンのアプリゲームに飽きたものの、それでも今まで積み上げてきた実績を放棄したくなくて、魔法少女育成計画を惰性で続けていたら、本物の魔法少女:ラストエンゲージになることができた。

 

 ラストエンゲージになって、再び足で立つことができた。声を出せるようになった。

 5歳の時から15年間、ずっと声を出してこなかったから、まだあまり流暢には話せないけれど。人との交流を避けていたから、上手に感情を表出させられないけれど。

 魔法少女に変身できることはラストエンゲージにとって、間違いなく天からの救いだった。

 

 光里は暇があればすぐにラストエンゲージに変身した。派手なコスチュームを地味な服装に着替えた上で、昼夜関係なく、街で遊び歩いた。思うがままに街を楽しんだ。

 結果。世界はこんなにも輝いていたことを、光里の心は思い出すことができた。

 

 確かに光里は幼少期にとんでもない不幸に見舞われた。

 だが、だからといってそのまま今後一生腐り続けているのは違うだろう。

 腐っていた15年間が無駄だと切り捨てるつもりはない。だけど、これからはもっと有意義に人生を過ごそう。魔法少女は、光里に充実した人生を提供してくれるのだから。

 

 魔法少女という希望を手にしたことで、光里はようやく前向きに生きられるようになった。

 だと言うのに。世界は再び光里に牙を剥いた。VRMMOな魔法少女育成計画をテスターとして体験していると思いきや、ラストエンゲージはR市の住民の虐殺に加担しているだけだった。

 無気力で、疑り深くなった光里を精力的に支えてくれた両親すら、ラストエンゲージは骸骨モンスターと認識して槍で突き殺してしまった。

 

 やっぱり世界は残酷で。腐っていて。狂っている。

 どうして神様はこんなに惨い世界を生み落としてしまったのだろうか。

 こんなふざけた世界なんて、いっそ作らなければよかったのに。

 

 

「……よっと……」

 

 R市の廃ビル5階に放り込まれたゴムボールの爆発により、遥か遠くへと吹っ飛ばされたラストエンゲージは墜落の直前に体を前転させて上手く足を下に移動させたために、両足でしかと着地することができた。その際、ラストエンゲージの両足がジーンと痺れ、痛みが足を突き抜けたが、外傷は負わずに済んだ。

 

 

「……ここは……?」

 

 豪雨をたっぷり吸収したラストエンゲージのグレーのセミロングな髪が顔に貼りつく中。ラストエンゲージはキョロキョロと周囲に視線を配ると、和式タイプの墓石が辺り一帯に整然と並んでいる様子が目に入った。どうやらここは墓地らしい。

 

 墓地で騒がしくしていたら墓石に眠る先祖の霊たちも迷惑だろう。ラストエンゲージがいそいそと墓地を後にしようとした時、ふと目に入った。墓石の間を縫うように展開されている草むらに、頭の埋まった誰かの姿がラストエンゲージの視界の隅に偶然映った。黒のローブに身を包む誰かに、ラストエンゲージは既視感があった。そう。いつかと同様に、フォーチュンテラーが頭から埋まっていたのだ。

 

 

「ぷはー! 息ができる! 死ぬかと思った! ありがとな、ラスト!」

「……どういたしまして……」

 

 つい3日前の再現のように、ラストエンゲージがフォーチュンテラーの両足を引っ張って、土からフォーチュンテラーの顔を解放すると。フォーチュンテラーは頭に乗っかった土をフルフルと首を振って落としつつ、ラストエンゲージに感謝の意を示した。

 

 

「って、ここ墓地やん! うわぁ、罰当たりなことしちゃったなぁ……」

「……墓石に頭から突撃しなかっただけ、マシ……」

「そうやとええけど。けど、なんでウチらいきなり飛ばされたんや?」

「……廃ビルにゴムボールを投げ込まれた。西田中学校でうさみみ帽子の、ぽむらちゃんだっけ? それがゴムボールでミクの流れ星やムイムイのロケット弾を吹っ飛ばしてた。だから、わたしたちはゴムボールの爆発で飛ばされたかと……」

 

