【完結】オリジナル魔法少女育成計画 罠罠罠   作:ふぁもにか

28 / 38

 どうも、ふぁもにかです。派手な戦闘、という意味合いでは今回が最後のような気がする今日この頃。とはいえ、1対1じゃない戦闘シーンって本当に書きにくくて困っちゃいますよねぇ。ということで、今回も引き続きなのだ先輩たちサイドのお話になります。



27.切り札の使い時

 

 

 ☆なのだ先輩

 

 アーケード商店街にて。なのだ先輩&星井ミク&ムイムイの3名はEFB&ぽむらちゃんと対峙する。EFBはメトロノームを、ぽむらちゃんはラストエンゲージとフォーチュンテラーを殺害している。メトロノームは戦えない魔法少女ゆえにEFBの実力は読めないが、ラストエンゲージは魔法なしでもそれなりに強く、フォーチュンテラーの未来視も敵にすれば中々厄介な魔法だ。そんな2人を撃破したぽむらちゃんは間違いなく強者だと推測できるだろう。

 

 

「あ。例の司令塔もいるぴょん! あの盗賊っぽい服装の子だぴょん!」

「ほう。ならば一筋縄ではいかなそうだな。であれば、まずは小手調べだ」

 

 西田中学校で奇襲をかけた際、それでも冷静に指示を飛ばしていたがゆえに警戒すべき存在として、ぽむらちゃんとEFBはなのだ先輩を睨みつける。そして、EFBは己の魔法を行使した。直後、EFBの真下の地面に水色の薄氷が張り始め、氷の範囲がなのだ先輩たちの方へとみるみるうちに広がっていく。

 

 

「む、これは通しちゃいけない予感! ふぁいやぁうぉーる!」

 

 対して、ムイムイは氷が自分たちの元に到達すると良からぬ結果になりそうだとの己の予想の元、ムイムイたち3人とEFBたち2人とを分断する炎の壁を召喚する。壁の高さは1メートルほどで、氷の進路を遮るように横一線に展開され、炎を存分にたぎらせている。

 

 

「その程度で俺の氷を止められるとでも?」

 

 が、しかし。ムイムイの炎の壁は瞬く間に凍り尽くされてしまった。炎を凍らせる形でムイムイの炎の壁を突破したEFBの氷は着々となのだ先輩たちの足元に迫っていく。

 

 

(……炎が効かない氷、さしずめ解けない氷を生み出す魔法といった所か?)

「なのさん! ムイムイ! ミクの流れ星に掴まるの!」

 

 なのだ先輩がEFBの魔法に当たりをつけていると。星井ミクがなのだ先輩たちの足元に金平糖型な流れ星を召喚しつつ、呼びかける。星井ミクもまたEFBの生成する氷に触れない方がいいと考えているのだろう。なのだ先輩としても同感なため、素直に流れ星の突起部分に掴まった。そして、流れ星は真上に飛翔する。EFBの氷がなのだ先輩たちの足首を捉える前に、なのだ先輩たちは空中に離脱する。

 

 

「氷を溶かせないのなら、こうするまでなの!」

「ムイムイもいくよぉ!」

 

 地に足をつけられない状態で戦闘を続行するのは非常に不利ゆえに、いつまでも真上に突き進む流れ星に掴まっているわけにはいかない。そのため、星井ミクとムイムイはそれぞれ流れ星とアサルトライフルを用いて、足元を覆いつくす氷を派手に壊し、足場の確保に係る。

 

 

「さて、これならどうだ?」

「氷塊砲、発射だぴょん!」

 

 と、ここで。改めてEFBたちの方向を見やったなのだ先輩は思わず目を見開いた。EFBがこれみよがしに立方体の巨大氷を頭上に掲げていたからだ。EFBの手のひらに支えられている氷塊の大きさは、なぜEFBが氷の重さに押し潰されないのか不思議なほどバカでかい。そんな氷塊が、背後からぽむらちゃんのゴムボール型のボムの爆発という推進力を得たことで、豪速球でなのだ先輩たちへと突き進む。

 

