ドラクエ3 勇者は出来れば楽をしたい   作:半生緋色

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というわけで始まりました。不定期更新です。
DQ3やりこんだのはスーファミ版だけですので、他のバージョンとずれがあったりするかもしれませんがそこは見なかったことにして下さい。
どちらかと言うと思いついたまんまに書いてるので、設定のズレとか深く考えてはいけない。イイネ?


プロローグなのに楽できない

 最初は目の前に広がる景色を夢だと思った。

 だって、誰だってそう思うだろう?寸前まで布団の中寝転がりながらタブレットでゲームをしていた自分が、いつの間にやら知らない森の中に立っているのだ。

 そういう経験をしたことが有る人ならまず連想するだろう。…寝落ちしたのだと。

 

「あーあ、こんなにリアリティーの有る夢なら、別の風景を見たかったな……」

 

 例えば先程まで確かにプレイしていた、某○月のソーシャルゲームの世界とか。

 思わず口から出た言葉は誰に聞かれるでもなく、深い森の中に吸い込まれていく。

 実際、そんな世界に行ったら夢の中であっても40回は殺される自信はある。それでも可愛い眼鏡の後輩に、こんなリアリティーがある世界で会えるのなら本望ではあるのだが。

 

「……結構考えるぐらい意識がはっきりしてるのに、起きないものなんだな。嗅覚とかもちゃんとしてるし」

 

 すぅっと、大きく深呼吸をすれば今まで嗅いだことのないような、濃厚な植物と土の匂いが鼻孔をくすぐる。遠くから水の音も聞こえるし、間違いなくマイナスイオンの濃度が濃いな、なんて笑いながらも、さてどうしたものかと考える。

 自分としては、夢の中で寝るというのもおかしな話では有るのだけど、このままの微かに森の入口から漏れる木漏れ日に当たりながら二度寝をしてしまうのもありかななんて考える。現実世界では明日もまた普段と変わらない仕事に行かなければいけないわけで、夢の中であってもできれば休んでいたい。ただ、よくよく地面を見れば柔らかそうな草木に覆われていて、眠ったら気持ちよさそうでは有るのだけど、其処は流石に森の中、なんだか見たことがない種類の虫が動いてるのを見れば、その考えを無かったことにした。

 

「それに、よく見たら寝間着じゃないし。って、なんだこの服……どこかで見たことが……ってまあ、夢なら見たこと有るものだろうけど」

 

 自分の服装をまじまじと見直しながら、ただ、何かが記憶の中で引っかかる。青い服に額に何処かで見たサークレット。ペタペタとそれに触りながらも、徐々にでは有るがその記憶が蘇ってくる……ああこれは。

 

「はは……もし、もしそうなら。とりあえず、あの場所に行かないと話が進まないよなぁ」

 

 思い出したのは昔かなりやりこんだゲームの始まりのワンシーン。国民的RPGと言われたあのゲームなら、とりあえず、今やることはただ一つだろう。

 やれやれ、何で夢の中でまで歩かないといけないのかなんて思いつつも、想像の世界であろうこの景色。……それでも、当時でも画面越しにすごくきれいだと思った景色少しだけ楽しみながら、俺はあの場所に向かって歩き出す。方角は……、まあ、光が指す方。確か滝なんかが見えた気がしたから、水音がするそちらで間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

『アレル……アレル……私の声が聞こえますね?』

 

 結論から言おう。この場所は俺の想像通りDQ3の冒頭シーンだった。ただ、森の中から抜けるのにゲームだと一瞬の画面移動で済んだのだが、夢の中故か、無駄にリアリティーに富んでいたせいか、森から抜けるのに10分。断崖絶壁の崖に向かうまで恐怖と戦いながら更に5分。もう何も始まらなくていいから起きないかな俺、なんて思いつつも、一向に目覚める気配の自分に苛立ちを覚えた頃に聞こえてきた男とも、女ともとれない声に思わずため息が漏れる。

 やっと話が進むと思いつつも、この世界では俺の名前はアレルらしい。間違いなく俺の知るDQ3の関連作品にでてくる勇者の名前だ。ならば勇者らしく無言で答えるのもいいが、其処はそう、此処はきっと俺の夢の中だ。こんな機会じゃなければ言えないお約束であろう言葉を徐ろに口にする。

 

「こいつ、直接脳内に!?」

 

 できるだけオーバーリアクションを意識しつつ、放つ言葉が虚しく響く。そこにリアクションを求めるのは間違っているかもしれないが、返答のないまま数秒の無言が続くのは流石に恥ずかしい。ただ、向こうもこのような『勇者』にあるまじき発言に困惑しているのかもしれない。もしそうだとしたらゲームとは違い続く会話内容も変わってくるかもしれない。変わらないならこのあとの展開もだいたい予想はできるので、とりあえず全部の質問に『はい』と答えるだけなのだが。

 

『私は すべてを司る者。あなたは やがて 真の勇者として 私の前に 現れることでしょう……』

 