 フォーチュンテラーは自身が墓地に埋まってたと知ると、呪われるのではないかと顔を青ざめる。が、ラストエンゲージの言葉で気を持ち直したフォーチュンテラーがふと疑問符を頭上に浮かべたため、ラストエンゲージは己の推測をフォーチュンテラーに提示した。

 

 

「なるほどなぁ。あれはぽむらちゃん特製の魔法のゴムボールってことか」

「……とにかく、早く皆と合流するべき。わたしもフォーも、魔法が戦闘向きじゃない。今、手練れらしい追っ手とのエンカウントは大変危険……」

「見つけたぴょん! 私の索敵能力も中々捨て切れたもんじゃないぴょん!」

 

 得心がいったらしい様子のフォーチュンテラーにラストエンゲージが墓地からの移動を主張する。と、その時。ピンクと白のカシュクール・ワンピースにうさみみ帽子の魔法少女――ぽむらちゃん――がバシャと水たまりを踏み鳴らしてラストエンゲージたちの前に登場した。

 

 

「ちょッ、噂をすれば影やんか!」

「ここで私に見つかったのが運の尽きぴょん! 2人とも、ここで大人しく死にさらすぴょん!」

 

 墓地には2人しかいないと思い込んでいただけに、ぽむらちゃんの不意打ちな登場にフォーチュンテラーが驚く一方、ぽむらちゃんは両手にカラフルなゴムボールを掴み、ラストエンゲージたちを逃がすまいと臨戦態勢に入る。

 

 

「……フォー。ここはわたしに任せて逃げて……」

「ラスト!? いや、でも――」

「……なのさん曰く、敵は手練れとのこと。フォーを守りながら戦うのは厳しいかと……」

「……いや、守る必要はあらへん。ウチも戦う」

「……え? でも……」

「ウチは戦えないんやない。戦ったことがほとんどないから戦闘を避けてただけや。でも、今はそんなわがまま言っとる場合やない。ラストの足は引っ張らへんから、お願い。一緒にいさせて」

「……実はわたし、内通者。だから、わたしからすぐに離れるべきかと……」

「ウソやな。もしラストが内通者なら、埋まってるウチを助けんで、居場所を通報するはずや。……ラスト。ウチはなに言われても戦うで。ウチは本気や」

 

 ラストエンゲージは槍を構えつつ、フォーチュンテラーをぽむらちゃんから逃がそうとする。ためらうフォーチュンテラーに若干遠回しに足手まといだと、ラストエンゲージが主張するも、それでもフォーチュンテラーは退かなかった。困惑するラストエンゲージをよそに、フォーチュンテラーは確かな戦意を両目に宿し、ぽむらちゃんを見据える。敢えて己が内通者だとウソをつくとのラストエンゲージの試みも、即刻フォーチュンテラーに看破される。

 

 

「……そう。くれぐれも、気をつけて……」

「大丈夫や! 古今東西、いかなる創作物でも、未来視の能力者は強キャラ扱いが定石やからな!」

 

 フォーチュンテラーには戦う覚悟ができている。ならば、これ以上撤退を要求するのは野暮だ。ラストエンゲージは慎重に戦うように要請し、フォーチュンテラーは力強い口調で返答した。その間、ぽむらちゃんは動かなかった。ただ、ラストエンゲージたちの会話の推移を観察していた。

 

 

「……どうして、待っててくれたの……?」

「待ってた? 違うぴょん! これは情報収集だぴょん! おかげでそっちの占い師なコスチュームの方は戦闘初心者だってわかったぴょん!」

「あ」

「……なるほど……」

「わざわざ情報ありがとぴょん! それじゃ、始めるぴょん!」

 

 ラストエンゲージが疑問のままに問いかけると、ぽむらちゃんは少しでも戦闘を優位に運ぶために敢えて速攻で戦闘を仕掛けなかったことを告げる。敵に無駄に情報を渡してしまったことにフォーチュンテラーがしまったと目を見開き、ラストエンゲージがぽむらちゃんの行動に納得する中。これ以上の情報は望めないと判断したぽむらちゃんが、動き出した。ぽむらちゃんはググッと膝を曲げ、直後。音速に匹敵するほどのスピードでラストエンゲージたちに接近した。

 

