Q.オリジナル魔法少女の本名にちらほらキラキラネーム感があるのはどうしてですか?
A.あまりにもありきたりな名前だと、読者の皆さんの名前と被るかもなのでその対策です。特にこの作品では凄惨な死を遂げるキャラもいるので、そのキャラと名前が一緒だったら不快になるよなぁってことも気にしつつ、魔法少女たちの本名を決めているのです。
どうも、ふぁもにかです。おそらく今回が一番能力者バトルっぽい展開になってると思われます。具体的には「なん…だと…!?」ラッシュ。こういう展開って思いつくまでは大変なんですけど、執筆の段階になると凄く楽しいんですよねぇ。
☆ムイムイ
幼い頃、両親は初めての子供である姉に構ってばかりで、夢唯はあまり遊んでもらえなかった。
長女には新しい玩具や洋服が買い与えられるも、次女の夢唯に与えられるものは全て長女のお下がりだ。また、三女が生まれると、両親は末っ子を甘やかし、これまた夢唯に振り向いてはくれなかった。夢唯が甘えようとすると、「夢唯はお姉ちゃんでしょ」と諭された。
夢唯は手のかからない賢い子供として、両親から放置されがちだったのだ。
両親に悪意がないことは、両親が夢唯も愛していることは百も承知だ。
でも淋しかった。夢唯にもきちんと時間を割いてほしかった。
夢唯もちゃんと愛しているのだとのわかりやすい証拠をほしかった。
そのような幼少期ゆえか、夢唯の中では人一倍物欲が膨らんでいった。
自分への形のある愛がもっとほしい。自分のためだけの物がほしい。
ゆえに、夢唯は学生生活を送る中で、まず広く浅く交友関係を構築した。
そして、夢唯に物をプレゼントしてくれる人とより友情を深めていった。
物がほしい。自分だけの物がほしい。その衝動が、夢唯の行動原理だった。
夢唯は実年齢より3歳ほど年下に見られがちな、愛らしい容姿をしている。
だから。夢唯は物をくれる友人に事欠かなく、16歳になる頃には夢唯の物欲はある程度満足し、落ち着きを見せていた。そんな時だ。夢唯がスマホのアプリゲームである魔法少女育成計画を介して、本物の魔法少女:ムイムイに変身できるようになったのは。
魔法少女になり、『イメージを現実に具現化できる』魔法を使えるようになった時、夢唯は一生で一番興奮した。何せ、これからはほしいと思った物は想像力次第で何でも生み出せるのだから。今までのように、物がほしいあまりに相手に媚びる必要がなくなったのだから。
人付き合いが嫌いなわけではない。だが、相手に好かれるように意識して演じるのと、自分を無理に演じずに自然体でコミュニケーションを取れるのとは、大違いだ。
その後。夢唯は自然体の性格を曝け出すようになった。
例え一部の人が夢唯に幻滅して物をくれなくなっても、魔法で召喚できるからだ。
が、結局。素の夢唯を避ける者は現れず、むしろ夢唯に好感を抱く者が多くなった。
人脈もまた、夢唯の物だ。増えるのなら、当然嬉しかった。
夢唯の部屋には値段は安いが、色んな物であふれるようになった。
あまりに高価な物がいきなり部屋に増えては家族に怪しまれるし、そもそも夢唯には物があれば、その物の価値などどうでもよかったからだ。
そして。VRMMO版の魔法少女育成計画のテスターに参加したことで、11人もの個性的な魔法少女の同士と出会い、幅広い人脈を獲得することができた。
しかし、せっかく手に入れた色んな魔法少女との交友関係が今、奪われている。
テスターの話はウソで、実際は夢唯の家族やR市の住民を殺戮していただけだった。
そして、ムイムイたちを生かす価値のない犯罪者として、殺害を目論む魔法少女たちがいる。
そんな魔法少女たちの暗躍により、マジカルフォンには着実に【DEAD】の数が増えている。
12人もの魔法少女が一斉にVR空間の映像を幻視するなど、悪意ある犯人の働きかけがなければあり得ない。だから、ムイムイたちが陥った現状は、何者かの理不尽で狡猾な罠によるものだ。誰かの策略のせいで、せっかく仲良くなった皆との絆が踏みにじられようとしている。
許せない。夢唯がほしいと考え、実際に手に入れた物を取り上げようだなんて絶対に許せない。ムイムイは静かに、己の心の中に怒りを積み上げていた。
「……んぅ。皆、どこにいるのかなぁ?」
