世界はシャボン玉とともに(凍結)   作:小野芋子

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感想欄見てましたけど、別に評価や感想を気にしてナイーブになってるわけじゃありませんからね?
ただ連続投稿が流石に疲れたってだけなんで。そこまで心配して貰うと、逆に申し訳ない。

まあこの話が多分今年度最後の投稿になるかもしれませんけどね。リアルがががが。


一応シリアスです。シリアスかな?シリアスだといいな。シリアスってことにしといて下さい。
さて、タグを増やさなければ(使命感)


少年は

そこはかつて二人の最強が互いの夢の為に命をかけた激戦の地。地は抉れ、山は裂け、海が割れる殺し合いの末、勝者は英雄——忍の神として乱世を治め、敗者は最悪の犯罪者としてこの世を去った。

だが、それはあくまでも後の世の人々の楽観と憧れにより創られた御伽噺。現実として敗者は生き延び、先の夢を果たさんと穢土より蘇った。

唯一渡り合えた神と崇められし忍は火の意思を託し既にこの世を去り、かつての敗者の夢を阻む者も、その存在に気づく者もおらず、世界はまた地獄へとその姿を変える。筈だった。

 

そこはかつて二人の最強が命をかけた激戦の地。風は裂け、地は沈み、天は割れる。穢土より蘇りし亡者は地獄の業火によって大地を燃やし、一人の少年はただひたすらに光を追った。

勝てるはずのない戦い。生き残る道のない殺し合い。誰も救えない筈の物語。果たして少年は事実すらも捻じ曲げた。一を退け、百を救い、千を守り、万を生かした。一人の小さな少年はその背に人々の賞賛を受け、希望を受け、運命を背負う。

 

そこは全ての始まりの場所。そこは全てが終わる場所。

 

終末の谷

 

かつての英雄の、その戦いの余波により出来たと言われる場所であり、夢が始まった場所でもあり、英雄が生まれた場所でもあり、英雄が死ぬ場所でもある。

 

 

 

その場には一人の少年がいた。マダラ()の像、その上に片膝を立てて座り、既に天高く登った月を背景にシャボン玉をふかす少年は、どこか寂しい気に虚空を見つめている。

触れて仕舞えばシャボン玉のように儚く消えてしまいそうなそれは、さながら絵画のように見るものを惹きつけ恍惚させ感動させる魅力があった。

 

滝の音だけが静寂の中響き渡り、空気を揺らす。

 

まるでその空間だけがこの世界から切り取られたかのように、世界がその空間を拒絶するかのように、踏み入る事を許されない世界がそこにはあった。

だが、シャボン玉に反射する世界のように儚く、手を伸ばすことすら躊躇われるその静寂を許さない者がいる。少年が消える事を望まない者がいる。

 

「来たか」

 

静止していた空間はその一言によって動き始める。

そこには最早先程までの少年はいない。世界を救い、世界を滅ぼさんとする救世主(破壊者)がただ笑う。

そして同時に、世界を救い、少年を救わんと足掻く愚者(やぐら)もまた、動き始めた世界にその身を晒す。

 

マダラ()の上に立つ少年——ウタカタと柱間(正義)の上に立つ水影——やぐら。ただそれだけのことが、少し足を進めれば手が届くその距離が、二人を隔てる滝が、やぐらをどうしようもなく苛む。

それがまるで拒絶のようで、踏み入るなと暗に告げられてるようで、どうしようもなく苦しかった。

それでも、逃げるわけにはいかなかった。

 

「久しぶりだなやぐら。ちょっと痩せたか?」

「たった数日で痩せるわけないだろ」

 

そう返せば、それもそうだと笑ってみせるウタカタ。年相応の、それでいて少し大人びた笑顔が二人の会話で見せる何時ものウタカタの笑みだった。

 

それを見て、苦しみを感じる。言葉に出来ない痛みがやぐらの胸を突き刺し、貫く。

どうでもいいただの日常会話だった。当たり前のように繰り返されて来た挨拶だった。これから先もずっと繰り返されると信じていた言葉の応酬だった。だが、もうそれは日常では無くなった。当たり前では無くなった。これから先同じやりとりが繰り返されることがあるのかも、もう誰にも分からない。