 はい、スルーですか。いや、まだ諦めるには早い。変な間があったし。たとえテンプレであろうと向こうも考えて発言している可能性は捨てきれない。俺はワクワクしながら黙って相手の言葉を促した。

 

『しかし その前に この私に 教えてほしいのです。あなたが どういう人なのかを……』

 

 さあきたぞ!このあとの質問だ。俺の記憶が確かなら、続く質問は、いや、質問とはいえない選択の余地のない言葉に俺は覚悟を決めて答える準備をする。ほら、ジョルノだって言ってたじゃないか。『『覚悟』とは!!暗闇の荒野に!進むべき道を切り開くことだ!』って。

 だから、俺はこのあとの展開を予想できているとはいえ、あの言葉を口にせざるを得なかった。

 

『さあ 私の質問に 正直に答えるのです。用意は…』

「だが断る!」

 

 言葉を遮るように勢い良く口にした言葉。言いかけの相手の言葉は続いてこない。……つまり、ゲーム通りではない。ならばと、俺は責め立てるように言葉を続けた。

 

「何故俺の名前を知っている?…それがすべてを司るものだというなら、そもそも俺に……」

 

 いいかけて言葉を止める。そういえば勇者の年齢は16歳だったか。それであの鳥山明イラストを見れば一人称俺は少し違和感がある。むしろ勇者としては僕や私のほうが印象が良いのではないか?こういうものは早いうちに変えておくことに限る。たとえ夢の中でも俺はロール・プレイするのが大好きだから。なら、こういうときは徹底的したほうがいいだろう。

 

「いや、僕に質問すること自体間違いじゃないのですか?すべてを司るものなのに、僕のことを名前だけしか知らないなんて可笑しいじゃないですか?」

 

『あなたは なかなか 用心深いようですね』

 

 ええ、そのとおりです。俗に面倒くさい性格とも言われます。そんなことは思っても口には出さず、更に続くだろう言葉を待つ。

 

『それとも ただの ひねくれ者なのか……』

 

 はい、間違いなくそうです。それでもテンプレ通りから抜けない貴方も捻くれていると思います。きっとどう話しかけようか考えた末にメモした内容をそのまま読んでいるのだろう。そう思いたい。

 

「はぐらかさないで下さい。……こんなことをして僕のことを探ろうとする者に警戒するのは当たり前です。僕は勇者オルテガの息子…えっとアレルです。父が死んだと聞いてから、僕は魔物に狙われるかもしれないと母が言っていました。見ず知らずのところに連れてこられて、そんな質問されれば、警戒するのは当たり前です」

 

 我ながらそれっぽいことを言えたのではないかなと自負する。名前を一瞬戸惑ったことは抜きにして。出来ればこれで相手の反応が変わってくれればいいのだが……。

 

『それも いずれ わかるでしょう』

 

 はい、スルーされました。それでも聞こえる声から戸惑いが感じられる。此方は一方的に相手のことをゲームで知っているのだからこそ、こんな捻くれたことが言えるが、向こうからすれば選ばれた勇者の候補に不信感を持たれるのは少なくとも不味いことだろう。思い出すゲームの世界はたしかに魔王に世界が制圧されようとしている。ならば、もう一捻り台本通りでない問い掛けが来てもいいんじゃないかな? そう思いながらもこれから続く言葉を俺は待つ。これで、うまく行けば夢から覚めれる。だって、これは起きるためにはちょうどいい出来事だろう?

 

『ともかく 私は まつことにしましょう』

 

 脳内に響く、少し苛立ちと不安の感情がこもった言葉。それが聞こえると同時に俺の目の前が真っ暗になる。夢の中なのに眠りに落ちる感覚……そして世界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眠りに落ちてすぐ言うのは可笑しいかもしれないが、ゆっくりと俺の意識は覚醒した。まだ眠気の残るがはっきり覚えている夢の内容を考えれば仕方がないだろう。夢の中でまで歩くことになるなんて考えてなかったし、あんなリアリティーの有る夢なんて見たら脳もゆっくり休めなかったんだろう。俺は眠たい瞼を指でこすり、時計を見ようとえらくフサフサしたベットから上体を起こす。視線を向けた先はどこまでも続くような深い森で、そこから少し漏れる木漏れ日と水の流れる音が、仕事前のオレの心を癒やしてくれる。

 うん、俺の部屋ってこんなに自然溢れてなかったよね?

 

「……やっぱりこのパターンかよ。いい加減起きたいんだけど」

 

 そこは間違いなく最初に自分が目覚めた森の中で、あの質問にいいえと答えた場合問答無用で何回も送られる場所である。つまりまだ夢の中だということだろう。はぁ、っと大きくため息を付いた俺は、その場で立ち上がり背中についた葉っぱや土を払い落とせば。

 

「待ってろよ、俺が諦めるのが先か、てめぇが諦めるのが先か……試してやろうじゃないか」

 

そう声を上げ奮い立たせば、俺はまたその森の出口に向かって走り出した。




本当はね、プロローグもっと短かったんや……
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