R市の廃ビル5階に放り込まれたゴムボールの爆発により、R百貨店3階のメンズファッションフロアに吹っ飛ばされ、頭から床に埋まる形で墜落したがために十数分ほど気絶していたムイムイは、意識の覚醒と同時に床に両手をついて、力づくで埋まった頭を引っ張り出しつつ、その場に立ち上がる。その後、自分と同様にR百貨店に飛ばされ、頭から埋まっている魔法少女がいるのではないかと屋上から1階まで隈なく捜索していたムイムイだったが、結局は誰も見つけられないまま、3階のメンズファッションフロアに戻っていた。
(って、そうだ! こーゆーアイテムを召喚したら捜しやすいかもぉ)
「むむむ……」
やみくもに魔法少女を捜し回ることの効率の悪さを改善するための道具の着想を得たムイムイは早速脳内にアイテムの詳細を思い浮かべる。すると、ムイムイの手のひらに召喚されたのは、長方形&薄型の、手のひらサイズの機械。ムイムイのマジカルフォンから最も近くにあるマジカルフォンの居場所をナビゲートしてくれる機械:マジカルフォンサーチャー(※以後、MS)だ。
「よぉーし、召喚できたぁ! これで皆を捜せるねぇ」
ムイムイはMSを上に掲げて、キラキラとした眼差しを注ぐ。そして、MSを掲げたままの状態でMSの画面を覗き込むと、『R百貨店1階エスカレーター前』と表示されていた。
「あれぇ? さっきはいなかったけどぉ……」
1階はさっきムイムイがしっかりと捜索したし、エスカレーター前なんて死角のなさそうな所を見逃すとは思えない。ムイムイが不可解さにコテンと首を傾げていると。パタ、パタと足音が聞こえてくる。ムイムイがエスカレーターを見つめていると、20秒後。水色のスモックに青色のスカート、黄色い帽子といった幼稚園児な衣装の魔法少女が姿を現した。
☆ルディウェイ
正直者こそ得をするべきで。嘘つきこそが報いを受けるべきで。
正義を為した者が称賛されるべきで。悪に走った者が罰を被るべきで。
だけど、現実社会はそのように回っていない。
正直者はバカを見て。嘘つき上手が利益を享受できる。
正義を為しても報われるとは限らず、漁夫の利を得た者が脚光を浴びる。
罪を犯さず生きるより、いっそ犯罪を犯した方が総合的に得になることもある。
おかしい、この世界はおかしいのだ。
でも、だからといって自分にできることは何もない。
世界を相手取ろうにも、世界を更生させようにも。
自分1人なんて、世界からすればわがままいっぱいな5歳児と同様だ。
そのため、心にくすぶった思いを抱えたまま生きてきた瑠璃が登録して1週間で放置していたスマホのアプリゲームの魔法少女育成計画を介して本物の魔法少女になった時。
ルディウェイが真っ先に始めたのは、日本中の刑務所に収監されている、1人以上の人を殺しておきながら死刑判決を受けなかった囚人たちを襲撃し、皆もれなく殺害することだった。
結果、ルディウェイは魔法の国から追われる身となったが、それでもルディウェイは刑務所襲撃を続けた。正義を為した者が正しく評価されないのが今の社会だと瑠璃は理解しているため、指名手配犯となっても大してショックは受けなかった。
今の社会は浄化されるべきだとの認識をますます深くしただけだ。
ルディウェイが魔法少女の追っ手をかわしつつ、囚人殺しを続行していたある時。
とある魔法少女がルディウェイに接触してきた。顔は覚えていない。
時折気になって、思い出そうとするのだが。結局はどうでもよくなってしまう。
だが、その魔法少女の言葉はよく覚えている。
彼女は、ルディウェイの活動を認めてくれた。正しいと称賛してくれた。
例え世界中の誰もがルディウェイが間違っていると非難し、糾弾したとしても。彼女はルディウェイの今の活動を続けるべきだと背中を押してくれた。今は認められずとも、後世になればルディウェイの活動は見直されるに違いないと、太鼓判を押してくれた。
ルディウェイは非常に喜んだ。初めて、ルディウェイの思想に共感してくれたからだ。
今まで孤独だったルディウェイに味方ができた。嬉しくないわけがなかった。
そして、彼女は言った。近々、日本のどこかで魔法少女の集団が大規模の犯罪を犯す。
それは予言により知った未来なのだが、その予言はどうあがいても覆せない類いのものだ。
だから、その大規模犯罪が発生した時。下手人の魔法少女たちを粛清してほしいと。