 が、ラストエンゲージは己の目の前の空間へと冷静に槍を振るう。ぽむらちゃんが一息に距離を詰める直前、未来視の魔法を行使したフォーチュンテラーが、ラストエンゲージの耳に聞こえる程度の小さな声で「まっすぐ来る、凄く速い」とのみ呟いたからだ。

 

 

「ぴょん!?」

 

 ラストエンゲージの槍はカウンターとしてぽむらちゃんの体を切り裂けたはずだった。が、ぽむらちゃんが右足で地面を踏んだ瞬間、ぽむらちゃんが10メートルほど真後ろに吹っ飛んだため、ラストエンゲージの槍の穂先は空を切るのみだった。

 

 

「な、何やあの動き!?」

「……多分、靴にゴムボールを仕込んでる……」

「あー、なるほど。ミクみたいに、ゴムボールの大きさは自由自在ってパターンか」

 

 ぽむらちゃんの奇天烈な動き方にフォーチュンテラーが驚愕する中。ぽむらちゃんの靴底に破裂したゴムボールの一部がくっついていることに目ざとく気づいたラストエンゲージが己の推測を話し、フォーチュンテラーとぽむらちゃんの情報を共有する。こうして、少しずつぽむらちゃんの戦闘スタイルを暴いていけば、直に2対1の強みでラストエンゲージ側が優勢になるはずだ。

 

 

「ッ!? 上から衝撃がッ!?」

「……あぐッ……!?」

 

 と、その時。未来視で新たな攻撃を知ったフォーチュンテラーが反応するより早く、ラストエンゲージとフォーチュンテラーは突如として地面に叩きつけられた。まるでラストエンゲージたちの立っている場所だけ重力が何倍にも跳ね上がったのではないかと錯覚するほどに、地面にヒビを入れる勢いで地面に体をぶつけることとなったラストエンゲージたちは、衝撃に逆らって立ち上がることができない。

 

 おそらく、ぽむらちゃんはラストエンゲージたちの元へと一気に距離を詰めた時にでも、ラストエンゲージたちの真上にいくつものゴムボールを投げ飛ばしていたのだろう。敵を目の前にして動けない。非常にマズい状況に陥ったラストエンゲージが両手に渾身の力を込めて気合いで立ち上がろうとした時。ラストエンゲージとフォーチュンテラーの間に滑り込ませるように、ぽむらちゃんがゴムボールを放り込んだ。

 

 

「……ぐ、ぅぅ……!」

 

 刹那。ラストエンゲージとフォーチュンテラーはそれぞれ左右に吹っ飛ばされた。ラストエンゲージは墓石をいくつか巻き込んで派手に吹き飛ぶも、地面に槍を突き刺すことでどうにかその場に踏みとどまる。背中で墓石をぶち破ったため、背中を起点に激痛が伝播し、思わず顔をしかめるラストエンゲージのすぐ目の前にぽむらちゃんが迫る。

 

 

(狙いはわたしか!)

 

 明らかに槍の間合いでないほど近くへのぽむらちゃんの接近を許している。ゆえに、ラストエンゲージは槍の穂先でなく、柄でぽむらちゃんの胴を貫こうとする。結果、はたしてラストエンゲージの柄はぽむらちゃんのみぞおちに命中した。ぽむらちゃんは「うごッ!?」との、およそ女子らしくない悲鳴とともにバックステップでラストエンゲージとの距離を取った。

 

 一方。初めてぽむらちゃんに一撃を与えられたラストエンゲージは嫌な予感がしていた。今の槍の柄での攻撃は、ぽむらちゃんからすれば余裕で避けられたはずだ。なぜなら、ぽむらちゃんが最初にゴムボールの爆発を活用して超スピードでラストエンゲージに近づいた際、ほぼ完璧なタイミングでカウンターの槍を振るったにも関わらず、とっさに靴底のゴムボールを爆破して攻撃を回避できるぐらい、とっさの判断力に長けているはずなのだから。

 

 

「うぐぐ、今のは本気で痛いぴょん。けど、これでチェックメイトだぴょん!」

 