 氷塊と一番近いのはなのだ先輩だ。ゆえに、このままではなのだ先輩が第一に氷塊と正面からぶつかることとなるだろう。そして、氷がEFBの足元から伝播して凍結範囲を広げた様子からして、氷に接触すれば、己の体を否応なしに凍らされる可能性が高い。解けない氷が体の自由を奪うとなると、戦闘力の大幅な減衰は避けられない。

 

 しかし。目下、氷塊の回避手段はなさそうだ。己のサイズを10センチな手乗りサイズに縮めた所で、氷塊の飛行ルートから逃れられないし、仮に何らかの方法でなのだ先輩が氷塊をかわした所で、背後の星井ミクとムイムイが氷塊の被害を喰らうだけだ。

 

 

「ちょッ、なにあの氷ぃ!?」

「あんな巨大な氷、ミクの流れ星でも壊せそうになさそ――」

「――2人とも、あたしを信じて、ベストを尽くすのだ」

「「ッ!」」

 

 ならば、今こそが切り札の使い時だ。巨大な氷塊の急接近にムイムイと星井ミクが焦燥を顕わにする中、なのだ先輩は一言。2人に語りかける。それだけで、ムイムイと星井ミクは平静を取り戻す。なのだ先輩のみの力では氷塊に対処できないのではと理性が疑問を呈するも、それでもムイムイと星井ミクはなのだ先輩を信じて己が為すべきことに着手し始める。

 

 一方。なのだ先輩は赤の短パンのポケットから革製のグローブを取り出し、素早く右手に嵌める。そして、右手を伸ばし、迫りくる氷塊にピタッと触れた。案の定、なのだ先輩のグローブにピキピキと氷が伝播し始めるが、その時。氷塊が消滅した。否、消えたのではない。なのだ先輩の手のひらに収まる程度にまで氷塊のサイズが縮小されたのだ。

 

 

「なにッ!?」

「え!? どういうことぴょん!?」

「これはお返しするのだ!」

 

 急に氷塊が縮小化されたことにEFBとぽむらちゃんが動揺に目を丸くする中。なのだ先輩は右手に収まっている氷塊(小)を投げ返す。魔法少女の力で投げられた氷はぐんぐん勢いを増しながらEFBの元へと突き進み、刹那。元の巨大氷へとサイズが戻った。

 

 

(これであっさり氷に潰されてくれれば話は早いんだが)

「……情報に誤りがあるな」

 

 EFBとぽむらちゃんに迫る巨大氷。だが、EFBは氷が元の巨大さを取り戻した事実自体には驚くも、風を切って迫りくる巨大氷を脅威と見なしていないかのように、言葉を紡ぐ。その後、巨大氷の至る所にビシリと亀裂が入り、直後にはバキャアアアと粉々に砕け散った。

 

 

「ぽむら、気をつけろ。奴らは存外、強い」

「同感だぴょん!」

 

 巨大氷の残骸がEFBに降りかかる中。EFBは背後のぽむらちゃんに注意を促す。一方のぽむらちゃんは生成したボムを片手にEFBの前に立つ。ぽむらちゃんたちの目の前に巨大な流れ星が直進してきていたからだ。

 

 

「さっきの氷塊の意趣返しだぴょん!」

 

 ぽむらちゃんは巨大な流れ星に向けてボムを投擲し、ボムの爆発により巨大な流れ星は無理やり進行方向を後方へと変更させられる。ぽむらちゃんは先ほどなのだ先輩がEFBの氷をそのまま己の攻撃手段に活用したように、己もまた敵の攻撃手段を反撃に利用しようとしたのだ。が、しかし。

 

 

「あれ? なんでこっちに戻って――いぇ!?」

「バカな!? あがッ!?」

 

 巨大な流れ星は少しだけ吹っ飛ばされただけで、再びぽむらちゃんたちの方へ猛スピードで直進し始めたのだ。対象さえ定めれば吹っ飛ばせないものなどない。そう信じていただけに、巨大な流れ星の再接近に対応できず、ぽむらちゃんとEFBは巨大な流れ星の突撃をモロに喰らい、はるか後方へと派手に吹っ飛ばされた。さながら暴走トラックにでも衝突させられたかのように。

 

 