 

たった1日。たったの1日で二人の日常は崩壊した。修復は不可能。再生も、救いもない。

 

分かっていた筈だった。理解していた筈だった。やぐらは水影だ、これまでに里を抜けていった忍を何人も知っている。その末路も、その死に様も何度も見てきた。笑って死んだ奴もいる。呪詛を吐いて、世界を呪って死んだ奴もいる。自身を忘れ、復讐に生きそして死んだ奴もいる。

その中には、かつてのやぐらの友もいた。同期がいた。仲間がいた。その全てをやぐらは自らの手で殺してきた。それは水影として、何より仲間として。何度も日常を殺してきた。

 

だからこそ、遣る瀬無かった。里を抜け、犯罪者に堕ちた忍の末路を知っているからこそ、ウタカタが無実だと知っていながら、ウタカタの優しさを知っていながら、ウタカタを信じていながら、庇うことの出来なかった自身の弱さを呪った。憎んだ。恨んだ。怨んだ。殺したいほど、消し去りたいほど、消えてしまいたいほど、弱さが、自分自身が嫌いだった。

 

にも関わらず、ウタカタは笑うのだ。

 

ウタカタが木の葉隠れの里にいない時点で、否、ウタカタがウタカタである時点で、既に五影会談での決定事項は知られているとは思っていた。それはつまり、ウタカタは自らが犯罪者に認定されたという事実を知っているということ。その場に居ながらそれを止めることも出来なかったやぐらの愚かさを知っているということ。だから当然恨まれていると、憎まれていると思っていた。

或いは、恨んで欲しかった。

 

のに、なのに!!

 

「————ッ!?」

 

激情のままに叫ぶつもりだった。恨めと、憎めと。罵られる覚悟はあった、殴られる覚悟はあった。殺される覚悟はあった。けど、心の底ではウタカタはそんなことはしないとも分かっていた。

だから、やぐらは誰よりも早くこの場所に来た。せめて話がしたいと。その内容次第では水影の座を捨てる覚悟もあった。共に戦う覚悟があった。

誰よりも付き合いの長いやぐらだ、ウタカタが何処にいるのかなんて誰に言われるまでも無く分かる。

事実、やぐらは自らに封じた尾獣——磯撫の力を借りて、誰よりも早くウタカタの元に来た。

 

 

そして今、誰よりも後悔している。

 

ウタカタは確かに笑っている。常の会話で見せる、何時もの笑みだ。やぐらの好きな友達の笑みだ。

 

けど、その目にはもうやぐらは写っていない。

いや、もはや何も写ってはいない。世界も未来も、ウタカタ自身さえも。何も写っていない。

 

 

当たり前だ。ああ、当たり前だ。

 

ウタカタはただの子供だ。力はある、相棒もいる。保護者のような存在もいる。友もいる。その生き様を見定めんとする観測者もいる。世界の未来を託してくれた先人もいる。愛情を注いでくれた味方もいる。けど、子供だ。どうしようもなく人間だ。

 

そんなただの人間は、1日で世界が敵に回り、世界征服を企てる悪の存在を知り、その裏に潜む黒幕の存在を知った。同時に、それら全てをどうにかして欲しいと、自分勝手な願いを押し付けられた。

勿論、相手にそんな気はない。インドラは、アシュラは、ウタカタを信じ託したのだ。ウタカタならばなんとか出来ると、自分たちでは築くことの出来なかった未来をウタカタならば創り上げることが出来ると。先の時代を生きた者が、後世を生きる若者に未来を託す。何もおかしなことはない、当たり前だ。普通だ。当然だ。

 

ならば、その当たり前が、普通が、当然が、ウタカタを苦しめるのもまた必然。たった一人の子供が、未来を救えるはずが無い。世界を救えるはずが無い。世界を敵に回せるはずが無い。

