このダンジョンに神殺しが居ることは間違っている。   作:みころ(鹿)

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―前回までのあらすじ―

一週間と少し前、『カウント1000』に到達したリョナは『神殺しの狼騎士』という新たな段階で窮地にあったリリを助け、盗まれていたぎゅるぎゅる丸を返して貰う。
…が、しかしそのぎゅるぎゅる丸は何のせいかは解らないが壊れてしまっていた。修繕する場所を確保するために家を買ったリョナは友人たちの助けもありその日のうちに家具など揃え、一人暮らしを始めるが…封のされた地下室の存在に気が付いた。

箱を開けてみれば地獄絵図、虐殺の限りを尽くされた奴隷達の一室、そしてその中に『少女』はいた。

少女との生活が始まった。
最初こそ手慣れなかった二人の生活に今ではリョナもすっかり慣れ、長く綺麗な銀髪をした紅い瞳の狼少女は急速にリョナの中で大きくなり、今ではかけがえのない存在になってきた…それはリョナ自身の変化も影響したのだろう。
未だ思いつかない名前、外壁上の早朝特訓、豊穣の女主人でのアルバイト、オラリオでの穏やかな生活は賑やかであり彼にしてもそれが楽しい日々だったことに疑いはない…例え少女が何も喋らなくても、何の反応も示さなくても、時間さえかければ大丈夫だと信じていた。

そしてリョナは狼騎士でぎゅるぎゅる丸を直す事を思いつく、久しぶりにダンジョンに潜ることに決めたのだった――果たして獣の行方は、そして少女の『名前』は。


 壁と再戦

・・・

 

 

 

『マーニファミリア』の店から踏み出し見上げた空は、透き通るような快晴だった。

 

(…良い日だ)

 

曇り一つない青空と真上にある日輪、彼方に現れた薄い青月、昼の暖気。

がやがやと賑やかな大通りの端の方で、俺は風呂敷を手に綺麗な空を仰ぎ、ちょっとの重さの買い物に肩をおろすと空いた片手で懐を開く。

 

買い付けた手のひらサイズの鉄の塊、修復用の素材が包まれた袋を手の上で俺は転がし沈むような重さを確かめるとコートの懐に入れて結び付け、かかる負荷に俺は肩を慣らすと息を漏らした。

 

(ちょっと重いか…?)

 

その隣に同じように結びつけられた袋、その中に入っている分解したぎゅるぎゅる丸のパーツ群と合わせて考えると、ダンジョンに行くにしては少し荷が重いかもしれない。だが重いにしても今日はどうせ中層には向かわない予定だし、この程度の重さであればそこまで重心に影響することはないはずだった。

 

――今日はダンジョンに行く日だ。

 

昨日ティオナに聞いた『俺』の、『神殺しの狼騎士(ウルフェンハザード)』についての噂。そして思いついた鉄を打つ力でぎゅるぎゅる丸を直すという方法。まさに鍛冶屋いらず、規模や能力はまだ詳しく試せていないが鉄に対しての万能能力を俺は持っており、それを使えばぎゅるぎゅる丸を直す事も造作ないと予想していたのだった。

…いやむしろ何故今まで気が付かなかったのかという感じだが、忘れていたものは仕方がない、少女の事や朝修行などで頭が一杯だったというのも原因だろう。

 

ともあれこれでやっとぎゅるぎゅる丸を直せる、リリから盗まれた期間を考えれば半月以上もの合間愛武器が使えなかったわけで、その間直剣で代用してきたしなんなら直剣での戦いに慣れてきたぐらいだがやはり現代武器のアドバンテージを考えれば直さない手はない。

 

 

「…よし」

 

 

空から視線を落とした俺は、鉄を買い付けたマーニファミリアの店の軒先から多くの人々が歩いている大通りに紛れるように踏み出す。

先日下見に来たこの大型店舗は品揃えも多く、接客も最高級なのか俺が店に入ると前回にも会った店長がすっ飛んできたのが記憶に新しい。

 

(少しサービス精神旺盛過ぎた気もするが…一流店の嗜みってやつか?)

 

そう遠くないバベルを目指し大通りの中を人の流れに沿って歩きながら、先ほどの店での事を思い出す。

相変わらずエプロンをかけた強面の店長はニコニコと俺の元に走ってやってくると要件を尋ね、鉄を打っていた場所まで案内し、必要な分の鉄を買い終えた俺が店から出るまで見送ってくれた。

 

…VIPでもないのにあの神対応、少し行き過ぎたおもてなしのような気がするのだがまぁそういうこともあるだろう。

それにああいう経験がないわけじゃない、妹に連れられて(荷物持ちとして)どこぞの服屋に行った時も店員の付き添いが二人ぐらい出来た…まぁあれは両橋の名前ありきの対応だったのだが…気にするほどのことでもないだろう。

 

 

「…」

 

 