「ナイスだ。ミク、ムイムイ」

「えへへぇ」

「ムイムイとの合体技なら、ぽむらちゃんって奴の魔法を攻略できるみたいなの」

 

 一方。デコボコな形状になる代わりに氷の排除された地面にスタッと着地したなのだ先輩たち3人。なのだ先輩が言葉少なに称賛すると、ムイムイは照れ顔を浮かべ、星井ミクは不意打ちが成功したことにひとまず安堵のため息を零す。

 

 なぜ、先の巨大な流れ星はほとんど吹っ飛ばされなかったのか。答えは簡単だ。巨大な流れ星の背後に、ムイムイが作成したコンクリート壁と、そのコンクリート壁の背中を押すまた別の巨大な流れ星B、C、Dを星井ミクが召喚していたからだ。

 

 EFB&ぽむらちゃんから近い順に、巨大な流れ星A、コンクリート壁、巨大な流れ星B、C、Dと配置して敵に差し向ける。そうすれば、巨大な流れ星Aしか見えていないぽむらちゃんは巨大な流れ星Aを吹き飛ばすためのボムを生成して、放つ。だが、そのボムが吹き飛ばせるのは巨大な流れ星のみで、コンクリート壁は対象でないため、吹き飛ばされない。後は、巨大な流れ星BCDの数の力でコンクリート壁を押し出せば、吹っ飛ばされている最中の巨大な流れ星Aを押し戻すことができるのだ。結果。不意打ちは成功を収め、EFBとぽむらちゃんに確かなダメージを刻んだ。西田中学校にて、ぽむらちゃんの魔法の特性をある程度見抜いたムイムイだからこそ閃いた、ムイムイと星井ミクとの合体技である。

 

 

「ぐぅッ、そういうことか! 舐めるなぴょん!」

 

 体の前面で巨大な流れ星の突撃を喰らったEFBとぽむらちゃんは吹っ飛ばされる。が、依然として巨大な流れ星のスピードは衰えない。このままでは二度、三度と轢かれ続けるだろう。だが、ここで。巨大な流れ星を押し戻されたカラクリに気づいたぽむらちゃんが痛みに呻きながらも新たなボムを生成し、巨大な流れ星へ向けて投げ飛ばす。すると、今度は巨大な流れ星ABCD及び間に挟んだコンクリート壁ごと、なのだ先輩たちの方向へとまとめて吹っ飛ばすことに成功した。

 

 

「って、え!? 戻ってくるの!? あれならぽむらちゃんの魔法でも吹っ飛ばせないんじゃなかったの!?」

「おそらく、今回吹っ飛ばしたのは空気だろうな。空気ごとあたしたちに流れ星たちを吹っ飛ばし返しているのだ」

「ま、そーゆー展開もムイムイは想定済みなんだけどねぇ」

 

 巨大ゆえの威圧感を引き連れて勢いよく戻ってくる巨大な流れ星&コンクリート壁に星井ミクが驚愕する中。なのだ先輩はまるで焦らずに軽く考察を行い、ムイムイは自身の目の前にそり立つ壁を召喚する。巨大な流れ星たちはそり立つ壁により進路を真上に誘導されて跳ね上がり、アーケード商店街の天井をぶち破り、どこかへと飛び去っていった。

 

 

「おかしいな。内通者の情報によれば、貴様の魔法は己の体のみを小さくできるものだったはずだ。だが、貴様は確かに俺の氷塊を小さくした。自分以外の物にも魔法が及ぶわけだ。……なるほど、確かに内通者の情報を信用しすぎないで正解だったな」

「やっぱり内通者は信用ならなかったぴょん」

「そう情報提供者を責めてやるな。おそらくその内通者とやらは君たちに誠意を尽くしているのだ。それなのに情報に齟齬が生じたのは、あたしが皆に伝えた魔法の内容が過少申告だからなのだ。あたしの魔法は任意のタイミングで自分自身を小さくできる魔法ってだけではない。正確には、『手乗りサイズにできる』魔法なのだ。つまり、あたし以外にもあたしの魔法は及ぶし、自在に小さくできるのだ」

 

