世界はシャボン玉とともに(凍結)   作:小野芋子

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今回は説明回なんで、進みません。
勘違いもなしです。

という事でゆっくりしていってね。


主人公の計画とか思考

空を見上げると、既に日が沈みかかっているお陰か一番星がキラキラと輝いている。

元の世界の記憶なんて最早存在しないが、何となくあっちの世界では星はここまで綺麗には見えないんだろうな、と思ってみたり。

 

病室から離れる際に、クシナさんは最後にまた力一杯俺を抱きしめてくれた。その後は流石に疲れたのか糸が切れたように眠ってしまったが。

けど、確かに力は貰えた。少なくとも、全部終わらせたあとは絶対クシナさんに菓子折りの一つでも持っていくんだと決意はした。

まあ、それは当分先のことになるだろうけど。

 

パイプをふかすと見慣れたシャボン玉がまた一つ空を舞う。不思議とシャボン玉を見ていると心が温まるように錯覚するのは、常にシャボン玉が俺のそばにあったからか、それともシャボン玉が俺を暖めてくれるからか。理由なんてサッパリ分からない。

 

分からないから考えないようにしよう。今は考える必要のあることに頭を使うべきだ。

現在俺が抱える問題、というより解決しなければならない問題はいくつかある

 

一つは、これから来るであろう五影との対談。

もっと言えば俺が犯罪者になるかどうかについてだ。

 

正直、あれだけ啖呵を切っておいて何だが今の段階で説得できるとは思ってない。

なんせ俺にはマダラの味方ではないという証拠がないんだから。言わせて貰えば、じゃあ何を見せればお前らは俺がマダラの味方じゃないって信じるんだって声を荒げてやりたいが、それをやってもこっちの立場が悪くだけだというのは理解している。

つまりこの問題はどうしても先送りにせざるを得ない。

 

それに、この問題は言うほど面倒ではない。

普通のやつからすれば世界が敵に回るなんて大金を払ってでも避けたいところだろうが、九喇嘛による超感知、カツユさんのハイパー回復、何より犀犬の超絶危険シャボン玉による絶対防御がある俺からすれば些細なことでしかない。

全て人任せなのが歯痒いところではあるが、そこはそれちゃんと弁えてるから。いや、いつまでも甘える気はないよ?迷惑ばかりは掛けたくないから全力で修行する気だし。

 

話は戻すが、一つ目の問題は別に命に関わるような問題ではないのだ。

だがその実面倒でもある。

というのも本当に俺がマダラの味方じゃないという証明ができないのが辛いのだ。

当初こそマダラをボコボコにして差し出せばそれで何とかなると思っていたが、今になって問題がいくつか浮上した。

 

俺が黒幕説と、本当の黒幕がいること。

 

『俺が黒幕説』は文字通りマダラを操っていたのは俺で、計画にマダラが必要なくなったから殺す超絶鬼畜野郎だと思われること。

少年漫画でたまにある「あーこいつ裏切るな」って奴が案の定裏切って「先生は良くやってくれました。後は俺が引き継ぎますよ」みたいなこと言って背後からブスって刺すアレだ。

そうなったらこれ程厄介なこともない。なんせ肝心のマダラを俺が殺ってるから俺とマダラは仲間じゃないって証言させることも出来ないし、そうなれば原作主人公的なやつが超パワーに覚醒してぶっ飛ばしに来ることが目に見えてる。

 

まあ『俺が黒幕説』は卑屈に卑屈を重ねた妄想だからそれ程可能性は無いだろうけど。問題は本当の黒幕がいることなんだよなぁ。

 

インドラさんは見た感じ警戒心強そうだったし、純粋な戦闘能力も高そうだから並大抵じゃ取り入ることも、そもそも近づくことすら出来そうにない人だ。

そんなインドラさんを唆して上手く乗せる。しかも二人は六道仙人?だっけの息子らしくて時代で言えば何百年、下手すれば何千年前の存在。

そんな昔から存在していて、今もなおその裏の計画とやらを果たそうとする忍耐強さを持つのが黒幕だ。ハッキリ言って草の根を掻き分けて探したところで見つけられるとは思えない。

 

ここでいくつか問題が浮上する。

 

俺の目的はその黒幕を潰すことにある。

これは別に義務というわけではないが、インドラさんとアシュラさんが態々俺を頼ってくれたんだ、その期待に応えないわけにはいかない。

よって俺は絶対に黒幕を潰す。

だが相手もさるもの、俺の予想が正しければ黒幕はアホみたいに諦めが悪くて忍耐強い奴だ。それこそ十尾が復活して、下手すれば無限月読が成功して地上の生物全てが幻術にかかるまで姿を現さない可能性だってある。

 

中途半端なタイミングでマダラを倒し、『月の眼計画』とやらを潰して仕舞えばまた黒幕さんは日陰に戻って時期を伺うのは明白。

つまり、黒幕を誘き出すためには十尾を復活させる必要が出て来る。

 

そして、その為には——つまり十尾を復活させるには犀犬達尾獣を外道魔像とかいう入れ物に封印しなければならないらしい。

 

これが問題なんだ。

 

マダラが20年後の戦争で尾獣を回収すると宣言している以上、各里の影どもが尾獣を野放しにしておくとは考えられない。大方俺みたいに人に封じるのは簡単に予想がつく。ものに封じるという手もあるらしいが態々敵が手に入れやすいようにするとも思えないからな。

 