凶悪犯罪者な魔法少女が今後さらなる罪を犯す前に、命を摘み取ってほしいと。
ルディウェイは即刻、うなずいた。だから今、ルディウェイはR市にいる。
ルディウェイと志を同じくする、EFB、スウィーツ、ぽむらちゃんとともに、R市に潜伏する殺人鬼な魔法少女たちを殺戮し尽くそうとしている。
しかし、ルディウェイは魔法の国から指名手配されているはずなのに。
どうして魔法の国から派遣された体になっているのだろうか。
あたしの知らない所で、彼女が手はずを整えてくれたのだろうか。
わからない。わからない。でも、別にわからなかろうと、どうでもいい。
今のあたしはただ、1人でも多く、殺人鬼な魔法少女を殺すのみだ。
「……」
礼拝堂でサンタマリアの首をねじ切って殺したルディウェイは、次なる獲物を捜してR市を捜索していた。サンタマリアが蹴飛ばした方向にまだゴスロリ服の魔法少女ことメトロノームがいるのではないかとテキトーに当たりをつけて捜しているのだが、一向にメトロノームが見つかる気配はない。
姑息な殺人鬼らしく、犯罪者仲間を見捨てておめおめと遠くに逃げたか。ルディウェイがメトロノームにこだわることをやめて改めて周囲を見渡し、耳を澄ませていると。R百貨店から人の気配を察知した。ルディウェイの気配察知能力は大層優れている。そのため、ルディウェイは確信をもってR百貨店に入り、エスカレーターを上がる。はたして、R百貨店の3階にルディウェイの捜し人はいた。猫の着ぐるみパジャマを着た魔法少女がジッとルディウェイを見つめ返していた。
「お、いたいた☆ あたしを待ってたみたいだね☆ しっかし、罠の1つも仕掛けないで待ち受けるなんて、殺人鬼にしては警戒心がなさすぎなんじゃないかな?」
「えっとぉ。貴女は確かルディウェイだっけぇ? ……その、随分と恥ずかしいコスチュームだねぇ。見てるムイムイの方が照れちゃうよぉ」
ルディウェイは猫の着ぐるみパジャマの魔法少女に手をヒラヒラと振りながら、にこやかな笑みを携えて言葉をかける。すると、当の魔法少女――ムイムイ――はまるで痴女にでも出くわしたかのような目つきでルディウェイを見据え、苦笑いと目逸らしで返してきた。
「いやいや、幼い女の子って感じで可愛いじゃん! それに、猫の着ぐるみパジャマを着てる人に言われたくないよ☆ ……ていうか、あたしの名前を知ってるんだね☆」
「あー、うん。何か頭にビビッと電波が来たんだぁ」
「電波? ……何か調子狂う奴だなぁ☆」
正直さと正義の象徴である幼稚園児なコスチュームを馬鹿にされたことにルディウェイは声を荒らげ、ムイムイのコスチュームこそ恥ずかしいのではないかと指摘する。その際、初対面なのに己の名前を言い当てられたことに関して探りを入れるも、ムイムイの天然に満ちた答えに、ルディウェイはムイムイとはシリアスな会話はできないなと悟った。
「それよりぃ、マジカルフォンで見たんだけど、貴女がサンタマリアちゃんを殺したんだよねぇ?」
「サンタマリア? もしかして、あの修道女服の魔法少女? なら、その通りだよ」
「そっかぁ」
「で? だったら、どうするの?」
「んー、悩むけどぉ。ここは順当にハチの巣の刑かなぁ!」
と、ここで。ムイムイが声色を変えてルディウェイに問いかけてくる。ルディウェイはムイムイの質問に肯定し、にへらと笑うことでムイムイを煽ってみる。すると、ムイムイはその手にアサルトライフルを召喚し、ルディウェイに狙いを定めて引き金を引いた。
「ちょおおおお! 容赦なさすぎでしょ!?」
「容赦ぁ? なんでムイムイが、サンタマリアちゃんを殺した貴女に容赦しないといけないのぉ? それにムイムイは悪の魔法少女なんだよねぇ? 悪なんだからぁ、怒りのままに動いて何か悪いのぉ?」
ムイムイのアサルトライフルの連射から逃れるため、ルディウェイはメンズファッション店に入り、飾られた男性服を遮蔽にする。その際、ルディウェイはムイムイの戦い方に声高に文句を主張するも、対するムイムイはルディウェイの意見など知ったことかと、ルディウェイの逃げ込んだ店内の棚や洋服を銃弾の力で派手に薙ぎ払いながら、ルディウェイを追い詰めにかかる。
(大丈夫、チャンスはある☆ 銃弾のリロードが必要になった時に――ここ!)