暫く歩みを続けているとバベルが近づいてくる、見覚えのある冒険者通りに入ると道行く雑踏が少し減った。

一般人はともかく。この時間にダンジョンに向かう冒険者は少ないが居ない訳じゃない、というのも昼飯を食べてからダンジョンに向かう冒険者がいるからだ。

 

時折冒険者のような格好の人影を見かけつつまばらに人が動いている冒険者通りを俺は歩いていくと、遠目に白い大理石でできたギルドの建物を見つけた。

 

(あー…いや、いいか)

 

一瞬エイナと話でもしていこうかとも思ったが、特に用事も無いので訪れる理由もない。

あえて話題を作るというのならギルドで託児はできるのかと尋ねてみるくらいだが、流石に徒労に終わりそうだし、早く用事を終わらせることの方があの子のためにもなるだろうと考えを改める。

 

見覚えのある噴水が見えてきた、誰も近くにいない噴水は絶えず水を噴き上げており、キラキラと光を反射しては飛沫となって消えていた。

一度足を止めた俺はゆっくりと伸びをする、極めて柔らかな身体は隅々まで健康であり…昨日ミア母さんにボコされた痛みが若干残っているが、肉体は万全そのものだった。

 

 

「必要な物は…」

 

 

視線を落とし、コートをめくった俺は所持品を確認し始める。

腰に差した直剣とコートの内側に括り付けたぎゅるぎゅる丸と鉄素材を入れた袋二つ、少なくともこれらさえあれば今日の目的は達成できる。一応ポーションなども持っているが上層相手のモンスターならば使う機会もないぐらい楽勝になるだろう。

 

――目的はカウント1000、そして狼騎士によるぎゅるぎゅる丸の修繕。

 

そのためには攻撃回数を稼ぐための剣と、素材さえあれば良い。カウントを稼ぐだけなら非効率だが例えゴブリン1000匹殺すだけでも狼騎士になれるのだから深くダンジョンに潜る必要も無い。

…簡単な作業でしかない、油断しても良い、探索しきった自分の庭で雑草を刈り取ることに特別な準備はいらない。

 

ただ問題があるとすれば――『時間』、家であの子が待っていた。

 

(4時間…いや、3時間で帰れるか…?)

 

ほんの十数分前、昼ご飯を食べさせ終えた少女を俺は家に『留守番』させている。

 

いくら上層とはいえ危険なダンジョンにあの子を連れてはいけない。

かといって誰かに預けるというのも…信頼できる相手は、例えばヘスティア様だったり豊穣の女主人だったりと思いつかない訳ではなかったが、ヘスティア様はバイトだし、豊穣の女主人は今日休みだったりと預けられない理由があった。

 

それに何となく申し訳なく思ってしまう以上に、『一人でも大丈夫だろう』と思っている自分もいた

細い枝のような少女が最初は目を離せば折れてしまうんじゃないかと不安でしかなかったが、昨日一昨日のアルバイトである程度そんな不安感も緩和されていた。

 

(…)

 

昼飯を食べさせた少女をベッドに寝かせた時の事を思い出す、置いていくことに不安が全く無いわけではないが、急げば帰ってくるまでに数時間もかからないだろう。

それに自宅だし、鍵も閉めたし、例え万が一にも盗人が入ったとしてベッドに寝かせ毛布をかけた少女に気が付く事もない。

 

――安らかに眠っているだろう少女の事を想う、大切で、だからこそ不安にも想うが、何の保証も無いが危険も無いから大丈夫だと思っていた。

 

 

「…行くか」

 

 

思い出し微笑みを浮かべ、あらかた装備を点検し終えた俺は噴水広場から目の前のバベルに目を向ける。空高くそびえ立つ巨塔は大きく、どこか神気を纏っているようにも見えた。

視線を落とす、塔の麓には巨大なエントランスホールがその口を大きく開けており、冒険者達やギルドの職員が出入りしていた。

 

既に準備は完了している、歩き始めた俺はダンジョンに向かう。

爽やかに吹く風で前髪が揺れ、コートの端が揺れた。懐に入れた鉄素材が重力に従いコートの肩を引っ張っており、身体が揺れる度素材の擦れるチャカチャカという音が鳴っていた。

 

巨大なバベルが近づいてくる、大きく空いたダンジョンへの入り口はすぐ目の前に差し迫っていた。

 

 

「…ッ!」

 

 

――ふと指先がピクリと動く。

 

足を止めた俺は自分の掌を困惑しながら回し見る、まるで武者震いするかのように勝手かつ無意識に動き今は何もなかったかのようになりを潜めていた。

 

(…?)

