世界はシャボン玉とともに(凍結)   作:小野芋子

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時系列は第三次忍界大戦の真っ只中です



忍術?いいえ、シャボン玉です

「水遁を扱う忍術使いか…」

「はい、詳しい能力までは分かりませんがかなりの使い手であるのは間違いありません」

「隠密性に優れており周囲の景色と同化しておりました。我々日向一族の白眼か、うちは一族の写輪眼でなければ発見は困難かと…」

「そうか…。うむ、報告ご苦労じゃったな。しばし体を休めよ」

「「はっ!!」」

 

霧隠れとの交戦中突然現れた水遁使いの忍び。報告によれば、シャボン玉のような忍術を扱うとか。それも先ほど部下が言った通り周囲の景色に同化させて。尚且つ油女一族の扱う蟲邪民具(むしジャミング)の術のようにチャクラ感知を惑わせる忍術を扱い、白眼をしてもその姿を正しく捉えることはできなかったとか。

そしてその真の恐ろしさは

 

「忍術を色で見分けるうちはの写輪眼をもってしても、見極められぬか…」

 

強酸、強アルカリ、腐食液、神経毒。あらゆる効果をその表面に染み込ませたシャボン玉が目に見え無い状態で襲いかかる。聞くだけで恐ろしい忍術だ。それが戦場ならどれほどの脅威だったのか、過去の大戦を生き抜いた猛者、三代目火影にはよく理解できる。

 

「火影様、報告が」

「む、ミナトか。如何した?」

「既に既知のこととは思いますが、例の水遁使いの忍びについて」

「そういえば、その忍びを撤退させたのはお主じゃったな」

「……そのことで、詳しい報告が」

「……聞こう」

「まず、推測ですが今回の襲撃はあくまで様子見では無いかと」

「何じゃと?」

「俺の飛雷神の術を見ても特に焦った様子もなく姿を消しました。仮にあの場で我々を全滅させたかったのならその場に踏み止まることも出来たでしょう」

「うむ。そうじゃな」

「それとこれは一番重要なことですが。………時空間忍術を使って姿を消す前に僅かに見えた姿が、子供でした。それも、カカシ達よりもさらに幼い、恐らくは4、5歳くらいの」

「何じゃと!!!」

 

成る程。子供であるのならば木の葉の忍び相手に重傷こそ負わせたもののトドメを刺さなかったその甘さに納得もいく。

だがそれはあり得ないこと、あってはならないこと。戦場にそんな子供を投入することなど人としても忍びとしても。

それは当然人として、大人として自分たちの始めた戦争に子供を巻き込むことへの怒りもあるが。

忍びとして、それほどの才能をもった子供を死地へと送り出すことに対する手前勝手な感情も当然存在する。

 

だからこそ、早くに決着をつけなければならない。この戦争に、ひいては里と里との対立に

 

「ミナトよ。お前達に1つ任務を授ける。引き受けてくれるな?」

「当たり前ですよ。火影様」

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

月 日

 

一年かぶりに日記を書く訳だが取り敢えず言わせてくれ

死ぬ。マジで死ぬ。何でああなったんだろう?

 

よし、この一年を日記で書きながら少しずつ思い出していこう。

 

それは丁度一年くらい前かな?シャボン玉を大量に生産してたら突然それが一箇所に集まり出して、そしたらいきなりそれがミニサイズの犀犬になったんだっけ?我ながら何言ってるか分かんないが事実なんだよね、これ。

 

そんでもって突然現れた犀犬は俺に対して言ったんだ「面白い場所に連れて行ってやるけんね」って。

当時(まあ今もだけど)犀犬をそれはもう信頼しまくっていた俺はその言葉を信じて先を歩き出した犀犬について行ったんだ。

道中、あれ?ここどこ?って思ったことは1度や2度じゃないが犀犬が俺を陥れるわけも嘘をつく理由もないので、そんな疑問は直ぐに忘却の彼方へ。気分はアトラクションに並ぶ子供のそれだった。

 

そうしてようやっとたどり着いたのは、森。それもただの森じゃない。ザ・森だ。え?何で?

そしてそこにいたのはこの森の主であろう大蛞蝓(いや、もはやデカすぎて殆ど白い壁だったけど)。犀犬の親戚か何かかな?