 痛そうにお腹を押さえ、目尻に涙をにじませるぽむらちゃんだったが、直後。ニィィと口角を吊り上げた。まるで狙った獲物がぽむらちゃんの手のひらで終始思い通りに動いてくれる様子を高みの見物でニタニタ楽しんでいるかのような、そんな愉悦の表情をぽむらちゃんは浮かべていた。

 

 マズい。何かをしないとマズい。でも、何をしないといけないのかがわからない。ラストエンゲージの第六感が警鐘をガンガン鳴らす中。とにかくぽむらちゃんの視界から一旦外れるために、墓石を遮蔽にしようとラストエンゲージが動こうとして、しかし一歩も動けなかった。この瞬間、ラストエンゲージに強烈な衝撃が上下左右前後の6か所から同時に襲ってきたからだ。

 

 

「……がふッ……!?」

 

 衝撃が、ラストエンゲージの体を貫く。一方向からの衝撃であれば、ラストエンゲージは衝撃を喰らって吹っ飛ばされるのみだ。しかし、此度の衝撃はラストエンゲージが吹っ飛ばされることを許さないように、上下左右前後から同時にラストエンゲージを襲っている。結果、逃げ場のない衝撃がラストエンゲージの体で暴れ狂う。

 

 まるで前後左右から同時に暴走トラックに衝突され、空から落ちてきたロードローラーに押し潰され、真下から勢い任せに急上昇するジェットコースターに轢かれたかのような感覚。魔法少女の頑丈な体であってもとても耐えられそうにないほどの怒涛の攻撃を受けたラストエンゲージは。あっけなく、最後に何かを思考することすら許されずに。6方向からラストエンゲージに集束してきた凄まじい衝撃により、圧殺された。ブチュッとの体が潰れる音。それがラストエンゲージが捉えた最後の感覚となった。

 

 

 己の上位互換へと変身できる可能性を秘めた魔法少女、ラストエンゲージ。

 しかし、彼女が第二形態へ移行し、性能を披露する機会は終ぞ訪れなかった。

 

 

 ☆フォーチュンテラー

 

 

 ――時は少しさかのぼる。

 

 

 ぽむらちゃんがいつの間にかフォーチュンテラーたちの頭上に放り投げていたゴムボールの爆発により、まるで重力魔法でも喰らったかのように地面に縫い止められた後。ぽむらちゃんがラストエンゲージとフォーチュンテラーの間に転がしてきたゴムボールの爆発により、ラストエンゲージとは真逆の方向へと吹っ飛ばされたフォーチュンテラーの体は墓地の一角に根を張る大樹に頭から衝突したことでようやく止まった。なお、フォーチュンテラーの顔が大樹の幹に埋まる、なんて事態は発生しなかった。

 

 

「いったぁぁあああ!」

 

 頭蓋が割れるのではと錯覚するほどの頭痛にフォーチュンテラーは頭を両手で押さえ、痛みから逃れたい一心で、地面に倒れ込み勢いよく転がっていく。が、今が戦闘中だと思い出したフォーチュンテラーはハッと我を取り戻し、頭痛に必死に耐えながら立ち上がる。そして、一刻も早くラストエンゲージと合流するべく、フォーチュンテラーが吹っ飛ばされた方向とは逆へとひた走る。そうして。しばし走ったフォーチュンテラーが目撃したのは、ラストエンゲージの体がグシャッと潰れる様だった。体の大部分は形を失った肉塊と成り果て、圧砕を免れたラストエンゲージの手や足の数本の指などのいくつかの体のパーツがポトポトと地面へと落ちていく様だった。

 

 

「は、え?」

「私の魔法は『対象を吹っ飛ばす魔法のボムを生み出せる』って魔法だぴょん。この対象って所がミソで、私が吹っ飛ばしたいと思ったものはビームだろうとなんだろうと吹っ飛ばせるし、吹っ飛ばす威力も、ボムのサイズや形状も好きに設定できるぴょん。だから、限りなく透明で小さいボムを、貴女を囲むように放り込んで、貴女を吹っ飛ばすつもりで一斉に爆発させてやれば、貴女をあっという間にミンチにできるぴょん! ……ま、さすがにもう聞こえてないと思うけど、一応説明しとくぴょん」

 

 あまりに凄惨なラストエンゲージの死の瞬間を見てしまったフォーチュンテラーが放心する中。ぽむらちゃんは懇切丁寧に己の魔法を解説する。その表情は敵を上手に罠に嵌めて殺せた達成感からか晴れやかで、ラストエンゲージのグロい死体など意にも介していない。

 

 

「さて、次は貴女の番だぴょん!」

「ぃえ!?」

(あかん! ダメや、こんな化け物に勝てるわけがない! 逃げ、逃げへんと!)