 

たまたま、というには不穏な気がする。

それがたかが癖だと自覚はしているが、何か嫌な予感がした。

傷跡の残った左手をしげしげと眺める、紋章(タトゥー)の入った手の甲は違和感なくそこにあった。

 

何が心配かすら解らずに、俺は再びバベルに目を戻す。

気のせいかと浅く瞬き繰り返し、肩を落とすと息をついた。

 

そして――また、緩やかに歩き始めるとダンジョンに向かった。

 

一瞬の戸惑いを切り捨て、何の迷いを持つ必要もない『ちょっとした用事』を片づけるために鉄素材を引っ提げた俺はバベルの中に足を踏み入れる。風通りの良いエントランスホールの中を通り抜け、ダンジョンの中に入り込んだのだった。

 

 

 

・・・

 

 

 

暗がりの中木製の階段を上る、足元を見ずに音をたてずに歩みを進めた。

何度も歩き慣れた階段は下の綺麗な階段とは違い、何の変哲も無く手入れも行き届いていなどいなかった。

 

 

「…」

 

 

短い階段を登りきると三階に着く。

消えかけの魔石灯のついたところどころ壁紙の剥がれたような廃れた廊下、使われていないドアが幾つもある人気のない空間が細長く続いており、どこか埃っぽい臭いを充満させていた。

 

お世辞にも綺麗といえない廊下をゆっくりと歩く、敷かれた薄い絨毯を踏み一つのドアの前に辿りつくと足を止めた。

他のドアと違い『特殊器具倉庫』と書かれた名札と、『一般従業員の立ち入り禁止』の張り紙のついた木製のドアに手をかける、ザラザラとした感触の錆びついたドアノブを回すと鍵がかかっていることに気が付いた。

 

…用心深いこの部屋の人間らしい、嗅ぎつけられることなど微塵もないと確信しておきながらまだ押し入られる可能性を捨てきれないでいるのだろう。

だが同時に自分の目的のためなら手段を選ばない人だ、これからすることを考えれば用心深いから程遠い。

 

目を細めドアノブから手を離すと扉を静かにノックする、確かに響いた音から数秒後中から「通しなさい」というそっけない声が聞こえてきた。

そして慎重な足音、擦り寄ってくるような気配がドアの向こうで動きやがてカチャリと鍵が開けられると、小さく軋むような悲鳴をあげて薄い扉が開けられた。

 

 

「!…よし」

 

 

中から覗いた茶髪の強面はこちらの姿を確認すると小さく頷く、扉が押され開くとムッとするような熱気が部屋の中から漏れ出てきた。

完全に開いた扉の中からエプロン姿の男に出迎えられる、セーグという名のこの男は下の店で店長をしていると同時に運び屋という役割を担っていた。

 

 

「どうぞ」

 

 

迎えられるまま部屋の中に入る、耐えがたい臭いと熱気の漂う暗い部屋の中を数歩進むと背後でセーグが扉を閉めた。

 

 

「…」

 

 

暗い部屋の中は倉庫になっていた。

 

壁際に沿うように置かれた長い棚とその中に几帳面に陳列された大小様々に折り重なった檻達には厚ぼったい布が被せられており鉄格子の中身は見えないようになっている。

幾つもある檻を余り気にしないように部屋の中を歩く、それほど広くない部屋の中を横切ると薄汚れシミのついたベッドが置かれていた。

…特に興味はない、無視してその隣を通り抜けると部屋の最奥に置かれた巨大な()()()に辿りついた。

 

締め切られたカーテンを背景に置かれた黒檀の机の上には大量の書類が置かれ、かなり質の良い高価なものを使用していたはずだが今ではすっかり使い潰されており、何か肉食動物がつけたような爪痕がいたる場所につけられていた。

 

そしてその机には――肥えた男が座り、豚のように食事をとっている。

 

湯気をたてるステーキ肉、男は太く肉の付いた手でナイフとフォークをカチャカチャと動かしステーキを切り別けだらしなく二重あごの弛んだ口の中に放り込んでいた。

 

金髪、青い瞳、肥えた身体。

身に纏ったものはどれも一流のものであり、パッと見は貴族さながら装飾品はどれも美しく妖しい光を放っている。

しかし初対面に悪い印象は与えない、それどころか好印象を与えることの多いその姿は商人である彼にとって普段着であり、清潔感を保っていた。

 

その男の名前を『ヒューキ・ガル』という。

 

マーニファミリアが構える店の三階、一般人はおろか従業員ですら入ることのできないこの空間は殆ど物置としてしか使用されていなかった。

しかしこの一室だけはオーナーであるこの男が自分の部屋として利用している。反面自分の仕事場として、反面自分の趣味を突き詰める場所のために、自分の『遊び場』としてこの場所を確保し隠していた。

 

 

「…」

 

 

ステーキの最後の一片が食べられるのを待つ、ぺろりと肉を平らげたガルは数度咀嚼を繰り返し飲み込み、極めて丁寧にナプキンで口周りを拭い始める。

動かずただその様を見ていると長い時間をかけて広い口元をガルは拭き終えナプキンを机の上に置く、満足げなため息を漏らし背もたれに巨大な身体を預けると太い指を膝の上で組んだ。

 

そして暫く悠々自適に余韻に浸った後、こちらに弛んだ視線を向ける。だがその瞳の奥には愉し気なそれが踊っており、計算高く様々な思考が渦を巻いているように思えた。

 