 

話をつけてくると言ってその大蛞蝓のところまで行った犀犬は数分後にホクホク顔で帰って来た、ミニサイズの蛞蝓とともに。もう訳が分からないよ。

 

「初めましてウタカタ様。私はカツユと申します」

「あっどうも、初めまして。俺はウタカタです」

「では早速ですが仙術の修行を始めます」

「why?」

 

そんな会話から始まった一年にも及ぶ修行の日々。修行の最終目標は自然チャクラとかいう空気中に存在するチャクラとフュージョン!!してこれが俺の真の姿だ!!になることだ。

うん、訳わかんねえな。まず前提条件として俺はそのチャクラとか言う奴を使えないんだよ。そんな奴がその上位互換である自然チャクラを使えると思うか?否!!断じて否である!!

まあ結局は使えるようになりましたけどね!!(やけくそ)

流石は犀犬さんだよ!!また体乗っ取って貰ってコツみたいなのを教えて貰いましたよ!!まあそれを踏まえても一年近くかかったんだけどね!!ほんと才能ねぇな俺は。何回か心折れかけたよ、ってか折れましたよ。まあ犀犬やカツユさんが見てる手前弱音なんて吐けなかったけどね?

だってあの2人凄く優しいんだぜ?厳しくされたんならともかく、あそこまで甲斐甲斐しく世話を焼かれちゃったら答えたくもなるでしょ?一年も修行できたのは偏にそれのお蔭といってもいいね。本当、あの2人さまさまだよ。

あと別れ際に口寄せ契約?をした。よく分かんないけどその辺は犀犬が何とかしてくれるらしい。だって俺印とか結べないし。ってか覚える気もないし。俺はただのんびりとシャボン玉でも飛ばしていられたらそれで良いんだよ。

 

 

そうだ、20歳くらいになったら旅に出よう。うん、それが良いな。我ながらナイスアイディア。丁度この世界を見て回りたいと思ってたし、まあその歳になるまで適度に鍛えつつ、金を稼ぎつつ、仙人モード(笑)の練習をしつつシャボン玉でも飛ばしてたらいっか。

 

 

月 日

 

やばい、仙人モードが便利すぎる。何あれ?体がめっちゃ丈夫になるのは知ってたけどここまで丈夫になんのはちょっと予想外だ。

 

確かアレは自室で自然エネルギーを練ってた時だったか?段々と練り終わるのが早くなっていくことに興奮していたらなんか厳つい顔した奴が突然家に強襲を仕掛けて来た。

何となく誰か来るなぁとは思ってたけどマジで来るとは思わなくてびっくりしてたら気づけば刀で斬られて、なぜかその刀の刀身が宙を舞っていた。え?何で?

その後いきなり人に斬りかかっておいて「ひっ、化け物!!」とかぬかしやがるクソ野郎を全力で顔面パンチ。見えなくなるくらい遠くまで吹っ飛ばしてやった。のだがその後自分の体を調べて見ても傷1つついてないんだよね。マジで丈夫すぎる。さっきは思いっきりぶん殴ったけど強ち化け物というのも的外れでは無いな。

 

まあだからと言っていきなり強襲を仕掛けて来たあいつが言っていいセリフじゃねえよな。うん。まじであいつ許すまじ。次会ったらカツユプレスをかましてやる。大きさは大体本体の100分の1くらいか?まあそれで十分潰せるあたりカツユさんがデカすぎるんだけどね…。カツユさんマジパネェッス。

 

 

月 日

 

新しく『何処でもシャボン玉』を覚えた。

能力は文字通りシャボン玉のあるところなら何処でも移動できるモノだ。連発すると俺の中の何かがゴリゴリ削られていくように錯覚するが、まあ長距離移動している訳だしスタミナとかが削られてるんだろ。そりゃそうだ、こんな便利な能力を何の代償もなく使えたら逆に怖い。寧ろスタミナ程度でこんな便利なものが使えるんだからありがたい話だ。

 

後今日は水影さんに会いに行った。この一年ずっと修行(笑)してたし、ってか実質行方不明になってたからその挨拶もかねてだ。

そしたらめっちゃ驚かれた。「お前は、いったい何処まで…」って何のことですか?

え?本当に何?何処まで迷惑をかけるんだってこと?だとしたらごめんね?いや、俺も突然のことすぎて連絡する暇も無かったんですよ?ちょっとした散歩だと思ったら一年にも及ぶ修行になるなんて誰が予想できますか?

