原作の魔法少女育成計画を簡単に纏めてみた。
■魔法少女たちが色んなシチュエーションで殺し合いを行うよ
■個性的な魔法の意外な運用やまさかの物語の展開を楽しめるよ
■かわいい魔法少女姿の女の子たち(中身は時折男やおばさん、人間以外の動物だったりする)が残酷な状況下で精一杯戦う姿を好むふぁもにか向きの作品だよ
というわけで。どうも、ふぁもにかです。魔法少女育成計画の2期はまだかまだかと心待ちにしながらこの作品を執筆している今日この頃です。早くrestart勢をアニメで拝みたいなぁ。特に動くペチカとラピス・ラズリーヌを見てみたいのです。
☆ミラクルシャイン
延々と広がる草原地帯に突如迷い込んだミラクルシャインはたっぷり時間を使い、ようやく落ち着きを取り戻した。そして今、ミラクルシャインは「むむむ」と唸りつつ、思考を巡らせていた。
宅配便を受け取ろうとした直後に今まで見たことのない場所に飛ばされたのはなぜか。起きたと思っていたが、まだ夢の中なのか。よくある異世界トリップ物の小説と同様に、私もまた唐突に異世界に飛ばされてしまったのか。それとも未来や過去にでも飛ばされたのか。あるいは宅配便の女性が実は魔法少女で、これは彼女の魔法によるものなのか。
「……やめた」
目を瞑って集中力を上げ、あり得そうな可能性をいくつか想起するも、所詮は可能性に過ぎず、情報の少なすぎる現状では何も確定できない。そのため、ミラクルシャインはその場で棒立ちでいることをやめて、周囲の探索を始める。草原地帯に何もないのは見ての通りだ。ならば、緑豊かな草花の広がる領域に似つかわしくない廃墟を調べよう。
「ちょッ、何この霧!?」
廃墟に入ると、薄紫色の霧がミラクルシャインを歓迎した。毒ガスかと一旦廃墟から後退した後、恐る恐る霧に手を差し出したり、少しだけ霧を吸ってみるも、体調に変化はない。異臭もしないので、この霧は単に薄紫色なだけで人体に悪影響を及ぼさないのだろう。もしくは、魔法少女の強靭な肉体には、霧の毒性が通じていないのか。
「……うーわ、雰囲気出てるなぁ」
改めて、ミラクルシャインは霧の立ち込める廃墟に入り、まずは1階を探索する。テーブルや食器棚といった家具はズタボロに破壊されており、今にも風化寸前といったありさまだ。壁は穴が開いていたりヒビが入っていたり、床は腐っていたり緑色に変色していたりと散々だ。これほどまでにボロボロなのによく廃墟の形を保てているなと、ミラクルシャインは感心した。
1階に、ミラクルシャインを取り巻く奇妙な現状の答えに繋がる手掛かりはなかった。ミラクルシャインは2階を目指して階段を登ろうとする。
「ふぇ?」
その時、ミラクルシャインは思わず素っ頓狂な声を上げた。骸骨だ。骸骨がいたのだ。白い骨のみで体を形成し、右手に切れ味の悪そうなロングソードを、左手にお鍋の蓋サイズの薄い盾を持った骸骨が階段の踊り場でひとりでにカタカタと体を震わせていたのだ。
「見ツ、ケタ!」
骸骨はミラクルシャインの姿を見るや否や、階段を駆け下り、ロングソードを振り下ろしてくる。現代社会に存在するはずのない骸骨モンスターを目撃してすっかり思考停止していたミラクルシャインはハッと我を取り戻し、紙一重の横っ飛びでロングソードを回避する。動く骸骨にびっくりしている場合じゃない。とにかく、この危険な化け物を倒さないと。
「ミラクルフラッシュ!」
ミラクルシャインはいつものように技名を叫び、己の体を発光させる。骸骨には効かないかもしれないとのミラクルシャインの予想だったが、骸骨は「アアアア!」とだみ声を轟かせ、左手の盾で両目を押さえている。
(へぇ、骸骨に目潰しって効果あるんだ)
ミラクルシャインは骸骨の隙を逃さず、コスチュームの背中に引っかけていた金色の杖で骸骨に唐竹割りをお見舞いする。魔法少女の力で頭上から杖を叩きつけられた骸骨は衝撃に耐えきれずに頭蓋骨が、背骨が粉々に割れる。体を支えられずに骸骨がうつ伏せに倒れると、骸骨を構成する全ての白い骨がさらさらと粉になり、骸骨は完全に掻き消えた。
「何だったんだろう?」
結局、謎が増えただけだ。動く骸骨なんて現代の世界にいるわけがない。なら、ここはどこだろう。もしかして魔法の国だったりするのだろうか。骸骨との遭遇を契機にミラクルシャインは再び思索にふけろうとする。その時、ミラクルシャインのマジカルフォンが新規メッセージを受け取ったことを持ち主に知らせるために、ピロンと軽快な音を発した。メッセージの発信元を確認すると、『運営』と記されていた。
『チュートリアルを終了します、お疲れ様でした』
ミラクルシャインはマジカルフォンが読み上げる短い文言を耳にした。直後、再びミラクルシャインの世界が一瞬にして切り替わった。確かに廃墟にいたはずなのに、いつの間にかレンガ街にミラクルシャインは立っている。
「また!?」
眼前の噴水がプシャアアと己の存在感を高らかに主張する中。ミラクルシャインは周囲をキョロキョロと見やる。すると、美少女が勢ぞろいしていた。10名ぐらいだろうか。誰も彼も個性的な服装に身を包み、まるで天使が舞い降りたかのような可憐な顔立ちをしている。
(もしかして、皆も魔法少女なのかな?)