だが、それでもウタカタはどうにかしようと思った。どうにかしなければいけないと思った。どうにも出来ないと分かった上で、それでもなお足掻こうと、藻掻こうとした。答えの無い問題に無理やり答えを見つけ出そうとした。

 

例えるならば、360度何もない大海原に突然突き落とされたようなもの。

泳ぎ方も呼吸の仕方も知らないウタカタは、それでもこの海が時間と共に崩壊する事を知っている。

助かる為にはたった一つだけ存在する宝を手に入れなければならない事を知っている。

自身の帰りを待ってくれる大事な存在がいる事を知っている。

だが、どうにもならない。なるわけがない。

どこにあるかもしれない宝を、どこまで広がっているのかも分からない海で探すなど不可能に決まってる。時間が経てば、或いは泳ぐことにも慣れていくことだろう、呼吸の仕方も分かる事だろう。けど、それだけ。宝は見つからない。

 

諦め、絶望し、泳ぐことをやめればどれだけ楽か。抵抗をやめ、大人しく溺れる(死ぬ)ことが出来れば、どれだけ楽か。ウタカタは、否、()は知っている。

ああ、知っているとも。逃げることの楽さも、目を逸らすことの幸せも、諦めることの幸福も、知っている。覚えていなくとも、分かっている。

足掻く事をやめれば、安らぎ()が待っている。

ああ、分かっているとも。それを受け入れ、身を委ねることの温かみも。水中から眺める泡沫(シャボン玉)の美しさも、全部、全部、全部、全部、分かっている(・・・・・・)

 

それでも、相棒(世界)それ()を許さないことも分かっている。ウタカタが死ねば、世界は戦争を待つまでもなく、滅びる(滅ぼされる)。他ならぬ犀犬(相棒)の手によって。

 

ああ、分かっている。分かっているとも。分かっているからこそ、ウタカタは今、壊れている。

壊れながら、前に進もうとしている。

 

不条理だ。理不尽だ。不合理だ。けど、それが世界だ。どうしようもなく歪んでいて、壊れていて、崩れている。それが世界だ。

歪んだ(正しい)世界は正しい(歪んだ)少年を排除する。

 

世界は少年を笑う。神は少年を嘲笑う。

 

何処にあるかもしれない宝を目指す少年を馬鹿にする。愚かだと罵る。救いがないと蔑む。

方角も分からぬままに放り出された少年に、羅針盤も持たぬ少年に、北を目指せとほざく。

何処まで進めばいいのかも知らぬ少年を、あと一歩なのにと嘲笑する。

 

腐った世界だ。歪んだ世界だ。間違った世界だ。

 

そして、少年が救わなければならない世界だ。

 

 

そんなの壊れるに決まってる。潰れるに決まってる。どうにも出来ない。出来る筈がない。

 

もう、ウタカタは限界だった。否、限界など超えていた。救わなければと、託されたのならばどうにかしなければいけないと、脅迫観念によって無理矢理自らを突き動かし、手を伸ばせるもの全てに手をさし出そうとし、壊れた自分から目を逸らし、矛盾した感情から目を背け、ありもしない未来を目指した。

 

だって怖いから。信頼を裏切ることが。裏切られることが。期待されないことが。失うことが。奪われることが。

 

当たり前に持っているその感情(恐怖)がウタカタを無理矢理突き動かす。

 

いや、果たしてウタカタだけだろうか?

それはきっと違う。みんな、みんなだ。この世に生きるもの全てが恐怖に突き動かされている。

 

三代目火影は初代火影、千手柱間の強さを知っている。だからこそ怖いのだ。柱間と渡りあったマダラが。そのマダラと渡り合ったウタカタが。何より、ウタカタがまだ10にも満たない子供であるという事実が。ただただ怖いのだ。だから楽な道に逃げた。

 

会談に出席した五影は、心を折られた。

ウタカタがうちは一族のクーデターを恐怖によって潰したように、五影もまた、マダラのその圧倒的すぎる力に心を折られた。

勿論全員が全員ではない。見失わなかったものもいる。折れなかった者もいる。けど、ウタカタを信じるだけの強さは残ってはいなかった。

 