 ひとまず戦闘が小休止を迎える中。EFBとぽむらちゃんは内通者の告発内容と実際のなのだ先輩の魔法との間に情報の乖離があったことを受けて、内通者への信用具合を低下させる。一方。なのだ先輩は余裕綽々といった態度で己の魔法を正確に語る。

 

 

「……内通者に悟られることなく内通者の存在を看破し、上手いように躍らせたということか?」

「いや、気づいちゃいなかったさ。……あたしは常に切り札を隠し持つ性質なのだ。ここぞという時に切り札を使えば相手を出し抜けてカッコいいだろう? 今回はたまたまそれが功を奏した、それだけなのだ」

「ふーん。で、その切り札をぺらぺら喋って良かったぴょん?」

「あたしの切り札が1つだけと侮られるのは心外なのだ。あたしの魔法は最強なのだ。この程度の種明かしで攻略されるほど、柔じゃないのだ」

 

 内通者がなのだ先輩の手玉に取られた説をEFBが提唱するが、当のなのだ先輩は偶然策が嵌まっただけだと主張する。他方。敵にわざわざ情報を渡してくるなのだ先輩を前に、ぽむらちゃんが警戒を顕わに尋ねると、なのだ先輩は挑戦的な笑みで返答した。

 

 

「その言葉、撤回させてやる。最強なのは、俺の魔法だ。俺の魔法は『解けない氷を生成する』魔法だ。俺の意思なくして、俺の生成した氷は解けない。また、俺の意思次第で、氷に触れずとも、氷を砕いて消滅させることができる。そして、俺の氷には特徴がある。氷が砕けやすいこと、そして――氷が砕けた際、氷が囲っていたものを、中に包み込んでいたものを、その強度に関係なしに砕くこと……破壊力と制圧力に特化した魔法というわけだ」

「えっとぉ、そんなに細かく話してよかったのぉ?」

「俺の魔法こそ最強だからな。この程度の種明かしで攻略されるほど、柔じゃない」

 

 なのだ先輩の言動が癪に障ったのか、EFBが対抗心を燃やしつつ、己の魔法の詳細に触れ始める。その際、ムイムイの召喚していたそり立つ壁を覆いつくすように凍らせ、氷を砕く形でそり立つ壁を粉々に粉砕する様をなのだ先輩たちに見せつける。デモンストレーション付きで事細かに己の魔法を明かすEFBにムイムイがおずおずと質問すると、EFBは先ほどのなのだ先輩の自信に満ちた発言を存分に引用して言葉を返した。

 

 

「さて、無駄話は終わりだ。貴様らに引導を渡してやる」

「氷塊砲マーク2、発射だぴょん!」

 

 EFBは手のひらを天に掲げ、再び巨大な氷塊を生成し、ぽむらちゃんが氷塊の後ろでボムを爆発させることで、氷塊をなのだ先輩たちに向けて急発進させる。

 

 

「え、さっきの二番煎じなの?」

(敵が前と全く同じ攻撃を敢えて繰り出す時、単に馬鹿の1つ覚えか、目的が別にあるのが常だ。この目立つ氷塊の特攻に隠れて別の攻撃を仕込む気――いや、違うッ!?)

 

 既視感のある猛スピードな氷塊に星井ミクが純粋に疑問を抱き、なのだ先輩がEFBたちの意図を読み取ろうとする。と、その時。なのだ先輩はEFBたちの意図をいち早く悟った。そして、自分たちがいかに危険な状況下に晒されているかを理解した。

 

 

「ミク! ムイムイ!」

「なのさん!?」

「あぃ!?」

 

 なのだ先輩は星井ミクとムイムイの腕を掴み、魔法を行使する。結果、10センチ程度の手乗りサイズと化した星井ミクとムイムイを、なのだ先輩は自身の茶色のネコミミ帽子の中に問答無用で放り入れる。と、刹那。なのだ先輩の元にゴオオオと迫りくる氷塊が突如、砕け散った。否、氷塊の中に仕込まれていたぽむらちゃんの水色のボムが爆発し、氷の破片が四方八方へとまき散らされた。

 