ミラクルシャインが少女たちのいい意味で現実離れした顔立ちから軽く正体を推測していると、少女たちの中に見知った顔があることに気づいた。黒い羽織に身を包み、木刀を腰に差している、青髪碧眼の魔法少女:コットン。ミラクルシャインが魔法少女になって初めて作ることのできた、唯一の貴重な友達であると同時に、ミラクルシャインの後輩でもある。
「あ、コットンちゃん!」
「ミラクルさん。貴女も来たのですね」
「これ、どうなってるかわかる?」
「いえ、僕にもさっぱりなのです」
「そっかぁ」
まるで意味不明な状況に巻き込まれ漠然とした不安を抱いていたミラクルシャインは、知己に出会えたことでホッと安堵のため息を吐きつつ、コットンの元に駆け寄る。コットンが何か事情を知っているのではと期待の眼差しを向けるも、コットンはふるふると力なく首を左右に振る。
(そう甘くはないか……)
『これで全員のチュートリアルが終了しましたので、次のステップに入らせていただきます』
と、ここで。ミラクルシャインの頭上からソプラノの声が響く。さっきミラクルシャインが聞いた、マジカルフォンからの音声と同じ声である。ミラクルシャインを始め、集結した少女たちが顔を上げると、そこにはヒラヒラの黄緑色のドレスに身を包んだ小人が宙をふわふわと漂っていた。
(妖精?)
『初めまして、私は皆さまをサポートするマスコットキャラクターです。名前はありませんので、自由にお呼びください』
「そんじゃ、妖精っぽいからよっちゃんと呼ぶッス」
『好きにしてください』
ミラクルシャインが首を傾げていると。羽をパタパタとはためかせる小人が端的に己の正体を明かす。そんな小人をいち早く受け入れた、紺色を基調とした修道女服を着こなす銀髪紅眼の少女の呑気な発言に、小人は興味がないと言わんばかりに突き放す。
『もう察しているでしょうが、ここに集まった皆さまは皆、魔法少女です。今回、皆さまをこの場にお呼びしたのは、皆さまに新たな魔法少女育成計画のα版のテスターをお願いしたいからです』
「新たな魔法少女育成計画?」
『はい。魔法少女育成計画は近い将来、バーチャルリアリティ空間を舞台とした大規模オンラインゲームに進化します』
「え、マジで!? マジでマジでマジで!?」
ミラクルシャインの問いかけに小人は返答する。その発言に誰よりも反応したのは紫と白を基調としたセーラー服を着た、ボサボサの紫髪を腰まで伸ばしているのが特徴的な魔法少女だ。彼女は燃えるような紅眼を爛々と輝かしている。
「どうしたの、メタ☆モン? 凄く嬉しそうだけど?」
「当ったり前だよ、ユウキ! だってVR空間でオンラインゲームだよ!? それVRMMOじゃん! ゲームの世界の風とか、食べ物とか、草原のベッドとか、モンスターに攻撃された時の痛みとかを、アバターに憑依したプレイヤー自身が直に体験できるってことじゃん! 早くこの世界にも茅場さんが登場してVRMMOを生み出してくれと願い続けていた所でこの吉報! うぅぅ、魔法少女育成計画、最高かよぉ! てか、どうやってVRMMOをプレイヤーに提供するのん?」
『従来と同様に、スマートフォンのアプリを通してです。魔法を活用すれば、スマートフォンでVRMMOを提供することもまた可能なのです』
「ナーブギアとかなくていいんだ! さすが魔法! きゃっほーい、興奮してきたぁああああ!」
興奮する紫髪の魔法少女――メタ☆モン――の様子が気になり、赤と白を基調とし、至る所にハートマークのついた燕尾服を着用した、赤と白の髪をした魔法少女――ユウキ――が問いかける。すると、メタ☆モンは鼻息荒くユウキに詰め寄り、歓喜の感情を爆発させる。さらにVRMMOへと進化した魔法少女育成計画が魔法をふんだんに駆使した上でスマホから提供されると知ったメタ☆モンは興奮の度合いをさらに深める。
『少し脱線してしまいましたね。本題に戻ります。近々、魔法少女育成計画はVRMMOとなります。そのため、プレイヤーは己の分身の魔法少女アバターを作成した後、そのアバターを介してバーチャル世界を五感で楽しめるようになります。しかし、VRMMOにはリスクがあります』
「……あ、察したのだ。モンスターや他の魔法少女との戦闘の時も現実と同じように感覚を経験できるとなると、ってことだよね?」
『その通りです』