 

 ぽむらちゃんがフォーチュンテラーへと振り向き、ニッコリ笑顔で死刑宣告をしてきたことでフォーチュンテラーはどうにか我を取り戻す。ラストエンゲージの惨い死に様を目の当たりにしたことで、フォーチュンテラーの戦意は、戦う覚悟はすっかり砕け散った。今のフォーチュンテラーの心を占めるのは、恐怖対象からの逃走願望である。

 

 

「おわッ!?」

 

 ぽむらちゃんがひょいとゴムボール、もといボムを己の眼前に軽く投げる。対するフォーチュンテラーは慌ててその場にしゃがみ込んだ。直後、フォーチュンテラーのすぐ上を風の奔流が突き抜けていく。ぽむらちゃんはボムで空気を吹っ飛ばして、フォーチュンテラーの体をさらおうとしていた。その未来を魔法で事前に察知したがゆえのフォーチュンテラーの回避行動である。ちなみに、先ほどの重力魔法を喰らったかのような衝撃もまた、上空から地面へと空気を吹っ飛ばした結果なのだろう。

 

 

(つ、次はどんな攻撃が……!?)

「遅いぴょん!」

「ぁぐッ!?」

 

 今の調子で未来を見てから対処をすれば少なくとも死なずに済むはずだ。フォーチュンテラーが再び未来視を行おうとした時、既にぽむらちゃんはフォーチュンテラーの目と鼻の先にまで近づいていた。靴底に仕込んだボムを爆破させて迅速にフォーチュンテラーとの距離をゼロにしたぽむらちゃんはフォーチュンテラーの顔を殴り飛ばす。その際、ぽむらちゃんが拳を形成する指の隙間に仕込んだ極小サイズのボムが発動したため、フォーチュンテラーの体は遥か遠くへと吹っ飛ばされる。フォーチュンテラーの体は幾多もの墓石を破壊しながら吹っ飛び続け、壊れた墓石の数が15を超えた頃にようやく勢いが収まり、地面に転がり止まることを許された。

 

 

「えっと。内通者によると、貴女の魔法は3秒先までの自分の未来を覗けるって魔法だったぴょん? 確かに戦闘で未来の情報を活用できるのは凄く強力だけど、未来から情報を仕入れるにも時間がかかるのなら、隙がいっぱいで本末転倒だぴょん。要は、未来視は戦闘初心者が採用すべき手段じゃなかったってことだぴょん!」

「う、ぇう、く……」

 

 ぽむらちゃんは未来視を駆使する戦法に対して自論を展開しつつ、フォーチュンテラーの元へとテクテク近づいていく。一方、フォーチュンテラーはぽむらちゃんから逃げるべく体に力を入れるも、立ち上がることすらできなかった。体の随所を墓石に強くぶつけた影響で、全身に打撲を負い、全身をあまねく駆け巡る激痛に、苦悶の表情を浮かべることが精一杯だった。

 

 

「さて。勝敗は決したし、サクッと処刑するぴょん!」

「い、いやや! ウチはまだ、死にたくない……!」

「……いや、ねぇ」

 

 ぽむらちゃんはひょいっと、仰向けに倒れるフォーチュンテラーの腹にまたがり、これ見よがしにボムを見せる。一体、そのボムで何をするつもりなのか。ラストエンゲージみたいに、酷い方法で殺すつもりなのか。フォーチュンテラーはぽむらちゃんに怯え竦み、ボロボロ涙を流しながら命乞いをする。が、ぽむらちゃんに命乞いは地雷だった。目に見えて不機嫌となったぽむらちゃんはフォーチュンテラーの頬を引っ張り、無理やり開けさせられた口の中にボムを突っ込んだ。

 

 

「んん!?」

「そうやって命乞いをしたであろう人たちを貴女は容赦なく殺してきたぴょん。その罪を思い知るぴょん!」

 

 フォーチュンテラーはボムを吐き出そうとするも、ぽむらちゃんはフォーチュンテラーの口を塞ぎ、速やかにボムを起爆させた。結果、フォーチュンテラーを吹っ飛ばす対象に定めたボムの爆発は、フォーチュンテラーの歯を根こそぎ折り、舌を焼き切り、口内をぶち破って鼻腔と顎下にかけて穴を作り、声帯を潰しきった。

 

 

「ッッ!? ッ!!」

(ああッ、ぁぁあああああああ!! 痛いぃ、痛いいいッ……!)