上手く棚を利用して間断なく放たれる銃弾を回避したルディウェイは、アサルトライフルの連射音が途切れたタイミングでボイスレコーダーの再生ボタンを押しつつ、ムイムイの前へと飛び出す。ルディウェイの見据えるムイムイはアサルトライフルのリロードを行っていなかった。銃弾を撃ち尽くしたアサルトライフルを足元に投げ捨て、手元に新品のアサルトライフルを召喚し、照準をルディウェイに向けていた。
(マズい!? いやでも、あたしの方が早い!)
「あっち向いてホイ!」
『あっち向いてホイ!』
ルディウェイは己の地声と、ボイスレコーダーに収録したルディウェイの声に合わせて、ピンと人差し指を左に向ける。ルディウェイの魔法は『あっち向いてホイで絶対に勝てる』というもの。それゆえに、ルディウェイは魔法行使により、対象者の首を任意の方向に90度、無理やり向けさせることができる。今回、ルディウェイはムイムイにあっち向いてホイを2回しかけた。これでムイムイは、首だけ180度回転させ、首だけ真後ろに向くはずだった。
「ッ!」
が、まずルディウェイの地声を聞き終えると同時に90度右に首を向けさせられたムイムイが。ボイスレコーダーに収録されたルディウェイの声がセリフを言い終える一瞬の間に。とっさに腰を起点にして、グルンと体を真後ろへと回転させて振り返ったのだ。結果、ムイムイは無理やり首を180度回転させられても、ダメージを負わずに済んだ。
(え、初見であたしの魔法を攻略された!?)
驚愕するルディウェイの足元でカランと床を金属製の物質が滑る音が鳴る。ルディウェイが下を見ると、無骨な色をした手榴弾が転がってきた。
「なッ!?」
(いつの間に手榴弾を召喚したのさ!?)
ルディウェイはとっさに足に力を込めて、背後に全力で飛び退く。が、それでも飛来する手榴弾の金属片から完全に逃れることはできず、ルディウェイは全身に軽く切り傷を負った。
「なるほどねぇ。貴女の魔法は指を差した方向に相手の首を無理やり向けさせる魔法かぁ。それでムイムイの首をねじ取ろうなんて、エグいことするなぁ。……でも、そっかぁ。それでサンタマリアちゃんを殺したんだぁ」
「……どうして、わかったの? あたしの魔法はまず間違いなく初見殺しなのに☆」
「んー、勘? ムイムイは頭がいいからねぇ」
ムイムイは改めてルディウェイに向き直り、一連の攻防でルディウェイの魔法を粗方把握した旨を宣言する。ルディウェイが純粋な興味から己の魔法を初見で破った理由を尋ねるも、ムイムイは首をコテンと傾けるのみだった。
「……とにかく、その魔法の弱点は、一度の声かけだけじゃ首を90度しか曲げられないことだよねぇ。一撃必殺じゃないなら、余裕で対処できるかなぁ」
「そう? なら試してみる?」
ムイムイの物言いにルディウェイは挑戦的な笑みを浮かべる。ムイムイはルディウェイの魔法を初見で攻略できたせいか、侮っている。これは間違いなく好機だ。ルディウェイの、己の魔法が大したことないと相手に敢えて慢心させて油断を誘い、一気に相手の命を刈り取るルディウェイの戦闘スタイルにムイムイが引っかかっているのだから。
「あっち向いてホイ!」
『あっち向いてホイ!』
ルディウェイは地声とボイスレコーダーの声とのタイミングがぴったり合うように気をつけつつ、ボイスレコーダーを再生しながら、人差し指で左、でなく真上を差した。
右や左に首だけを180度回転させた所で、人によっては致命傷になるとは限らない。だが、首だけを上に無理やり180度回転させれば、人は間違いなく死ぬ。ルディウェイの魔法2発で誰だろうと確殺できるのだ。しかも、今度は先のムイムイのようにとっさに体を回転させて、首のねじ切られ対策ができない。バク宙でもしないと此度のルディウェイの魔法による死を回避できず、万が一ムイムイがとっさのバク宙に成功しても、その時はさらにルディウェイが魔法を畳みかければいいだけだ。宙を飛んだ状態のムイムイにはもはや、ルディウェイの魔法を回避する動きなんてできないのだから。
(これで終わらせる!)