 

「…それで?首尾はどうだったかね?」

 

「はい、ガル様」

 

 

ガルの言葉に頭を深く下げる。それは服従の表れであり、今自分は仕えているのだと再認識させられる…そこに、喜びは無いが。

頭をあげる、すっぽりと顔を覆っていたフードを払いのけると『彼』の顔が明らかになった。

 

――『オリオ・シリウス』、第一級冒険者は氷のような表情でマーニファミリアの任務をただ静かに報告し始める。

 

 

()()は成功です。対象は店から出た(のち)、そのまますぐダンジョンに向かいました、家に帰ってなどもいません…第一フェイズは成功かと」

 

「ほう?…まぁオリオが言うからにはそうなんだろうが、ただの鉄塊をダンジョンに持っていくのは些か奇妙ではあるな…数日間監視していた君ならば何か解るかね?」

 

「…いえ、私には」

 

 

首を振る、何故あの冒険者があんなものをダンジョンに持っていったのかなど皆目見当がつかなかった。

オリオ・シリウスは碧眼を伏せる、奇妙な監視対象の事を思い出し目を細めると主に見えないように軽く拳を握りしめた。

 

 

「まぁ良いだろう、彼が()()()()()()()()()()事さえ確かでさえあれば我々の目的は達成できる…ちなみに誰かに尾行を気づかれた可能性はあるかね?」

 

「いえ、絶対にありえません」

 

 

相手はたかがレベル1、レベル5冒険者かつ隠密に長けたオリオが勘づかれる訳も無い。

それに弱小ファミリアの仲間は朝のうちにダンジョンに向かったことも確認している――故に『無防備』であることは既にガルによって計算され尽くしていた。

 

考えながらヒューキ・ガルは顎を撫でる、用心深く欲深いガルは疑問を残しておくことを好まない。

…が、考えても仕方ないと思い直すとパンと掌を叩き、重く立ち上がると部屋の中にいる二人に脂ぎった笑顔を向けた。

 

 

「よろしい!では第一段階は無事成功した、ということでいいだろう!『目標を確保する』のに十数分もかからない!ダイダロス通りである以上たいした騒ぎになることもない!計画は完璧だ!」

 

「はい、ガル様」

 

「…」

 

 

満足げにガルは身体をくゆらせて笑う、それに頷くセーグと対照的にオリオは更に拳を硬く握りしめるとその端正な瞳で床を睨みつけた。嬉々として罪を犯す彼らの片棒を担ぐのに苦痛が走った。

 

 

「ふっほっほっ…ちなみに何か質問はあるかね?」

 

「ではガル様、一つだけよろしいでしょうか?」

 

「ふむ、何かねセーグ君」

 

 

オリオの隣に立ったセーグはエプロン下の筋骨隆々な腕を律義にあげる、強面をガルに向けると不思議そうな顔を見せた。

 

 

「あの男についてなのですが、始末してしまった方が早かったのでは?暗殺であれば我々だということも気取られなかったでしょうし、あの男は所詮レベル1なわけですし…そちらの方が手っ取り早いと思ったのですが」

 

「なるほどセーグ君の言う通り確かにその方法は極めて簡単だがね、別に私は彼を殺したいわけじゃない。いやむしろ感謝しているくらいなのだよ、よもやあの『ゴミ箱』から宝石を見つけてきてくれるとは…全く、何故彼は隠蔽工作を施した地下室に気が付けたのか…」

 

「なるほど、流石ガル様はお優しい!」

 

「ほっほ、世辞はやめたまえセーグ君。それにお客様の恨みを買うのは私の本意ではないのだよ…ただ『落とし物を返して貰う』たったそれだけのことなのだからね」

 

「…」

 

 

そう言ってセーグに笑いかけるガルに誠実さはない、あたかも当然の権利のように喋るヒューキ・ガルにオリオは更に強く拳を握る。

彼らが物のように語るあの子と彼の日々をオリオは見続けていた、本当はこの好機も伝えたくはなかった…だがオリオ・シリウスは逆らえない、それは――

 

 

――『ガタガタッ!…ガシャン!』

 

 

棚に並べられた荷物の一つがひとりでに大きく揺れる、オリオが振り返ると積み重なっていた檻の一つが大きな金属音をたてて床に転がってしまっていた。

…上にかかっていたはずの厚ぼったい黒布は衝撃でずり落ち、鉄格子の隙間から暗闇が垣間見える。

 

 

「ほほ、活きの良い!セーグ君、なだめておやりなさい」

 

「はい、ガル様」

 

 

笑みを浮かべたガルが檻をちょいと指さす、苦笑しながらセーグは檻に近づくとエプロンを垂らして横に倒れた鉄格子を慎重に拾い上げた。

 

…赤い双眸がその中で揺れるのが見えた。

 

 

「よしよし良い子だ…ふふ、やはり仕入れたては違いますな」

 