 

まああれだ、取り敢えず恩を返す為に頑張りますとだけ告げて何処でもシャボン玉使って全力で逃げ帰った。あのままあそこにいたらなんかヤバそうな気がしたし。

 

 

 

月 日

 

シャボン玉に乗ってのんびりまったりしながらシャボン玉を飛ばしつつボーっとして家に帰って来たら女の子がいた件について。マジで何があった。誰か!!俺に説明してください!!!いや、本当、切実に。

 

ってか本当に誰?未だに目を覚まさないから本当に分かんないんだけど…。

 

 

月 日

 

女の子を放って外でシャボン玉飛ばすのも何だから家で仙人モード(笑)になったり、適当にシャボン玉飛ばしたりしながら時間潰してたら漸くお目覚めになってくれた。

よかった。あのまま眠り続けてたらちょっと、どころかだいぶヤバかったし。主に警察のお世話になる的な意味で。

 

まあいきなり自殺しようとしたからどのみちお世話になりそうになったけどね?何だよ「くノ一でも木の葉の忍び!!情報を取られるくらいならここで死ぬ!!」って。

いやまあ分からなくはない……訳でも無いな。取り敢えずシャボン玉でも見て落ち着こうぜ?あっ、そのクナイはこちらで没収しときます。戦時中ってのは知ってるけど、女の子が持っていていいもんじゃ無いよ?

 

そんなこんなで最後にはシャボン玉を見て落ち着いてくれたのか、若干引きつった顔で、ってか恐れているような顔でこっちを見て来たが(いや、何を恐れることがあるんですかね?)俺に悪意がないことが伝わったのか暴走するようなことは無かった。シャボン玉式シャンプーが功を奏したのかな?

 

ってか両手をシャボン玉が捕縛しているように見えたんだけど、アレって気のせいだよね?だってシャボン玉だし。そんな強度は無い……そういえば俺シャボン玉で空飛んでたな。ヤベェ来ちゃうな、警察来ちゃうな。

 

ってか来てたと思う。よくは分からないが仙人モード(笑)になって気配に敏感になってたから外に何人かいるのには気付いてた。

まあすぐどっか行ったけどね。それも走り去っていくとかじゃなくて突然気配が消えるやつ。これが忍者か。俺みたいなのとは違うな。

 

あっ、あと家にいる女の子はのはらリンって言うらしい。

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

(ミナト先生から話は聞いていた例の水遁使いの忍び。まさかこんな子供だったなんて…)

 

無防備にもこちらに背中を見せてシャボン玉を飛ばす少年を無意味とは分かっていながらも睨みつけるが、当の本人は意にも解さない様子である。

それがまるで『お前など眼中にない』と言われているようで余計に腹がたつが現状両手を彼の忍術で封じられ、忍具すらも奪われた状態では成すすべがない。

そのことが只々悔しくて血が滲むほどに唇を噛みしめるがすぐに回復させられる。下手をすれば舌を噛み切っても再生するかも知れないと思わせるほどのその医療忍術の腕前は、同じく医療忍術を扱う者として敬意を払うほどのものだ。

 

 

 

数時間前、霧隠れの忍び数名と交戦し為す術もなく捕らえられた自分は、そのまま三尾の人柱力とされ木の葉を襲撃するための人間兵器とされるところであったがそれを止め、自身を救ったのは他ならぬ目の前の少年だ。

 

姿こそ見えなかったが大量のシャボン玉によって霧隠れの忍びを襲撃し、その中に紛れ込ませた時空間忍術を可能とする1つをもって自分を自らの根城まで転移させたのだ。

その時点では既に意識の朦朧としていた彼女ではあったが大量のシャボン玉が自身を救ってくれたことはよく覚えている。

 

だからこそ、余計に分からない。自分を利用しようとした霧隠れの忍びを同じく霧隠れの少年が邪魔をすることに。

 

(一体何が目的なの?)

 

先ほどのことを取ってもそうだ。自分を追いかけてきた忍びを在ろう事か少年が倒したのだ。

恐らくは得意の水遁を使った忍術で。

 

(それに目の周りの隈取り。ミナト先生と同じなら恐らくは仙術も使って)

 

先生は言っていた。世の中には私たちよりも幼くて先生よりも強い忍びがいると。

当時はまるで本気にしていなかったそのセリフ。それは波風ミナトという忍びが『木の葉の黄色い閃光』としてその名を知らしめていたこともそうだが、同期で最強でかつリンの想い人であるはたけカカシですら手も足も出ないミナトに、自分たちよりも幼い子供が勝てる筈がない、そんな想いがあったのだ。

しかし、事実目の前に現れた以上、認識を改める必要があるのも事実。

 

けど

 

(悪い人じゃないのよね)

 

今日1日の言動を見ると、ある程度は行動を制限してくるが、必要最低限ーーどころかこの時代じゃあり得ないほどに豪華な食事を提供してくれる。

それに女の子の命である髪の手入れだってしてくれる。

こう言っては何だが理想的な捕虜の扱い方だ。むしろ理想を大きく上回ってかえって不気味に感じる程だ。

 

(そのまま木の葉まで送って貰うっていうのは、流石に高望みが過ぎるかな?)

