世界はシャボン玉とともに(凍結)   作:小野芋子

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感想にもありましたので人柱力から尾獣を引き剥がすことについてちょっと説明。

原作のビーさんの様に一部チャクラを残せばそこに尾獣の意思が残っていなくても大丈夫。けどそれをするかは尾獣次第だから尾獣が『なんでこんな人間のために態々そんなことしなくちゃなんないの?』と合意しなければ死にます。
って書きたかってんですけどだいぶ説明不足でしたね。失礼しました。

それにしてもスクロールバーがちょっと下がりましたね(・∀・)
感想もいろいろ荒れてるみたいですね(・∀・)

小説書くってたーのーしーなー♫



いざ、決戦の地へ

「遅かったか」

 

波風ミナトが時空間忍術でクシナの病室に到着した時、既にウタカタはそこには居なかった。

だが、チャクラの残り香からつい先ほどまで確かにこの場にいたのだと推測できる。

 

ミナトは決してウタカタがマダラの部下だという話を信じていた訳ではない。けれども仮にその話が本当だとするなら、ウタカタが今度こそ九尾を手中に収めようと動き出すことは容易に想像がつく。嘘だとは思っている、だが万が一があってもいけない。

四代目火影として、何より九尾の人柱力であるクシナの夫としてミナトは判断を下し、時空間忍術の射程圏内に入ると同時にすぐさま病室へと飛んだ。

 

結果は悪い方に裏切られた。

 

到着してすぐに、三代目火影、並びにミナトの師である自来也、自来也と並ぶ三忍の大蛇丸がこの場にいないことは分かっていた。同時に外の見張りが眠らされていることも。

そして何より

 

(クシナから九尾のチャクラを感じない)

 

正確には微かに感じることはできる。だが、それもほんの僅か。あって無いようなものでしかない。

それが意味することはつまり……。

 

チラリとクシナの顔を見る。

その顔からは何時もならあるはずの元気が感じられず、見ていて痛々しいほどに脆弱していた。目元には涙の跡がハッキリと残り、唇からは僅かに血が滲んでいる。

加えてこの場にいる二人の赤子。

 

それだけで何があったのかを推測することは出来る。

 

ナルトを人質にとり、九尾を引き剥がした。

 

或いは人質など取らずに幻術によって引き剥がしたのかもしれない。だが、ミナトにとってそんなことはどうでも良かった。

クシナから九尾を引き剥がした、その事実さえ分かればその過程など知ったところで怒りが沸き立つだけ。だからどうでも良かった。

 

クシナからは未だに呼吸が聞こえる。弱々しくて、今にも止まってしまいそうなそれ。クシナが生きているのはうずまき一族の生命力故か、ただ単純にクシナの生死に興味がなかったからか。

 

どうでもいい。

 

もう、どうでもいい。

 

「俺の家族に手を出したんだ、覚悟は出来てるよね」

 

そこにはもう温厚なミナトはいない。四代目火影も、クシナの夫も、そこにはいなかった。

いるのはかつてこの忍界にその異名を轟かせた暗殺者()だけ。

 

『黄色い閃光』が目を覚ます。

 

或いはミナトが冷静であれば、クシナが生きている事実にもっと疑問を抱いたのかもしれない。だがさしものミナトとはいえ、最愛の妻の脆弱しきった顔を見てなお、正確に状況を判断できる冷静さは持ち合わせてはいなかった。

 

ウタカタは既にミナトの感知範囲の外にいる。けれど不思議とミナトにはウタカタが何処にいるのかが分かった。同時にその場で歪んだ笑みを浮かべているであろうことも。

 

 

その場にはもうミナトの姿はない。ごめんねと呟くクシナの声が、ただ静寂に響く。

 

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

『山中一族より【心伝身】により木の葉全土に通達、山中一族より木の葉全土に通達。

火影様より木の葉郊外、終末の谷にて大規模な戦闘が行われるとのこと。繰り返す、木の葉郊外、終末の谷にて大規模な戦闘が行われるとのこと。

相手はあのうちはマダラの部下であり、一度は木の葉の英雄とまで言われた霧隠れのウタカタである。敵はすでに九尾を奪取し、逃亡している模様。

中忍以下のものは指示に従い急ぎ避難を。上忍以上のものは結界班の補助を最優先せよ。

繰り返すが相手はあのマダラに並ぶ犯罪者である。間違っても戦いを挑むことは無いように。

既にウタカタはうちは一族を壊滅まで追い込んだという情報もある。繰り返すが間違えても戦いを挑むことは無いように。

 

山中一族———』

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

「聞いたな、自来也、大蛇丸。わしらも急ぎ向かうぞ」

 

ウタカタが借りていた住居。人里から大きく離れたその場所には誰もおらず。まるで最初から誰もいなかったかのような静けさがその場を形作っていた。

 