ルディウェイの地声を聞き終え、ムイムイはグンと強制的に真上を向けさせられる。その様子にルディウェイが勝利を確信した、その時。ボイスレコーダー内のルディウェイの声がセリフを言い終えるよりもワンテンポ早く、首を90度上に上げさせられたムイムイの姿が直後、切り替わったのだ。猫の着ぐるみパジャマ姿から、緑色を基調としたセーラー服姿に。髪型もエメラルドグリーンのショートボブから、茶髪のゆるふわパーマに変わっている。そんな茶髪セーラー服なムイムイは真正面を向いており、ここでボイスレコーダーの声が『あっち向いてホイ!』と言い終わった時、ムイムイは再び真上を向いた。
(いきなり姿が変わった!? 一体どういう……まさか魔法少女の変身を解いた!?)
「やっぱりねぇ。貴女の魔法は1人にしか使えない。そして、魔法少女なムイムイと女子高生な竹中夢唯とは別人って認識なんだねぇ。なら、貴女が魔法を使う度に変身と変身解除を繰り返せば、貴女の魔法は簡単に攻略できるかなぁ」
「……」
驚愕しつつも、ムイムイの姿がいきなり変化した理由にルディウェイが思い至る。一方。当のムイムイ、もとい竹中夢唯は得心がいったと言わんばかりの顔でルディウェイを見つめ返す。他方。ルディウェイはムイムイがまさかの方法で己の魔法をしのいだことにもはや言葉が見つからないほどに驚いていた。
変身の力を手に入れた人は魔法少女に一瞬で変身できる。その時、変身の際に取った体勢は、ポーズは、変身後には引き継がれずに、デフォルトの体勢で変身を遂げる仕組みとなっている。例えば変身前のルディウェイ、宵村瑠璃がベッドに寝転がりながら魔法少女に変身しても、変身後のルディウェイはベッドの上に直立し、正面を向いたデフォルトの状態に切り替わる。逆に、ルディウェイがその場でジャンプしながら元の瑠璃に戻っても、当の瑠璃は直立&正面を向いたデフォルトの体勢にリセットされる。
変身と変身解除の際、当人のポーズはデフォルトに修正される。そして、顔は正面を向いているのがデフォルトの体勢となっている。これをムイムイは利用したのだ。ムイムイがルディウェイの魔法により真上を無理やり見上げさせられても、変身解除で夢唯に戻ることで、上に90度上げさせられた首の向きを瞬時に正面にリセットできる。この仕組みをもって、ルディウェイの真上を指差した上での『あっち向いてホイ!』二連撃という、確実に人を殺せる攻撃を攻略したのだ。
(確かに変身と変身解除を活用すればあたしの魔法による死を回避できる☆ けど、でもあり得ないって! あたしの声とボイスレコーダーの声は極力合わせてた! 例えズレがあったとしてもほんの一瞬のはず! なのに、ムイムイはあたしの魔法の2度目が発動する瞬前を見極めて、変身を解いて、首がねじ折れるのを防いだ☆ こんなの、魔法少女の聴力を前提にしてもあり得ないってぇ!)