 なのだ先輩は短剣を片手に、尋常でないほどの速さで飛ばされてくる氷の破片の弾幕の内、頭や心臓、帽子の部分など、命中すればなのだ先輩や小さくなった星井ミク&ムイムイが即死しかねない位置目がけて突き進む氷の破片のみを弾き飛ばす。なのだ先輩の戦闘技量では致命打を取り除くだけで精一杯だったのだ。

 

 

「ッ、つぅ……」

 

 結果、なのだ先輩の全身を氷の破片が次々と切り刻んでいく。さらに、なのだ先輩の傷口が凍り、凍った傷口を起点として、なのだ先輩の体をパキパキと氷が侵食を深めていく。

 

 なのだ先輩自身もまた小さくなれば、的が小さくなり、氷の破片を全回避できたかもしれない。だが、仮に小さくなった状態で一撃でも氷の破片を喰らえば、致命傷になりかねないし、星井ミクやムイムイが氷の破片の弾幕を避けきれるとは限らない。なのだ先輩にとっては、自身がダメージを一手に負うことでダメージディーラーの星井ミクとムイムイを守ることが現状における最善手だと判断したのだ。

 

 

「なのさん!? 体に氷が!?」

「一体、何が起きたのぉ?」

「氷塊を砕いて弾幕にされたのだ。2人が無事で何よりなのだ」

 

 氷の欠片の弾幕の終了とともになのだ先輩が星井ミクとムイムイを帽子から出して元のサイズに戻すと、星井ミクは傷だらけな上に傷口に氷が張りついているなのだ先輩を前に狼狽し、ムイムイは真剣な眼差しをなのだ先輩に注ぐ。当のなのだ先輩は軽くEFBたちの攻撃に触れ、傷1つない星井ミクとムイムイの様子にホッと胸を撫で下ろした。

 

 

「ほう、意外と避けられたな。だが――」

 

 対するEFBは今の不意打ちでなのだ先輩たちに大して損害を与えられなかったことに想定外だとの感想を抱くが、直後。EFBは己の意思でなのだ先輩に張りつく氷を砕いた。

 

 

「――これで1人」

「ぐぁッ!?」

 

 なのだ先輩の体のあちこちを凍らせる氷が砕かれたことで、氷に包まれていた範囲のなのだ先輩の体もまた砕かれる。つま先が、ふくらはぎが、太ももが、横腹が、二の腕が、肩が、頬が。抉られるようにして粉砕され、なのだ先輩はあまりの激痛に苦悶の声とともに両膝をついた。抉れた箇所からダクダクと血があふれ、なのだ先輩の膝を赤く濡らしていく。

 

 

「あ、ああああ! なのさん! なのさんッ!」

「そんな、あのなのさんがぁ……」

「選択を間違えたな、なのさんとやら。貴様は仲間を守るために機転を利かし、己を身代わりにするのが最上だと判断したのだろうが……集団の精神的支柱と化した司令塔が崩壊すれば、後に残るのは烏合の衆の混乱だ。纏まれない集団の末路はわかりきっている。貴様は他の2人を盾にしてでも己の身を第一に守るべきだったわけだ」

 

 血まみれのなのだ先輩を前に星井ミクは目に見えて動揺し、ムイムイもまたどんな時も頼りになったあのなのだ先輩がボロボロになっているという事実そのものが受け入れがたく、呆然となのだ先輩を見つめている。そのような精神的に危うくなった星井ミクとムイムイの様子を受けて、EFBは勝利宣言とも思しき口調でなのだ先輩の判断ミスを指摘する。

 

 

(確かに。あたしが思っていたよりもはるかに、2人に頼りにされていたようなのだ)

 

 信頼されること自体は悪い気はしない。前世の一匹狼の頃はまるで味わえなかった感覚は、むしろ嬉しい。が、この状況は非常にマズい。頼られているのなら、痛みに屈している場合ではない。きっと、あたしの怪我は。応急手当で対処できる段階を越えつつある。おそらく、あたしは遠からず戦闘不能になる。だからこそ。今は気合いで全てを押し通せ。

 

 

「――そう心配せずとも、あたしは大丈夫なのだ。2人とも、あたしを信じて、ベストを尽くすのだ」

「「ッ!」」

 