当たり前だ。普通だ。当然だ。忍ならば死を克服できるなど妄言だ。子供の喧嘩程度に仰々しくも【第三次忍界大戦】などと名付ける雑魚どもが、マダラを恐れないわけがない。怯えないわけがない。

 

その怯えが、ウタカタを追い込む。ウタカタを排除する。ウタカタを殺そうとする。

 

ウタカタが壊される。

 

 

 

 

果たしてやぐらにそこまでの考えがあったのか、それほどの考えがあったのか。答えは否。聡いやぐらといえど、世界の不条理までは理解出来ない。ウタカタの心情など理解できない。

 

それでもやぐらが歩み寄ったのは、手を伸ばしたのは、抱きしめたのは、躊躇いがちに遥か深海から空へと伸ばされたウタカタの手を握ったのは、救いを求める手を握りしめたのは一体何故か。

なんて事はない。ただウタカタに拒絶される恐怖よりも、ウタカタが壊れることに対する恐怖の方が勝っただけのこと。

 

ただそれだけ。たったそれだけ。それだけでやぐらは悩みを捨てた。自らを責めるのは後回しだと、影の立場より、年上の立場より、友である事を選んだ。

 

故に、強く、強く、強く、強く、決して離れないように強く、決して離さないように強く、決して逃さないように強く、抱きしめる。

 

「ウタカタ!俺が見えるか!俺の声が聞こえるか!俺の鼓動が聞こえるか!俺の温もりが伝わるか!俺の悔しさが伝わるか!」

「無理でも見ろ!無理でも聞け!無理でも感じろ!」

「頼むから!俺を友だと言うのなら!俺を信じると言うのなら!俺の我儘を聞いてくれ!」

 

 

「ウタカタ………俺を一人にしないでくれ。もう、これ以上友を失いたくは無い。お前を……失いたくは無い」

 

果たしてそれは誰に向けられた言葉なのか。誰への願いなのか。誰の望みなのか。

 

「………やぐら」

 

ウタカタの瞳が僅かに揺れる。




ヒロインのターン!(BGM diver)これに対する主人公の行動やいかに!

前回まで主人公の行動思考が支離滅裂だったのは仕様です。

因みに主人公の1日

朝起きる(チャイムで起こされる)→イタチ・シスイに何処とも知れぬ場所に案内される→うちは一族に襲われる→帰って飯食って日記を書く→書き終わってうだうだしてたらマダラが月の眼計画なるものを画策しているのをカツユ経由で聞く→実は自分もマダラの仲間だった→犯罪者認定されて世界が敵に回る→クシナさんの所へ行って九喇嘛を回収(その際優しい人がいることを改めて知る)→実はマダラの計画には黒幕がいることを知る→頑張れ(他人事)→今

どないせいっちゅうねん。こんなの混乱して当然ですね。ってか暴走して当たり前です。これで冷静に「ならこうすればいいな」とか言えるキャラがいるのなら他作品へgoして下さい。NARUTOの世界に一人で正しい奴は不要です。間違えては殴ってでも止めてくれる友なり兄弟なりがいてこそのNARUTOと作者は考えます。

っと言うわけで暴走した主人公を止めるヒロインのお話でした。

やばい、マジでヒロインやぐらに確定するかも。BLタグ増やさなきゃ(白目)









どうでもいい話

木の葉創設期組が強すぎる。
マダラと千手兄弟が異次元すぎる。そりゃ戦争なんて終わりますよ。この三人が手を組んだら冗談抜きで世界が終わる。
逃げても時空間忍術で兄者が降ってくるんでしょ?何その無理ゲー。みんなが必死こいて集めるなり制御している尾獣を当然のよう捕まえる兄者ェ。それを当然のように他国に売れる卑劣様ェ。土影とその候補の二人(しかも塵遁使い)を相手に砂利呼ばわりできるマダラェ。

流石はサイコパスクレイジーホモード。レベルが違うね。頑張れ主人公。明日はきっと来る。多分。

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