「さてぇ、今度はムイムイの番だよぉ!」
「ッ!?」
夢唯は再びムイムイに変身し直し、アサルトライフルでルディウェイへと一斉射撃をぶちかまし始める。人間技とは思えないムイムイの所業に頭がいっぱいいっぱいだったルディウェイが銃声にハッと我に返り、反射的にメンズファッション店の棚の背後に飛び込めたのは幸運の賜物だった。
(あいつ、強い! 何でも召喚する魔法も強力な上に、本人の頭の回転もとんでもなく早い! 雰囲気は天然系で弱そうなのに実は強いとかシャレにならないから! ……でも、これであたしの魔法を完全に攻略できたと思ったのが運の尽きだよ☆)
ムイムイから見えないようにさらに奥の棚に隠れ場所を映した後。ルディウェイはスモックの内側に隠し持っていたポシェットを床にドサッと置き、ポシェットに両手を突っ込み、両手いっぱいにボイスレコーダーを掴み取る。その数、実に10個。
(いくら奴があたしの魔法で首が致命的にねじ切られる前に変身と変身解除とを切り替えられると言っても、11回も一気に魔法を行使すれば、1回ぐらい変身と変身解除のタイミングをミスるでしょ☆ 特に、あたしがボイスレコーダーを1個しか持っていないと思ってるはずだから、この不意打ちで絶対に首をねじ切れる!)
ムイムイを油断させる一環として、これまで敢えてボイスレコーダーを1個しか使ってこなかったルディウェイは、ムイムイのアサルトライフルが弾切れを起こした瞬間を見計らい、全てのボイスレコーダーの再生ボタンを器用にほぼ同時に押しつつ、ルディウェイは棚の物陰からムイムイの目の前へと飛び出す。
「あっち向い――」
『『『あっち向い――』』』
視界にムイムイを捉え、ルディウェイは魔法発動に必要なセリフを地声とボイスレコーダーで放とうとしつつ、同時に人差し指で左を差す。その際、右手からボロボロとボイスレコーダー5個が零れ落ちるが、音さえ発してくれれば後はどうでもいいため、ルディウェイは落ちゆくボイスレコーダーは放置した。
が、その時。ムイムイの姿がいきなりかき消えた。そして、ルディウェイの視界に、人差し指で右を差す己の鏡像が映し出された。ムイムイは鏡を召喚したのだ。それも、ムイムイとルディウェイとを完全に分断するほどの、もはや巨大な壁と言っても過言でないほどのサイズの鏡をムイムイは魔法で設置したのだ。
「ッ!?」
鏡を前にルディウェイの顔がサァァと青ざめる。ルディウェイの魔法の発動条件の1つは、魔法を行使する対象者を直接ルディウェイの両眼で見ることだ。鏡を置かれては、魔法をムイムイに発動できない。いや、それどころか。10回分の魔法がルディウェイに発動してしまい、確実にルディウェイの首が胴体からおさらばしてしまう。
(やられた……!)
ルディウェイは己の失敗を悟った。ルディウェイは相手の油断を誘い、つけ込み、命を奪うという己の戦闘スタイルが、ムイムイ相手に上手く機能していると思っていた。が、実際は違った。ルディウェイこそが、ムイムイの態度に翻弄され、油断していたのだ。
そもそもおかしかったのだ。なぜ、ムイムイは変身解除という荒業を駆使してまで、わざわざルディウェイに魔法を使わせたのか。最初、ルディウェイの魔法を喰らい、首だけ真後ろを無理やり向けさせられた時にルディウェイの魔法の危険性は身に染みて理解したはずだ。なのに。ムイムイはルディウェイの魔法を侮る態度を表し、ルディウェイにもう一度魔法を使わせた。普通なら、ルディウェイにもう二度と魔法を使わせまいとひたすら重火器召喚&乱舞に走る所なのにだ。
では、なぜムイムイはルディウェイに敢えて魔法を使わせ、己の身を危険に晒したのか。答えは単純だ。ムイムイはルディウェイの魔法の詳細な情報を収集していたのだ。
ルディウェイが『あっち向いてホイで絶対に勝てる』魔法を行使するには3つの条件をクリアしなければならない。『1.ルディウェイが対象者を視認する』、『2.ルディウェイ本人があっち向いてホイと唱える』、『3.上下左右のどれかの方向に人差し指を差す』、以上が魔法行使の条件だ。ムイムイは敢えてルディウェイに魔法を使わせ、変身解除で死を免れることで、1の条件の存在を知ったのだ。
――そして、魔法少女なムイムイと女子高生な竹中夢唯とは別人って認識なんだねぇ。