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

リンちゃんが帰りたいそうなんで送って行くことにした。まあ送って行くって言ったらめっちゃ驚いた顔されたけど。

いや、何でだよ!!帰りたいんじゃ無いの?それともあれか?俺が人を見送るような人間に見えなかったってことですか?流石に怒るよ?激おこだよ?

 

「私は捕虜なんでしょ?」

 

いや、捕虜って何ですか?確かに今は戦時中だけど、俺は捕まっている君を見て助けねば!!って感じで凸ったわけでも無いし、家に帰ったら気付けばいたような女の子を送るだけですよ?

まあそれじゃ納得しないようだから俺も切り札を切るけど

 

「水影に確認したら君のような捕虜は捕らえていないとのことだ。だから問題ない」

 

ほんと新しく開発したシャボン電話は有能。遠距離の相手とシャボン玉を使って会話できるとかマジで神がかってる。通話時間に比例して俺の中の何かが削れることを除けばね。

だめだ、思ったより有能じゃねえな。これからは有事の際以外は極力封じておこう。うん。それが良い。

 

「……水影」

 

とか思ってたらちょっと引かれてた件について。何?傷付くよ?

 

よし、取り敢えず気持ちを切り替えていこう。送るって言ってもシャボン玉使えば安心安全の空の旅だしな。楽勝楽勝!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンを返せ!!!」

 

そう思っていた時期が僕にもありました(アレ?なんかデジャブ)

なぜか白髪の少年に睨まれているんですが。

イヤ本当になんで?俺はただ送り届けようと思っただけだよ?見てこの顔?嘘ついてるように見える?中身はともかく少なくともこの体は現在5歳くらいだから、割と真面目に信頼できると思うよ?

 

「カカシ!!大丈夫、この子は味方だから!!」

「………貴様ぁ!!幻術までかけたか!!」

 

落ち着こうぜ!!まず幻術って何?俺この世界に来てもう一年も経つけどそんな言葉聞いたことないよ?

でも、うん。もうめんどくせぇや。なんかどう頑張っても説得できる気がしないからちゃっちゃと引き渡そう。犀犬が追いかけて来てる奴がいるって言ってるし。

 

っというわけで行ってらっしゃいリンちゃん!!

 

「きゃ!!」

 

突然背中を押されたことで可愛い声を出す彼女にちょっとほっこりしたが、それどころじゃなくなった。

 

《来たみたいやねウタカタ》

「マジかよ」

 

振り返ると優に30は超える霧隠れの忍びの皆々様方。霧隠れ式の送迎かな?え、違う?デスヨネー。

取り敢えずどうする?既に仙人モード(笑)の準備は完了してるし、犀犬がいるから多分余裕でボッコボコにできると思うけど。

ってか一応俺も霧隠れの者なんですが、どうして殺気を向けられてるんですかね?何?怒るよ?怒っちゃうよ?カツユプレスをかましちゃうよ?

今なら本体の10分の1サイズくらいなら口寄せできる自信あるよ?あくまで自信だけですけどね!!

 

あとカカシ君だっけ?「やはり罠だったか!!」って言うのやめてくれる?俺も聞いてないし。ってか俺にも殺気飛ばしてるの見てたら分かるでしょ!!

 

まあこうやって焦ったように見せているが内心そうではない。念のために道中『何処でもシャボン玉』を仕掛けておいたのだ。それも大量に。

だから大丈夫。うん、少なくとも死ぬことはない……よね?ちょっと自信なくなって来た。

 

「リン!!カカシ!!」

 

っとか思ってたらまた新しいの来ちゃったんだけど!!今度は何!!?

 

「「オビト!!」」

 

誰だよそれ!!何?あの黒いパーカーみたいなの身に纏ったちょっと顔の右半分おかしい人は君たちの知り合いなの?

 

「お前、死んだんじゃ…」

「詳しい事情は後だ!!今はこの場を切り抜けるぞ!!」

 

っとか言いながらも感動の再会を果たすメンツに背を向けながら大量のシャボン玉で追って来た忍びの足止めをするどうも俺です。

シャボン玉に隠れて見えないがあっちの方で「ぐわああ」とか「ぁぁぁああ!!」とか悲鳴が聞こえるのはなんでだろ?ああ、シャボン玉が目に入った?そりゃ痛えわ。だってシャボン玉って石鹸水で出来てるし。

 

それとなんか俺の中の犀犬さんが暴れさせろと煩いんだが、どうすれば良いの?何?シンクロすれば良いって?ワォ何それ面白そう。じゃあちょっとやってみますか。

 