小人の話に腕を組んでコクコクと相槌を打っていた、茶色のネコミミ帽子に金色の色付きゴーグル、サラシに赤の短パンで着飾った、まるで女盗賊のような衣装の魔法少女が己の推測を口にすると、小人が淡々と肯定した。
『今までの魔法少女育成計画はいくら敵に攻撃されても痛くもなければ、怖くもありませんでした。ただ、HPが減るだけでした。しかしVRMMOで現実と同程度の五感を体感できるとなると、プレイヤーは敵となるモンスターや魔法少女と直に対峙することになります。いくらアバターのパラメーターを高めたとしても、強そうな敵にじりじりと距離を詰められた時の怖さは格別でしょうし、武器で攻撃されたら凄まじく痛いことでしょう。HPはゼロになればしたくもない臨死体験をせざるを得なくなるでしょう。かといって、危険だからと痛覚などの感覚を完全にシャットダウンする仕様にすると、せっかくのVRMMOが興ざめです。そのため、VRMMOでどの程度の五感を経験できるようにするかのバランスを考えるため、皆さまにはこの魔法少女育成計画のα版の世界のテスターをお願いしたいのです』
「え、えとえと。つつつまり、私たちは本当に変身できる本物の魔法少女で、魔法少女っていうアバターを日頃から使って活動してるから、テスターにピッタリってこと?」
『はい』
小人が魔法少女たちを集めた理由の詳細を語る中。黒のゴスロリ服を着た、気弱そうな黒髪ポニーテールの魔法少女の問いに、小人は物分かりが早くて助かるといった雰囲気で話を続ける。
『皆さまならVRMMOの世界でも極度に怯えることなく、モンスターと戦えると判断しました。実際、皆さまはチュートリアルの骸骨を無傷で倒せましたしね』
(あ、あの骸骨、チュートリアル戦だったんだ。あれはホントに驚いたなぁ)
「あらあら、あの骨さんはわたくしたちの適性を見るためのものだったと。なるほどですわ」
小人の話からさっきが戦った骸骨がこのVRMMOの世界におけるチュートリアル戦だったと知ったミラクルシャインは当時の様子を脳裏に思い浮かべて、内心で感想を口にする。その一方、音符がいっぱいプリントされたワンピースに身を包んだクリーム色のカジュアルショートの魔法少女がなぜか得意げに胸を張る。
『それで、どうでしょうか? テスターをやってくれないでしょうか?』
「……んー、VRMMOのテスターねぇ。面白そうだしムイムイは大歓迎ぃ、と言いたい所だけどぉ。今日はリアルが忙しいからムイムイは辞退したいんだけどぉ」
「マジで!? こんな機会二度とないよ!? もったいないよ!?」
「ムイムイも断腸の思いだよぉ。でもでも、先約をすっぽかすのは罪悪感がぁ――」
小人が魔法少女たちの顔色をうかがいつつお願いをすると、猫の着ぐるみパジャマで全身をすっぽり覆った、エメラルドグリーンのショートボブな魔法少女――ムイムイ――が難色を示す。すると、メタ☆モンが信じられないと言わんばかりにムイムイに詰め寄り、ムイムイの両肩を掴んでガクガクと揺らし、先ほどのムイムイの発言を撤回させようとする。
『――心配無用です。このVR空間には特殊な魔法を施しているため、どれだけ多くの時間を過ごしても現実世界では1秒たりとも進みませんから』
「え、そうなのぉ? じゃあムイムイはテスターをやろうかなぁ。楽しみぃ」
しかし、小人がVR空間に関する補足事項に触れたことで、先約のことを気にしなくてよくなったムイムイは気の抜ける声でいの一番に参加表明した。ムイムイがテスターに手を挙げたことを皮切りに他の魔法少女も1人、また1人と参加の意思を顕わにする。
「ミクから質問、いい?」
『はい』
そんな中、小人の話を受けて、目を瞑ってじっくり熟考していたらしい魔法少女――ミク――が小人に質問の許可を取る。露出の多いへそ出し宇宙服や目に映る金平糖のような形の星といった、とりわけ個性的な見た目とは裏腹に、慎重な性格のようだ。
「テスターとして、これは最低限やってほしいみたいなノルマってあるの?」
『ありません。ですが、ただこのレンガ街でのんびり観光をするだけなのはやめてください。このVR空間には広大なフィールドが実装されていて、そこには多様なモンスターやボスを配備していますので、フィールドを探索しながら色んなモンスターと戦ってくれれば、それで十分です』
「テストの期間はいつまでなの?」
『50時間です』