ゆえに、ムイムイのこのセリフ。ゆえに、ルディウェイの目の前に鏡を召喚された現状。魔法行使の3条件がそろっている今、ルディウェイの命は風前の灯火だ。
『『『て――』』』
ルディウェイが持ち出した10個のボイスレコーダーからは収録済みのルディウェイの声が再生されていく。ボイスレコーダーがセリフを言い終えた時がルディウェイの命の終焉だ。今さら、10個ものボイスレコーダーを全て止められない。全て壊そうにも間に合わない。ならば、既に2の条件の達成が確約され、3の条件が満たされている今、ルディウェイの魔法での自爆を防ぐには1の条件の対象者をルディウェイ本人から変更する必要がある。方法は1つ。ルディウェイが鏡を壊して、改めてムイムイの姿を視認し、ルディウェイの魔法の行使対象を改めてムイムイにすげ替えることだ。
『『『ホ――』』』
思考を加速させ、現状打破の最適解を導き出したルディウェイは瞬時に鏡と距離を詰め、鏡を殴り割る。ムイムイが容易には割れない、分厚い鏡を召喚した可能性を加味して、渾身の力で鏡に拳を振るったルディウェイだったが、ルディウェイの想定とは裏腹に、鏡はバキィィッとあっさりと割れた。鏡の厚さは精々5ミリ程度だったようだ。
間に合った。ルディウェイは安堵の感情とともに、鏡召喚という不意打ちでルディウェイをギリギリまで追い詰めた張本人たるムイムイを捉えるべく、前を向く。が、そこにムイムイはいなかった。拳を振るい終えたばかりのルディウェイの安心に緩んだ顔がいるのみだった。鏡は、1枚だけじゃなかった。ムイムイはルディウェイとの間に鏡の壁を2枚、召喚していたのだ。
(もう、時間が!)
『『『イ!』』』
ルディウェイの顔から血の気が引く。みるみる絶望に染まっていく。そして、ボイスレコーダーがセリフを完全に言い切った、直後、ルディウェイの首が右に回転する。10回分の魔法が発動したため、ルディウェイの首のみの360度回転を2回半行う。その際、ルディウェイの胴体から首がブチィッとちぎれようとも、首と胴体とが分離した際にルディウェイから変身前の宵村瑠璃の姿に戻ろうとも構わずに、瑠璃の首は切断面から血をビチャビチャまき散らしながら回転を続ける。
「ムイムイから大切なものを奪った報いだよぉ」
ここで、瑠璃とムイムイとを分断する鏡の壁を叩き割ったムイムイは、ようやく回転の止まった瑠璃の首を見下ろし、怒りを内包した呟きを漏らす。かくして、ルディウェイの犯罪者殺害活動は、物欲の恨みを胸に抱くムイムイに殺されることで終わりを迎えるのであった。
『魔法少女以外誰もいない、ボロボロに崩れ去ったR市全域にて。罪なき市民を容赦なく虐殺した悪の魔法少女と、正義の炎を胸に宿す将来有望な魔法少女とのガチンコバトル。果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか!?
○正義の魔法少女:残り2名
■EFB
■ルディウェイ【DEAD】
■スウィーツ【DEAD】
■ぽむらちゃん
○悪の魔法少女:残り6名
■ミラクルシャイン
■コットン
■メトロノーム【DEAD】
■サンタマリア【DEAD】
■メタ☆モン【DEAD】
■ユウキ【DEAD】
■なのだ先輩
■星井ミク
■フォーチュンテラー【DEAD】
■ムイムイ
■ファソラ
■ラストエンゲージ【DEAD】
○履歴
20■■/09/12 13:45 ムイムイさんがルディウェイさんを殺しました!
20■■/09/12 13:30 EFBさんがメトロノームさんを殺しました!
20■■/09/12 13:22 スウィーツさんがユウキさんを殺しました!
20■■/09/12 13:21 ユウキさんがスウィーツさんを殺しました!
20■■/09/12 13:21 ぽむらちゃんさんがフォーチュンテラーさんを殺しました!
20■■/09/12 13:17 ぽむらちゃんさんがラストエンゲージさんを殺しました!
20■■/09/12 13:16 ルディウェイさんがサンタマリアさんを殺しました!
20■■/09/12 12:24 スウィーツさんがメタ☆モンさんを殺しました!』
絶望「ついに! ついに残る魔法少女が半分の8人に!」
ふぁもにか「生き残りが半分になると、いよいよクライマックスって感じがするよねぇ」
次回【24.ただでは死なない魔法少女たち】
※次回更新は11月8日です。