「ふむ、ならば後で私も可愛がるとしましょう。だがまずは目の前の目標だ、二人とも準備が済んだならそろそろあれを回収してきなさい」

 

 

時間が来る、命令は既に下されていた。

ヒューキ・ガルの笑みが向けられる、セーグが空の檻を担ぐのを尻目に見送りながらオリオ・シリウスは拳を握る。だが彼は欲に染まった男を止められる手段を持っておらず、レベル5冒険者の力をしても頷くことに抵抗できなかった。

 

オリオ・シリウスは頷く、人を騙し自らの欲望のためなら手段を選ばない男の手先として。

 

 

「――あぁ。それともし彼と鉢合わせてしまったら、その時は仕方ないし殺してしまっても構わんよ。もし抵抗されても厄介だし運が悪かったと諦めて貰うほかないだろう。ですが勿論痕跡は残してはならんぞ、我がマーニファミリアに繋がる痕跡はな」

 

 

何の躊躇いも無く、興味もなくガルは言う。ただ目的しか見ていない男は檻を見ながら卑しい笑みを浮かべていた。

そしてゆっくりとこちらを向く、いつも通りの笑みでもう何度目かも解らない最後の言葉を告げた。

 

 

「では頼みましたよセーグ君、オリオ。確実に()()()()をここに連れてくるのです」

 

「…はい、()()()

 

 

レベル5冒険者オリオ・シリウスは振り返る。握りしめた拳の痛みに耐えながら早速空の檻を掴んだセージと共に、もう幾度目か解らない薄汚れた仕事に向かうのだった。

 

 

 

・・・

 

 

 

狼騎士(ウルフェンハザード)

 

 

言葉と共にダンジョン内に蒼炎が吹き荒れる、肌を焦がすような熱波がダンジョンの壁に反射し、立ち昇った火柱の中で鈍色のナイフが煌き溶けた。

 

左手から零れた液状の鉄が身体を覆うと同時に鎧が形成され、蒼炎に打たれた鉄は徐々に本来の色を取り戻していく。

やがて掌大の鉄片によって形成された全身鎧(フルメイル)と狼の(フルヘルム)が身体に纏われ、直剣がはちきれるように膨張し、最後に蒼い炎のマントが広げられると――狼騎士は成った。

 

片手にひび割れた巨剣を携えた神殺しの獣は憎悪に染まった瞳を篭手のはまった左手に向ける、最適化された鎧は俺の身体に良く馴染み、チロチロと輝くような白痴蒼炎は掌の上でくるくると踊っていた。

 

 

「…よし、成功だな」

 

 

人気のないダンジョンの一角、『第9階層』のとあるルーム。

カウント1000を稼ぎ終え、早速能力を発動し狼騎士になった俺は確かめるように全身から膨らむような蒼炎を噴き上げる。全身に満ちる(ぞうお)が神を求めピリピリと訴えているのを無視すると、光が目立たないように極力巻き上がる炎をセーブした。

 

これで二回目の力、実は使えなくなっていたらどうしようと考えていたが問題なく能力は発動できるようだった。

自由に操れる炎をゆらゆらと揺らしながら俺はウルフヘルムのスリットから右前の地面に突き刺さっている巨剣に燃える瞳を止める、少し遊び心で掌を向けると炎を操り、そのデコボコとした剣の腹に蛇のような炎をゆっくりと這い上がらせた。

 

 

「って遊んでいる暇があるか…よっこらせ」

 

 

甲冑のまま俺はどしりとその場に腰かけ、胡坐を掻く。

何故か今日はモンスターが少なかったせいでカウント稼ぎが捗らず、予定よりだいぶ遅れてしまっているので油を売っている暇など無い。時計が無いので正確な時間は解らないが既にダンジョンに潜ってから4時間ほど、帰るのにそれほど時間がかからないとはいえ急がなければこのままだと夕方ごろに家に到着する事になってしまうだろう…別に時間制限などあるわけでは無いが、暗い家の中で少女を待たせたくはなかった。

 

(…)

 

一応周囲を見渡す、ダンジョンでも人の通りの少ないここのルームは比較的作業に向いている。

この前ぎゅるぎゅる丸の探索でダンジョンを隅々まで駆け回った俺は幾つかこういう安全地帯…では無いのだが人気の少ない場所やモンスターの通りが薄い場所を見つけていた。

ここに来たのはモンスターを探してだが丁度良い、出来るかぎりモンスターには作業を邪魔されたくないし、ましてや冒険者にはこの姿を見られただけで噂にされるだろう…そうなれば、口封じか逃げるか選ばなくてはならなかった。

 

 

「まぁ見つかる前に直せばいいだけの話だ…よし、始めるとしよう」

 

 

あの子の為にも自分の為にも早く終わらせた方が良い、気持ちを入れ替え俺は軽く手首を回すと――左手で自らの胸を叩いた。

 