「どうしてミクたちが選ばれたの? 色んなモンスターと戦ってほしいなら、ミクよりもっと戦闘経験のあるベテランの魔法少女をテスターにすればいいんじゃないの?」
『皆さまの選考基準は魔法少女の一覧リストからの無作為な抽選です。また、強いモンスターも難なく倒せるようなベテランの魔法少女のみにテスターを任せた場合、今後ゲームバランスを考える際の参考にしにくいため、選考基準にベテランかどうかを入れませんでした』
「私たちのHPとか、そういったパラメータは見れるの?」
『はい。皆さまが持っているマジカルフォンで表示できる仕組みです』
「じゃあ最後だけど、仮にHPがゼロになったらどうなるの?」
『HPがゼロとなった場合、リタイアとなり現実世界に戻されます。なお、いくらこのVR空間でダメージを負っても現実では無傷のままなので安心してください。ただ、魔法でVR空間と現実との時間の流れを歪めている関係上、一度リタイアしたらこのVR空間には戻れませんので、注意してください』
「蘇生アイテムなんかは使えないと。わかったの。気になる点はなくなったし、ミクも参加させてほしいの」
小人との対話を通してひとまず疑問点を解消できたミクもまたテスターになる意思を示す。これでまだテスターになる旨の発言をしていないのは、ミラクルシャインとコットンの2名だけだ。
「どうしよっか、コットンちゃん?」
「僕は、参加したいのです。あの骸骨みたいな敵が他にもいるなら戦ってみたいのです。ミラクルさんはどうですか?」
「……それじゃ私も参加しようかな」
ミラクルシャインはコットンがテスターに乗り気なことを受けて、己も参加する意思を固めた。友達のコットンがいれば、初対面の魔法少女たちの中でうっかりボッチになる心配がないし、テスターの仕事をこなしつつ、新たな魔法少女の友達を作れるかもと期待したからだ。
「ミラクルさんがいるなら安心なのです」
『どうするか、決めましたか?』
「うん。私たちも参加するよ」
ミラクルシャインの言葉にホッと安堵の息を零すコットン。頃合いを見計らっていたらしい小人の問いかけに、ミラクルシャインは参加の返事で返す。この場の12名の魔法少女全員が参加を決めたことに小人は少々嬉しそうに言葉を紡いでいく。
『皆さま、参加してくれてありがとうございます。ここからは話し忘れていたことを補足します。まずこのVR空間ではずっと魔法少女の姿のままです。元の姿に戻れませんが、どうかご理解ください。また、ゲームをテストする関係上、皆さま1人1人の行動を空から撮影する追尾カメラが実装されています。追尾カメラは無色透明ですが、それでも撮影されることに不快感を抱く時もあるかもしれませんが、それもどうかご理解ください。また、皆さまが今までの魔法少女活動で入手したマジカルキャンディがこのVR空間ではゼロにリセットされています。皆さまがモンスターを倒したり宝箱を発見することでマジカルキャンディを集めることができます。マジカルキャンディの数×100円が皆さまへの報酬となりますので、頑張って集めるのもいいでしょう』
「……あ、報酬あるんだ……」
小人が報酬の話を持ち出すと、一定間隔で赤と黒に変色する、変わったジャケットとジーンズを着た、グレーのセミロングな魔法少女が言葉少なに呟く。実際、ミラクルシャインも驚いていた。魔法少女は無償の奉仕が基本とされていたからだ。
『皆さまが快くテスターを引き受けてくれたことへのほんの感謝だと思ってください。マジカルキャンディはマジカルフォンを通して受け渡しができますので、マジカルキャンディの数を皆さまでそろえるといいでしょう。また、テストが終わり次第、皆さまがこれまで集めたマジカルキャンディは戻りますので安心してください。以上で説明を終了させていただきます。何か、質問はありますか? …………なさそうですね。後で気になることがありましたら、私を呼んでください。それでは、テストスタートです』
小人の宣言と同時にマジカルフォンの右下に残り時間がカウントされ始める。そして、小人の姿があっという間に掻き消えたことを契機に、12名の魔法少女たちの『VRMMO版魔法少女育成計画』のテスター活動が開始されるのだった。
絶望「出番があるまで全裸待機してますね!(0゚・∀・)」
ふぁもにか「まだ先だから靴下は履いてなさい」
次回【3.自己紹介(1)】
※次回更新は7月14日です。