俺が一番可愛い 作: マイ天使GXⅢ
手を繋ぐでも組むでもなく、たまに腕と腕が触れるような男をドギマギさせる絶妙な距離を保ち歩く燕と振り回される一夏。二人は寮に着くと別れ各々の部屋へと向かった。
「た、助けて燕!」
「っ!? な、何故燕に助けを求めるのだ!?」
そして一夏がラッキースケベをして同室であった箒に追い詰められていた頃、燕は一人、鏡の前でいつもの如く萌えていた。
「美少女のパジャマはその字面だけで萌える。甘美な響きだ。そう、例えばモコモコなパジャマを美少女、燕たんが着ているところを想像して欲しい。なんとまぁ可愛らしいことだろうか。可愛いものに可愛いものを掛け合わせたのだから当然の帰結である。モコモコふわふわパジャマにキュートな笑顔。パーフェクト。
例えば、着ぐるみ系パジャマ。言うまでもなくグッドだ。フード猫耳とかも良い。古今東西、動物と美少女というのは切っても切れない関係なのだ。獣耳美少女。はい、完璧。モコモコパジャマと同じで可愛いものに可愛いは正義なのである。
例えばネグリジェ。妖艶さとまだ高校生になったばかりという幼さ残る燕たんの身体! ギャップと危険な感じがたまらない。ネグリジェで月夜バックに艶やかに笑う燕たんとかどうだろうか。素晴しい。いや、妖艶さで言うなら和服風のパジャマを着崩し和室で日本酒片手に、とかの方が……うん、両方萌える。
しかし、しかしながら今の燕たんはどれでもない。ずはり、男物パーカーにゆったり目のショートパンツである。明らかにオーバーサイズの黒色の色気の"い"の字もない地味なパーカーに身を包む燕たん。袖は勿論、萌え袖。大きい故に丈が合わず、スカート状態。しかもショートパンツなので見えない。他人から見れば穿いてるか穿いてないかわからないエロティック! くっはー! たまりませんな! だがこれで終わらないのが燕たんである。なんと、パーカーの下は裸なのだ。素肌である。素肌パーカーである……素肌パーカーである! しかもチャックを開きやすいように改造してあるから、寝返り程度で少しずつ開いていくのだ。つまり寝起きはパーカーオープンの見えるか見えないかのギリギリライン! 素肌パーカー最高! イカれてる。燕たんマジイカれてる。流石俺。夏はベタに裸Yシャツね! 下は穿くけどね!」
そんな感じで中の人はIS学園でもマイペースに燕を堪能していた。色々なポーズをとったり、それを動画で撮影したりである。しかしこれでは終わらない。持ち込んだ機材で編集してBGMを流し自作イメージビデオを製作していた。もはやその技術はプロにも勝る。
「はい、チャック全下ろし! あ、危ない、危ないよ燕たん! そんなに動いたら! 見えちゃう、もう見える、もう見える、もう見え――はい残念髪の毛バリア、からの謎の光! そして手ブラでフィニッシュ! 燕たんは汚れない。微エロまでです。残念でした! 残念じゃないけど残念でした!」
因みに燕は一人部屋である。日本の代表候補生としての権力と美少女っぷりを最大限にいかして"お願い"した結果だ。上目遣いで一発である。それでいいのかIS学園、それで良いのか日本政府。
「む。これ以上は燕の肌に悪いな。寝よう」
こうして燕はIS学園一日目を終えた。
「燕、一緒に朝飯食べようぜ」
「良いよ。……箒、機嫌悪い?」
「別に悪くない」
翌朝、燕は一夏と箒に誘われ一緒に朝飯をとることになった。中の人は箒と朝食、と喜んだが箒の表情は険しいものである。何故かと食べながら思考を巡らせ中の人は一つの可能性にたどり着き、一夏に聞こえない小さな声で箒に声をかけた。
「別に取らないよ?」
「……何だ」
「一夏のこと」
「っ!?」
「好きでしょ?」
「え、は、え、ち、違っ」
「ん、食べ終わったから先行く」
不機嫌な理由はそれではなかったが、吹き飛んだ。恥ずかしさと諸々とで箒は顔を赤くした。応援するよと言う意味を込めて燕は早々に食べ終えてその場を後にする。内心またしても織斑ラヴァーか! クソッタレ! と思っていながらも変なところで常識人な中の人は応援することにした。略奪はいけんです、とは中の人。
(ま、俺には燕たんがいるからね!)
相も変わらず自分大好き人間であった。
「――クラス代表戦に出るクラス代表を決める。自薦他薦は問わない」
朝食後、授業開始と同時に千冬がそう言ったことで、クラス代表を決めることになった。
「はい! 織斑くんがいいと思います!」
早速に手が上がるが、他薦。しかも珍しいというだけで一夏が選出された。それを皮切りに、私も織斑くん! と声が続き、一夏がクラス代表で決定かと思われたが我慢ならない人が一人いた。
「納得いきませんわ!」
イギリス代表候補生のセシリア・オルコットである。机を叩き、少々過激な言葉も混ぜて自分の方がクラス代表に相応しいと言った。
クラス代表をしたくなかった一夏は最初はセシリアに譲ろうと考えていたが、演説の途中の過激発言が癇に障ってしまい、イギリスに対する過激発言で対抗。
「決闘ですわ!」
売り言葉に買い言葉と収集がつかなくなり、ついにセシリアは一夏に決闘を申し込み、一夏もそれに応えた。
「では、来週織斑と――」
「――私もやる」
それを見ていた千冬は承諾し、話をしめようとしたところで燕が手を上げ自薦した。
「そうか。なら来週は織斑、オルコット、飛鳥の三名によるクラス代表決定戦を行う」
普段は大人しい燕。その燕が手を上げたことに一夏と千冬は驚いた。そして同時に、燕は日本代表候補生として黙っていられなかったのだと、納得する。千冬はそんな燕に感心し、一夏は自分も負けられないと決意を固めた。
(セシリアちゃんのISスーツ姿を間近で見るチャンスがこんなに早く訪れようとは! 俺ってば超運良い! 隅々まで堪能してやるぜ! ぐへへ)
中の人、絶好調である。