山中一族による通達は、当然そんな辺境の地にてウタカタの消息を追っていた三代目達にも届く。

幸いにして、その場から終末の谷までの距離はそれ程離れてはいない。今すぐに向かえばウタカタと相対することも十分可能だろう。

それにこの場にいる三人の忍。猿飛、自来也、大蛇丸は五影クラスの実力者。戦地の赴いたとして足を引っ張るようなことは無い。

 

だが、自来也は猿飛の命令に首を横に振る。

 

「猿飛先生、どうも引っかかりませんか?少なくともワシはウタカタがそんな真似をする子供には見えませんがね」

 

それに、と尚も続ける。

 

「それにワシは綱手からウタカタのことについて聞いたことがある。それを聞く限りとても悪い奴には思えんのですよ」

 

以前、偶然にも自来也は旅の道中に綱手と会ったことがある。その時の綱手は珍しく笑っていた。

大事な弟や男を失って以来、一度として笑わなくなったあの綱手がだ。

だからこそ自来也はその理由が聞きたくなった、同じ師を持つ仲間として、何より綱手に思いを寄せる一人の男として。一体誰が綱手に笑顔を取り戻させたのかを。

 

それを尋ねた時、綱手はまた嬉しそうに笑って一人のバカな少年の話をした。

 

仙術とは、一朝一夕で覚えられるようなものでは無い。学んだ場所こそ違うが同じく仙術を習った自来也はそれはよく分かっている。

高い才能に、膨大なチャクラ、そして何より何度失敗しても諦めないど根性。それら全てが合わさって、それでも一生をかけても身につけられるかどうかというもの。自来也ほど才あるものが取り組んでも完全な仙人化には至れなかった。

 

故に綱手の話を聞いて目を見張った。まだ10にも満たない子供が、たったの一年で完全な仙人化を身につけたのだと聞かされて。

 

何という才能。それに、湿骨林の仙術は攻撃特化の妙木山や感知特化の龍地洞とは異なり繊細なチャクラコントロールを必要とする回復特化の仙術。具体的にどの仙術が最も難易度が高いと決まっているわけではないが、それでも並大抵の努力で身につくものではない。

 

そして同時に思った。何をそんなに生き急いでいるのかと。

 

だがすぐにどうでもよくなってしまった。自来也の目の前で笑う綱手を見て。

綱手は言った。ガキのくせに馬鹿みたいに突き進もうとするその少年の話をカツユに聞かされたら、いつまでも過去に囚われて前に進めない自分が馬鹿らしく感じたのだと。だからそのガキのように、少しは足掻いてみたいのだと。

優しい笑顔だった。自来也の惚れた女の笑顔だった。

 

だからこそ

 

「ワシはウタカタは味方だと信じておる」

 

自来也は猿飛にとって真面目な生徒ではない。イタズラばかりして度々猿飛を困らせたヤンチャな教え子であった。当然反抗だって何度もした。

だが、果たしてここまで真っ直ぐに自身の考えをぶつけて反抗してきたことが、今までにあったのだろうか。

 

けど、それでも猿飛はそれを許さない。

 

「通達は火影からのもの、つまりはミナトのものだ。ならば九尾を奪われたという情報も嘘ではあるまい。加えてウタカタがうちは一族と交戦したのもまた事実。つい昨日フガクよりサスケを預かったが、あの時のあやつは死すら決意した目をしておった。恐らく何かに気づいたからこそウタカタに勝負を挑んだのだろう。それだけの事実があって、貴様はまだウタカタが味方だのと戯言を抜かす気か?自来也」

 

「お生憎様ミナトも人間、間違えることはある。それにワシは器用ではなくてのう、誰を信じるかと言われれば惚れた女(綱手)を信じるしかねえの」

 

もはや会話など無意味。そう悟った猿飛は静かに息を吐く。師として間違えた道を行こうとする自来也を止めるのが先だと。

 

「大蛇丸、お前はどちらにつく気だ?」

 

猿飛から目を離さずにそう尋ねる自来也。その声は妙な確信を持っていた。まるで、大蛇丸が何と答えるのかを分かっているように。

 

「…そうね」

 

思い出すのはつい最近のこと。

研究者である大蛇丸は当然ながらかの伝説の忍うちはマダラと渡り合ったというウタカタにも興味を持っていた。その忍術に、その力に、その身体に執着にも似た興味を抱いていた。

結局近づけたのは本当に偶然出会った一度のみ、それ以外は彼の周囲を飛び回る水遁忍術によって邪魔されていた。

 

だが一度で十分だった。

目だ。遥か先を見据えている目、同時に何もかもを諦めている対極とも言えるそれら二つを併せ持つその目に魅せられた。引き寄せられた。

うちはの写輪眼のような、日向の白眼のような特別なものでは無い。けれどその目を見たとき目を離すことができなかった。

その視線の先に何が写っているのか、何が見えているのか、どう見えているのか。

知りたくなった。否同じ景色を見てみたくなった。

研究者として、一人の忍として、何より大蛇丸という一個人として。

 