そしていざ戦争になった時に果たしてこの存在、つまりは人柱力をどうするのか。

隠す?無駄だな。そんなの一時的な時間稼ぎでしかない。それに第一隠すのならこなさなければならない問題がある

 

マダラを倒すこと。

 

だが、ハッキリ言ってそれは無理だ。

カツユさんに聞いた限り五影が束になってかかっても手も足も出なかったそうじゃないか。

一般的な少年漫画なら20年後には強くなっていて、『へっ、あの頃の俺とは違うぜ!』的なことを言うのだろうが、まあ無理だな。

20年経ったからって強くなれる訳でもないし、なんせ聞いたところによるとマダラは穢土転生体?とかいう弱体化した存在らしいから、寧ろパワーアップするのは向こうなんだよな。

 

そこまで考えれば誰でも分かる。俺みたいに黒幕の存在を知らないやつはマダラを倒せばそれで世界は救われると思ってるだろうから、当然その為に持てる戦力は出し惜しみなく使う。つまり人柱力は戦場に駆り出されるとみていい。

 

だが、それでも正直言って勝てるかどうかは五分五分だ。これは俺の予想ではなく九喇嘛や犀犬の予想だからまず間違いない。

けど、五分で人柱力は死ぬ。なんせ敵の狙いは尾獣だ、無理やり引っこ抜かれて死ぬなんて想像に難くない。

 

ここからは俺の都合だが、俺は自身が人柱力だからその扱いというのはよく分かってる。

理由もなく暴力を振るわれるのなんてザラだし、金を払っても商品が出ない、もしくは食事の場合毒を盛られるなんて言うことも良くある話だ。

俺は犀犬が中和してくれていたらしいから毒の類は効かなかったが、それでも正直人が憎くて仕方なかった時期もある。

水影がいなければきっと三回は滅ぼしてた。

 

犀犬と仲の良かった俺でもこんな感情を抱くんだ、尾獣と全く仲良くない奴なんてもっと悲惨に決まってる。

なんせなりたくもない人柱力になったのに周りはクソみたいな対応をしてくるんだからな。いや、ほんとそういう意味ではこの世界クソだな。

 

けど、それは尾獣も同じこと。

自由気ままに生きたい奴だっているだろうに、いきなり攻撃してきて反撃したら化け物扱いだろ?そんでもって危険だから封印するとか自分勝手なこと言って人なりモノなりに封印して、解放したと思ったらまた封印して。

 

そんでもって戦場では兵器として導入するんだろ?

マジでこの世界腐ってるな。ちょっとマダラの計画に加担しかけたぞ。

そりゃ尾獣も人間不信になるわ。九喇嘛が人を憎んでいた理由がヒシヒシと伝わってきた。

 

ハッキリ言って人柱力なんていうのはいいルーズルーズのズルズルな関係でしかない。

断ち切れるのなら早々に断ち切っておきたい案件だ。そこで、俺の出番というわけだ。

九喇嘛曰く、尾獣の合意の上でなら人柱力から尾獣を解放しようと人柱力が死ぬ心配はない。これはクシナさんの件で既に実証済みだ。

そもそもが尾獣が抜けて人柱力が死ぬのはただの腹いせらしいからね。まあ無理やり封じられて、今度はまた別の人に封じられると分かってたらムカついて殺しても仕方ないと思う。

それで殺すのはエゴだろ。

 

兎に角、俺が説得できたのなら人柱力を殺すことなく全ての尾獣を俺に移し替えることは可能だ。それも犀犬が言うには一番厄介なのが九喇嘛らしいから、残りを皆説得して取り込むのはそれほど難しいことでは無いらしいし。

 

そしてそれこそが俺の目的。

 

俺は十尾を復活させる気でいる。それは黒幕を表に出すために必要なことだ。

だが、その為に誰かに死ねと命じる気はない。言ってしまえば態々黒幕を潰す理由はないんだから。なんせ今回の『月の眼計画』を潰せば黒幕さんの裏の計画とやらも先送りになるに決まってる。そうなれば少なくとも俺が生きてる間に動くとも思えないから次に黒幕が動くのは俺が死んだずっと後になる。

 

けど、それは出来ない。なんせ俺は託された。託して貰った。

 

だから今潰さないといけない。

俺はあえてマダラに尾獣をくれてやる。けど同時に、尾獣が奪われたら死ぬとわかってる状態で他の人柱力に尾獣を差し出せとも言えない。

だってそうだろ、只でさえ酷い扱いをいけているのにその上で死ねなんて誰が命令できる。

 

だからそれは俺が背負う。

九匹の尾獣が必要なら全部俺に封じればいい。

死なない算段はついている。じゃないとこんな事するものか。俺の都合で十尾復活させといてごめんやっぱ死んだは無責任すぎる。

 

十尾は復活させる、必要なら無限月読も見逃す。その上で黒幕に勝つ力も身につける。

 

ハッキリ言って問題は山積みだ。しかもこれを話したところで信じてもらえるとも思えないし、まず俺は現在犯罪者。俺の言葉に耳を傾けるやつが何人いるか。

 

つまり、これらは全て俺一人で片付けなければならない。正直自分で自分に背負わせすぎだとも思うが、こればかりは仕方ない。

 

しかも世界は敵に回ってるし、ああまじでしんどい。

 

 

 




人柱力から尾獣が抜ける部分は独自解釈のような気もしますが、八尾が魔像に封じられてもビーさんが生きてたから強ち間違いでもないと思うんですよね。
だって牛鬼さん本体封印されても尻尾切るだけでビーさん生かしましたしね。

ってか主人公マジで不憫すぎる。

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