一瞬鎧の下のコートからどうやって鉄素材を取り出したものかと逡巡したが、俺は胸周りの装甲を一時的に炎で溶かして透過させることができた。穴が空いたようにドロドロになった蒼鉄の中に手を突っ込むとまさぐり、必要な袋を二つ探し当て取り出すと床の上に置いた。

…高熱の銑鉄を通り抜けてきたはずの布の袋には燃え跡などは無い、実際の銑鉄につけたらただの布など即発火は免れないのだろうが、どうも温度を変えることで鎧の下の所持品を安全に取り出すことが出来るようだ。まぁそうでもなければ俺の身体などとうに燃え尽きているだろうし、いちいち能力解除しなくていいので助かった。

 

 

「…」

 

 

篭手のまま取り出した袋の紐を解く、鎧で精密作業とか正気の沙汰じゃないが例えいつもより自由に指を動かせなくても結び目を解くぐらいは出来た…変身する前に準備をしておけばよかった気がしないでも無いが、まぁそれはそれ。

 

二つとも袋を開き中の素材を確認する。ぎゅるぎゅる丸のパーツ群はさておき俺は手のひらサイズの鉄球を取り出すと軽く掌の中で転がし、早速炎に当てられ端が蒼く染まったそれを軽く投げると間髪入れずに左手を叩きこんだ。

…ゴヅンッという鈍い音と共に拳に鉄球が触れる、その瞬間噴き上げた炎が鉄球を包み込み鈍色が澄んだ蒼白に浸透したのが見えた。

 

(だいたい鋳造に一秒ってとこか…剣の方も一秒半って感じだし、よほど大きな『もん()』じゃない限り時間の変化はしないのか?……いやむしろ問題は拳を当てるまでの時間だな…戦闘中にどう使うか…専用の戦い方は…)

 

考え始めた俺の前に、カランと鋳造されたミニチュアサイズの果物ナイフが転がった。

鉄球をそのまま伸ばした小さなナイフは切れ味こそ良くできているが短く、俺が扱うには長さが足りない。

どうやら質量保存の法則は適用されているらしい、『覚醒時に持っていた直剣(巨剣)』と『能力発同時に出せるナイフ()』だけは変身時のみ特別なようだが、当たり前の話鉄の膨張などは出来ない訳で、やはり鋳造するにはそれなりのリソースが必要なようだった…まぁ中身を空洞にすれば張りぼてのようなものは作れるのだろうが。

 

(素材が余ったらアイツになんかオモチャでも作ってやれなくないのか…っと、いかん。早く作業始めねば)

 

ぼんやり考えていた意識を目の前の鉄に戻す、能力の確認も終えたことだし俺は本格的な修繕作業を始めていくことした。

 

 

パーツ群を地面の上に広げる、床の上に転がった細かな部品達の中から俺は、ちょいちょいと覚えておいた壊れているパーツを手早く摘まみ上げ選り分ける。

ところどころ亀裂や損耗の激しいパーツ達で山を造ると、失くしてしまわないように山を手で視界内に寄せ集めた。

 

…本来なら現代設備を使わねば修繕できないような部品たち、しかし例え鉄を二倍三倍に

することは出来なくても俺の能力は鉄の性質を変える事ができる、ならば特殊素材無しでも代用ぐらいはできると踏んでいた。

 

一度鉄球を打って作った刃渡りの短いナイフを右手の指先で掴む、軽くくるりと手の中で回すとしっかりと持ち柄に近い『腹』の部分に左拳を慎重にカチンと当てた。

瞬間蒼炎が再びナイフを包み込む、鉄が外側から光り始めると次第に熱を持ちどろりと液化して刃の端が溶けた。

しかしそれ以上の変形はせず溶けた状態を保ち、まるで棒につけた溶けかけのチーズのように刃先に鉄がずり落ちてゆくと、表面張力で水滴を作り出した状態で止まった…どうやらただ溶かす事もできるようだ。

 

刃先に蒼い液体を垂らしたナイフを俺は手の中で確かめるとペンのように持ち換え右手を軽く揺らす、左手でパーツ群の中から一つ摘まみ上げ小部品に入った亀裂に溶けた鉄をつけた。傷になぞるようにナイフを当てる。刃先についた液体を擦り付け、粘度の高い銑鉄を慣らすようにして傷跡の上に液体を成形し始めた。

 

――簡単に言って、即興のグルーガンである。

 

蒼い銑鉄が傷口を埋める、元の容を思い出し水滴ほどの鉄を延ばすと撥ねた起伏を指やナイフで極力無くしていった。

そして壊れる前の容にまでパーツが修復され、特にこれといった問題がない事を確認した俺はパーツを両手で包み込み、掌の中の炎で焼くと形そのまま溶接し終えた。

これで一つ完成である。手の中の新品同然となった部品の出来栄えを俺は確認すると一人で頷き、壊れていないパーツの山の上にそれを置いた。

 

銑鉄の簡単な維持、かつ瞬間溶接の出来る炎。

本来なら現代設備が無ければ修繕出来ないような部品、しかしこの能力さえあればただの鉄素材でことたりる。本来なら素材同士の硬さが違えば脆くなるが一度パーツ全体を溶かす事で鉄の性質も均一にすることが出来た。