だからこそ大蛇丸の答えは決まっている。自来也に見透かされていたのは少々癪ではあるが。

 

「私も、ウタカタ君につくことにしましょうかね」

 

それを受けて、猿飛はまた溜息を吐く。

 

「お主ら二人は木の葉に仇なすウタカタにつくというのだな?」

 

それは最後通告。返答を誤ればどうなるか、分からないものはいないだろう。

そしてそれが分かった上で自来也は、大蛇丸はほんの僅かに口角を上げる。

 

「ワシは一度言った言葉を曲げる気はねえの」

 

「私も、みすみすウタカタ君を殺させる気はありませんよ猿飛先生」

 

お互いに一歩も引く気は無い。場所は木の葉から遠く離れた辺境の地。この三人が全力で戦ったとて、木の葉の民に被害は無い。

それが分かっているからこそ猿飛にもはや躊躇はない。一人なら兎も角、二人相手なら殺すことはないと理解しているから。

 

「大蛇丸!足引っ張るんじゃねえぞ!」

 

「あら奇遇ね。私も同じことを思ってたところよ」

 

激闘が幕を開ける。

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

そこは地獄だった。

誰も彼もが狂ったように笑いながら呪詛のように唱えるのだ。

我々うちは一族はウタカタという犯罪者を討つために戦いを挑んだのだと。

 

イタチはただそれが怖かった。

 

優しくいつも微笑んでいた近所のおじさんが、いつも油断なく周囲を警戒していた木の葉警務部隊の警官が、厳しくも優しくあった父が。

皆が皆狂ったように笑っている。

その目を赤く染めて、その口角を歪ませて、嗤っている。

 

この人たちは一体誰だ?この人達は一体なんだ?これが本当に人なのか?

 

恐怖に震えるイタチに声をかけるものはいない。

 

たった一度の敗北で、たった一人の最強(ウタカタ)に彼らは壊された。プライドを、名誉を、地位を、名前を。いや、はじめからきっと壊れていた。ウタカタはただそれを目に見える様にしただけ。

 

聡いイタチは悟った。これがうちは一族なのだと。

 

最早恐怖はない。震えも止まった。あるのは失望。

その失望が、絶望が、イタチの目を紅に染める。

 

「誰か、助けて」

 

イタチは聡い。その年にして既に頭脳だけで言えば中忍と並ぶ。だが、まだまだ子供だった。

 

尊敬する父の狂った笑顔を見て、知り合い達の狂いざまを見て、何より

 

「良かったなイタチ!これで俺たちうちは一族の名誉は保たれた!全部ウタカタが悪いんだ!」

 

信頼する友であり兄貴分であるシスイの狂った姿を見て、平静でいられるわけがない。けど、彼にはもう何も無かった。どうすることも出来なかった。

 

(サスケは三代目に預けられてると聞いている。なら大丈夫。サスケは大丈夫)

 

大事な弟は無事。ならそれでいい。それ以上を望むのは

 

——俺は味方だ。

 

思い出すのは一人の少年。

イタチと僅かに2、3歳しか変わらないにもかかわらず、木の葉の英雄と呼ばれた少年。同時に現在は犯罪者に成り下がった少年。

 

けど、イタチは見た。イタチを真っ直ぐに見つめて真摯にも語りかけてくれた一人の少年を。

嘘なのかもしれない。偽物なのかもしれない。でも、イタチはそれでも自らの目を信じる。

 

あの少年は味方なのだと。

 

「……ウタカタ……!」

 

何処にいるのかは分かっている。先程山中一族の通達で言っていた。

だから走る。迷惑かもしれない、そもそも会ってくれるかも分からない。それでもイタチはただ走る。全てを知る少年の元へ。イタチが尊敬する少年の元へ。

 

 

 

 

その背中を狂気に染めた紅い瞳が見つめていることに気付かずに。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

「———ッ!!」

 

「どうした長門?」

 

「いや、何やら胸騒ぎがする。急ごう弥彦、小南」

 

「?なんかよくわかんねえけど分かった!」

 

「それは分かってるって言わないんじゃないの?」

 

「うるせー!」

 

「それにしてもいよいよ会えるんだな!あのウタカタに!」

 

「また?」

 

「うるせー。お前らも見ただろ!あの戦争でのウタカタの尾獣化を!世界に平等に痛みを与えた!あれこそが俺の理想!かー!是非とも会ってみてえ!そんでもって出来るなら俺たちのリーダーになって貰うんだ!!」

 

「「リーダー?」」

 

「あれ?話して無かったっけ?俺たちの理想のための組織

 

 

暁のリーダーだ」

 





いよいよ一部も佳境。これが終わったら暫くは間が空きますがね。

流石に疲れたんですよ

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