「行くぞ。犀犬」

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「行くぞ。犀犬」

 

その言葉をきっかけに暴風のように吹き荒れるチャクラに急ぎその場を離れる木の葉の3人の忍びの前に現れたのは、まさしくチャクラの化け物であった。

 

「あれは、六尾!!」

 

その正体を唯一知るカカシの叫びに残りの2人は驚きが隠せないでいる。

特に短い付き合いとはいえ、カカシやオビトよりも長い間少年の近くにいたリンは殊更に。

 

「だがカカシ……」

「ああ、あの少年、完全にコントロールしている」

 

恐ろしい。素直にそう思う。

尾獣とはまさしくチャクラの化け物。特にその中でも凶暴な九尾という存在を知る木の葉の忍びにとって、あまり良い印象を持たない存在だ。

それを自分たちよりも遥かに幼い歳でコントロール下に置いているのだ。恐怖を感じない訳がない。

 

「大丈夫よ。カカシ、オビト」

 

けど、それでも少女は信じる。

たった数時間の付き合いではあるが、どうしてか彼は信頼できると、そう思えた。

 

事実強大なチャクラを身に纏いながらもかけらも恐怖を感じさせない。むしろ温かみすら感じる程だ。「ここは大丈夫。自分がなんとかする」と暗にその背中が物語っているようにすらリンには感じられた。

 

そしてそんな彼女の言葉をこの場にいる2人は無条件に信頼する。それは正しく絆。長い付き合いの中で芽生えた確かな信頼関係がそうさせるのだ。

 

「行こう、カカシ、オビト!!」

「ああ」

「おう!!」

 

アレだけ多くの敵の忍びを前にして、背を見せることは自殺行為ではある。それでも彼らは少年を信じ、背中を預けた

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

「マダラ様〜。オビトが木の葉に帰っちゃったよ〜」

「……何?」

 

バカな、あり得るはずがない。自分の立てた計画ではオビトは今頃目の前で愛する者を殺されている筈だ。そしてその計画に万に1つも失敗はない。

何故ならこの計画だけは自分がーーうちはマダラ本人がその瞳術をもって有象無象でしかない霧隠れの忍びを操ったのだから。

あの雑魚連中に自分の瞳術を解く術があるようには思えないし、それ以前に操られていることにすら気づいてはいない筈。事実見張っていたゼツ達の報告によれば全て上手くことは進んでいた。

 

「……ん?」

 

僅かに感じた違和感。だが、それは決定的だった。

 

(ゼツが幻術にかかっている、それも仙術まで練られた精度の高いものを)

 

成る程。それならば納得がいく。

つまり、これまで報告されて来たものは幻術によって見せられた嘘の情報。現在ゼツがうちはオビトが木の葉に帰ったことをまるで当然のように自身に語っているところを見るにうちはの瞳術にすら迫る質の高いものであることはまず間違い無い。

だが、見張りをしていたゼツ、その全てに幻術がかかっていた所を見るに写輪眼では無いことは容易に分かる。

 

そこまで判断したうちはマダラは

 

笑う

 

「ハハハハハハッハハハハ!!!このうちはマダラの一枚上をいくか!!面白い、面白いぞ!!!!」

 

正直この時代の忍びには何の期待もしていない。かつて殺しあった千手柱間に比べればどれも取るに足らぬゴミでしか無かった。

だが、事情は変わった。どういうわけかマダラの存在に気付き、その計画を潰した忍びがいる。元来戦闘狂なマダラにとってこれ以上ない楽しみだ。

 

そして、そうであるならばわざわざ手駒となるものを見つける必要もない。それほどの忍びがいるのならば自ら行動を起こすのがうちはマダラだ。

 

「あの男の術など使うまいと思っていたが、まあいい。ゼツ…計画を変更する……

 

 

 

 

 

穢土転生を使い、俺を蘇らせるぞ。ここからは俺自ら動く」

 

 

 

 

 

 

 




僅か二話で物語の難易度がハードモードからクレイジーサイコホモードに爆上げされました。物語の大筋は変わりません。
ただ死傷者等は減るが派手好きなサイコホモのせいで地形は大きく変わる模様
一応穢土転生体ということで弱体化してるんだけどなぁ……


ここで忍術の説明
シャボン玉
時空間忍術から幻術まで何でもござれなチート。主人公が勘違いされるときは大抵こいつのせい。
原作我愛羅の砂同様にウタカタの両親の意思が宿っているという裏設定。だが何故か仕事をすればするほど主人公が狙われるという負のスパイラル



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