…鉄に対しての万能能力と言ったが本当にその通りである、今のところこの姿にならないと使えないのが難点だがそれを除けば鋳造溶接造形なんでもできた。

 

ヘラ代わりのナイフから蒼い鉄が垂れる、徐々に溶けていく資材(リソース)は手のひらサイズと小さいが、それほど多くないパーツを直すには充分な量があった。

とりあえず一つ修繕を完了した俺は満足のゆく出来に安堵すると肩を揺らす、また新しいパーツを掴むと傷を確認し、また溶けた鉄をその合間に補強し始めた。

 

――後はこれの繰り返しである、パーツを拾い、ナイフで傷に銑鉄をつけ、修繕する。

 

地道なかつ丁寧さが求められる作業だ、どっかりとあぐらをかいたまま俺は塗装のようにちょんちょんと銑鉄を付けては両手で包み込んで鋳造し、また次のパーツに移る。

かといって一つ一つ疎かには出来ない、関節部などは修復面にミリ単位で凸が生じると駆動しない可能性があるし、何よりイメージで鋳造するのでいくら現物が目の前にあるとはいえ少し気を抜けば炎が乱れ大きくパーツの形を変えてしまう可能性があった。

 

 

「…~♪」

 

 

鼻歌を混じりに無心で作業に没頭する、集中力を切らさないようにしながら俺は炎の中胡坐をかき、時折肩を回しながらカチャカチャとパーツを直していく。

ダンジョンの淀んだ空気の中で蒼炎をふかし、黙々と鉄に向きあっていると流石に鎧の下で汗が垂れた。とはいえ単純作業にそこまでの疲労は無く、数をこなせばおのずと細かな炎熱の出力にも慣れてきた。

 

そして――徐々にすり減っていくナイフが足りるのか不安になったころ、全てのパーツの修復は完了した。

目の前で山となった全て治ったパーツ達を踏まないように俺は一度凝った足を伸ばす、つまようじほどの大きさになってしまったナイフを投げ捨てると、大体一時間程度かかったかと頭の中で計算し息をついた。

 

 

「ふー…よし!」

 

 

とはいえまだ作業は終わりではない、また手を動かし始めた俺はパーツ群の中でもとりわけ大きいものを掴む。

いわゆる基盤であるそれは所謂大本であり、組み立ての基本だ。手の甲である装甲を床の上に置き、ざっとパーツ群の配置を確認した俺は急ぎぎゅるぎゅる丸の組み立てを始める。

最近解体したぎゅるぎゅる丸の構造は完全に頭に入っており、というかこれを作ったのが俺なので構造ぐらい完璧に理解していた。

 

両手同時進行で器用にパーツを組み立てていく、流石に篭手を付けたままだと難易度が高いが、ネジ締めからワイヤー配線まで何回か失敗してでもこなしていく。

足りない部分は強引に鋳造しながら複雑な機構を積み上げると徐々に床上のそれは手の形を成していき、神速で基本射出機構を完成させると最後に装甲部の取り付けにかかった。

黒鉄に蒼炎が反射した、てらてらと光る硬いチタン装甲を確かめつつ俺はその一つ一つを基部にはめ込み固定する。

 

そして――最後のパーツが、パチリとぎゅるぎゅる丸にはまり込んだ。

 

 

「…よっしゃあ!ぎゅるぎゅる丸完成ッ!」

 

 

思わず声をあげた俺は遂に修復されたぎゅるぎゅる丸を掴み上げる。

慣れた重みと手触り…は鎧を纏っているので解り辛いが、どこにも傷は見当たらない完全な状態となったぎゅるぎゅる丸がそこにはある。

 

思えば二週間以上前、リリによって盗まれたぎゅるぎゅる丸。それを返して貰った時ぎゅるぎゅる丸は壊れてしまっていたが、何とかこうして修復にまでこぎつけた。

この能力は手に入れたが、まぁそれはそれとしてお気に入りの武器の復活。これさえあれば遠距離攻撃が出来るし、カウントの無い通常時でも中層のミノタウロス程度なら倒すことが出来るようになる。

 

ついに長い時を経て、俺は心残りだったぎゅるぎゅる丸を修復したのだった。

 

 

「……感傷に浸ってる場合か、まずは動くかをだな…」

 

 

思わずガッツポーズを上げていた俺は溢れ出た歓喜の感情を抑え、冷静に見た目は完璧に治ったぎゅるぎゅる丸を見下ろす。

直ったように見えても実は詰まっていて機能しないとか十二分にありえる、手の中のグローブに目を落とした俺はまず指の駆動範囲を確かめそして腕に嵌めようと…既に自分が篭手をしていることに気が付いた。

 

(うーん…?)