 なのだ先輩は敢えて、先の言葉を復唱する。勝ち気な笑みを浮かべて、力強い口調を添えて。すると、星井ミクとムイムイの両眼に改めて戦意の炎が戻る。どう考えても大丈夫の範疇の怪我でないのではと理性が疑問を呈するも、それでも星井ミクとムイムイはなのだ先輩を信じて己が何を為すべきかに思考を差し向け始める。例え虚構だろうと、同じパーティーとして50時間ともに過ごし、信頼関係を深めてきた賜物である。

 

 

「む、あっさり立て直されちゃったぴょん」

「ならば、今度は完全に司令塔を壊し尽くすだけだ」

「ふふふ、随分と余裕そうだな。もう勝った気でいるとは片腹痛いのだ」

「貴様、何が言いたい?」

「『手乗りサイズにできる』魔法。……この魔法をあたしが実践する時、誰もが対象を『小さくできる』魔法なのだと認識するのだ。それは間違っていないのだ。だが、それだけではないのだ。この魔法の神髄は――」

 

 なのだ先輩がいともたやすく星井ミクとムイムイの精神状態を安定させ、精神的優位からイーブンに持ち込まれたことにぽむらちゃんが不満げな表情を貼りつけ、EFBが標的をなのだ先輩に定める中。なのだ先輩は心底愉快だと言わんばかりに口角を吊り上げ、そして。不機嫌そうに言葉を促すEFBに対し、なのだ先輩はもう1つの切り札を繰り出した。

 

 

「――極端に小さい物を、手乗りサイズに大きく(・・・)できることなのだ!」

 

 なのだ先輩は己の左の二の腕からドバドバあふれる血を右手で掴み、EFBたちに向けて血を振りまいた。直後。なのだ先輩のばらまい血液が、瞬く間に膨張する。赤血球、白血球、血小板などなど。様々な成分1つ1つが10センチサイズに拡大し、さらに拡大された各種成分を構成する細胞1つ1つすらも10センチサイズに拡大し、結果として、EFBたちの視界を盛大に遮る赤の障壁となる。

 

 

「これは!?」

「EFB! ここは私に任せるぴょん!」

 

 手乗りサイズにできる魔法を逆手に取ったなのだ先輩により生成された血の壁がみるみるうちにEFBたちとの距離を詰めていく中。EFBが血液を凍らせ、砕き、血の壁を粉砕するより早く血の壁に吹っ飛ばされると判断したぽむらちゃんは前と同様にボムを用いて空気ごと血の壁を吹っ飛ばす。なのだ先輩たちが血の壁の背後に星井ミクの流れ星などの何かをまた仕込んでいる可能性を警戒したのだ。

 

 はたして、なのだ先輩の構築した血の壁の背後には星井ミクの生み出した巨大な流れ星が控えていた。そのため、ぽむらちゃんのボムで血の壁や巨大な流れ星はなのだ先輩たちの方に押し戻されるも、その中途で血の壁や流れ星のスピードが食い止められた。ムイムイがあらかじめ自分たちの眼前にこれまたバカでかいトランポリンを横向きに設置していたからだ。そして。トランポリンの後ろからさらに星井ミクの巨大な流れ星が押している結果、トランポリンを真ん中に据えた上で、ぽむらちゃんのボムの推進力を得た流れ星と、星井ミクが召喚した豪速球な流れ星との正面からのぶつかり合いが発生する。

 

 

「ここが正念場なの! 負けられないの!」

「ぜぇええええええったいに押し切ってやるぴょん!」

 

 星井ミクはトランポリンで巨大な流れ星を再びEFBたちの元へ弾き返すために、トランポリンを背後から力強く押す流れ星の数を増やし。ぽむらちゃんはトランポリンをぶち破って血の壁や流れ星をなのだ先輩たちにお返しするために、空気を吹っ飛ばすボムをどんどん生成して投擲していく。どちらが場を制するか。力で押し切るか。3対2の魔法少女たちの戦いの命運は今、この星井ミクとぽむらちゃんとのごり押し勝負にかかっている。

 

 

(と、思ったのが君たちの敗因だ)

 