 

 口の中でボムを爆発させられたフォーチュンテラー。一般人なら即死確定の爆発だったが、魔法少女だった影響か、フォーチュンテラーはまだ生きていた。が、ここで死んだ方が幸運だったのは間違いない。顎下の穴からボドボドと血が零れ落ちる中。フォーチュンテラーはあまりの激痛に正気をほぼ失い、血の涙を流し、地面をのたうち回る。声帯が潰れ、さらには口の内部から大きな穴を開けられたため、叫ぶことすらできない。

 

 

「おっと、頭を完全に爆破し損ねたぴょん。でも、まぁいいぴょん。相手は悪の魔法少女なんだから、少しぐらい苦しんでくれないと話にならないぴょん」

「ッッッ!!」

「ねぇねぇ、せっかくだから未来を覗いてみるぴょん。もしかしたら誰かが貴女を助けに来てるかも?」

「ッ!」

 

 激痛の暴力でぽむらちゃんの話なんてまともに耳に入らないフォーチュンテラーだったが、『未来』というワードだけは認識することができた。そのため、フォーチュンテラーはわらにもすがる思いで未来視の魔法を行使した。現在進行形でフォーチュンテラーの身に余る激痛から解放してくれる希望の到来に期待して、未来の自分を見た。

 

 が、俯瞰視点で覗いたフォーチュンテラーの未来には絶望が待っていた。もう一度ぽむらちゃんに、口の中にボムをねじ込まれ、頭が、上半身が爆発で弾け飛ぶ絶望的な未来が待っていた。

 

 

「ぁ……」

「ま、助けが来ようともう手遅れぴょん」

 

 希望なんてなかった。待ち受けるのは逃れようのない絶望のみ。

 完全に心が砕け散ったフォーチュンテラーの口に、ぽむらちゃんが次なるボムをねじ込み、爆発させる。ここで、フォーチュンテラーの意識は為すすべもなく消し飛んだ。

 

 

 優秀な家族と同じ土俵に立つため努力を続けた魔法少女、フォーチュンテラー。

 魔法で一寸先を見据えることのできた彼女の先にはもう、闇しかない。

 

 

『魔法少女以外誰もいない、ボロボロに崩れ去ったR市全域にて。罪なき市民を容赦なく虐殺した悪の魔法少女と、正義の炎を胸に宿す将来有望な魔法少女とのガチンコバトル。果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか!?

 

○正義の魔法少女:残り4名

■EFB

■ルディウェイ

■スウィーツ

■ぽむらちゃん

 

○悪の魔法少女:残り8名

■ミラクルシャイン

■コットン

■メトロノーム

■サンタマリア【DEAD】

■メタ☆モン【DEAD】

■ユウキ

■なのだ先輩

■星井ミク

■フォーチュンテラー【DEAD】

■ムイムイ

■ファソラ

■ラストエンゲージ【DEAD】

 

○履歴

20■■/09/12 13:21 ぽむらちゃんさんがフォーチュンテラーさんを殺しました!

20■■/09/12 13:17 ぽむらちゃんさんがラストエンゲージさんを殺しました!

20■■/09/12 13:16 ルディウェイさんがサンタマリアさんを殺しました!

20■■/09/12 12:24 スウィーツさんがメタ☆モンさんを殺しました!』

 

 




絶望「あぁ。人間、やっぱり命の尽きる瞬間こそが儚く、そして美しいものだね」
ふぁもにか「後々ラスボスに昇華しそうなセリフを絶望が吐いてる件」

次回【21.執念の果てに手を添える】
※次回更新は10月24日です。
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