 

鉄であるぎゅるぎゅる丸ならば俺の能力と相性がいい。流石に直剣のように巨大化は出来ないだろうが、ぎゅるぎゅる丸を付けたまま狼騎士を発動させることも出来るような出来ないような気がした。その場合篭手の分は上塗りにするのか他の装甲に当てるか悩むが…まぁ何にせよそのためには一度能力を解除する必要がある。

 

一度胸装甲に穴を開けその中にぎゅるぎゅる丸を放り込んだ俺は左手に意識を集中させる、炎の出力を抑えナイフのイメージを保ち、十秒もすると全身の鎧が蒼みを帯び始めた。

 

(とはいえ…)

 

解除する合間に考える、もしここでぎゅるぎゅる丸が完全に治っていなかった場合もう一回解体しどこが直っていなかったのか改めなくてはならない。

しかし既にダンジョンに潜って5時間ほど経ってしまっているし、あの子が家で待っている以上時間をかけることは出来ない…例え壊れていたとしてもそれはまた別の機会という事になるだろう。

 

意思に合わせ鎧が溶け始めた、徐々に狼の顔が崩れ始めると炎も散り――

 

 

 

 

 

 

――『ドシンッ!』と重い足音が、ルームの外側から聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「ぁ…!?」

 

 

ルームに繋がる通路の一つ、灯りの差さない暗がりから響く音。

それは重くダンジョンに響き渡り、明らかにこちらに向かっている事が解った。

 

ダンジョンの空気が変わる、明らかに異質な圧がその通路から漏れ出ており、可視化されたような久しぶりの殺意に俺は視線を向けると解除しかけた能力をまた構成した。

溶けかけた鎧がまた固まっていく合間も殺意の主はこちらに近づいてくる、只者ではない雰囲気に俺は警戒しながらどこか嗅いだことのあるようなその匂いに恐怖が走るのをどこか遠く感じていた。

 

 

「…!?」

 

 

……俺は、穏やかな生活の中で忘れていたのだ。

 

あの時感じた恐怖と痛み、高すぎる壁、これっぽっちも届かなかった圧倒的な存在との邂逅を――

 

 

「また会ったな()()…いや、『狼』」

 

 

――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

足が竦む、肩が震える、知らずと瞬きの回数が増え、俺は目の前に現れた存在に声にならない絶叫を上げる。

生存本能が最優先を吼え、今すぐこの場から逃げ出したいと骨髄が叫ぶのを感じた。

 

高い体躯、広い肩幅、筋骨隆々な手足、片手に担いだ特大剣、まき散らされる暴力的なまでの圧、しかしこちらを見竦めるその瞳は冷たく、これから行うであろうことに微塵も恐怖など抱いていなかった。

 

人類の到達点はいとも容易く俺の目の前に現れる、都市唯一のレベル7冒険者『都市最強』は通路からその姿をゆっくりと現し、不愛想な表情で俺の事を見ていた。

 

そう、こいつにとってこれは些事に過ぎない。自分の庭の雑草取りに死を予感する人間がいないように、道を歩く蟻を踏みつぶすことに何の躊躇いが無いように――

 

 

 

「『蒼起三爪(ソウキノミソウ)』」

 

 

 

そこに一切の迷いはなかった、その姿を確認した瞬間に俺の身体は自然と動いていた。

 

白痴蒼炎が再度燃え上がる、巻き起こった火柱がダンジョンを見境なく焦がす中腕を延ばすと地面に突き刺さっていた巨剣を勢いよく掴み、ズンッと深く構えると剣に寄り集まった蒼が破裂するように膨張し、三本爪の容を作った。

 

全身を覆った恐怖を糧に憎悪は燃えあがる。

 

それは生存本能から滲み出た狼狽であり、二度と出会いたくない強敵に対する恐慌じみた肉体の怯えだった。

しかし炎は恐怖を許さない、感情を燃やす炎は恐怖を溶かし勢いを増す。お陰で強張りかけた身体は自由に動き、まるで精神に麻酔を打ったかのように後ろ向きな感情を抑制してくれた。

 

それに――死ぬわけにはいかなかった、家にあの子が待っているのだから。

 

炎叫、天井に爪を立てる蒼が揺れる。

俺の想いに火は大きく呼応し、『絶対的不利(神殺し)』を謳った。

 

例えそれがどんな無理難題だろうと、巨剣にかける力は一切減らなかった。

ただ前へ、それ以外の選択肢を捨てた俺は一歩を強く踏み込んだ。

 

 

――『猛者(おうじゃ)』オッタル、現れた絶対的恐怖の壁に俺は蒼炎の爪を振り下ろしたのだった。

 

 

 

 

 




オッタルとかガチムチ筋肉ムキムキマッチョマンの変態はいるだけでキャラ立つから良いよね、単純にすこです。
あ、あと戦闘中解り易いようにオッタルの剣は表現上「特大剣」で、リョナの剣は「巨剣」に分けました。だけど前回登場した時は多分逆なんで…まぁそのなんだ、そういうつもりで(なげやり)。

ではではー
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