 ここで、戦況を冷静に見据えていたなのだ先輩が勝利を確信する。その時。ぽむらちゃんの隣で、グシャッと音がした。まるで、潰しやすいプラスチック製のペットボトルを足で踏み潰したかのような、軽い音。その音がぽむらちゃんの鼓膜を打つと同時に、ぽむらちゃんのコスチュームたる、ピンクと白を基調としたカシュクール・ワンピースにピシャッと赤い液体が付着する。

 

 

「……ぴょん?」

 

 嫌な予感がして、ぽむらちゃんが隣を見やる。そこにはEFBがいたはずだ。いつも威風堂々としていて、頼りがいのある魔法少女が隣に立っていたはずだ。しかし、ぽむらちゃんの視線の先にEFBはいない。代わりに、金平糖型の巨大な流れ星が地面に突き刺さっているだけだ。流れ星と地面からは、じわじわと赤い液体が、血が広がっていく。

 

 

「……いー、えふ、びー?」

 

 まさか、EFBが流れ星に潰されたのか。そもそもこの流れ星はどこから来たのか。正面からの流れ星は1つたりとも通していないはずなのに。ぽむらちゃんの混乱は止まらない。

 

 

(とか、考えている頃だろうな)

 

 一方。なのだ先輩は、EFBが流れ星の下から無傷で脱出してこないかを注視しつつ、ぽむらちゃんの思考をあらかた推察する。今、戦場で何が起こったのか。答えは単純明快。先ほどムイムイのそり立つ壁によりはるか上空へと、EFBたちの視界外へと消え去った巨大な流れ星の1つを星井ミクが再度制御し、わざわざアーケード商店街の天井を割って、空からの攻撃をEFBたちに悟られないように、先ほどぶち破った天井を経由して、巨大な流れ星をEFBの頭へと落としたのだ。なのだ先輩の血の壁やら、ムイムイのトランポリンやら、星井ミクとぽむらちゃんとのごり押し勝負やらは全て、上空からの不意打ちを悟られないためのものだったのだ。

 

 そして。頼りにしていた仲間が予期せぬタイミングで致命傷レベルの怪我を負ったかもしれないという事実にぽむらちゃんがつい放心している間にも、トランポリンを間に挟んだ力のぶつかり合いは続いている。それゆえに、ぽむらちゃんがボムの投擲を忘れていたがために、星井ミクとぽむらちゃんとのごり押し勝負は星井ミクが征し、結果としてトランポリンが受け止めていた血の壁や巨大な流れ星は、ぽむらちゃんの方へと勢いよく弾き返された。

 

 

「ッ! しまっ――」

 

 ぽむらちゃんが再び血の壁や巨大な流れ星を空気ごと吹っ飛ばすためのボムを生成する前に、飛来物はぽむらちゃんの体を容赦なく打ち付け始めた。為すすべもなくぽむらちゃんは迫りくる血の壁や巨大な流れ星に轢かれ、後ろへ後ろへと吹っ飛ばされるしかない。が、しかし。その途中で、ぽむらちゃんの体は後退をやめる。ぽむらちゃんの背中が硬い何かに当たる。ぽむらちゃんが背後に目を向けると、巨大な灰色の壁がそびえ立っていた。

 

 前からは血の壁や巨大な流れ星。背後には巨壁。その両者に挟まれたぽむらちゃんは、両者を回避しうる逃げ道を見つけられない。ボムで吹っ飛ばそうにも、時間が足りない。現状に追い込まれた時点でぽむらちゃんは詰んでいて。

 

 

「ぼぎゅッ!」

 

 直後。ぽむらちゃんの体を巨大な流れ星が躊躇なく押し潰した。逃げ場のない衝撃。ぽむらちゃんはゴボリと血を吐き、力なくその場に倒れた。

 

 




絶望「終盤ともなると殺し合いがグングン加速するね!(っ´∀`)っ゚+.゚」
ふぁもにか「でも、死者が一気に多くなると、私の執筆技量では各キャラの死に際の心情描写とかを入れにくくなるから、加速すればいいってものじゃないんだけどね」

次回【28.たった1人の、私の特別】
※次回更新は11月28日です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。